「Low」と一致するもの

食品まつり a.k.a foodman - ele-king

〈Hyperdub〉からニュー・アルバム『Yasuragi Land』を送り出したばかりの食品まつり。同作の発売を記念し、リリース・パーティが開催されることになった。昼の部(8月8日開催)と、「サウナ」「水風呂」の2フロアにわかれた夜の部(9月11日開催)の2部構成という、ユニークな開催方式です。食品まつりとゆかりのあるアーティストを含む全20組がかけつける……これは行きたい!

Local World x Foodman - Yasuragi Land - Tokyo 2021

世界で最もピースな電子音楽家FoodmanによるUKの名門〈Hyperdub〉からの最新アルバム『Yasuragi Land』のリリパがクラブ&モードなアドベンチャー・パーティLocal WorldとSPREADにて共同開催!

土着、素朴、憂いをテーマに南は長崎、北は北海道、Foodmanに纏わるアーティスト含む全国各地からフレッシュな全20組が集まる昼のコンサートとサウナと水風呂の2フロアに別れた夜のクラブ・ナイトの2部構成、2021年の湿度と共に夏のボルテージを上げるサマー・イベント。

■SUN 8 AUG Day Concert 16:00 at SPREAD

ADV ¥3,300+1D@RA *LTD70 / Club Night DOOR ¥1,000 OFF

LIVE:
7FO
cotto center
Foodman
machìna
NTsKi
Taigen Kawabe - Acoustic set -

DJ: noripi - Yasuragi set -

・70人限定 / Limited to 70 people
・デイ・コンサートの前売チケットで9/11クラブ・ナイトのドア料金が1000円割り引かれます / Advance tickets for the day concert will get you 1000 yen off the door price for the club night on 11th Sep
・再入場可 ※再入場毎にドリンク・チケット代として¥600頂きます / 1 drink ticket ¥600 charged at every re-enter


■SAT 11 SEP Club Night 22:00 at SPREAD + Hanare

ADV ¥2,500+1D@RA *LTD150 / DOOR ¥3,000+1D / U23 ¥2,000+1D

サウナフロア@SPREAD

LIVE:
Foodman
JUMADIBA & ykah
NEXTMAN
Power DNA
ued

DJ:
Baby Loci [ether]
D.J.Fulltono
HARETSU
Midori (the hatch)

水風呂フロア@Hanare*

LIVE:
hakobune [tobira records]
Yamaan
徳利

DJ:
Akie
Takao
荒井優作

artwork: ssaliva

・Hanare *東京都世田谷区北沢2-18-5 NeビルB1F / B1F Ne BLDG 2-18-5 Kitazawa Setagaya-ku Tokyo
・150人限定 / Limited to 150 people
・再入場可 ※再入場毎にドリンク・チケット代として¥600頂きます / 1 drink ticket ¥600 charged at every re-enter

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EVENT PLAYLIST
https://soundcloud.com/meltingbot/sets/local-world-x-foodman-yasuragiland

前売リンク
Day Concert https://jp.ra.co/events/1452674
Club Night https://jp.ra.co/events/1452675

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食品まつり a.k.a foodman

名古屋出身の電子音楽家。2012年にNYの〈Orange Milk〉よりリリースしたデビュー作『Shokuhin』を皮切りに、〈Mad decent〉や〈Palto Flats〉など国内外の様々なレーベルからリリースを重ね、2016年の『Ez Minzoku』は、海外はPitchforkのエクスペリメンタル部門、FACT Magazine、Tiny Mix Tapesなどの年間ベスト、国内ではMusic Magazineのダンス部門の年間ベストにも選出された。その後Unsound、Boiler Room、Low End Theoryに出演。2021年7月にUKのレーベル〈Hyperdub〉から最新アルバム『Yasuragi land』をリリース。Bo NingenのTaigen Kawabeとのユニット「KISEKI」、中原昌也とのユニット「食中毒センター」としても活動。独自の土着性を下地にジューク/フットワーク、エレクトロニクス、アンビエント、ノイズ、ハウスにまで及ぶ多様の作品を発表している。

[最新作リリース情報]
食品まつり a.k.a foodman - Yasuragi land [Hyperdub / Beatink]
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11814

Local World
2016年より渋谷WWWをホームに世界各地のコンテンポラリーなエレクトロニック/ダンス・ミュージックのローカルとグローバルな潮流が交わる地点を世界観としながら、多様なリズムとテキスチャ、クラブにおける最新のモードにフォーカスし、これまでに25回を開催。

Local 1 World EQUIKNOXX
Local 2 World Chino Amobi
Local 3 World RP Boo
Local 4 World Elysia Crampton
Local 5 World 南蛮渡来 w/ DJ Nigga Fox
Local 6 World Klein
Local 7 World Radd Lounge w/ M.E.S.H.
Local 8 World Pan Daijing
Local 9 World TRAXMAN
Local X World ERRORSMITH & Total Freedom
Local DX World Nídia & Howie Lee
Local X1 World DJ Marfox
Local X2 World 南蛮渡来 w/ coucou chloe & shygirl
Local X3 World Lee Gamble
Local X4 World 南蛮渡来 -外伝- w/ Machine Girl
Local X5 World Tzusing & Nkisi
Local X6 World Lotic - halloween nuts -
Local X7 World Discwoman
Local X8 World Rian Treanor VS TYO GQOM
Local X9 World Hyperdub 15th
Local XX World Neoplasia3 w/ Yves Tumor
Local XX0 World - Reload -
Local XXMAS World - UK Club Cheers -
Local World x ether

https://localworld.tokyo

label: BEAT RECORDS / Hyperdub
artist: 食品まつり a.k.a foodman
title: Yasuragi Land
release date: 2021/07/09 ON SALE
* 輸入盤LPは8月中旬発売

国内盤特典:ボーナストラック追加収録 / 解説書封入
CD予約: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11814
LP予約: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11815

