「S」と一致するもの

真舟とわ - ele-king

 玉虫色の声を持つ人がいる。ルビンの壺のように、青にも金にも見えるあのドレスのように、出会ったときの空気の匂いやちょっとした生活の変化で、いかようにもリスナーに見せる表情が変わる声。幼さも老成もワンプレートで差し出すような、簡単には解せない声。

 さしづめ真舟とわには、その資質がたっぷりと備わっている。カラッとした童謡と虚空に投げるバラードとの間を行ったり来たりしながら、彼女は気丈に歌う。演劇的ですらある。

 YouTubeやSNSにアップされたライヴ映像をいくつか眺めてみると、カフェの店内から芝生の上まで、じつに様々なシチュエーションで歌っていることがわかるだろう。自身のバンドであるヒュードロドンを連れてライヴハウスで歌うこともあれば、縁側でひとり歌うこともある。そのなかで確かなことは、どんな環境でも埋もれることなく──それは比喩的な意味においても、そして音響的な効果においても──真舟とわの声が際立つことだ。決して張り上げる歌唱法ではないものの、フォーク・シンガーとして屹立している声。青葉市子やmei eharaのように、環境に合わせて連動こそはすれど実存は手元から離さない、そうした気高さに真舟とわはリーチしているようにも聴こえる。

 声が環境に合わせて役割を演じるなら、その創造性を解き放つための土台はできるだけ広い方がよい。そこで真舟は「海」という、これまた多義的な舞台を選び、自身の声が持つポテンシャルを双方向的に高める妙策を放った。カメラ割りもシーン設定も、ここでは全てがあなた次第。『海を抱いて眠る』はコンセプト・アルバムであり、そのコンセプト設定もあなたへと開かれているのだ。

 例えば “Eyes” では《海は目の前にあるのさ/いつも君の瞳が閉じているだけさ》という言葉からはじまる。霧笛のようなホーンとともに伸びやかに歌うと、今度はギターのバッキングとストリングスが追いかけてきて、高揚感を煽りながら同じ文言を繰り返す。ここでの「海」で何を見たのか、真舟は言わない。ただ、意味もなくつま先立ちになってしまうような、そんな微かな胸の高鳴りへと自身が吸い込まれる様だけが、2分半の間に描かれていく。

 続く “海のにおい” でも、真舟は《風、呼ぶその先にある声聞こえる?/耳を澄まして》と問いかける。どうやら私たちの目の前に、重大らしいそれはすでにあるらしい。その個別具体的な姿形についてはやはり明言せず、余白のあるオーケストラル・ポップは安寧へと誘う。言葉であれアレンジであれ、全ての要素が真舟の声が導く可能性に耳を傾けているのだ。幽体コミュニケーションズのpayaと歌う “天使はどこに” では夢を跨ぐように、子どもの笑い声が朗らかな “こんにちは今日” ではまるで地球最後の日が到来しているかのように、世界への感動がただ歌われている。

 さらにトーンを落とした後半では、先ほどまで眺めていたはずの海の底に触れて、心象とシンクロするように歌い継いでいく。だからこそアコースティック・ギターのバッキングとトランペットから始まる “birth” が抜けるように響くのだ。ベイルートが『Gallipoli』で描いたような、記憶の外にある港から漕ぎ出す体験。《新しい声はいつの日もどこかで高らかに笑っている》というのは、“海のにおい” で澄ませた耳を寿ぎ、強烈な生命賛歌として海原を渡っていく。

 『海を抱いて眠る』の特設サイトで、真舟とわは「あなたの海を覗かせてください」と尋ねている。彼女にとっての海は自身が生まれ育ったあたたかな瀬戸内海だったらしいが、他にも様々な海があるはずだ。「きっとそれを覗いてみたら海へのイメージはもちろん、その人の生活や性格生き様さえもほんの少し見えてくるような気がする」真舟はそう考える。『海を抱いて眠る』はその想像力へと最大限開かれた作品だ。もしかしたら、ある人にとって「海」は「海」ですらないかもしれない。間違っちゃいない。あなたがそう感じたなら確実にそうだ、決して飛躍しすぎてはいない。好きな場所へと渡っていく自由がここにはある。

heykazma - ele-king

 どんどん活躍の場を広げていっている若手DJのheykazma。その主催パーティ〈yuu.ten〉が、ライヴ・ハウスの月見ル君想フと共同で新企画を始動。「もぎゅるんぱ!」と題して5月3日に開催されることになった。ラッパーのなかむらみなみや徳利、トラックメーカーのimai、そしてビヨンセ研究所などが出演する。詳しくは下記より。

heykazma主催パーティー・yuu.tenとライブハウス・月見ル君想フによる共同企画『もぎゅるんぱ!』が5/3青山 月見ル君想フで開催決定。


アルファ世代の新星DJ・heykazma(ヘイカズマ)が主催する”音に溶ける”をコンセプトにしたパーティー『yuu.ten』と、青山にある文化娯楽施設&ライブハウス『月見ル君想フ』による共同企画『もぎゅるんぱ!』が2026年5月3日に 青山 月見ル君想フで開催決定。

