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©士郎正宗・Production I.G / 講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
『攻殻機動隊 新劇場版』6月20日(土)全国ロードショー
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ゴーストは見たことある? (北沢夏音)
ないです(笑)。UFOはあります。 (小山田圭吾)
北沢:実際に、偉大な人たちが、いまこうしている間にもどんどん死んでいって、でもぼくらはそういう人たちからインスピレーションをもらったり、励まされることがよくあるし。そういえば「自分のゴーストに従え」というメッセージが今回の『攻殻機動隊 新劇場版』にもあるね。
小山田:うん。出てくるよね。
北沢:(唐突に)ゴーストは見たことある?
小山田:ないです(笑)。UFOはあります。
北沢:どこで見たの?
小山田:タイで見ました。出そうでしょう?(笑)
北沢:都心部で?
小山田:ちょっと田舎の方ですよ。
北沢:チェンマイとかあっちの方?
小山田:いや、チェンマイまではいかないですけど、けっこう20人くらいで見たのでたぶん本物だと思うんですけど。自分ひとりだと自信がなくなるけど(笑)。
北沢:変な話だけど、守護霊が自分にいるとしたら何だと思う?
小山田:守護霊? なんだろうね。ぜんぜんわかんない(笑)。
北沢:(笑)そういうオカルティックな方面にはぜんぜん興味なかったっけ?
小山田:自分の守護霊に関してとか?
北沢:うん。
小山田:うーん、あんまわかんないですね。聞いたこともないです。UFOには興味があります。
流行っているものがあんまりよくわからないんで(笑)。いまは流行りも多様化しているじゃないですか。
■小山田さんは、普通に新譜とか聴かれるんですか?
小山田:うーん、ちょいちょいですね。
■最近は何かチェックされた新譜はありますか?
小山田:最近……何かチェックしたかな。名前が最近覚えられないです(笑)。
■(笑)。それは再発とかじゃなくて新しい人の名前ですか?
小山田:新しい人の。新譜でもけっこうダウンロードで買ったりすると、コピペしてポンってやって名前を覚えないパターンが多くて。
北沢:気にしなくなっちゃうんだ。
小山田:うん。ぜんぜん気にしなくなっちゃうね。でも昔に比べたらあんまり買わないですね。まぁ、ちょいちょい聴いてるけど。
■買われるものに関しては、どういうタイミングで「これがほしい」って思うんですか?
小山田:ネットを見ていて、とかユーチューブを見ていて「あっ、いいな」って思ったものとか。
■じゃあ、巷でクラウト・ロックがリヴァイヴァルしているとか、インダストリアルがリヴァイヴァルしているとか、あるいはエイフェックス・ツインが昨年大復活したり、フライング・ロータスの存在感もジャンル横断的に大きかったとか、そういうようなことは感じていますか?
小山田:フライング・ロータスは、最初のやつは聴いた。去年出したやつは聴いてない。
■そうなんですか。去年のは、ちょっとキング・クリムゾンというか、プログレっぽくなっていたりもするんですけど、いま挙げたようなものの全部の要素が今回の『攻殻機動隊 新劇場版』のサントラから感じとれるんですよね。小山田さんはたぶん絶対に意識されていないでしょうし、わざわざ追ってもいらっしゃらないとは思うんですが、全トラック中にごく自然にトレンドが溶け込んでいる感じがして、すごいなぁと。
小山田:あっ、たしかにクリムゾンっぽいのはちょっとあるかもね(笑)。
北沢:あるある。あとインダストリアルっぽいのもある。
小山田:うん、インダストリアルっぽいのもあるね。
■エイフェックス・ツインっぽいのもありますよね。
小山田:あっ、エイフェックスっぽいのもあるかもね。
■そういう時流みたいなことって今作を作るうえで意識されてたんですか?
小山田:流行っているものがあんまりよくわからないんで(笑)。いまは流行りも多様化しているじゃないですか。
■それはありますね。今月何を聴けばいいかなんて、昔とちがって共有できない事柄ですよね。
小山田:うん。わかんないじゃん。自分のなかの流行りはなんとなくあるけど。いま、何が流行ってんだろう? わかんないや。インダストリアルも流行ってんの?
北沢:まぁ、密かにそういう潮流はあるよね。
インダストリアルと『攻殻機動隊』の親和性はけっこうある気がする。マシーンと(融合する)未来感みたいな。
小山田:どういうの? TG(スロッピング・グリッスル)みたいなの?
■なかにはありますよ。話し出すと長いですが……。
北沢:シューゲイザーとチルウェイヴとドリーム・ポップの行末に、インダストリアルがどーっと流れ込んできた感じがする。
■あとテクノも最近は聴こえてくるんですけど、そういうものが結びついている気がしますね。
北沢:ベース・ミュージック隆盛の反面、ここのところずっとふわふわしてる音が来てたけど、さすがに甘口に飽きたのか少し尖った音の方に流れが変わってる気がする。
小山田:インダストリアルとかは昔は聴いていたし、クリムゾンとかはそんなには聴いていないけど、エイドリアン・ブリューが入ってからのクリムゾンは好きで。
北沢:エイドリアン・ブリューって、小山田くんっぽいよね。音の遊び方、トリッキーなギターのフレージングとかユーモアのセンスが。
小山田:その前はあんまり聴かないんだけど、『ディシプリン』三部作くらいが好き。インダストリアルと『攻殻機動隊』の親和性はけっこうある気がする。マシーンと(融合する)未来感みたいな。
北沢:あるね。このサントラにも破裂音とかけっこう入ってるし。
■クリムゾンみたいな要素がいまをときめくアーティストからふと聴こえてくる、その理由については意識されてないとしても、それが時代の差し色だったのは間違いないと思うんですね。そんな感性が自然に入っているところが、いま現在の新譜としてもすごいな、って思ったんですけど。そのあたりの手応えはどうですか?
