「IR」と一致するもの

Parris - ele-king

 まさに新機軸といった感じで、ここからいくつものビートの可能性が解き放たれ、新たなフロアの景色を見せてくれそうな、そんな気分になるエレクトロニック・ミュージックのアルバムだ。もしかしたら数年後に「あの曲が」というような感覚の作品になるかもしれない。DJカルチャー的な「流れ」も意識しながら、そのサウンドはツールの枠には収まらないオリジナリティに溢れている。ポスト・コロナにリリースされた多くのDJたちによる、レイドバックした「リスニング向け」のサウンドとは少々距離感のある、攻めたダンス・グルーヴの遊び心を隅々まで満足させてくれる、それでいて刺激的なリスニング体験を用意した、そんなアルバムでもある。

 ロンドン生まれ、ハックニーとトッテナムを行き来し育ったというドウェイン・パリス・ロビンソンのプロジェクト。ダブステップ~ベース・ミュージックのシーンに衝撃を受け、しかしシーンへの参入の当初は、どちらかといえば裏方で、2010年前後は、レコード店、BM Soho で働きながら、ベース・ミュージックの新たな波を用意したロンドンのレジェンダリーなパーティ《FWD>>》に足繁く通っていたそうだ。そのうちにダブステップの最重要レーベル〈TEMPA〉のスタッフとして2013年から4年間働きはじめる。スタッフをしながらも、WEN とともに〈TEMPA〉からのシングルでデビュー。その後はその折衷的なDJと決して多くないリリースながら、まさに旬の、テクノとベース・ミュージックにまたがる名門レーベルから作品をリリースすることによって評価をモノにしてきた。具体的に言えば〈Hemlock〉、〈The Trilogy Tapes〉、〈Idle Hands〉、〈Wisdom Teeth〉など、2010年代後半のUKを象徴するレーベルばかりだ。ダブのベースラインを基礎に、リズムの冒険によってシンプルにエレクトロニック・ミュージックとしてのうまみを追求しているといった印象がある。DJツールとしての、フォーマットによるある種の機能美と実験性と、ダンス・サウンドのふたつの側面から言えば、やはりジャンルに帰属しがちな前者よりは、折衷的かつ多様なスタイルで、後者に重きがある作品を作り続けている。だからといってDJカルチャーと距離を取った作品はほとんどないのも事実だ。そのへんもあり、それぞれのシングルはひとりの人間が作っているとは思えないほど多種多様な音楽性を持ち、それゆえにどこかミステリアスな魅力に溢れてさえいる。そしてそれは本作の多彩なサウンドと同様、根底で共鳴しながらバラバラながらもパリスというアーティスト象を作っているともいえる。

 最近のトピックでは、本作リリース・レーベルとなる〈can you feel the sun〉の立ち上げではないだろうか。共同設立人は、ファブリックのミックスCDのリリースやセカンド・アルバム『Arpo』の高い評価、同様のベース・ミュージックとテクノやハウスの汽水域から出てきた同世代のスター、コール・スーパーである。本作でもコラボレーターとして、そして彼のサポートも大きな要素となったようだ。

 こうしてベース・ミュージック・シーンの注目株として、じわりじわりとその評価をあげてきたパリスがリリースした『Soaked In Indigo Moonlight』。いや、しかし冒頭に書いたように新機軸の塊といった感じでとにかく刺激的な楽曲が続く。ポスト・ポスト・ダブステップなジェネレーションらしく、分厚いサブべースこそ、その世界の基底を定めるがごとくアルバム1枚を通して鳴り響いているがそのリズムは恐ろしく多様だ。Carmen Villain をフィーチャーした “Movements” では、ウェイトレスなグライムをどこかディープ・ハウス化したようなトラック、そして本作の外側でも一気にブレイクしそうなキラー・ポップ・トラック “Skater's World with Eden Samara” では、女性ヴォーカルを使ったアフロ・スウィングなダンスホールを、続く “Contorted Rubber”、もしくはIDM的な質感の “Sleepless Comfort” ではつんのめったジュークのグルーヴを、ジャングルを解体した “Crimson Kano” “Poison Pudding” といった楽曲たちが続く。こうした刺激的にもほどがあるリズムに対して、テクノ的な繊細なメロディを重ねていく。またリズム・アプローチ以外にもモンド~イージー・リスニング的な感覚をベース・ミュージックに落とし混んだ “Laufen in Birkencrocs” などなど、いやいちいち突っ込んでいると無限に書けてしまいそうなアイディアがそこかしこに点在している。