本企画には、日本語詞とオリジナリティ溢れるフロウでトラップ、ダンスホール、クラブトラックを自在に横断する唯一無二のラッパー・「なかむらみなみ」、group_inouとしての活動をはじめ、クラブからライブハウス、大型フェスまで活動の幅を広げ続けるトラックメーカー・「imai」、ユーモアたっぷりに日常やリアルな生活感を織り交ぜたリリックで注目を集めるアーティスト・「徳利」、そしてビヨンセのステージ再現パフォーマンスを主軸に活動する日本で唯一の研究所・「ビヨンセ研究所」によるパフォーマンスなど、4組のライブアクトがラインナップ。

さらに、ジャンルの枠に収まらないプレイで各地のパーティーに名を連ね、独自の存在感を放つ「FELINE」、たぬきがやっているお祭りがコンセプトのイマジナリーパーティ『ぽんぽこ山』を主催するなど、ヘンテコ電子音楽の使い手・「テンテンコ」、月見ル君想フ・ブッキングマネージャーの「中村亮介」、yuu.tenオーガナイザーの「heykazma」がDJとして出演。フライヤーデザインは「Ginji Kimura」が手掛けた。
ここでしか見れない異なるカルチャーが交差し、音楽とパフォーマンスが溶け合う特別な一夜となる。

『もぎゅるんぱ!』イベント詳細
日時: 2026年5月3日(日)18:00-
会場: 青山月見ル君想フ
料金: ADV ¥3,300 / U-25 ¥2,000 / DOOR ¥4,300 (Drink別)
販売: 月見ル君想フ公式website
出演:
[LIVE] なかむらみなみ / imai / 徳利 / ビヨンセ研究所
[DJ] FELINE / テンテンコ / heykazma / 中村亮介
最新情報は公式SNSで随時更新予定。
yuu.ten
Instagram: https://www.instagram.com/melting_yuu.ten
X: https://x.com/melting_yuuten

青山 月見ル君想フ
Instagram: https://www.instagram.com/moonromantic_jp/
X: https://x.com/moonromantic

Leila Bordreuil + Kali Malone - ele-king

 カリ・マローンとレイラ・ボルドルイユによる『Music for Intersecting Planes』は、両者にとって初の本格的なデュオ作品であり、ドローン(持続音)とミニマル(反復)というふたつの音楽的語法の現在地を示す重要な一作である。本作『Music for Intersecting Planes』は、スティーヴン・オマリー[*編注1]主宰のレーベルにして、現代実験音楽の重要な拠点ともいえる〈Ideologic Organ〉からリリースされた
 『Music for Intersecting Planes』の核は、持続音同士が重なり合い、交差し、ときに軋みや衝突を伴いながら推移していくそのプロセスにある。いずれの音もどこか硬質な質感を帯びているが、そこから絶えず立ち現れる微細な「揺らぎ」が、結果として1960年代後半のサイケデリックな響きを想起させもする。

 まず初めに、カリ・マローンとレイラ・ボルドルイユの経歴を簡単に整理しておきたい。カリ・マローンはアメリカ出身で、現在はストックホルムを拠点に活動する作曲家/オルガニストである[*編注2]。純正律に基づく持続音(ドローン)の探求をおこない、現代「ドローン音楽」を代表する存在となった。代表作『The Sacrificial Code』(〈iDEAL Recordings〉/2019)では、教会オルガンと建築空間の残響を統合し、音響を時間ではなく空間として提示する方法を確立した。その後も『Living Torch』(〈Portraits GRM〉/2022)では金管アンサンブルを導入した。さらに『Does Spring Hide Its Joy』(〈Ideologic Organ〉/2023)では長時間の持続音の中で音色や音程の変化を極限まで引き延ばし、『All Life Long』(〈Ideologic Organ〉/2024)では、旋律的な要素とドローンを見事に交錯させるなど、一貫して「音の持続(ドローン)を構造化する」実践を続けている。
 加えて、本作『Music for Intersecting Planes』に先立つ重要な流れとして、カリ・マローンと実験音楽集団コイルのドリュー・マクドウォールによる『Magnetism』(〈Ideologic Organ〉/2025)も紹介しておきたい。『Magnetism』は持続音と電磁的な揺らぎが織りなす、緊張と静謐の均衡点を探る作品であった。マローンのミニマルなドローンに、マクドウォールの電子音響が干渉し、音は固定されず微細に変容し続ける。時間の流れは線形ではなく、場のように立ち現れ、聴取者を包み込む。両者の美学が拮抗しつつ融合した、精緻で物理的な音響を展開していた。ここでもマローンは音響の干渉をテーマに、持続音と音響空間の構築と生成を追求していたように思える。
 2026年のカリ・マローンは、ピュース・マリーとともに〈XKATEDRAL〉から発表されたスティーヴン・オマリーの新作『Spheres Collapser』にも参加している。同作もまたパイプオルガンによるドローン作品であり、『Music for Intersecting Planes』と併せて聴くことで、持続音がもたらす知覚の変容を、より明確に捉えることができるだろう。
 一方のレイラ・ボルドルイユは、NYを活動拠点とするチェリスト[*編注3]。チェロという伝統的な楽器を出発点としながら、その役割/音響を拡張してきた音楽家にして演奏家である。『Headflush』(〈Catch Wave Ltd.〉/2019)では増幅とフィードバックによってチェロを振動体として扱い、『Not An Elegy』(〈Boomkat Editions〉/2021)では環境音を取り込むことで演奏と空間の境界を曖昧にした。さらに『1991, Summer, Huntington Garage Fire』(〈Hanson Records〉/2024)では記録音とノイズ的演奏を衝突させ、音と記憶の関係を浮かび上がらせている。