Phew - ele-king

 エレクトロニック・ミュージックにおけるサウンドの加工や異化つまりヴァリエーションによる「異質さ」は、批評家コジュオ・エシュンの「ソニック・フィクション」論でいうところの、従来的な思考法からの逸脱をうながす(参照:紙エレ22号P110、高橋勇人による論考「周縁から到来する非直線系」)。これはアフロ・フューチャリズム理論のなかで記述されているロジックではあるが、いまやエレクトロニック・ミュージシャンとして世界で活躍するPhewの作品から聴こえる電子音を読み解く上でも流用可能だろう。サウンドがうながす非直線的思考──じっさい彼女は新作における資料で、次のように発言している。「80年代、そして90年代までは物事が過去から現在、未来へという流れで進行していましたが、とくに21世紀がはじまって以来、その流れが変わってしまったと感じます。個人的には、現在から連なる未来というものが見えなくなってしまいました」
 反転した「ニュー・ディケイド」が描かれているのであろう、Phewの待望の新作はTraffic / MUTEから10月22日に世界同時発売決定。まずは第一弾先行シングル「Into The Stream」の青木理紗監督によるミュージック・ヴィデオをどうぞ。

Phew (Phew)
ニュー・ディケイド (New Decade)

発売日:2021年10月22日(金)
品番:TRCP-294 / JAN: 4571260591103
定価:2,400円(税抜)/ 解説:松村正人
ボーナス・トラック収録
Label: Traffic/Mute

Tracklist
1. Snow and Pollen
2. Days Nights
3. Into the Stream
4. Feedback Tuning
5. Flashforward
6. Doing Nothing
7. In The Waiting Room (bonus track)

[Pre-order + Listen]
https://smarturl.it/phew

伝説のアート・パンク・バンド、アーント・サリーの創設メンバーであり、1979年解散後はソロとして活動を続け、1980年に坂本龍一とのコラボレーション・シングルをリリース、1981年には、コニー・プランク、CANのホルガー・シューカイとヤキ・リーペツァイトと制作した1stソロ・アルバム『Phew』を発売。1992年、MUTEレーベルより発売された3rdアルバム『Our Likeness』は、再びコニー・プランクのスタジオにて、CANのヤキ・リーベツァイト、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのアレックサンダー・ハッケ、そしてDAFのクリスロ・ハースと制作された。2010年代に入り、声と電子音楽を組み合わせた作品を次々に発売し、エレクトロニック・アーティストとしても世界的評価を高めた。ピッチフォークは「日本のアンダーグラウンド・レジェンド」と評している。また、アナ・ダ・シルヴァ(レインコーツ)、山本精一(ex.ボアダムス)等とのコラボレーション作品も発売。2021年10月、最新ソロ・アルバム『ニュー・ディケイド』はTraffic/Muteより世界発売。

https://www.instagram.com/originalphew007/
https://twitter.com/originalphew
https://www.facebook.com/Phew-508541709202781
https://phewjapan.bandcamp.com/merch

〈PAN〉 × 〈Hakuna Kulala〉 - ele-king

 ベルリンの〈PAN〉と、ウガンダはカンパラの〈Hakuna Kulala〉(〈Nyege Nyege〉のサブレーベル)が手を組んだ。『KIKOMMANDO』と題された新プロジェクトは、カンパラのシーンを新たな角度から切りとるもので、音源に加え写真やMVもその一環に含まれる模様。
 8月6日にリリースされるミックステープには Blaq Bandana や Ecko Bazz、Swordman Kitala や Biga Yut といった〈Hakuna Kulala〉のアーティストが参加。〈PAN〉の STILL が全曲のプロデュースを担当している。STILL ことシモーネ・トラブッキは、かつてザ・バグが先鞭をつけたエレクトロニック・ミュージックとダンスホールの折衷を継承する音楽家で、2017年の『I』が話題となった人物だ。
 それは対話だった、とトラブッキは今回のプロジェクトについて述べている。「シンガーたちに自信を持ってもらえるような音楽的土台をつくると同時に、わたしは彼らに挑戦もした。一緒に仕事をすることはアイディアを加速させ、発明というものがひとりだけでできるものではないことを明らかにする。それこそ『KIKOMMANDO』がわたしにとってアルバムでなく、ミックステープである理由だ」とのこと。
 現在 Ecko Bazz の “Ntabala (Rolex Riddim)” が公開中。他の曲も楽しみです。

V/A (Prod. by STILL)
Title: KIKOMMANDO
Format: Digital mixtape / Book
Label: PAN / Hakuna Kulala
Cat. No: PAN 124 / HK029
Release date: 6 August 2021

01. Blaq Bandana – Nkwaata (Prod. by STILL)
02. Ecko Bazz – Ntabala (Rolex Riddim) (Prod. by STILL)
03. Swordman Kitala – Rollacosta feat. Omutaba (Prod. by STILL)
04. Biga Yut feat. Florence – Ntwala (Prod. by STILL)
05. Biga Yut – Tukoona Nalo (Prod. by STILL)
06. High Cry Interlude (Prod. by STILL)
07. Jahcity – Njagala Kubela Nawe (Prod. by STILL)
08. Biga Yut – Plupawa (Prod. by STILL)
09. Winnie Lado – The Race (Prod. by STILL)
10. Florence – Bae Tasanze (Prod. by STILL)
11. Jahcity – Tukikole Nawe feat. Omutaba (Prod. by STILL)
12. Winnie Lado – Ahlam Wa Ish السماء هي الحد (Prod. by STILL)

追悼ジョン・ハッセル - ele-king

“悪行と善行の観念を越えたところに平原が広がる。我々はそこで会おう”  ジャラール・ウッディーン・ルーミー(13世紀ペルシャの神秘主義詩人)

 ジョン・ハッセルに電話インタヴューしたのはちょうど1年前の昨年7月だった

 実はそのとき、もしかしたらこれが最後の取材になるんじゃないか……という予感があった。彼の問答には、明晰さのなかにも随所で精神的衰弱が垣間見られたから。取材3ヶ月前の同年4月には、ジョン・ハッセルの生活サポートのためのファンドが立ち上がったことをブライアン・イーノがツイートしていたが、当時ハッセルは、骨折治療とコロナ禍での健康不安により生活が困窮していたという。昨年の新作『Seeing Through Sound』により、新たなリスナーを増やしていただけに、彼の逝去はあまりにも残念だ。

 件のインタヴュー記事では『Seeing Through Sound』のことだけでなく、過去のキャリアについてもかなり語ってもらった。彼の業績に関する総論的追悼文をここで書いても、インタヴュー記事の内容の繰り返しになってしまうので、ここでは、彼の音楽的基盤から枝葉まで、その具体例を聴きながら改めて全体像を把握することで、追悼文に代えさせていただく。