小山田:もちろんこれは『攻殻機動隊』のサウンドトラックなんだけど、それと切り離してもアルバムとして聴けるものに構成したいと思っていて。単に劇伴の曲を並べているだけじゃなくて、アルバム用にリサイズしたり、ミックスしたりしてる曲もあったり、これに入っていない曲もたくさんあったりして、そのなかからアルバムとして聴けるようなエディットや選曲をしてるんだよね。
世界観が統一されているのは、もちろん作品の映像があってこそなんだけど、自分が自由に作りたいものを作るとなると、もうちょっと多面的で、興味も移りがちになって……、ここまでひとつのトーンで作品を作ることって、ひとりでは難しいのね。だけど、依頼があって限定された条件のなかでやるからこそ、こういうわりと世界観が統一されたアルバムができたんだなって思う。それが自分のなかではよかった。自分の作品だとやりたいことがいろいろ出てきちゃったりするんだけど、必ずしもそれがいいことじゃないなっていうか(笑)。
もちろんこれは『攻殻機動隊』のサウンドトラックなんだけど、それと切り離してもアルバムとして聴けるものに構成したいと思っていて。
北沢:それは、プロデューサーとしての小山田くんがそう思うってこと?
小山田:うん。まぁそうだね。今回やってみて思ったんだけど、そういう限定された条件で作ることによってしか生まれない作品っていうものもあるな、って。
北沢:『攻殻機動隊』のシリーズで、小山田くんが自分をヴォーカリストとして起用しないのは、自身のソロ作品と区別するため?
小山田:区別するためっていうわけじゃないんだけど。(しばし黙考して)まぁ、それもちょっとはあるかもね。なんか、自分とコーネリアスとその他の作品の境界線が、自分でもよくわからなくなってきていて(笑)。
北沢:溶けてきているよね(笑)。だんだん交じり合ってきたような。
小山田:何がどうなっているのか自分でもわからなくなってきていて、果たしてこれをコーネリアスと言っていいのか、小山田圭吾の作品なのか、それもよくわからない。でもそれを区別するとしたら自分の歌だってことは、あるといえばある。あと、あんまり自分の歌に責任が持てないっていうか(笑)。自分が歌うことはいつでもできるし、こういう機会がせっかくあるなら、いままでコラボレーションしてきた人とまたやるのもいいかなっていう。
北沢:たしかに、そういう人たちがサントラの一部として自然にハマっているからね。前に青葉市子さんとやった“外は戦場だよ”(※「border.2」エンディング・テーマ)は、本当にぞっとするような怖い歌詞だと思うけど、それが彼女のえもいわれぬクワイエット・ヴォイスで歌われると、よりリアリティが増すとも言えるし、聴いている自分も当事者になったような感覚が伝わってくる。青葉さんならではの不思議な憑依感というか。これはたしかに他の人には歌えない、演奏できないような曲だと、一度聴くとそう思ってしまうね。
■青葉さんはじめ、いろんな女性ヴォーカリストが歌っておられますけれども、今回の坂本真綾さんは、歌い手として、あるいは素材として、どういう存在でしたか? 声優さんということは意識されましたか?
小山田:別に、いつも通りに作っていたんですけど。すごく歌が上手で、クセのない良い声だよね。すごくやりやすかったですよ。女優さんだからといっても、むちゃくちゃ強い個性があるっていう感じでもなくて、わりと水みたいにいろんなものに変われる部分もあって。歌録りは非常に速かったですね。
■では、アプローチとしては他の女性ヴォーカルと変わることなく?
小山田:うん。ぜんぜん。
■声を純粋に音として捉えている部分もあると思うんですね。それぞれの歌い手さんにもそういう意味でのちがいがあると思うんですけど、曲をつくる上で意識せざるを得ない差はなかったですか?
小山田:えーっと、歌い手さんに合わせて作るっていうこともあんまりなくて。それよりも楽曲に合わせるというか。ただ、salyu × salyuに関してはわりと歌をたくさん使ったり、コーラスだとか声を組み替えたりすることはこれまでもやってきたことだったんだけど、今回も(坂本真綾さんに)そういうことをやってみたりだとか。(青葉)市子ちゃんのときは、逆にそういうことはやらないとか。
北沢:青葉さんに関しては、彼女が自分で詞や曲を書いて歌うシンガー・ソングライターであるというところを尊重しようという気持ちがあるのかな?
小山田:市子ちゃんだったら、基本はギターと歌だけで成立するような世界をやってて、コーラスを重ねたりすることもあんまりなく、さらっとひと筆書きみたいなメロディが合うかなとか。Salyuの場合はコーラスとかもやるし、普通の一本の線みたいな歌も歌えるし、歌に特化した人だから、いろんなアプローチができると思う。真綾さんの、とくに“まだうごく”とかはシリーズ最期の劇場版だったので、スケール感のある歌ものをやって、彼女の声の質感みたいなものがちゃんと聴けるといいかな、と思って作った。
歌い手さんの条件によって変わることは、それくらいの意味ではあるけど、まぁそんなにはないと言えばない、というか。その時々の映画の内容によってだったり、いろんな条件が重なってこういう結果になっていると思う。
取材・文:北沢夏音(2015年6月18日)