 これらに共通するのは、音を固定されたエレメントとしてではなく、ノイズや環境音などさまざまな音との相互作用として捉える姿勢である。本作『Music for Intersecting Planes』は、これまでの流れを引き継ぎながらも、さらに踏み込んだ内容となっている。音は空間のなかでいくつもの層となって重なり合い、互いに影響し合いながら変化していく。言い換えれば、ふたつの音が異なる条件のもとで同時に交わり続けている状態である。これは、旋律や声部の関係によって構築される従来のポリフォニーとは異なり、音同士の重なり方やずれ、その関係そのものを作曲の単位として扱う試みである。
 『Music for Intersecting Planes』の録音はスイスのラ・トゥール=ド=ペイユ寺院でおこなわれた。エレン・アークブロの傑作『Nightclouds』(2025)の録音やフェリシア・アトキンソンのライヴなどがおこなわれた場所でもある。石造建築特有の長い残響によって音の減衰が引き延ばされ、過去の音と現在の音が重なり合う瞬間が訪れる場所だ。
 編成はチェロ、パイプオルガン、サイン波。劇的な強弱変化はほとんどなく、音のわずかな揺れが持続的に展開される。そのためリスナーは全体構造ではなく、微細な変化に意識を向けることになる。顕微鏡を覗き込み、音の変化を観察するように。ここにおいて時間は直線的に進むのではなく、空間のなかに留まり、層として知覚されていくのだ。
 録音はシングルテイクに近い方法でおこなわれ、編集による時間操作は極力排除されている。この手法によって、演奏の連続性や偶発性がそのまま作品に定着し、音響が生成される過程そのものが提示されることになった。
 収録された4曲は、それぞれ異なる音響の状態を示している。まず1曲目 “Intersecting Planes I” では、オルガンのドローンの上にチェロの持続音が重なり、わずかなピッチの揺れによって内部に細かな動きが生まれ、軋むような音が空間のなかで生成されている。まるで持続音をフィールド・レコーディングしたようなサウンドなのだ。この1曲でアルバム全体のトーンを見事に表現している。2曲目 “Intersecting Planes II” では高音と低音が交錯し、音同士の衝突や干渉がより明確に知覚される。ここでは「演奏された音」よりも「生成された音響」が前面に現れる。3曲目 “Pilots in The Night” は最も静的で、音が重なりながらゆっくりと変化していく。最終曲 “Endless Dance of Eternal Joy” は約1分30秒と短く、アルバム中で唯一、旋律的な要素が現れるが、反復ののち唐突に終わる。

 アルバム全体を通して聴くと、ふたりの音楽性の変化がはっきりと見えてくる。マローンは、従来の厳密な和声構造をやや緩め、より粗く、物質感のある音へと踏み出している。一方、ボルドルイユはこれまでのノイズ志向から距離を取り、持続音へと接近している。つまり両者とも「ノイズ」へと接近している。そこでは音同士の干渉によって持続音が生成され続け、その響きは空間や聴き手の感覚に深く刻み込まれていく。
 こうした変化は、音そのものの捉え方の転換へとつながっている。本作においてふたりは、音を「演奏する」や「聴く」という対象としてではなく、「観測する」対象として扱っているように思える。つまり音響の聴取から音響の観測へ。その点において、本作は現代エクスペリメンタル・ミュージックにおける重要なアルバムのひとつといえよう。

編注1 セルフタイトルの新作も話題のシアトルのドローン・メタル・バンド、サン・O)))としての活動でも広く知られている、2000年代以降のドローンの重要人物。
編注2 スティーヴン・オマリーのパートナーでもある。
編注3 アーロン・ディロウェイのレーベル〈Hanson Records〉からもリリースしているほか、ローレル・ヘイローとのコラボレイトしたり、アニマル・コレクティヴやジェイムズ・K作品に参加したりもしている。

Jane-B - ele-king

 anonymassやYMOのサポート、METAFIVEなどでの活動で知られる音楽家、ゴンドウトモヒコ。最近はゲーム・クリエイターにしてデザイナー、音楽家でもある佐藤理との共作を送り出している彼だけど、そんなゴンドウの「別の時間線を生きてきた人格」だというジェンビー(Jane-B)がアルバムをリリースしている。題して『Things That Don't Quite Stay』。歌モノだ。
 ジェンビーは、「オクラホマ州のどこでもない場所のあいだにいる2人組」とのことで、ゴンドウが生まれたころより家族から呼ばれている愛称でもあるという。なにはともあれ、まずはこちらから聴いてみよう。

https://linkco.re/3DACRFyS?lang=ja

Introduction to P-VINE CLASSICS 50 - ele-king

2026年3月の3枚

Penny Goodwin
Portrait Of A Gemini

Pヴァイン

JazzSoul

https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-8313cb

ミルウォーキーのジャズ・シンガー、ペニー・グッドウィンの人気作。1973年から1974年にかけ録音、プライヴェート・レーベルからのリリースだったため2,000枚しかプレスされなかったという幻の1枚。ギル・スコット・ヘロン “Lady Day & John Coltrane” やマーヴィン・ゲイ “What’s Going On” のカヴァーは必聴。