ジョン・ハッセルに多大な影響を与えた音楽家たち

1. Stan Kenton『This Modern World』(53年)

 ハッセルは1937年3月、米テネシー州メンフィスに生まれた。父親が大学時代に学生バンドで吹いていたコルネットを手にしたのが小学生の時。十代半ばになるとジャズに親しみつつ、ジュークジョイント(黒人向け音楽バー)にも通っていたという。とくに魅せられたのが、スタン・ケントンのビッグ・バンドだ。“プログレッシヴ・ジャズ”を標榜し、斬新なアンサンブルを展開したケントンの50~60年代の作品は、いま聴いても驚かされる。「第四世界」の種のひとつがこの奇妙なハーモニーとリズムのなかにはあった。ちなみに、デビュー当時のキング・クリムゾン(とくにイアン・マクドナルド)もケントンに絶大な影響を受けていた。

2. Karlheinz Stockhausen「Gesang Der Jünglinge (少年の歌)」(56年)

 ハッセルはNYなどでトランペットと作曲を学んだ後、妻のマーガレット(70年代に離婚後は、前衛専門のピアニスト、カトリーナ・クリムスキーとして活動)と共にドイツに渡り、現代音楽の大家カールハインツ・シュトックハウゼンに3年弱(64~66年)師事した。カンのイルミン・シュミットやホルガー・シューカイもクラスメイトだった。渡独前からシュトックハウゼンの「少年の歌」(ミュジーク・コンクレートと電子音楽を統合した初期の傑作)に心酔し、切ったり貼ったりのテープ・マニピュレーションを独自に試みていたというハッセルは、留学時代には、50年代米国ジャズ・ヴォーカル・グループ、ハイ・ロウズの作品をコラージュしたりもした。シュトックハウゼンの下で習得した電子機器の使い方やプログラミング、テープの切り貼り等の技術は、80年代以降の彼のサンプリング・ワークの土台になった。

3. Terry Riley『In C』(68年)

 「私は彼のことが大好きだったし、お互いの妻も含め、ひとつの家族のような関係だった」と語るように、ドイツから米国に戻ったハッセルがもっとも親しくつきあい、また影響も受けたのがテリー・ライリーだ。帰国したハッセルを待ち受けるように60年代後半の米国現代音楽界で沸騰しつつあったのが現代音楽のニュー・モード、ミニマリズムだが、そのブレイクスルーの象徴的作品であるライリー『In C』の初録音盤(68年)にはハッセルと妻マーガレットも参加している。

4. Pandit Pran Nath『Ragas』(71年) 

 ハッセルは、テリー・ライリーとともにミニマリズム・ムーヴメントを牽引していたラ・モンテ・ヤングのドローン・プロジェクト《Theater of Eternal Music(永久音楽劇場)》にも加わり(ヤングの74年のライヴ盤『The Theatre Of Eternal Music - Dream House 78'17"』に参加)、そこから導き出した「垂直の音楽」(時間軸に沿った旋律聴取ではなく、微細な音色や倍音などの感知を通して音の深奥まで下降し体得する音楽的アナザー・ヴィジョン)という概念を元に、やがて「斜めの音楽」という独自の世界を目指していった。その思考過程を土台固めしてくれたのが、すでにライリーとヤングが師事していたインド古典声楽の大家パンディット・プラン・ナートだ。ハッセルは72年、ヤング夫妻に同行してインドに赴き、ナートの下でインド古典声楽の修業をした。やがて、音のなかに曲線を描くナートの歌唱技術は、トランペットを共鳴管として歌わせるハッセルの演奏技法そのものとなっていった。ハッセルはナートから学んだことを「自分の音楽の中で最も大きなポジションを占める」と告白している。

5. Μiles Davis“He Loved Him Madly”(74年)

 ライリー&ヤングやパンディット・プラン・ナートと並びハッセルの表現にもっとも大きな影響を与えたのがエレクトリック期(60年代末期~70年代半ば)のマイルズ・デイヴィスだ。ピックアップを仕込んだマウスピースを歌うように響かせ、エンヴェロープ・フィルターなどで電気処理するというハッセルの演奏技法は、当時のマイルズのワウ・ペダルを参考にしたものであり、その技法は今日ニルス・ペッター・モルヴェルなどによってさらに発展している。ハッセルはいくつかのインタヴューでとくに愛着のあるマイルズの作品として『On The Coener』(71年)や『Live-Evil』(72年)などを挙げているが、音色やムードが最も近いのは『Get Up With It』のA面曲“He Loved Him Madly”だろう。これがハッセルのソロ・デビュー作『Vernal Equinox』に直接的に影響を与えたことは想像に難くない。

11枚で俯瞰するジョン・ハッセルの軌跡

1. Jon Hassell『Vernal Equinox』(77年)

 ジョン・ハッセルの名前と「第四世界」なる新コンセプトを一躍世界に広めたのは言うまでもなくブライアン・イーノとの連名で発表された『Fourth World Vol. 1 - Possible Musics』(80年)だが、そこで示された斬新なサウンド・プロダクションの大半、そして彼の表現の核である夢幻的官能性は既にこのソロ・デビュー作の中に十分すぎるほど認められる。キーワードの「第四世界」こそ明記されてはいないが、コンセプト自体はこの何年も前から彼の頭のなかにはあった。乱暴に言ってしまえば、本作にイーノがエレクトロニクスでトリートメントを加えたのが『Fourth World Vol. 1 - Possible Musics』だったのだ。米ピッチフォーク誌の「アンビエント・アルバム歴代ベスト50」リストでも47位に選出されているが、個人的にはベスト10に入れるべき作品だと思う。ハッセルは近年のインタヴューでこう語っている。「当時私は、電子技術を組み合わせた管楽器によってラーガとミニマリズムの相克を探求していた。最近、本作に内包された種子が自分にとっていかに重大なものだったかが改めてわかり、驚嘆した」

 録音は76年、トロントのヨーク大学エレクトロニク・メディア・スタジオ。参加しているのは、「永久音楽劇場」の仲間であり、人体の自律神経を用いた音楽作品 (バイオ・フィードバック・ミュージック) で一躍注目を集めていた実験音楽家デイヴィッド・ローゼンブーム、純正律や現代音楽的ガムランなどで80年代に有名になる実験音楽家ラリー・ポランスキー、パリから米国に移ったばかりのブラジル人パーカッション奏者ナナ・ヴァスコンセロスなど、実験音楽と民族音楽の両方を自在に行き来するクセ者ばかり。そしてエンジニアを務めたのは、80年代以降、ブライアン・イーノやダニエル・ラノワの右腕的コラボレイターとして、あるいはリアルワールド系作品のプロデューサーとして大活躍することになるマイケル・ブルック。当時パンク・シーンでギターを弾いていたブルックは、ここでのハッセルとの出会いをきっかけに、世界中の民族音楽に興味を持つようになったという。