 本作を聴いて思い出したのは〈リフレックス〉の作品群だ。彼らが1990年代後半から2000年に用意した、テクノの可能性──アートでグリッジなエレクトロニカでも、ストイシズムが貫くミニマルなテクノでもない、ある種のポップさも内包し、DJカルチャーに刺激されたグルーヴを持ちつつ、それでいてベッドルームの自由さを謳歌するスタイルたち。それによって持ち込まれたテクノの多様さの可能性は後に考えれば非常に大きなものだったが、あの感覚と同じものが本作には息づいていると言えるのではないだろうか。と、書いていながら、“Poison Pudding” がプラグ(ルーク・ヴァイバート)の初期作に、“Laufen in Birkencrocs” はマイク&リッチーあたりの作品に聞こえて………。しかし、もちろん、そのサウンドはオマージュというには過ぎるほど、アップデートされた音像と刺激がある。本作にはエレクトロニック・ミュージックの遊戯性とDJカルチャーが生んだグルーヴの喜悦、その間で生き生きと作られたベッドルーム・テクノの新たな姿が描かれていると言えるだろう。


interview wuth Geoff Travis and Jeannette Lee - ele-king

 以下に掲載する記事は、2021年7月に刊行された別冊エレキング『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの世界』に掲載の、〈ラフ・トレード〉の創始者、ジェフ・トラヴィスと共同経営者ジャネット・リー(『フラワーズ・オブ・ロマンス』のジャケットで有名)、ふたりへのインタヴューです。現在のUKインディ・ロック・シーンに何が起きているのか、UKインディに起点を作った人物たちがそれをどう見ているのか、じつに興味深い内容なのでシェアしたい思い、ウェブで公開することにしました。
 〈ラフトレード〉については日本でも多くの音楽ファンがその名前と、だいたいの輪郭はわかっていると思う。しかしながらこのレーベルが、マルクス主義とフェミニズムを学んだ人物によって経営されていた話はあまり知られていない。このあたりの事情については、ele-king booksから刊行されたジェン・ペリー(ピッチフォークの編集者)が書いた『ザ・レインコーツ』に詳述されている。ま、とにかく、彼=ジェフ・トラヴィスには彼が望んでいる未来がありました。彼の志はおおよそ正しかったのですが、未来とは予想外の結果でもあります。さてさて、彼がポートベローに小さなレコ屋を開いてから45年、“UKインディ・ロック”はどこに向かってるのでしょうか。どうぞお楽しみください。


2021年はスリーフォード・モッズの素晴らしい『スペア・リブ』からはじまった。 by Alasdair McLellan

数多くのエキサイティングなバンドがいま浮上してきている、間違いなくそう思う。ただ、今回の違いと言えばおそらく、いま出てきている若いバンドの多くは本当に素晴らしいプレイヤーたちだ、ということでしょうね。テクニック面でとても秀でている。

ここ数年、日本から見て、UKのロック・シーンから活気が生まれているように感じます。スリーフォード・モッズのような年配もいますが、とくに若い世代から個性のあるバンドが何組も出てきて、このコロナ禍においてパワフルな作品を出しているように見えます。おふたりは70年代からずっとUKのロック・シーンの当事者であるわけですけど、いまぼくが言ったように、現在UKのロック・シーンは特別な状態にあると思いますか? 

