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interview with Hocori

interview with Hocori

めくるめく“トレンディ”

──Hocori(桃野陽介、関根卓史)、インタヴュー

橋元優歩    Aug 18,2015 UP

『ぷよぷよ』ってゲームあるじゃないですか? (中略)ある程度ざーっと積んで一気に消すっていう方法があって、なんか桃野くんの歌詞はそれをすごく感じるんですよ(笑)。──感覚的に作ったあとにつじつまをあわせることができるんだと思うんだよね。 (関根)

フラットに桃野さんの歌詞ってどう思いますか?

関根:僕は本当にすごいと思います。僕にとっては出どころがわからない作りが多いというか。僕も僕のバンドで歌詞は作るんですけどね。なんというか、桃野くん自身の体の中から生まれてきているんだけど、やたらとバラエティがあるというか。そういう印象がすごくあって。ひとつの絵だけを見て作っているような言葉ではないなと思っていて、それは僕にとっては謎です(笑)。

ひとつ感じるのが、歌いやすい、歌って気持ちいい、みたいなところからことばが発せられている感触がするんですけども。それでいて意味とか景色みたいなものがばらけないのがすごいなと思います。やっぱり歌って気持ちいいものを歌いたいです?

桃野:音の響きの気持ちよさとかで歌詞を書いていくんですけど、やっぱりどうしても日本語って、洋楽のメロディにハマらないなっていつも思っていたんですよ。そういう意味での試行錯誤の結果というか。今回は曲ごとにストーリーというか、ラヴ・ソングにしようとかって風になって。だからなのか、二人称の歌が多いかもしれないですね。

関根:ぜんぜん関係ないんですけど、『ぷよぷよ』ってゲームあるじゃないですか? あれっていろんなやり方があると思うんですけど、ある程度ざーっと積んで一気に消すっていう方法があって、なんか桃野くんの歌詞はそれをすごく感じるんですよ(笑)。

なんか、すごい的確かも。

関根;基本通りの連鎖を組んでいく場合は、一段消してトントントンって消えるようになっているんですけど、桃野くんのHocoriでの歌詞って、どーんっと積んだときに最後にポンってやると、ダダダダダダって消える感じがする。だから一見するとよくわからないことが組み合わさっているんだけど、最後に筋が通ったことになっているっていう(笑)。

たしかに微分しても意味がない歌詞なのかもしれないですよね。かつ英語の節回しで適当に日本語を組み合わせましたというのともちがいますよね。ちゃんと普通に日本語だし、でありながら、のばす音が全部「あ」とか「お」とか歌いやすい母音だったりとかね。そういう意味で自分の身体から発想されているのかなという感じもします。

関根:感覚的に作ったあとにつじつまをあわせることができるんだと思うんだよね。

あるいはただ出しただけなのに、つじつまが合っているんだ。

桃野:それってよくも悪くも染みついたもので、考えてそうしたわけではないというか。

すごく秀逸な比喩をいただきましたね(笑)。よくわかっておられるというか。

関根:僕もそういう歌詞がたまにうまく作れるときがあって、自分でも不思議だなと思っていたところがあって、そこをこのプロジェクトでは感じたので。……と、いまふと思ったんだけどね(笑)。

一言で済むんですよ。「24時間火がついているんだ」って言えば。そうなんだけど、ちょっと回りくどく言うとか、しつこいやつが僕は好きで。 (桃野)

今回は完全にお部屋同士のやりとりで?

関根:ほぼそうですね。

じゃあ、いっしょにレコーディングするみたいなタイミングってぜんぜんなかったんですか? 

関根:歌録りのときは一緒にやって、それだけかもしれないですね。

でも作り方としては、関根さんの場合はそっちの方が慣れていらっしゃったりするんじゃないですか?

関根:それはあるかもしれないですね。やり方を決めていたわけではないんですけど、自然とこうなったというか。一緒に楽器を触ってどうとかって感じではなかったですね。

ギターがめっちゃ入っているやつとかありましたよね。

関根:“Lonely Hearts Club”とかはけっこう入れましたよね。

あれ、ギターをやっているのはどちらなんですか?