2. Talking Heads“Houses In Motion”(80年)

 「こういう作品を待ち望んでいた」と絶賛したとおり、『Vernal Equinox』はブライアン・イーノに絶大な影響とインスピレイションを与えた。そしてハッセルもまた、イーノとの出会いをきっかけにポップ・ミュージック・シーンと関わり始めた。その最初のコラボ・ワークが、トーキング・ヘッズの傑作『Remain In Light』 への参加だ。アフリカ音楽のリズムを大胆に取り込んだ本アルバムへの賛辞“原始と電子の融合”は、そのままハッセルの「第四世界」のコンセプトでもある。翌年出たイーノとデイヴィッド・バーンの連名による『My Life In The Bush Of Ghosts』にはハッセルは参加しなかったが、そこで展開されたエスノ・エレメントのコラージュ・ワークは、元々はハッセルのアイデアであり、後年彼はインタヴューで「二人にパクられた」と恨み言をつぶやいている。

3. Jon Hassell『Aka / Darbari / Java - Magic Realism』(83年)

 ハッセルは、マレー半島の山岳少数民族セノイ族の夢理論をモティーフにした『Dream Theory In Malaya (Fourth World Volume Two)』(80年)を経て、この次作では「第四世界」上に「マジック・リアリズム」という新コンセプトを積み重ねた。ここでは、世界初のデジタル・サンプリング・キーボード「Fairlight CMI」を導入し、ピグミーのコーラスやセネガルのドラム、イマ・スマックのレコードなど様々なサウンド・エレメントを細分化、再構築している。サンプリング/コラージュやミニマリズム、インドのラーガなどから始まったハッセルの初期キャリアの、これが最高到達点だろう。

4. David Sylvian「Brillant Trees」(84年)

 ハッセルが参加したロック系作品のなかで、『Remain In Light』と並びもっとも有名かつ印象的なのが、デイヴィッド・シルヴィアンの初ソロ・アルバム『Brilliant Trees』だろう。全7曲中の2曲でトランペットを演奏。ハッセルの参加がどういう経緯だったのかは不明だが、本アルバムには元カンのホルガー・シューカイ(ハッセルとはシュトックハウゼンの同門)も参加しており、もしかしたらホルガー経由(推薦)だったのかもしれない。ちなみにカンにも「第四世界」とは似て非なる「E.F.S.(Ethnological Forgery Series=民族学的偽造シリーズ)」というコンセプチュアル・ワークがあった。

5. Kronos Quartet「Pano da costa (Cloth from the Coast)」(87年)

 クロノス・クァルテットがハッセルに委嘱した弦楽四重奏曲。クロノスのアルバム『White Man Sleeps』に収録。ハッセルをクロノスに紹介したのは、クロノスにたくさんの楽曲を提供しているテリー・ライリーである。ここでの演奏にはハッセルは参加していないが、楽曲自体はハッセルの世界そのものだ。おそらくここから発展したのだろう、クロノスの93年のアルバム『Short Stories』ではハッセルの師パンディット・プラン・ナートが歌った曲も入っている。

6. Jon Hassell/Farafina『Flash Of The Spirit』(88年)

 デビュー作『Vernal Equinox』で電子音楽家デイヴィッド・ローゼンブームにもンビラやタブラ等を担当させるなど、当初からパーカッションに強いこだわりを持っていたハッセルがブルキナファソの伝統音楽打楽器アンサンブル(7人編成)ファラフィーナとガップリ四つに組んだ作品。バラフォンやタマ、ジャンベなどが複雑に織り成すアフリカン・ポリリズムのなかをハッセルの電化トランペット/キーボードが蛇行する様は「第四世界」音楽のわかりやすいサンプルか。パーカッシヴな名曲としては、同年にジャン=フィリップ・リキエル他とイタリアでライヴ録音した「Pygmy Dance」(91年のオムニバス盤『Ai Confini / Interzone』に収録)もお勧めだ。

7. Les Nouvelles Polyphonies Corses With Hector Zazou「In La Piazza」(91年)

 フランスの前衛室内楽ユニット「ZNR」での活動を経て、80年代にはアフリカ他世界中の伝統音楽を独自に加工したキッチュなエスノ・ポップで名を馳せた才人エクトール・ザズー。なかでも人気が高いのが、コルシカ島のポリフォニー・コーラスを素材にしたアルバム『Les Nouvelles Polyphonies Corses Avec Hector Zazou』だ。ハッセルは3曲に参加。様々な声とトランペットがもつれ合いながら描くヒプノティックな曲線が美しい。

8. Jon Hassell & 808 State「Voiceprint」(90年) 

 ハッセルは都市のノイズに焦点を当てた90年のアルバム『City:Works Of Fiction』あたりからクラブ・ミュージックやヒップホップとも接近しはじめた。同年には『City:Works Of Fiction』のオープニング・ナンバー「Voiceprint」の808 Stateリミックス・ヴァージョンを含むミニ・アルバムと12インチ・シングル「Voiceprint」もリリース。後年にはリカルド・ヴィラロボスやアルカなどもハッセルをサンプリングしている。

9. Jon Hassell & Bluescreen『Dressing For Pleasure』(94年) 

 パブリック・エナミーをヴォーカル・サンプリングした『City:Works Of Fiction』以上にヒップホップ色濃厚な作品がブルースクリーン(DJを含む4人組)と組んだ『Dressing For Pleasure』だ。デューク・エリントンのエキゾティック・チューン“Bakiff”を含む細かいサンプリングで精緻に構成しつつ、全体を貫くのはブレイクビーツ。

10. Jon Hassell / I Magazzini「Temperature Variabili」(95年)

 ハッセルはライ・クーダー絡みの映画音楽にもいくつか参加しているが、『Sulla Strada』はイタリアの前衛劇団「イ・マガッツィーニ」の演目のための音楽集だ。アルバム全体にわたりハッセルが過去に試みてきた様々な技法やスタイルがちりばめられ、随時、イ・マガッツィーニの声もランダムに混入される。サウンド・スペクタクルとして非常にヴァラエティに富み、面白い作品だ。