Naked Artz
Penetration

Pヴァイン

Hip Hop

https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-8307

90年代半ば、『悪名』『続悪名』『Hey! Young World』といったコンピレーションへの参加やシングル/EPのリリースなどにより注目を集めたグループのデビュー・アルバム。メンバーはMili、K-ON、DJ TONK、DJ SAS。心地いいサンプリング・サウンドとMC陣による軽妙な掛け合いがみごとマッチ。RHYMESTERやRAPPAGARIYAなどゲストにも注目だ。

NRQ
Retronym

Pヴァイン

JazzAlternativeFolk

https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-8309

「ニュー・レジデンシャル・クォーターズ」とは新興住宅地のこと。吉田悠樹(二胡)、牧野琢磨(ギター)、服部将典(コントラバス)、中尾勘二(管楽器、ドラム)からバンドが2018年に発表した4作目。ブルーズ、カントリーからジャズ、ラテンまで文字どおりさまざまな音楽を吸収・消化、唯一無二の音楽を響かせる。パンデミック期に名をあげた “在宅ワルツ” も収録。

2026年2月の1枚

Positive Force
Positive Force feat. Denise Vallin

Pヴァイン

SoulAOR

https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-6955cw

ギタリストのスティーヴ・ラッセルを中心に結成された西海岸のバンド、ポジティヴ・フォース。彼らが1983年に残した自主制作盤にして唯一のアルバム、そのクオリティの高さからソウル/AORコレクターたちを魅了しつづけてきた入手困難な1枚が、カラー・ヴァイナルで蘇った。まずは冒頭 “You Told Me You Loved Me” を聴いてみて。

2026年1月の2枚

MS CRU
帝都崩壊

Pヴァイン

Hip Hop

https://p-vine.lnk.to/qAsYHEBB

MSC
MATADOR

Pヴァイン

Hip Hop

https://p-vine.lnk.to/XoBDhVKf

新宿を拠点に活動していたMSCは、KAN(漢 a.k.a. GAMI)、TA-BOO(TABOO1)、PRIMAL、O2、GO a.k.a. G-PRINCEから成るグループ。2000年から活動をはじめ、コンピ『homebrewer's vol.1』への参加などを経て徐々に注目を集めていき、2002年にMS CRU名義でファーストEP「帝都崩壊」を発表。勢いそのままに翌年、満を持してのファースト・アルバム『MATADOR』(2003)が放たれる。彼らのダークなサウンドと生々しいリリックは、「構造改革」に沸く当時の日本の裏、ストリートというもうひとつの風景を浮かび上がらせていた。

2025年12月の1枚

キング・ギドラ
空からの力:30周年記念エディション

Pヴァイン

Hip Hop

https://p-vine.lnk.to/ii7WKV

「P-VINE CLASSICS 50」第1弾として12月にリリースされたのが、2025年にリリース30周年を迎えたキング・ギドラ『空からの力』の特別エディションだ。Kダブシャイン、Zeebra、DJ OASISからなるトリオのこのデビュー・アルバムは、日本語の押韻(ライミング)の可能性を大きく広げた1枚。重量盤LPとカセットテープの2フォーマットがすでに発売中、配信もされているので、チェックしておきたい。

MODE - ele-king

 一昨年、スティル・ハウス・プランツを招聘し、リキッドルームでそのすばらしいライヴを提供したMODEが、来る6月、今度はモイン(Moin)を呼ぶ。
 モインは、かのレイム(Raime)を母体にしたロック・バンドで、簡単に言えば、レイム+ヴァレンティーナ・マガレッティ(Valentina Magaletti)で構成されるロック・バンドである。スティル・ハウス・プランツ同様に、ロック・サウンドを更新させようとする点において、ポスト・パンク的な感性/実験性を持っている。つまり、ディス・ヒートやワイアーたちの子孫だと言える。
 ヴァレンティーナ・マガレッティは、ここ数年のキーパーソンのひとりで、最近ではNídia & Valentina名義のアルバムもあったし、昨年は日野浩志郎との共作アルバムを出しているわけだが(レヴューしようと何度も聴いて、しかし書けなかった一枚)、goatの出演もある。
 これは、楽しみです!