ジャネット・リー(JL):ええ、数多くのエキサイティングなバンドがいま浮上してきている、間違いなくそう思う。ただ、今回の違いと言えばおそらく、いま出てきている若いバンドの多くは本当に素晴らしいプレイヤーたちだ、ということでしょうね。テクニック面でとても秀でている。若いバンドはたまに、数曲プレイできるようになり、髪型とルックスをかっこよくキメたらツアーに出てしまい、成長するのはそこから……ということもあるわけだけど(苦笑)、いま飛び出してきているバンドの多くは、テクニックの面ですでにとても優れていると思う。しかも彼らの多くはカレッジあるいは音楽校、たとえばブリット・スクールやギルドホール・カレッジ(ギルドホール音楽演劇学校)等に通った経験もあるから、ツアーに出る前に楽器演奏をしっかり学んでいる、という。いま起きていることの違いのひとつはそこだと、わたしは思う。

ジェフはいかがでしょう? ジャネットの意見に賛成でしょうか?

ジェフ・トラヴィス(GT):ああ、賛成。(苦笑)だから、わたしたちはいつだって意見が一致するんだ! 

JL:(笑)

GT:興味深いと思うのは我々が十代だった頃はいまのような音楽学校はなかったことでね。ブリティッシュ・ミュージック・シーンはある意味アート学校で生まれたようなものだ。実際に学生だった者だけではなく、アート校周辺に集まった連中も音楽をやっていた。それに、ピート・タウンゼントのように実際にアート学校に通った人びともいた。
 けれどもいまや、さまざまな音楽学校がそれに代わったわけだ。かつ、70年代には職がなければ失業手当の申し込みができ、政府からわずかのお金が給付された。飲食費に充てるのではなく家賃のためにね。
 ところが現在では、政府給付を受けるのははるかにむずかしくなっている。それに大学やカレッジといったアカデミックな道を望まない、あるいは義務教育以上に進学したくないキッズで、それでも音楽を本当に愛しているとか、何かをクリエイトするのが大好きという者たちは、先ほどジャネットが名前を挙げたような新たなタイプの音楽校に向かうわけだね。
 リヴァプールや南ロンドンをはじめ各地にそういった学校があり、彼らはそこに3年通ったり、専門校他の違ったタイプのカレッジに通い、音楽を学べる。実際、それが大きなサポートになっている。ミュージシャン同士がそうした学校で出会い、バンドを結成し、プロジェクトをやったり。たとえば、ミカ(・リーヴィ)の通った、キャンバーウェル(南ロンドン)にあるあの学校はなんだっけ? あるいは、ジョージア・エレリー(ブラック・カントリー・ニュー・ロード、およびジョックストラップ)が行ったのは……

JL:スレイド美術校? いや違う、ジョージア・エレリーが通ったのはギルドホール。

GT:ああ、ギルドホールか。ああいった面々は本当に才能あるミュージシャンであり、相当なカレッジに通ってね。

JL:でも、そればかりとは限らないし——

GT:たしかに、生まれつき才能のある者もいる。

JL:——ただ、彼らが基準を高く定めていく、と。

GT:ああ、レヴェルを上げる。違う世代ということだし、そこだね、70年代からの変化と言ったら。

JL:そう。

GT:思うに……それに70年代は、ある種60年代を引きずっていたとも言える。というわけで、カウンター・カルチャーの発想がいまよりももっと優勢だったのではないかな?

JL:(うなずいている)

GT:だから、若者はちゃんとした職に就こうとはしない、弁護士や医者になるつもりはない、といった調子で、親が子に望む生き方と逆の方向に向かったものだ。けれども、彼らはそういう考え方をしていないよね? いまのキッズは違う。