関根:僕です。

これ暑苦しいですよね? 歌詞とかも。

関根:「ロンリー・ハーツ」とか言っちゃっているもんね。

なにか、ずっと火をつけているでしょう? 目覚めて火をつけて。働いて火をつけて。

桃野:一言で済むんですよ。「24時間火がついているんだ」って言えば。そうなんだけど、ちょっと回りくどく言うとか、しつこいやつが僕は好きで。

クールなラヴ・ソングじゃなくてそうであるところが好きでしたけど。

桃野:そういうしつこさって僕の感覚でいうとトランスするというか。何回も聴いているうちに気持ちよくなってくるみたいな。

ははは! ミニマルというか、リフレインが歌詞にも多いですよね。

桃野:そういう意味では、試みとしては、サビを繰り返し歌うところとか、ループ感とかは、これまでの僕としてはあんまりやっていなかったことかもしれないですね。

この反復性はどちらかというと、関根さんが持ってきたものなんですね。

関根:そうですね。もうこれはやめてひとつにしようとか。

すごく感じるのは、そういうクールさがありながらも、反復できない一回性みたいなものを求めるような熱さがグッとくるんですよね。それってやっぱり、お互いの性質があってこそ出てきたものなんですかね。

桃野:作っている歌詞は、少なくとも僕のなかではけっこう違う感覚があります。

トーフビーツさんのアルバム『ファースト・アルバム』は、ライヴとかパーティーを録っているていで1曲目がはじまるんですけど、その最後に「音楽最高」ってかけ声が入るんですよ。それって言わなくてもわかってるはずのことなのに、なんか、入れなきゃいけないんです。そこに切実さがあって。それから、いまという時は、いまこの一回だけ、みたいな切なさも。
で、Hocoriの場合、音楽そのものへの礼賛とか言及はないんですけど、愛においては一回しかない何かを求めるしつこさみたいなものも感じる(笑)。

その場その場の面白さっていうのがビデオに染み出ていますよ。 (関根)

せっかくだったら他の曲もおうかがいしましょう。やっぱり頭の“God Vibration”は強烈な曲だなと思うんですけど、ミュージック・ビデオも非常に強烈じゃないですか(笑)。それこそミニマルの極地というか、すごくいいですよね。あのアイディアを作っているのはやっぱり関根さんなんですか?

関根:基本はそうです。あのビデオはSLEEPERS FILMで作りました。もちろん、桃野くんとも話しながらではありましたけど、「踊り撮りだよね」という話になって(笑)。いいのがいいなって思っていて。

やっぱり熱くなりきらないミニマル感みたいなのは関根さんなんだろうなと思うんですけど、対してダンサーさんのフィジカル性たるや。

関根:最高ですね。「こういう踊りをしてください」とか指定はしていないので。

じゃあ、もっとアッパーな感じになるかもしれなかった?

関根:なるかもしれなかった(笑)。

桃野:めっちゃ踊れるひとだったかもしれないし。

彼のセンスも凄かったんですね。

関根:いや、彼のセンスが相当凄くて。

桃野:用意したのは白いワイシャツだけだったもんね。

関根:そうそう(笑)。その場その場の面白さっていうのがビデオに染み出ていますよ。

God Vibration / Hocori

そういうことなんでしょうね。舞台は、ただ駐車場の回る機械だけなわけじゃないですか? 非常にシンプルというか、ストリート感があると言えばあるんですけど、どこでもないような。で、何周かして終わるという、典雅なオルゴールかのようなドリーミーさ。あれには本当に脱帽というか素晴らしいなと思ったんですけど。

桃野:脱帽(笑)。オルゴールはありますね。

ヴィンセント・ムーンって、そういうどこにでもないストリート感ってものがあるのかなって思ったんですけど、関根さんは影響を受けていらっしゃると言われてますね。

関根:ヴィンセント・ムーンというひとはストリートでライヴを撮るひとなので、今回の映像で直接は関係ないとは思うんですけど、その感覚というか、その場で起こる音楽的な喜びとか、そういうものを感じたいっていう態度に僕は感動したんです。だから僕の作るビデオも一貫してそういうようなものを期待しているというか。エディットでなんとかするわけではなくて。

あれって、そのまま一発で?

