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Enter Shikari The Mindsweep Ambush Reality / ホステス |
エンター・シカリのファースト・フル『テイク・トゥ・ザ・スカイズ』のCDは、本当によく中古屋で見かけた。スリーヴ・ケース付きだったことまで覚えている。中古がたくさんあったということは、それだけよく売れた作品だったということだ。2006年。いでたちこそふだん自分と縁のなさそうな屈強な男たちだったけれども、ニューレイヴ・ミーツ・メタルだ、いまはコレなのだ、聴くべしということで筆者も手に取った。クラクソンズにフレンドリー・ファイアーズにレイト・オブ・ザ・ピア……「ニューレイヴ」と喧伝されたロック・マナーなシンセ・ポップ、あるいはエレクトロの一群は、たとえそれがメディアによる空疎なまつり上げだったのだとしても、ある求心力をもったファッションやスタイルを提示し、CDを売ったのだといえる。いわゆるラウド・ロックをレイヴ寄りにリサイズしたかのようなエンター・シカリの音楽は、ともあれそのように時代の音として聴かれた。
しかしそうした符牒はほどなく忘れられる。そして10年近くが過ぎようといういま、オーディエンスにケガ人も続出したという彼らのハイエナジーなライヴ・パフォーマンス、そのスタジアム級のエネルギーとエモーション、壮大な世界観が、その威力をストレートに磨き上げられていることに気づく。4枚めとなる新作『ザ・マインドスウィープ』は、そのように楽しむことができる。今回話をきかせてもらったのは、クリスとロブ。おごることなく、リスナーやファンを大切にするバンドであることをあらためて感じさせるふたりだった。ただ、彼らのシリアスでスケール感ある物語性の根源はやはりヴォーカルのラウであるようで、また機会があるならばラウにも話をきいてみたい。
■Enter Shikari / エンター・シカリ
ロンドン郊外セント・オールバンス出身、ラウ(Vo, Syth)、ローリー(G)、クリス(B)、ロブ(Dr)で結成。ハードコアやメタル要素を軸に、ダブステップ、ドラムンベース、レイヴ、ヒップホップなどをミクスチャー的に取り入れた音楽性や、過激なライヴが話題を呼び、作品リリース前から注目を集める。レーベル契約前にロンドンのアストリア(2000人収容)を完売した。現在までに3枚のアルバムを発表。2015年1月、4枚目となるニュー・アルバム『The Mindsweep』をリリース予定。
俺たちが住んでいた地域は、ライヴ文化がすごく強かったんだよ。(ロブ)
■デビュー当初は、時代的な機運もあって、あなたがたは「ダンス・ミュージックとメタルの融合」というふうに紹介されましたね。
ロブ:うん、「レイヴ・ミーツ・メタル」ね!
■ええ(笑)。原点にあるのはロックなのかなと思うのですが、インタヴューの前提として、当初どういった音楽からの影響が強かったのかお訊きしたいです。
ロブ:そうだね、ロックだよ。ビートルズ、オアシス、ステレオフォニックス……、12歳くらいかな、聴きはじめたのは。俺たちが住んでいた地域は、ライヴ文化がすごく強かったんだよ。バンド・バトルが盛り上がっていたし、〈パイオニア〉っていうクラブでは毎週のようにおもしろいギグがあった。ロック・シーンは充実していたんだよ。そういう地域で育った影響はあると思うね。
■いま、まさにビートルズとおっしゃいましたが、現在のUKは、ベース・ミュージックだったりというダンス・ミュージックにおける先鋭性はあるものの、ロックの国としては長い間更新がなかったように思います。あなたがたからみてロック事情はどうですか?
クリス:イギリスはとても恵まれてるんだよ。いろんな種類の音楽が同時に存在できる。ダンス・ミュージックが前に出ているとは思うけれど、バンドも根強く、たくさん存在しているよ。
ロブ:新しい音楽が生まれるっていうのは、古い音楽を外に締め出すということではないと思うんだ。古いものの中に新しく入っていく──だから、ロックがそこで蹴飛ばされているわけじゃないんだ。僕としては共存していると思う。
■では、いまおふたりが10代だったとすれば、何から聴いていますか?
ロブ:簡単なものかな、プレイするのに(笑)。
■簡単なもの?
ロブ:そうだね……。もしいまティーンだったら何を作るかってふうに答えるなら、俺たちはジャンルがどうであれパッションが詰まったものをやりたいと思っている。そこについては変わらないかな。
■なるほど。では今作について質問です。今作収録曲には多彩なヴァリエーションがありますね。オーケストラ・アレンジからピアノをフィーチャーしたものまで、とにかくスケール感があります。
クリス:うん、うん。グレイト。
■ははは。そうですよね。大作映画のサントラってくらいのスケール感ですよ。テーマ的にも「人類を啓発する」というくらい壮大なものを感じますが、そんなモチーフは実際にあったりしますか?
ロブ:いや、ほんとでっかいものだよ。ほんとにそんなふうにみんなが感じてくれればいいけどね。けど「啓発」とまでいえるかな……。
クリス:いや、いえるよ。たぶん(笑)。
■ははは!
ロブ:でも、歌詞とかも含めて僕らのアイディアが詰まっていることはたしか。聴いてくれる人に願うのは、自分でそれを聴いたうえで、自分でそれをどう考えるか、っていうことを大事にしてほしい。僕らのを聴いて何かに気づいた、目がさめた、考えさせられたっていうような感想をきけることがいちばんうれしいことだからさ。なにか、前に進むためのきっかけにしてほしい。
■過去の作品においては「ユニティ」というテーマを掲げておられたりもしましたよね。環境とか社会、経済問題といったことに言及されてきたことが多かったと思います。そうした社会的なテーマにコミットしようとするのはなぜです?
クリス:重要なことだと思うからだよ。心の中で重要なことだと思っているのに、ステージの上でそれを言わないんだとしたら、ちょっとちがうと思う。頭の中で大事だと考えていることは、音楽の中に反映していきたいと思っている。
取材:橋元優歩(2015年1月23日)
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