JL:ええ、それはない……。ということは、いまのキッズには反抗する対象があまりないということでしょうね、かつてのわたしたちと較べて(苦笑)。

GT:ああ。それにおそらく、まだ親と暮らしているだろうしね。

JL:でしょうね。

GT:なにせひとり暮らしをしようにも、家賃が高過ぎて無理だから。その違いは大きい。UKにおいて、音楽は歴史的に言っても、我々がいつだってかなり得意としてきたところでね。我々にいくらかでもある才能のうちのひとつだ。だからイングランドでは常に、新たな面白い音楽が生まれてくる。
 もっとも、ムーヴメントというのは正直、定義しにくいものでね。我々はその面は大概、社会学者やそれらについて書く音楽ジャーナリストの手に委ねておく。我々はとにかく、いま音楽をやっている人びとのなかで我々がベストだと思う者たち、我々全員がエキサイトさせられる連中を見つけようとするだけだ。
 とはいえ、うん、間違いなくひとつのムーヴメントがあるね。あの、歌うのではなくて、たとえばマーク・E・スミスやライフ・ウィズアウト・ビルディングスのスー(・トンプキンス)がやっていたような、歌詞を吐き捨てるごとくシャウトする一群の連中がいる。ドライ・クリーニングやヤード・アクト、スクイッドブラック・カントリー・ニュー・ロードといった連中、彼らがああいう風に「歌う」歌唱ではなく、「語る」調の歌唱をやっているのは興味深いことだ。

UKにおいて、音楽は歴史的に言っても、我々がいつだってかなり得意としてきたところでね。我々にいくらかでもある才能のうちのひとつだ。だからイングランドでは常に、新たな面白い音楽が生まれてくる。

これら新たなバンドがどんどん出てきているのには、何か社会/文化的なファクターがあると思いますか? それとも、じつはずっとこの手のバンドは存在し活動していて、シーンもあり、それがいまたまたメディアに発見され、脚光を浴びているのでしょうか? 

JL:新しいシーンはいつだって進行していると思う。常にね。そして、いつだってメディアがそれを取り上げ、命名するものだ、と。ただ、さっきも話したように、現在起きていること、おおまかに言えば南ロンドン&東ロンドン・シーンになるでしょうけど、それを他と区別している点は、新たなバンドのミュージシャンシップだと思っている。専門的な腕の良さ、彼らが技術的に非常に堪能であること、この新たな一群とこれまでとを画している違いはそこになるでしょうね。というのも、ほら、たとえばパンクの時代には、そこから離れていく動きがあったわけでしょう? 

たしかに。

JL:パンク以前は、人びとは技術的にとても達者だったし、(苦笑)ギターでえんえんとソロを弾いたり(苦笑)。そしてパンクが起こると、楽器が上手なのはまったくファッショナブルなことではなくなり、誰もそれをやりたがらないし、誰も聴きたがらなくなった。その側面は長い間失われていたけれども、こうしていま、人びとが再び音楽的な才能を高く評価する、そういうフェーズに入っているということだと思う。本当に、ちゃんと演奏ができる、という点をね。

GT:それもあるし、いま、ロンドンには非常に活況を呈しているジャズ・シーンもある。それは珍しいことでね。新世代の若い黒人のロンドン人たちが、ジャズを再び新しいものにするべく本当に努力を注ぎ込んでいる。それはずいぶん長い間目にしてこなかった動きだし、そこもまた、新しいバンドのいくつかのなかに入り込んでいる気がする。サキソフォンやホーン、ヴァイオリンなど、一般的なバンドでは耳にしないサウンドが聞こえるし、それも彼らにとってはノーマルな部分であって。そこはある意味興味深い。

たしかにジャズも勢いがありますし、新世代バンドのなかにはやや70年代のプログレが聞こえるものがあるのは、興味深いです。

JL:ブラック・ミディでしょ(笑)?

GT:ああ。

(笑)はい。なので、いまの世代は、パンクだ、プログレッシヴ・ロックだ、ヒッピー音楽だ、という風にジャンルを分け隔てて考えていない印象があります。影響の幅が非常に広いな、と。

GT:その通りだね。我々が本当に驚かされてきたのもそこで、たとえばブラック・ミディの3人と話すとする。で、彼らの音楽的知識、その幅、そして歴史的な理解は全ジャンルにわたるものであり、とにかく驚異的だね、本当に。わたし個人の体験から言っても、あの年齢で、あれだけさまざまな音楽や知名度の低いアーティストについて詳しい人びとに出会ったことはいままでなかった。ジャズ・ギタリスト、フォーク・ギタリスト、カントリー&ウェスタンのプレイヤー、ロカビリーのギター・プレイヤー等々。それはまあ、インターネットが人びとの音楽の聴き方の習慣を変え、あらゆるものへのアクセス路をもたらしたからに違いないだろうけれども。