関根:そうです。

だからちょっと息が切れているんですね。

関根:そうです(笑)。最初はあそこの隣で撮っていたんですよ。それで、こっちは回るからこっちでもやってみようって。

じゃあまさにライヴ感のなかから偶然にして必然的に出てきた。

関根:ある程度はみんなで考えていたけど、その先はよくわからないところを楽しもうっていうような。

そういうところに態度が凝縮されているんじゃないかと思います。

恋愛においても、なんでもそうだと思うんですけど、みんな変態性というのは頭のなかにあると思っていて。 (桃野)

関根さんご自身はブログだったかに、“Alien”が僕ら、ということを説明する上で象徴的なんじゃないかというようなことを書かれていたんですけど、私はこの曲がすごく好きで。ウーリッツァーのリフがすごくいいなっていう。

関根:この曲はまずウーリッツァーのリフができて、それで808の音を組んで、じゃあお願いしますって投げて(笑)。

桃野:そうですね。それでメロを。

あのメロはわりとつけてそのままですか。

関根:そうですね。抜き差しとかもたくさんありつつ。

桃野:僕はパンパンに入れちゃうんですよ。自分でも一息でいけないぞっていうくらい字を詰めちゃうんで。

へぇ。出来上がったものからすると意外ですけど。

関根:そこから間引いていって。ホントに不思議なのは、詰め込まれていた言葉を僕が勝手に間引くんですけど、それでも成り立つんですよ。

桃野:そうそう。

関根:それが本当にすごいんですよ。

桃野:そういう意味ではそうかもしれないです。僕、けっこう歌詞をバーっと書いてますけど、必要なのは一行くらいなんです。そこで説明できるんだけど、その余分なところが楽しいというか。

でも本当に言葉も歌も強いじゃないですか? ヴォーカリゼーションも。それがなかったらある種成立してないものでもあるでしょうし。この曲にはこうことばをつけなきゃ、とかってありました?

桃野:うーん、そうですね。

って言われるとそうでもないんですね。

桃野:基本的に僕のイメージでは、アダルトとかアーバンとか、そういうキーワードのなかで作ろうと思った歌詞だったので、その意味ではちょっとナンパな男というか、キザで普段言わないことばを探しましたね。で、それが究極までいくと、“Alien”──エイリアンなんて日常のなかで絶対に出てこないですよね。だからそういう表現をしようと。

もうひとつ感じたのが、わりと生々しい男女の感触があるなというか。セカイ系と呼ばれるものの後、ちょっと古臭くなってしまった男女観……。「君と僕」って言ったところで、その「君」がほとんど自分の延長でしかなかったりとか、なにかと自己完結して引きこもる感じが主流だったと思うんですよね。そうじゃなくて、もっと未知なところにいる女のひと、異性、そういうものを感じさせる表現って、いまはけっこう珍しいのかなって気がしました。
そこは、このミニアルバムがラヴ・ソングとして成り立っているかなり大きい部分かなと思うんですけど。そういったところのセクシュアリティというか、出てくる異性、恋愛の形、そこはどうですか?

桃野:僕の思う恋愛だったりとか経験だったりとか、そういうものだと思いますよね。

月9感だったりとか。

桃野:ああいう、もともと憧れていた恋愛像とかもあるじゃないですか? 最初は喧嘩しているのにだんだんと惹かれ合っていくみたいな。お互い相手がいるのに、なんか惹かれ合っていく感じとか。もともとトレンディ・ドラマの憧れみたいなものもあるから、いざ自分がそういう年齢になったときに、意外と不条理なものも多かったりとか。あと、生々しいものも多かったりするんで。そこで嘘をつきたくないなというところがあるから、リアルだけどちょっと音楽でしかできないようなトリップをすることは考えましたね。

このミニアルバムで歌われているキャラクターとか特徴があるとすればどういったところでしょう? その辺りは客観的に見ている部分があるのではないかなと思うんですが。

関根:やっぱり妄想的なというか、変態的だよね(笑)。

存在しない彼女とかヴァーチャル・アイドルだったりとか、そういうことじゃないんですか?