11. Jon Hassell『Fascinoma』(99年)

 ナット・キング・コールのスタンダード・ナンバーとして有名な“Nature Boy”(モンド/エキゾティカ文脈で知られる奇人作曲家エデン・アーベの作)で幕を開け、デューク・エリントンのナンバーなどもカヴァした異色アルバム。ハーモナイザー等エフェクターなしの素ペット演奏も聴ける、一種のジャズ回帰/回顧作。しかしバンスリや木魚の音が突然出てきたり、「キャラヴァン」にタンブーラが妖しく絡みつく「Caravanesque」なんてのがあったりと、どこまでもハッセル・フィルターを通した幻想のジャズである。ジャズ・ピアニストのジャッキー・テラソンが全面参加し、プロデュース/ギターはライ・クーダー。

Yoshiko Sai - ele-king

 70年代に活躍した奈良出身のシンガーソングライター、佐井好子。『萬花鏡』(1975)『密航』(1976)『胎児の夢』(1977)『蝶のすむ部屋』(1978)の4枚のアルバムを残し、00年代にはJOJO広重とのコラボ作『Crimson Voyage』(2001)や、山本精一らを招いた復帰作『タクラマカン』(2008)を発表している。
 去る7月7日に、上記『Crimson Voyage』以外の5枚のアルバムをまとめたボックスセット『佐井好子全集 THE COMPLETE WORKS OF YOSHIKO SAI』がリリースされているが、これが海外で話題となっているのだ。
 同ボックスセットはなんと〈ラフ・トレード〉で販売され、さらにヴァイナル・ファクトリーでは、「今週のお気に入りのヴァイナル・リリース10」として『密航』(1976)が、コアレス坂本龍一&デヴィッド・トゥープココロコシャロン・ヴァン・エッテンらと並んでピックアップされている。
 それだけではない。昨年大きな注目を集めたUSのラッパー、ベニー・ザ・ブッチャーが3月にドロップした曲 “Plug Talk” (EP「The Plugs I Met 2」収録)では、佐井のヴォーカルがサンプリングされているのだ。使用されているのは、夢野久作からインスパイアされた『胎児の夢』収録の表題曲で、儚く妖しいヴォーカルが全篇をとおしてループされている。

 ここへ来て急浮上している佐井好子。今後も再評価の行方を注視したい。

佐井好子、70年代の名作が待望の復刻&『タクラマカン』の初アナログ化!
ファン垂涎の新曲7INCHと直筆サイン、ブックレットを封入したBOXを限定発売!

佐井好子全集
PLBX-1
定価:¥29,700(税抜¥27,000)

※P-VINEオンラインショップ、ディスクユニオン限定
※完全初回数量限定生産

BOX商品内容
① 今回発売のLP5枚
『タクラマカン』、『萬花鏡』、『密航』、『胎児の夢』、『蝶の住む部屋』
② 7inch record
A面:「日本一小さな村」(山本精一が監修/コラボした新曲です)
B面:「暗い旅」(書籍『青いガラス玉』にのみ付けられたCDから日活映画『少女地獄』(1977年)挿入歌のフルヴァージョン。バックはコスモス・ファクトリー)
③ ブックレット(B5判24~30Pを予定)
秘蔵写真や本人による詩、イラストそしてJOJO広重による「佐井好子ストーリー」をまとめたもの
④ 7inchとブックレットを投げ込んだ直筆サイン入りの白ジャケット(直筆ナンバリング付き)

タクラマカン
PLP-7122
定価:¥4,180(税抜¥3,800)

※初アナログLP化

夢野久作/谷崎潤一郎/つげ義春の世界観が! 独自の幻想ワールドでファンを魅了する佐井好子30年振りの新作! 1978年の4枚目を最後に「自分の気に入った歌が出来るまでは」と休止宣言をして、、30年。やっと完成しました。その幻想魅惑の世界をサポートするのは山本精一、早川岳春、芳垣安洋、JOJO広重、片山広明、プロデュースは吉森信。更に渚にての柴山伸二も参加! より熟成し妖艶な佐井好子の世界が堪能できる! ジャケは勿論本人によるイラスト!

萬花鏡
PLP-7123
定価:¥4,180(税抜¥3,800)

極めて耽美幻想的歌手=佐井好子1975年衝撃のデビュー・アルバム。日本的な土着性~民謡的歌唱が幽玄な空想世界へ誘う名作のアナログLPが限定復刻。大野雄二のアレンジも冴えわたる。

密航
PLP-7124
定価:¥4,180(税抜¥3,800)

「密航」をテーマにシルクロードあたりの異国情緒溢れる佐井好子幻想ワールドが炸裂する傑作アルバム。まさに女性にしか描けない世界、、聞くものをゆるやかにインナートリップさせる。眠れぬ夜の脳内に彷徨うシルクロード。

胎児の夢
PLP-7125
定価:¥4,180(税抜¥3,800)

1枚目に続き大野雄二がアレンジャーとして参加しより音楽的要素を支えた夢野久作的怪奇性極まる佐井ワールド。タイトルの「胎児」が示すようにより内なる精神世界への旅。佐井好子弱冠24歳、詩人で画家で歌手としての孤高なる存在。ジャケも傑作。

蝶のすむ部屋
PLP-7126
定価:¥4,180(税抜¥3,800)

山本剛トリオをバックにした極めてジャズ色の強いアルバム。内なる精神世界から外の世界へ出口を見出したかのようなシュールでダイナミズムな世界。この78年のアルバムの後、佐井は「自分が気に入る曲が書けなくなった」と世界に旅に出る、、、、

Sam Prekop - ele-king

 ザ・シー・アンド・ケイクサム・プレコップの最新EP、デジタルのみで配信されていた「In Away」が、日本限定でCD化されることになった。宇波拓によりCD盤専用のマスタリングが施されており、また完全未発表のボーナス・トラックも追加収録されているとのこと。これはフィジカルで持っておきたいアイテムです。

Sam Prekop(サム・プレコップ)
『In Away』(イン・アウェイ)

企画番号:Prekop-JP 1 / HEADZ 252(原盤番号:なし)
価格:1,800円 + 税(税込定価:1,980円)
発売日:2021年7月30日(金)※(配信の海外発売:2021年5月7日)
フォーマット:CD
バーコード:4582561395406
原盤レーベル:The Afternoon Speaker

1. In Away イン・アウェイ 5:23
2. Triangle トライアングル 3:54
3. Quartet カルテット 3:30
4. Community Place コミュニティ・プレイス 3:17
5. So Many ソー・メニー 4:52
6. Sunset サンセット 3:06