JL:しかも、彼らは音楽学校に入るわけで。そこでも教育を受け、音楽史等について学ぶ。

GT:ああ、そうだね。にしても、彼らの音楽への造詣の深さ、あれにはただただ舌を巻くよ。

若手のシェイムをはじめ、ゴート・ガール、ドライ・クリーニング、スクイッド、ブラック・ミディ、ワーキング・メンズ・クラブ、ヤード・アクト、ザ・クール・グリーンハウス、コーティング、ブラック・カントリー・ニュー・ロード、ビリー・ノーメイツスリーフォード・モッズやアイドルズなどなど……彼らをポスト・パンクと括ることに関してはどう思われますか? 


ゴート・ガールの『On All Fours』もよく聴きました。 by Holly Whitaker

GT:ルイ・アームストロングはかつてこう言ったんだ、「音楽には良いものか、悪いものしか存在しない。わたしは良い類いの音楽をプレイする」とね。

JL:(笑)その通り。

(笑)ええ。

GT:いやもちろん、わたしも理解しているんだよ。ジャーナリストは数多くの原稿を文字で埋め、何かについて書かなくてはならないわけだし、物事をジャンルへとさらに細かく分け、そこに名前をつけようとするのは理にかなっている。けれども、ミュージシャンのほとんどはそれらのカテゴリーのなかに入れられるのが正直好きではないし、とくにジャンルに関して言えば、これらのバンドたちは、別の世代がやったのと同じようにカテゴリーを認識してはいない。非常に多様でメルティング・ポットな影響の数々が存在しているからね。ポップをやることも恐れないし、かと思えば次はフォーク、今度はソウル・ミュージックをプレイする、という具合だ。たとえばブラック・ミディは今日、ホール&オーツのカヴァーをやってね。

(笑)なんと!

GT:あれはまさか彼らから?と思わされた変化球だった(苦笑)。

JL:(笑)それに、彼らはブルース・スプリングスティーンの曲もカヴァーしたことがあって。あれにも――かなり驚かされたわね。でも、個人的に言えば、わたしはカテゴリーは別に気にしてはいない。とにかく、いいものか、そうではないか。何かしら胸を打つものか、あるいはそうではないか。それだけの話であって。わたしたちの心に響き感動させられるもの、わたしたちが惹き付けられるのはそれ。これまで、わたしたちが「あの新しいムーヴメントのなかから誰かと契約しなくてはらない」という風に考えたことは一度もなかったと思う。そうした考えは一切入り込まないし、とにかく本当に才能があるとわたしたちの見込んだ人びとと会ってみるし、その視点から物事を進めていくことにしているだけ。彼らをグループとして一緒にまとめているのは、新聞のほう(笑)。

(苦笑)はい、我々の側ですよね。承知しています。

GT:(笑)。

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若い子たちはスリーフォード・モッズにあこがれていると思う。ちょっとしたヒーローだし、若い人たちの見方もそれだと思う。彼は自分の考えをはっきり外に向けて出しているし、しかも人生経験もちゃんとある人だから。

多くの若いバンドが2018年あたりに登場していることで、ブレグジット以降のUKの社会/政治状況が間接的に影響を与えているという解釈がありますが、あなたがたはどう思われますか? 若者の多くは未来に不安を感じているでしょうし、とても不安定な状況なわけですが。

GT:そこは非常に大きい部分を占めていると思う。たとえばゴート・ガール、彼女たちの書くこと、プレイしている曲、何もかもがそうしたことによって形成されていると思うし、彼女たちは社会の崩壊や、現在の世界の状態を非常に強く意識している。というか実際彼らのほとんどは、いまどういうことになっているかについてかなり強い意識があると思う。これらのミュージシャンの多くが演奏している音楽は、必ずしもストレートにコマーシャルだとは言えない類いのものなわけで、そういうことをやるためには、実は本当にやりたい音楽を「自分たちはこう感じている」とプレイし、言いたいことを言うしかない。人がどう考えるだろうか?と気にするのはある種の検閲であり、忌まわしいことと言える。
だから、(商業的ではなく)やりたい音楽をやっているということは、彼らがはただ単に保守的に順応するのではなく、いわば自分たち自身の道を進んでいる、その現れだね。ただ、いまの時代において、成功という概念はとても混乱させられるもので。