桃野:まぁそうですよね。僕のなかでは恋愛においても、なんでもそうだと思うんですけど、みんな変態性というのは頭のなかにあると思っていて。で、そういうのを吐き出す場として音楽があって、そういう恋愛という題材があるなと思いますな。

いまは、すべてが並列になり過ぎていて、何に関しても知識自体がさほど意味がなくなっているし。(中略)何かをやろうと思っても、それがやれるってこともわかっちゃっているのが多少あるので、もうちょっと自然に音楽と付き合えているような気がしますね。 (関根)

あと、若手の中ではちょっと大人でいらっしゃるなというか。そこはおふたりが30代というところもあるのかなって。それは20代と30代の音楽環境の差というか、リスナー能力とかも変わるわけじゃないですか? 昔の音楽好きだった同級生が、大人になったらぜんぜん聴いてないみたいな。20代と30代での音楽環境の変化って何かあったりします?

関根:それは本当に変わってますよね。この10年であらゆることが変わった気がする。

桃野:20代の方が闘争心というか、競っている感じがありますよね。音楽を聴くにしても、他のバンドを聴くにしても「先を越されたのか!?」って勝手に思っちゃったりとか。

関根:あと、当時はまだ信じられる先があったような気がしますね。いまは、すべてが並列になり過ぎていて、何に関しても知識自体がさほど意味がなくなっているし。昔は知っていることとかが優位性に繋がっていたんだけど、いまはべつにそこまで……。知っているやつがどこかにいるってことも知っちゃったし。何かをやろうと思っても、それがやれるってこともわかっちゃっているのが多少あるので、いまはもうちょっと自然に音楽と付き合えているような気がしますね。

それって年齢によるものですか? それともiTunes的なものがひと並びにしてしまった話なのか。

関根:うーん、どうなんだろう。この10年で音楽との付き合い方は過激に変わったんじゃないんですかね。僕自身もやっぱり音楽を昔から買っていたけど、買うとしてもデータが増えてますよね。フィジカルで買うものは自分が好きなものしかなくなった気がします。

アップル・ミュージックを前にすると、音楽が聴くものというよりも参照するものに情報の密度を落としているような気もしてきますよね。そういうなかで、だからこそ、アルバムを作ることの意味が解体されているようにも思います。
このミニアルバムは6曲で完成している感じがするんですけれども、今後は、これをアルバムにしていくんですよね?

関根:完成してほっとしたというか。

旧来の音楽産業的な考え方で言えば、ここから先にアルバムがあるんだろうな。それを一体どうやって作っていくんだろうなっていう疑問があるわけなんですけれども。

関根:音楽はいくらでも作れるんですけどね(笑)。

桃野:そうなんですよね。

曲数が溜まればアルバムはできるってことなんですかね。

桃野:できるし、要はお互いに経験を積めば、曲ってものは作れるときに作れると思うんですよ。だからそういう意味での焦りはあんまりないですね。

関根:自然に楽しんで1曲1曲を作っていった結果なので。むしろ全部シングル的な感覚で作っていったというような。

要はお互いに経験を積めば、曲ってものは作れるときに作れると思うんですよ。だからそういう意味での焦りはあんまりないですね。 (桃野)

だとすると、むしろいまの音楽の状況に合っているんじゃないですか?

関根:そうかもしれないです。いまの状況だからやっていることなのかもしれないですね。

ジャケットの意味もぜんぜんちがいますよね。ブックレットもなくて、曲単位で無限に音が存在していて、そのなかで1曲ずつが存在している意味は、いまだから余計に感じられるというのもある気がするんですよ。そういう意味では理想的にワガママなユニットでもあるかもしれませんね。

桃野:このふたりの間では設定みたいなものはありますけど。でも基本的にはこれが納得いかないものだったら、世に出ていなかったと思いますし。

そうすると音楽産業にとっては寒い時代だけど、音楽にとっては豊かで贅沢な時代なのかもしれないですよね。

桃野:本当にそうだと思います。

ゴミがめっちゃ輝いているときもありますから。プライドのようにがっつりしたものが滑稽に見えるときというか。 (桃野)

ところで、Hocoriっていう名前は何なんですか?

