Home > Interviews > interview with Enter Shikari - ドラマティカル・へヴィ・ロック!
見えるものだけではなくて、物事のルーツやその下にあるものを見ていかなきゃいけない。
■なるほど。今回はまさに1曲めが序章、12曲めが終章といったかたちで、まるで物語を構成するように人々へのメッセージがつづられているように思いました。こうしたつくりは意識されたものですよね?
(両者):うん。
ロブ:曲を書いている時点では単体で、ひとつひとつできていったんだ。その後に全体を考えながら並べ替えていくわけだけど……、ええと……。
クリス:ハイ、交代して(笑)。
ロブ:タッチ(笑)。
■ははは。
クリス:最初にもってくるトラックと最後にもってくるトラックは毎回とっても重要なんだ。そこからアルバムにどんどんと入っていけるものを頭にしたい。アート作品のようなものなんだ。奥へ奥へ入っていって、最後はまとまって戻ってくるというような感じ。そういうところは志したよ。
■どんどん没入していく感じですね。そう、昨今は世界のとらえ方がミニマルに、ミニマムになっていくようなところがありますが、みなさんの音楽は逆にマキシマムというか、いろんな要素を入れて膨張していきます。その先にはどんなものが見えているんですか?
ロブ:そうだな、どうなっていきたいかというヴィジョンはもちろんあるんだけど、まずはみんなの前で演奏できることをとてもありがたいことだと思ってるよ。世界を回ったり、音楽で生きていることが本当に夢のようなんだ。だからそれを続けていくことがさらにひとつの夢でもあるし、ヒットチャートを飛ばして一発当ててやるという思いはない。このままずっと進んでいけるということが願いだし、その意味で膨張があるとも言えるかな。
■世界観というところではどうですか? 詞や音の表現から読み取られるのは、「われわれはシステムの犠牲者だ」っていうようなディストピックな世界観なんですが、それはいまの境遇への感謝ということとは別の、ちょっと暗いものですよね?
ロブ:それは、もちろんある。でも自分たちがそれを変えていかなければというふうに思っているよ。政治的にもね。
■その最終的な答えっていうのは、すぐに出るものではないと思いますが、終曲の詞からみると、表現やアートによって心を大掃除することが、人類にとっての前進なんだというようなメッセージもくみ取れます。これがアルバムのひとつの結論になっていると考えていいでしょうか?
ロブ:カサシズム、だね。うん、ひとつの結論だと考えていいと思う。でも……、それはラウにきいてもらうのがいいと思う。うまく答えられなくて悪いんだけど。
■ああ、そうなんですね。すみません! ラウさんの世界観というところが強いんですね。では、たとえば“マイオトピア”のエレクトロニクスや優しいハーモニーにはバンドとしての新しさが感じられますが、ああいったアイディアはどこからくるものなんでしょう?
ロブ:そのへんは、もともと僕らの中にあったものなんだけど、外に出せていなかったんだよね。どこかから引っぱってきたというより、今回にあたって中から出てきたという感じだよ。
■ストリングスの部分はソフト音源ですか?
ロブ:いや、あれは生なんだ。カルテットを呼んでるんだよ。前もできたらよかったんだけど……、予算的にも時間的にも、今回実現できてよかったよ。
■そういう細部へのこだわり方など、しっかり曲作りのステージが上がっていることも感じられますね。
ロブ:うん。プログラムでは表現できない深さをもたらしてくれたと思う。人間の手によるものは、加えられる力の大きさがまるでちがうよ。
■さっき「暗い」といいましたけど、暗いのではなくて深さが表れていたということかもしれません。
ロブ:世界ってものに対するリアクション──、自分たちだけではなくて全体として前進していくことは意識しているんだ。いまの世界の状態をみて、いくらでも「最悪だ」とかってことは言えると思う。でもそれに対するリアクションとして、前進していくことが必要なんだ。それを俺たちは大事に考えているよ。
クリス:見えるものだけではなくて、物事のルーツやその下にあるものを見ていかなきゃいけない。
ロブ:そしてエモーショナルであること。それがいちばん大事だと思ってるんだ。
■力強いです。よいショウになりますように。
取材:橋元優歩(2015年1月23日)
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