開催日時:2026年6月6日(土) OPEN 17:30 / START 18:30
会場:LIQUIDROOM(東京都渋谷区東3-16-6 / MAP)
チケット料金 :スタンディング ¥8,000(税込・ドリンクチャージ別)[ZAIKOにて販売中]
出演者:Moin / goat

Protest Music Special - ele-king

 世界でもっとも乗降者数の多い新宿駅のすぐ目の前で、昨日実施された反戦パーティ「DROP BASS NOT BOMBS」。DJ Quietstorm(桑田つとむ名義)をはじめとするDJたちによる、すばらしきハウスの祝宴。まるでアンダーグラウンドのクラブをまるごと地上に強制召喚したかのような……あの “Strings of Life” の興奮はひと晩経ったいまもなお胸の奥で尾を引いている。
 先日のGEZANによる武道館での公演もアツかった。問題は山積みだけれど、いまカウンターカルチャーは盛り返している。勇気ある彼らの声に耳を傾けていると、まだまだ世の中捨てたもんじゃないという気になってくる。

 というわけで本日3月30日、『別冊ele-king 音楽が世界を変える──プロテスト・ミュージック・スペシャル』発売です。GEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーやProtest Raveの創始者、Masr89とMiru Shinodaをはじめ、シンガーソングライターの寺尾紗穂、ラッパーのダースレイダー、新世代の春ねむりやDANNY JINといったアーティストたちがそれぞれのことばで力強く語ってくれています。独立オンライン・メディア『ポリタスTV』の津田大介、日本におけるバンクシー研究の第一人者にして『ストリートの思想』の著者でもある毛利嘉孝のような識者の方々にも話を聞きました。この困難な時代をどう生きていくべきか、きっとそのヒントが得られるはずです。
 はじめましょう、ここから。よりよき未来に向けて。

目次
世界を変える音楽の力(野田努)

[インタヴュー]
Mars89Miru Shinoda 低音で空間を制圧する──Protest Raveのこれまでとこれから(小林拓音/野田祐一郎)
寺尾紗穂 ガラッと変わってしまった世界で、それでも歌いつづける(二木信/川島悠輝)
津田大介 社会全体が不感症になっているいまこそ音楽の力が必要だ(二木信/河西遼)
マヒトゥ・ザ・ピーポー 俺はすごく面白いですね、この流れはすべて、試されてるなと思う(野田努+小林拓音/野田祐一郎)
ダースレイダー 乱世にこそ輝くヒップホップ(二木信/河西遼)
毛利嘉孝 『ストリートの思想』の著者が俯瞰するここ20年の日本の変化(二木信+小林拓音/小原泰広)
春ねむり 沈黙しない音楽(野中モモ)
DANNY JIN そのラップは多くの人びとに勇気を与える(二木信/河西遼)

[コラム]
一声二節三臓のちから──日本の大衆歌が育んできた豊かな想像力(中西レモン)
橋の下でうごめく、新たな自治空間──「橋の下世界音楽祭」の挑戦(大石始)
ECDの軌跡──『失点 in the park』に刻まれた選択と孤独(高久大輝)
2003年、反戦サウンドデモの思い出(水越真紀)
いま台湾から世界が変わりはじめている──台北レイヴ・カルチャーの一側面、〈Urban Legend 1.0〉とSssound Without Borders(二木信)

[特別インタヴュー]
ニーキャップ 彼らがアイルランド語でラップする理由 (イアン・F・マーティン/竹澤彩子)

プロフィール

菊判220×148/208頁
装丁:大倉真一郎+安藤紫野
表紙写真:野田祐一郎

Vol.5:弥生˚⟡˖ ࣪ ひとりごつ✌️ - ele-king

Hello Hello! hey hey! heykazmaですッ!!
みなさんいかがお過ごしでしょうか?

今回はひとりごとと音楽の紹介とか書いていこうと思いますヨ. • ̟ ⊹. ˖
そんなわけでね、ついこないだ仙台から上京して一年経ちました〜!
この一年を思い返してみたんですけど、3月に上京して、4月に今の運営メンバーに出会って、半年もしないうちにこの連載のお話をもらったりと、東京に来てから本当に嬉しい出来事ばかりでした。

その一方で、これからもDJを続けていくためにはもっとこうしないとな〜とか、ここは反省だな〜とか思うことも多々あったンゴ。まだまだやれることがいっぱいあるし、もっと己かまして、活動を楽しく続けていけたらいいなと思っていますょぉぉ!✧ *・゚.

最近は友達とご飯に行く余裕もまた出てきて、なかむらみなみ校長とFellsius教授とUtaeち、蕗といっしょに渋谷にバーニャカウダ食べに行ったりねっっ。
楽しい時間ってかけがえないよ、まじで!偶然揃った奇跡のメンツなんです。
あとは野菜からしか得られないパワー‼️ってまじで絶対あるよね、そういう学びがあった日!要するに超美味しかったって意味。


まあそんな感じで(どういう感じかな❔わロタ)、最近聴いてる音楽たちをみなさまにシェアハピしますよぉ〜ん。⁠:゚⭑⁠:⁠。

小松成彰 / 子供たちへ

https://ultravybe.lnk.to/ttc
私の企画にも出演してくださってる(いつもありがとう)仲良し魔女・小松成彰氏の、先月リリースされた新曲でございます˚*.✩
小松氏のギターと歌は本当に人の心に大きな力を与えてくれるし、勇気をくれる音だなと思います。エネルギーでしかないんですよ。とてもストレートな構成なんだけど、気づいたらぐっと引き込まれてしまうというか、その場の空気をスムーズに変える力がある。本当にすごい表現者だなといつも感じます。
本物ってすごいな、と改めて思わされた。ほんとこの人から目が離せない。でも光ってて眩しい。ほんとずるいよ!₊˚✩彡

lIlI / ʌnˈhɪndʒd! (feat. Usnow)