桃野:これは僕が付けたいなと思っていたワードなんです。ダストの「ホコリ」と、プライドの「ホコリ」と、両方の意味が音楽にはあるなって思っていて──自分にとって大事でもそれを聴かないひともいるわけで。かといって、死ぬほど好きなひともいるわけで。そういうことっておもしろいことだと思うんですよね。そんなことで明暗が分かれるわけじゃないけど。それを聴くことで判断するっていうところの面白さもあるし。
あと、最近、「日本の誇り」っていうような言葉も耳によく入ってくるので、僕らが「ホコリ」って付けることによって皮肉っぽく感じられるところもあるかもしれないなと。いろんな角度で捉えられることばだなと思って。

ゴミのように輝くもの、みたいな逆説とか。

桃野:それもありますよね。ゴミがめっちゃ輝いているときもありますから。プライドのようにがっつりしたものが滑稽に見えるときというか。だから、「ホコリ」っていうのは、何でもないことばだけど、なんかみんなが勝手に想像して意味を付けるものかなって。

そこにもスタンスが表れていそうですね。音としてはどっちかといえばリッチな音質を目指されているのかなって思うんですけれど──そういうガラクタみたいなローファイ感というのはいたずらに追求されていませんよね。

関根:ただ、ローファイな取り組み方は大事だと思っているので、きれいにトリートメントしすぎないようにしているというか。とはいえリッチに作りたいと思っているので、贅沢な悩みなんですけどね。そこはすごく意識していて、作り過ぎていないけどローファイでもないみたいな。そういうところはつねにあります。それはどっちかというと僕の好みなのかもしれないですけど。

やっぱりそういう面において関根さんも変態なんだと思いますけどね(笑)。

関根:ふたりの変態(笑)。

桃野:どんなグループだよ(笑)。

ローファイな取り組み方は大事だと思っているので、きれいにトリートメントしすぎないようにしているというか。とはいえリッチに作りたいと思っているので、贅沢な悩みなんですけどね。 (関根)

違いますって(笑)。でも、見えないところで、へんなこだわりみたいなものによってすごく彫刻されてトリートメントされている音なんだろうなということを随所に感じますね。聴けば聴くほど感じられる……何度聴くのにも耐えるような。

関根:そうしたいとはいつも思っているので。説明が多くても過剰になるし、編集が多くても過剰になるので、何度も聴けなくなるなと思って。そこはけっこう大事にしたいところですよね。

ある意味、消費感バリバリじゃないですか。ジャケがネオンだし。でもローファイなものへのリスペクトがあると。アナログは出すんでしたっけ?

桃野:アナログ出しそうですか?

出るものかと(笑)。JET SETさんとかに並んでいそう。

関根:サウンド的にはぜんぜん遜色なく作ってると思うので。クラブでも流れてほしいし。お茶の間でも流れてほしいし。それに耐えられるものなんじゃないかとは思っているんですけど。

ほんとに楽しみですよ、次とか、アルバムも。……といいながら、未来は不確定で、できればできたところで出すと。

桃野:未来は常に自由っていう(笑)。フリーダム。

でも、このミニアルバムは夏に出すっていうような狙いはあったんですか?

桃野:それはちょっとあったね。夏に出したいなとか、「トレンディ」みたいなワードのイメージとかで。

トレンディって言えば、夏もそうですけど、冬のトレンディもありますよ。

桃野:クリスマスとかね。

いまはみんなシラけているから、「クリスマスなんて……」みたいなところがあるじゃないですか。

桃野:そうなんですよ。実際にそうやって冷めた目で言っているひとも、いざやってみると楽しいじゃないですか? そういうのはありますよね。なんか斜に構えてるけど。

では、懐かしいほどわくわくするクリスマスのアルバム、楽しみにしていますね!

取材:橋元優歩(2015年8月18日)

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