JL:そうね。

GT:やっていることを気に入ってくれるオーディエンスを見つけること、それがサクセスなんだろうね。かつ、音楽をプレイすることで生計を立てられる、それが多くのミュージシャンの夢だよ、実際。彼らがまず到達しようとする第一着陸地点がそこだろう。

JL:ええ。それにわたしは、このCOVIDのロックダウンやもろもろの後で、かなり大きなクリエイティヴィティの爆発が起こるんじゃないかと期待している。人びとは集まってクリエイトすることができずにいたし、おそらく彼らも、音楽を作りクリエイティヴでいるために何か別の方法を思いつかなければならなかったでしょうから。で、「必要は発明の母」なわけで、きっとここから何かが出てくると思う。大きな、クリエイティヴな爆発が起きるでしょうね。

シャバカ・ハッチングスの素晴らしい新作はロックダウン下で制作されたはずですし、おっしゃるように、今後UKからさらに多くの素晴らしい音楽が出てくるのを期待したいです。

JL:そうね。

〈ラフ・トレード〉では、ゴート・ガール、ブラック・ミディ(そしてスリーフォード・モッズ)を今回の特集のなかでフィーチャーさせてもらっています。どちらの新作も大好きなので、個別に話を訊かせてください。まずはゴート・ガール。このバンドこそぼくには70年代末の〈ラフ・トレード〉的な感性を彷彿させるものがあるように思います。ザ・レインコーツのような、独自の雑食性があって、しかも女性を売りにしない女性バンドです。

GT&JL:うんうん。

おふたりにとって、このバンドのどこが魅力ですか?

JL:彼女たちは……非常に音楽的だからだし、彼女たちの作っていた音楽をわたしたちが気に入ったのはもちろん、しかも彼女たちはとても意志の強い、興味深い、若い女性たちであって。彼女たちのような若い女性たち、強い心持ちがあり、自分たちが求めているのは何かをちゃんと知っている女性のグループと一緒に仕事できるというのは、わたしたちにとって非常に魅力的だった。というのも、ああいうグループは、決して多く存在しないから。

ええ、残念ながら。

JL:そう。だから、これまで彼女たちと一緒に仕事してこられて、こちらも非常に嬉しいし満足感がある。

ブラック・ミディはほとんどアート・ロックというか、なんでこんなバンドが現代に生まれたのか嬉しい驚きです。ブリット・スクールで結成されたのは知っていますが、だいたいダモ鈴木と共演していること自体が驚きです。彼らはいったい何者で、どんな影響があっていまのようなサウンドを作るにいたったのでしょう? 『Cavalcade』を聴いていると、エクスペリメンタルですが、XTCみたいなポップさもあるように思います。

JL:……(ジェフに向かって)この質問はあなたに譲る。

GT:(苦笑)えっ!

(笑)説明するのが楽ではないかもしれませんが。

GT:むずかしいね、というのも彼らは本当に風変わりで、とても型破りだから。たとえばジョーディ(・グリープ)、ギタリストでメインのシンガーのひとりである彼だけれども、彼は相当にエキセントリックなキャラクターだ。非常に個性的な人物だし、ああいう人間には滅多にお目にかからない。で、そこは本当に彼の魅力のひとつでもある。
まあ……我々はほかとはちょっと違う人びとを、普段出くわさないような人びとを常に讃えてきたよね。いい意味で、とは言えないような、やや興味深い人びとを。だがジョーディはとても教養があり、知識も豊富で、しかも実に素晴らしいミュージシャンだ。それに彼はとてもいい形で、自分のやっていることの本質を理解している、というのかな。彼は楽しいことをやりたい、スリリングかつ楽しいものにしたいんだ。それは非常にいい考え方だ(笑)。 

JL:たしかに。彼らのもっとも魅力的なところのひとつは、彼らには境界線が一切なさそうだ、ということで。とにかく彼らは、そのときそのときで自分たちの興味をそそることならなんだってやるし、自分たち自身を「我々はこういうバンドであり、やっているのはこういうこと」という風に見ていない。自分たちにとって興味深く、スリリングなものであれば音楽的にはなんだってやる。彼らは恐れを知らないわけ。