https://linkco.re/cfYPy7rH
lIlIちゃん!あっしの推し!まじ神!天才˚⟡˖ ࣪
1年ぶりのシングルリリース、非常にありがたすぎるし、本当に待ってましたという気持ちでしかないよーーーー• ⊹ * . ⋆ ̟ .
lIlIちゃんの書く歌詞ってまじ半端じゃなくて、毎回ちゃんと心に寄り添ってくれる感じがすごい。無理に励ますわけでもなくて、でもちゃんと隣にいてくれるみたいな言葉で、本当にありがたい存在だなと思う。聴くたびに、ああ分かってくれてる人いるなって思える。トラックもすごくかっこよくて、音の鳴り方が本当に気持ちいいし、とてもフロア映えしそう♪ まじで⎳ℴ♡⎷ ℯ

yuuri / Live at Första (2026/03/06)

https://soundcloud.com/6mhtscoknngw/live-at-foersta-2026-03-06
先日仙台でDJをしたときに、MACHINE LIVEで共演してたyuuri氏のLive音源!
東北大学のオーディオ研究部としても活動しているyuuri a.k.a para氏ですが、最近ではBandcampで音源集も積極的にリリースしていて、私もここ最近かなりの頻度でDJでプレイしております。あと音楽だけじゃなくて人柄も最高!
他にも仙台のCLUB SHAFTで「exp」というパーティーもDJのrikuto氏(彼のプレイも超最高)とオーガナイズされています。次回は4/4にCOMPUMAさんをゲストにブッキングして開催するらしいですので、お近くの皆様はぜひに⋆⭒˚。⋆

以上、おすすめシェアハピコーナーでした♡

ていうかさ、MACHINE LIVEっていいですよねーーー。
私もずっとやりたいな!!と思っていて、ちょっとずつ機材揃えてるんだけど、結果全然動けていませんわ。
2026年中に動きたいなと思っている!というかここに書いちゃったので動くしかないかもしれん ^ ^ 頑張る!
てことで急にお知らせ!!
5/3に私が主催のパーティー「yuu.ten」と、青山のライヴハウス・月見ル君想フとのコラボパーティー『もぎゅるんぱ!』を開催することになりました⟡₊˚⊹♡
かなり気合い入ってます!!!!ばちばち楽しい日です!!!!
詳細は4/1に解禁予定ですので、皆様超絶ご期待くださいな!
絶対に来てください!ほんとに!お願いします!

あとねそうそう、
先日NTS Radioのfoodmanのmonthly枠にてDJ mixを提供させていただきました࣪⊹

2月にリリースしたEP「15」の世界観を広げたアッパーなmixに仕上がっています⊹܀˙
前半30分がfoodmanっち、後半30分が私のmixになっておりますので、絶対絶対要チェックでお願いします!!!

最後に!!!
ここ最近の世の中まじしんどすぎワロタ(真顔)状態ですが、ニュースを見てても本当に笑えないことばかりで、なんというか、ちゃんと怒ったり、ちゃんと考えたりしないといけないなって思うことが前よりすごく増えました。移民や難民の排除、マイノリティの権利の否定、戦争や暴力が当たり前みたいに進んでいく空気を見ていると、無関係ではいられないなと強く感じます。

融解日記 vol.3でもこの話には触れたりしましたが、もともとダンスミュージックって、異なる文化や背景を持った人たちが交わる場所から生まれてきた音楽だし、だからこそ「排除とか差別とかとは真逆のところにあるもの」だと思っています。

自分が現場に立ったり、音楽を流したり、企画をやったりするのも、小さいことかもしれないけど、その空気をちゃんと守りたいからなんだろうなと最近すごく思う。

上京して一年、嬉しいこともたくさんあったけど、その分ちゃんと自分がどうやって続けていくのかも考えさせられた一年でした。これからも己かまして、でもひとりじゃなくて、連帯しながら、もっと動いていきます!☆≡。゚.

というわけで、またどこかでお会いしましょう₊♪‧˚* またね!Love Foreverだょ〜!

3月のジャズ - ele-king

 シャバカ・ハッチングスは2022年の『Afrikan Culture』以来、シャバカ名義となるソロ・アルバムをリリースしてきている。『Afrikan Culture』と次作の『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』(2024年)では、これまでのメイン楽器だったサックスではなくクラリネットやフルート、さらに尺八や南米のケーナ、アフリカのムビラなどを用い、原初的で素朴な音色を生み出していた。ドラムやパーカッションなどほかのプレイヤーもプリミティヴでミニマルな演奏を心掛け、静穏として瞑想的な作品となっていく。特にカルロス・ニーニョ、ブランディ・ヤンガー、ミゲル・アットウッド・ファーガソン、エスペランザ・スポールディング、フローティング・ポインツアンドレ・3000らが参加した『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』に顕著だが、アフリカ音楽由来のスピリチュアル・ジャズとアンビエントの狭間をさまようような作品と位置づけられるだろう。この間、彼はサンズ・オブ・ケメットコメット・イズ・カミングなどほかのプロジェクトを解散、ないしは休止し、自身のソロ活動にフォーカスしてきた。2023年末からサックスの演奏を止めたシャバカは、その間にいろいろな楽器をマスターし、またエレクトロニクスを交えたプロダクションやミキシング面も充実させ、それが『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』へと繋がった。『Afrikan Culture』と『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』は、いろいろな道筋をたどってきた中でのシャバカの到達点だったと言える。