Total Time: 24:19

※ Track 6…日本盤のみのボーナス・トラック

Recorded and mixed in Chicago, February - April 2021 by Sam Prekop
All songs written by Sam Prekop
Mastered by Taku Unami
Photographs by Sam Prekop

A collection of recent tracks from my home studio, of which I've spent plenty of time in this past year or so! These pieces arrived in a similar fashion as the works on my last record "Comma". Basically culled from long rambling recording sessions where the more interesting elements hopefully emerge and present as starting points for further development. These five pieces are the most recent results of this process, I hope you enjoy and thanks for listening!
Sam

セルフ・タイトルの1stソロ・アルバムが永遠の名盤として再評価される中、The Sea and Cakeのフロントマン、サム・プレコップが、彼のインスト・ソロ作史上、最もポップでメロディアスな作品を日本のみでCD化。
Bandcamp以外、配信サービスの取り扱い無し、全曲CD用のマスタリングされ、完全未発表のボーナス・トラックも追加収録。
常に刺激的な電子音楽と美しい写真を追求し続けるサムの現在地がここにある。

昨年(2020年)夏に日本先行でリリースされた、最新ソロ・アルバム『Comma(コンマ)』(THRILL-JP 52 / HEADZ 247)が、彼のトレードマークでもある魅惑的なウィスパー・ヴォーカルを封印した、アナログ・シンセをメインに制作されたインスト・アルバムであったにも拘らず、高評価を獲得し(ピッチフォークも8点越え)、これまでのファン以外にも広くアピールしたザ・シー・アンド・ケイクのフロント・マン、サム・プレコップ。
1999年に発表された1stアルバム『Sam Prekop(サム・プレコップ)』(THRILL-JP 21 / HEADZ 42P)の日本での紙ジャケCD化に続き、Thrill Jockey盤でのLPのリプレスされることになり(Pale Pink盤の限定カラーLPもあり、間もなく日本のレコード・ショップにも並びます)、サムの新旧作品に注目が集まる中、(この1年ほど掛けて作られた)サムの自宅スタジオで今年の2月から4月の間に制作され、Bandcampのみで配信リリースされた最新音源(5曲入りEP)が日本盤のみでCD化されます。

近年海外でも再評価が進む清水靖晃、尾島由郎、吉村弘、イノヤマランド他の80年代の日本のニューエイジやアンビエントの名作群にもインスパイアされた『Comma』の延長線上にありながらも、ビートは控えめに、よりポップでメロディアスなサウンドに仕上がっており、サム本人の撮影による美麗なジャケット写真のイメージ通り、爽やかで透明感のある電子音楽集となっています。

自ら録音・ミックスを手掛けた、サムにとって初のセルフ・リリース作品で、日本盤のみ完全未発表の新曲「Sunset」をボーナス・トラックとして追加収録。
(CD化に際し、David Grubbsのコラボレーターでも知られる、HOSEの宇波拓によって、全曲リマスタリングされており、厳密にはBandcamp音源とも違っております)
ライナーノーツは、編著『シティポップとは何か』(河出書房新社)の刊行を控える、柴崎祐二が担当。
現在、Bandcamp以外、海外も含め配信サービスでの取り扱いの予定はございません。

Sam Prekop is an artist whose music is painted in hues all his own. Both solo and as part of The Sea and Cake, Prekop’s distinct and lithe compositions distill his ceaseless curiosity into bracingly sublime music. In Away follows Prekop’s 2020 LP Comma and takes the next steps into his new compositional approach to crafting more overtly rhythm-based modular synthesized pieces, deftly whittled into vivid pop prisms. Working this time with both modular synthesis and keyboard-based synths, Prekop obscures the line between architectural sequencing and subtle performances. The resulting pieces levitate effortlessly from delicate atmospheres to rippling dances with Prekop’s guiding hand gently leading each movement towards the stirringly unfamiliar.

The six buoyant pieces on In Away were developed through Prekop’s daily practice of manipulating new systems of modular synthesis, recording, and deep listening. Acting as a curator to his own museum of sounds, Prekop poured over hours of improvisations using different modular combinations to select compelling moments which could act as a framework for his arrangements. His unique approach to shifting texture and juxtaposing timbres then layered each frame with minute details and potent melody. The Buchla 208c scintillates and plucks with near-acoustic tones atop a bed of warm drones. Lightly sizzling percussion throbs beneath coursing cascades. Each moment strikes a meticulous balance between captivating surprise and gratifying outcome.

サム・プレコップは、自身の音楽を全て独自の色彩で描き出すアーティストです。ソロでも、The Sea and Cakeのメンバーの一員としても、プレコップの個性的でしなやかな作曲群は、彼の絶え間ない好奇心を刺激的で崇高な音楽に精製しています。『In Away』は、2020年に発売されたプレコップのLP『Comma』に続く作品で、彼の新しい作曲アプローチの次のステップとして、よりあからさまなリズム・ベースのモジュラー・シンセサイザーを使って、鮮やかでポップなプリズムを巧みに削り出した作品を制作しています。モジュラー・シンセシス(シンセサイザーによる音の合成)とキーボード・ベースのシンセサイザーの両方を使った今回の作品では、構築的なシーケンス(配列)と繊細なパフォーマンスの間の境界線が曖昧になっています。その結果、作品は繊細な雰囲気から波打つようなダンスまで楽々と浮遊し、Perkopの手助けによってそれぞれの動きを刺激的で聴き慣れないものへと優しく導きます。

『In Away』に収録されている6つの作品は、モジュラー・シンセシス、レコーディング、ディープ・リスニングなどの新しいシステムを操作するという、プレコップの日々の演習を通して開発されました。自らの音の博物館の学芸員のように、Perkopは様々なモジュラーの組み合わせを使った即興演奏を何時間も掛けて行い、アレンジのフレームワークとなるような魅力的な(感動的な)瞬間を選び出しました。テクスチャーを変化させたり、音色を並置したりする彼のユニークなアプローチは、その結果、それぞれのフレームに微細なディテールと強力なメロディを重ね合わせました。(米Buchla社製のアナログシンセサイザー)「Buchla 208C」が輝きを放ち、暖かいドローンのベッドの上で、音響に近いトーンを弾きます。素早く進むカスケード(直列)接続の下では、軽やかに揺れるパーカッションが鳴り響きます。一瞬一瞬が、魅惑的な驚きと満足のいく成果の間で、細心のバランスを取っています。