Shabaka
Of The Earth

Shabaka

 『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』から2年ぶりの新作『Of The Earth』は、過去2作をリリースした〈インパルス〉を離れ、自身で設立した〈シャバカ・レコーズ.〉からのリリースとなる。レコード会社からの制約は受けずに全く自由な立場で制作を行い、作曲、演奏、プロダクション、ミックスとすべてひとりで完結している。『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』で共演したアンドレ・3000から、恐れや気負いなく誠実に新たな次元を探求していく姿勢に刺激を受け、またシャバカが初めて買ったCDというディアンジェロの『Brown Sugar』(1995年)から、セルフ・プロデュース/セルフ・パフォーマンスによるアルバムが内包するエモーショナルな可能性に触発され、『Of The Earth』は作られた。ツアー移動中にポータブル機材で制作されたビートやループが楽曲の基盤となり、フルートのほかに久しぶりとなるサックス演奏も解禁している。南アフリカからイギリスに渡って活動したジャズ・ドラマーのルイス・モホロが2025年6月に亡くなり、彼のグループでも演奏してきたシャバカはその追悼コンサートに参加し、そこでおよそ2年ぶりにサックスを演奏した。過去2年間はフルートを中心にサックスを封印してきたが、それは彼が音楽を演奏する上でサックスであることの必然性を見出すことがなくなり、逆にほかの楽器への興味が深まったからだそうだが、そうした2年間を経て再びサックスの可能性に出会い、『Of The Earth』は作られた。

 アンビエントでプリミティヴな印象が強かった過去2作に比べ、『Of The Earth』はサンズ・オブ・ケメットやコメット・イズ・カミングなどのプロダクションで見られたリズムやビート面でのアプローチが強くなっている印象だ。代表が “Dance In Praise” や “Marwa The Mountain” で、ビート・ミュージック、ダブステップ、フットワークなどを咀嚼したリズム・トラックが用いられており、それとサックスやフルート、クラリネットなどが交わるトライバルなサウンドとなっている。シャバカがクウェイク・ベースらと組んでいた1000・キングスあたりに近いサウンドと言えよう。また、“Go Astray” では自身でラップをし、後期資本主義社会のシステムに支配された世界と向き合う力強いリリックを披露するなど、いままでになかったシャバカの新たな一面を発見できる作品だ。


Greg Foat & Sokratis Votskos with The Giorgos Pappas Trio
Impressions of Samos

Blue Crystal

 ここ数年来、さまざまなアーティストとのコラボ作品をリリースするピアニストのグレッグ・フォート。2025年はモーゼス・ボイド、ジハード・ダルウィッシュ、フォレスト・ロウなどロンドンのアーティストとのセッションが続いたが、新作『Impressions of Samos』ではギリシャのアーティストとの共演となる。ソクラテス・ヴォツコスはマルチ・リード奏者で、以前もグレッグ・フォートとの共演作がある。その2024年作の『Live at Villa Maximus, Mykonos』はギリシャのミコノス島でのライヴ録音で、ソクラテス・ヴォツコスはクラリネットとフルートを演奏していた。一方、エーゲ海のサモス島での印象をもとにした『Impressions of Samos』では、ソクラテスはアルメニア由来の民族木管楽器であるドゥドゥクを演奏する。そして、ふたりをサポートするジョルゴス・パパス・トリオは、中東から北アフリカにかけての古来の弦楽器であるウードをフィーチャーする。このように『Impressions of Samos』は、エーゲ海を中心に、ヨーロッパ、中東、北アフリカ、アジアの文化が交錯するギリシャを音楽で表現した作品である。

 “The Golden Jackals Of Samoa” でのドゥドゥクはスコットランドのバグパイプを連想させる音色で、ウードはインドのシタールを連想させる音色である。こうした民族楽器は昔からジャズの世界ではいろいろと用いられ、特にモーダル・ジャズの分野では非常に大きな役割を果たしてきた。“The Golden Jackals Of Samoa” はそうしたモーダルなテイストの異色のジャズ・ファンクで、かつてのイタリア映画のサントラやライブラリーなどに近い雰囲気を持つ。“Liberta” はモード・ジャズ、スピリチュアル・ジャズ、ジャズ・ファンクの狭間を往来するような作品で、それぞれの魅力をうまく引き出して結びつけるところがグレッグ・フォートらしいところだ。“Karsilamas” や “Eikosiefta” はアラビアや北アフリカの音楽の要素に彩られ、前者ではそれをジャズ・ファンクと結びつけてエキゾティックなグルーヴを生み、後者ではディープなスピリチュアル・ジャズへと昇華している。


Mark de Clive-Lowe, Andrea Lombardini, Tommaso Cappellato
Dreamweavers II

Mother Tongue

 マーク・ド・クライヴ・ローはロサンゼルスのジャズ・シーンだけでなく、世界のいろいろな国のミュージシャンとセッションをおこなっていて、日本人ミュージシャンと組んだローニン・アーケストラなどがある。ドラマーのトマーソ・カッペラートなどイタリア出身のミュージシャンともたびたびセッションを行っていて、2020年にはトマーソ・カッペラート、ベーシストのアンドレア・ロンバルディーニと組んで『Dreamweavers』をリリースしている。このアルバムを作った当時はローニン・アーケストラでの活動時期と重なっていたこともあり、ミュート・ビートなどで活動してきたこだま和文へのオマージュとおぼしき “Kodama Shade” や、自身のソロ作でも演奏してきた “Mizugaki” (奥秩父の瑞牆山がモチーフと目される)、高野山真言宗の那谷寺からイメージしたと思われる “Natadera Spirit Walk” など、半分日本人の血をひく彼ならではの和のモチーフが表われていた。そうした和のモチーフをジャズやフュージョン・サウンドにうまく融合させるのがマーク・ド・クライヴ・ローの真骨頂でもある。

 今度その『Dreamweavers』の第2弾が6年ぶりにリリースされた。今回も “Kaze No Michi” や “Sakura Fubuki” といった日本語のタイトル曲がある。ただし、和をモチーフにすると言っても、マーク・ド・クライヴ・ローはあくまで彼が日本の文化から受けるインスピレーションを音楽として表現するのであって、安易に和楽器を用いたり、日本の民謡の音階を取り入れるといった手法に出てはいない。“Kaze No Michi” は疾走感に満ちたスピリチュアル・ジャズで、イメージ的にはロニー・リストン・スミスあたりが近いだろう。極めてダンサブルなジャズでもあり、日本のクラブ・ジャズ・シーンとも交流のある彼らしいサウンドだ。“Terra De Luz” は彼が多大な影響を受けたアジムスへのオマージュと言える作品。このトマーソ・カッペラート、アンドレア・ロンバルディーニとのトリオ自体がアジムスそのものと言うべきプロジェクトであり、アジムスが黄金時代を迎えた1970年代から1980年代にかけての雰囲気に満ちている。J・ディラのカヴァーとなる “Raise It Up”、かつてのウェスト・ロンドン時代の盟友である故フィル・アッシャーに捧げた彼のカヴァー曲 “The Bass That Don’t Stop” ほか、ジャズとともにクラブ・カルチャーを通過したマーク・ド・クライヴ・ローらしいアルバムとなっている。“Back Channels” や “Lucid Dreams” もブロークンビーツを通過したダンサブルなジャズと言えよう。


Asher Gamedze
A Semblance: Of Return

Northern Spy

 アッシャー・ガメゼは南アフリカのケープタウンを拠点とするジャズ・ドラマーで、シカゴのジャズ・シーンとも交流があって、これまで〈インターナショナル・アンセム〉からもいろいろ作品をリリースしている。2020年頃からアルバムをリリースしているが、アート・アンサンブル・オブ・シカゴのようなアフロ・ポリリズミックなフリー・ジャズ、スピリチュアル・ジャズが特徴で、2024年の『Constitution』は黒人の意識開放運動と結びついた革命思想を内包する作品だった。このときはブラック・ラングスという南アフリカのミュージシャンから成るグループを率いていたが、彼は作品ごとにグループを作っていて、今回の新作『Of Return』はア・センブランスというグループを率いてのものとなる。とは言っても、メンバーはブラック・ラングスのときと被るミュージシャンもいて、日頃から一緒に演奏しているケープタウンのミュージシャンとのセッションとなる。

 『Of Return』は南アフリカにおける汎アフリカ主義と黒人意識に根ざし、地域や政治理念などを超えた連帯を訴える作品となっている。作品の随所にアパルトヘイト抵抗運動の活動家スティーヴ・ビコの演説からとられたワードが用いられ、2025年にオランダの音楽フェスにアッシャー・ガメゼがゲスト・キュレーターとして出演した際、用意した政治的ステートメントらアルバム・タイトルが名づけられた。“Distractions” はラスト・ポエッツ調の歌というかナレーションが盛り込まれ、サウンド的には『On The Corner』(1972年)の頃のマイルス・デイヴィスを彷彿とさせる。『On The Corner』はスライ・ストーンとの交流からファンクを導入したアルバムとして知られるが、“Of The Fire” はさらにファンク度が増す。ファンカデリック的なナンバーであり、サン・ラーの “Space Is The Place” にも通じるような作品だ。アフロ・フューチャリズムを通してアッシャー・ガメゼとジョージ・クリントンやサン・ラーが繋がっていることを伺わせる。ポリリズミックで混沌としたジャズ・ファンク “War” では、シンセを用いて変調させたサウンドが印象的。こうした音を使った遊び的なところもサン・ラーと通じるところがある。

Lee "Scratch" Perry & Mouse on Mars - ele-king

 2019年に亡くなったダブのレジェンド、リー・ペリー。生前、ベルリンのマウス・オン・マーズのスタジオで録音されていたという両者のコラボレーション・アルバムが6月5日にリリースされることになった。この強力な共作、タイトルは『Spatial, No Problem』で、レーベルは〈Domino〉。現在、収録曲 “Rockcurry” が公開中です。

https://mouseonmars.bandcamp.com/album/spatial-no-problem

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