Sound Patrol - ele-king

夏といえばダンスの季節です。いくつか注目のシングルをピックアップしてみました。ワクチン接種が進んでいるUKでは来週19日からクラブが通常営業を開始するとのことですが(問題なきことを切に願います)、たとえ緊急事態宣言下であっても、ダンス・ミュージックはいつだって我々にとってのエネルギー源であり、かけがえのない音楽なのです。

Overmono - BMW Track / So U Kno Poly Kicks

https://overmono.bandcamp.com/album/bmw-track-so-u-kno

TesselaとTrussによる期待の兄弟ユニット、オーヴァーモノ(https://www.ele-king.net/news/008102/)によるニュー・シングル。彼らの才能は、“BMW Track”を聴くとよくわかる。音数少なめのブレイクビーツ・テクノによるリズムの格好良さ。ダンサーたちを魅了すること間違いない。早送りのヴォーカル・サンプルを使った“So U Kno”に至ってはレイヴの季節にぴったり。よし、踊るぞ(どこで?)。


Eomac - Cracks Planet Mu

https://eomac.bandcamp.com/album/cracks

ベルリンからアイルランドはダブリンに移住したプロデューサー、Eomacによる〈Planet Mu〉からのアルバム。内省的で、じつに多彩な内容だが、とにかく、“What Does Your Heart Tell You?”という曲を聴いてほしい。素晴らしいでしょう?


LSDXOXO - Dedicated 2 Disrespect XL Recordings

https://lsdxoxo.bandcamp.com/album/dedicated-2-disrespect-ep

フィラデルフィア出身ニューヨークからベルリンへ、LSDXOXOによる〈XL Recordings〉からの一撃。ボルチモア・クラブおよびゲットー・ハウスの猥雑さとパワーを咀嚼した4曲入り。まずは“Sick Bitch”でも。ダンスフロアの次期スターは彼か?


One Bok - Zodiac Beats Volume 1 & 2 AP Life

https://aplife.bandcamp.com/album/zodiac-beats-volume-1-2-003

〈Night Slugs〉で知られるBok BokによるOne Bok名義でのEPで、グライム、トラップ、ドリル、ダブ、ベース・ミュージックの混合。ダンス・ミュージックだが、この虚しい夏にはぴったりの荒涼感覚が見事で、家でリスニングも楽しめる。


RP BOO - All My Life. Planet Mu

E王


https://soundcloud.com/rp_boo/all-my-life

RP BOO9月リリース予定のニュー・アルバムからの先行曲(配信で購入可)。シカゴのフットワークの重鎮、オールドスクールを意識しつつ、ディープ・ハウスに接近か。これはもう、アルバムを期待しないわけにはいかないでしょう。


Jon Dixon - The New Tomorrow EP Visions Inc

https://visionsrecordings.bandcamp.com/album/jon-dixon-the-new-tomorrow-ep

デトロイトからはアンドレスの新譜(Sweetest Pain / Sweetest Moaning)も良かった。しかし、ここはGalaxy 2 GalaxyやTimelineの鍵盤奏者でもあり、ハイテック・ジャズ・テクノのプロデューサーでもあるジョン・ディクソンの最新シングル、ソウル・ミュージックとしてのテクノをどうぞ。落ち込んでばかりの毎日でも、なんかやる気にさせます(何を?)。

Isayahh Wuddha - ele-king

 去る2020年、『urban brew』で鮮やかなデビューを飾った京都のシンガーソングライター、イサヤー・ウッダ。年末にはセカンド『Inner city pop』を発表、そして来る8月11日には早くもサード・アルバム『DAWN』をリリースする。ちょっと早すぎない? で、今回は果たしてどのような展開を見せているのでしょうか? 気になる方はぜひチェックを。

2020年代のポップ・アイコン=イサヤー・ウッダ 夜明けの3rd アルバムリリース!

京都在住、2020年5月英国WOTNOTから1st アルバムをリリース。暮れの12月には2ndアルバムリリースと破竹の勢いの鬼才SSWイサヤー・ウッダ、早くも3rdアルバム降臨。
超ポップさはそのままに、マインドフルネスなアンビエント要素が霧の様に全体を包み込んだ至高のトリップサウンド。観たままに善悪全てを肯定する気狂いトラップ風 “SAY” や、牧神の午後的変態ヒップホップ “RIPPLE” 等全9曲。
聴きどころ満載の新しい『DAWN』(夜明け)、ドーーーンッと登場!!!

本人によるコメント:
コロナが世界中で猛威をふるう事で、今まで隠されていた人間の本性、
悪や善のようなものが顕わになってきたと思います。人間の活動が停滞することでスモッグが減り、
川や空気の汚染が軽減されたことは好ましいことでした。
私はそういったもの善悪全部ひっくるめて肯定しました。
そして居なくなった猫について思いをはせました。
また2004年にイラクで人質になり殺されたバックパッカーの青年について、
私は忘れないと約束していました。人間は利益の為に自然を破壊するし、
利権やお金の為に戦争も起こす。動物たちの方がよっぽど尊い生き物だと思っていました。
しかしこの数年でその考えは変わりました。どうでも良くなったのです。
なぜなら私たち人間は、植物や虫、動物、地面に落ちている石と変わらない存在なのだと気付きました。
すべては同じで、それぞれがそれぞれの使命を持って存在しているように思います。
だから私は音楽を生み出しているのです。
(Isayahh Wuddha)

レーベル:MAQUIS RECORDS
アーティスト名:ISAYAHH WUDDHA
作品:DAWN
イサヤー・ウッダ / ドーン
発売日:8月11日(水)
品番:MAQUIS 011
定価:¥2000+tax

TRACK LIST
01. ES
02. STILLLIFE
03. SUMMIT
04. RIPPLE
05. SAY
06. HIGHER
07. YOUMAKECRY
08. SPACEDRIVE
09. HOLDONME

PV : https://youtu.be/8yvX2LWmVEI

プロフィール:

Isayahh Wuddha / イサヤー・ウッダ
京都在住の鬼才 密室ドラムマシーン・ソウルSSW。ヴィンテージ・カセットテープMTRにて制作された楽曲は中毒性あるビートと浮遊感あるメロディで聴くものをインナー・トリップの世界へ導いてくれる。英DJジャイルス・ピーターソンのラジオでプレイされ、ミュージック・マガジン 2020年9月号 特集「日本音楽の新世代 2020」 の10組に選出される。また2020年12月にリリースした2nd album『Inner city pop』はele-king Vol.26 の「ベストアルバム2020」にてベスト5に選ばれた。
未だ所在不明なサイケデリック・ヒップホップを響かせながら、2020年代ポップ・アイコン最有力アーティストである。
現在までに1st album『urban brew』(2020年 流通:WOTNOT)、2nd album『Inner city pop』(2020年 流通:ULTRA VYBE)、1st single『I shit ill』(2021年 流通:JETSET)をリリース。

Mustafa - ele-king

 アルバム・タイトルの「煙がのぼるとき」は、ムスタファことムスタファ・アーメドが属しているラップ・クルーであるハラル・ギャングの一員であったスモーク・ドーグが銃撃に巻きこまれて死亡した出来事に由来している。トロントの公営住宅で貧しさのなか育ったアーメドにとって暴力と死は日常であり、幼馴染や仲間がいつ死ぬか怯えて暮らすことでもあった。その悪い予感はいくつか現実になり、アーメドは仲間たちに哀悼の詩を詠み、このアルバムは生まれた。
 ムスタファ・ザ・ポエットの名で10代の頃からストリートで過酷な日常についての詩を発表していたアーメドは、同郷カナダのドレイクにフックアップされ、ザ・ウィークエンドの楽曲への参加などで少しずつ知られるようになり、シンガーとなったリリシストである。24分弱しかないこのデビュー・アルバムにはアコースティック・ギターやピアノがすすり泣くようなバラッドが8曲収められている。そこには仲間たちの死の記憶と悲しみが横溢し……アーメドは自身の音楽を、「インナーシティ・フォーク・ミュージック」と呼んでいる。貧しさのなかで多くの男たちがギャングになっていくような環境のなかで、アーメドはジョニ・ミッチェル、レナード・コーエン、そしてリッチー・ヘヴンズの影響を受け、フッドの日々をフォーク音楽に昇華したのである。
 フォーク・ミュージックと言っても、ジェイミーXXジェイムス・ブレイクの参加に象徴されるように、本作にはおもに音響処理において2010年代のエレクトロニック・ミュージックの手法が入っている。多くの論者が「ゴーストリー」と呼んだ初期ジェイムス・ブレイクの音響はオリジナル・ダブステップに由来するものだが、だとすれば、ダブステップにおいて暗喩的に「都市の亡霊」と呼ばれたサウンドはこの『When Smoke Rises』にまで繋がり、ついにメタファーではなくなったと見なすこともできる。アーメドにとって、本作のなかで息をしている死者たちは紛れもなく具体的に顔のある者たちのことだからだ。彼が「あまりにパーソナルでアルバムには入れないと思っていた」という “Ali” はアルバムのハイライトのひとつだが、そこでは、命の危険があるから街を離れるよう友人に懇願したアーメド自身の記憶が綴られている。「お前は街を去るべきだったんだ/俺はお前に行くように言ったんだ/安全じゃないとお前に言っただろう」。だがアリは死に、アーメドはむせび泣くように、祈るように歌を捧げることしかできない。

 しかしながらアーメドの個人的な記憶は、世界で起きていることと無関係ではない……もちろん。穏やかなアコースティック・ギターの演奏とムスタファの柔らかい歌声が寄り添う “Stay Alive” は、故郷のリージェント・パークが再開発で変わりつつあることが背景にあるという。「これらのすべての罠、これらのすべての道路標識は、お前のものでも俺のものでもない/だけど俺がお前の帝国になるから/だから生きて、生きて、生き延びてくれ」──あまりに感傷的な歌と言えばそうだが、そこにはジェントリフィケーションと経済格差によって破壊されゆく都市の風景が映りこんでいる。
 もうひとつ興味深いのは、アーメドにとってギャングスタ・ラップはギャングたちの日常をリアルに描いているという意味でつねに重要なものだったそうだが、ピッチフォークのインタヴューによれば、スフィアン・スティーヴンスの『Carrie & Lowell』がもういっぽうのインスピレーション元になったということだ。同作はスティーヴンスが複雑な関係だった母親の死に際し彼女との記憶を美しい音の連なりへと封じこめたものだったが、アーメドも友たちの死をそのようにしたかったと。「犯罪歴しか残らない者たちの記憶を、自分は結晶化できないだろうか?」と考えたと彼は語っている。
 サンファとジェイムス・ブレイクが参加した曲はゲストの音楽性にやや引っ張られているところもあるが、それでもこれは、何よりムスタファ本人の内側から生まれたものだ。ギャングスタ・ラップの厳めしいリアリティと『Carrie & Lowell』の壊れそうな繊細さが結びついて、『When Smoke Rises』は聴く者の胸を締めつけるフォーク音楽となった。公営住宅の過酷な現実の当事者でない自分が、この音楽を聞いて悲しい気持ちになることにまったくの後ろめたさがないわけでもない。自分は友たちが銃弾に倒れるようなことは経験していないし、アーメドの背景にあるブラック・ムスリムとしての生き方について知識があるとも言えない。それでも「もしお前が許されなかったら?」と仲間の死後の苦しみを悲嘆する(イスラムの信仰を背景とした) “What About Heaven” が突き刺さるのは、これがいま、自分が生きている世界で地続きに起きている悲劇についての歌だと……彼の声を聴くと直感するからだ。バラッド(民衆の詩)として、彼の個人的な悲しみはコミュニティの悲しみとなり、やがて関係ないとされている場所で生きているわたしたちの悲しみとなる。だからこのアルバムは、あまり目を向けられることのない場所で死んでいった者たちへの、文字通りのレクイエムとして鳴っている。そこでは誰もが静かに涙を流し、癒えることのない痛みに浸ることを赦されるのである。

RP Boo - ele-king

 昨年の年末号でマイク・パラディナスが予告していたとおり、フットワーク初期の重要人物、シカゴのRP・ブーのニュー・アルバムが〈Planet Mu〉からリリースされる。タイトルは『Established!』で、9月17日発売。彼にとっては4枚めのフルレングスにあたる。
 同作より “All My Life” が先行公開中だが、いや、これがすばらしいトラックなのだ。こいつはアルバムも傑作の予感がひしひし、かなり期待できるんじゃないでしょうか。2021年の、絶対に聴き逃せない作品がまたひとつ増えそうだ。

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