GT:しかも、それをやれるだけの能力も備えている。それは珍しいことだ(笑)。

JL:そう、そう。能力があり、恐れ知らず。彼らはほかの人間がどう考えるかあまり気にしていないし、自分たち自身を楽しませている。そこに、わたしたちは非常に魅力を感じる。

なるほど。でも、レーベルとしては、そんな風になんでもありで形容・分類できないバンドな、逆にマーケティングしにくいのではないか? とも思いますが。

GT:新しく、前代未聞ななにか、というね。それはその通りだし、だからこそエキサイティングなのであって。

JL:でも、その意見はおっしゃる通りで、彼らをマーケティングするのはとてもむずかしかったかもしれない。ところが実際はどうかと言えば、これまでわたしたちがしっかり付き合ってきたなかでも、彼らはもっともマーケティングしやすいバンドでね。なぜなら彼らには自分たちで考えてきたアイデアがあるから。自分たちをどう提示するかについて、本当にいいアイデアを持っている。その意味でもやっぱり、「境界線がない」という。彼らがとてもいい案を思いついてきて、こちらはそれらのアイデアをサポートしてきた。だからこれまでの彼らのマーケティングは、楽しかったとしか言いようがない。そもそもアイデアがちゃんとあるから、かなり楽にやれる、という。

質問にあった、ザ・フォールやパブリック・イメージのようなバンドは現在でも出てこれるか? に対するわたしの回答は、絶対に出てこれるだろう、そう思う。

今回我々が取り上げているような、ここ数年出て来たバンドのなかで、もっともいまの時代を言葉によって的確に表現できているバンドは何だと思いますか?

JL:それはもう、あなたが親であれば、彼らはあなたの子供であってみんな愛しいし、「この子」とひとつだけにスポットを当てるのはとてもむずかしい、というのがわたしの感覚であって(苦笑)。

(笑)すみません。

JL:(笑)でもまあ、スリーフォード・モッズには山ほどある。いまの世界の状況とUKの状況について、彼らには言いたいことがいくらでもある。だから、ある面では、たぶん彼らでしょうね。一方で、ゴート・ガールは、女たちにとって本当に大事なことを言葉にして歌っている。先ほど言ったように、ブラック・ミディは境界線も恐れも知らなくてアメイジングで――だから、この一組、という話ではない。そうやって選ぶのはこれからもないでしょうね。

GT:ああ。それに、我々全員が惚れ込んでいる、キャロライン(Caroline)という新人バンドもいる。8ピースのグループなんだが。

はい、知っています。

GT:うん。彼らのやっている音楽もわたしたちみんながとても、とても愛しているものだ。興味深いんだよ、あのバンドは共同し合い作業できる者たちによる一種の集団で、コミュナルな、恊働型でね。しかも8人と大規模なグループだから、その力学を見守るのも興味深い。それにこれらのグループはいずれも、もっとショウビズ的なロックンロールとしての価値も備えている。たとえばスリーフォード・モッズ、あるいはブラック・ミディの演奏を観に行くと、実際のイヴェントが、ショウとして、パフォーマンスとして、とにかくファンタスティックなんだ。それゆえに彼らのメッセージ、あるいは彼らの言わんとしていることに対して懐疑的になってしまうかもしれないが、とにかく素晴らしい一夜のエンタテインメントになってもいて。それもまた、彼らのやろうとしていることの一部なんだ。


内省的だった2021年に、場違いな騒々しさをもたらしたブラック・ミディ。

それではサウンドの面で、おふたりにとってもっとも斬新に感じるバンドはどれでしょうか?

GT:我々はいま、アイルランドのフォーク・ミュージックにとても入れ込んでいる。あの音楽は現在非常にいい状態にあるし、ランカム(Lankum)、リザ・オニール(Lisa O’neill)、 イェ・ヴァガボンズ(Ye Vagabonds)、ジョン・フランシス・フリン(John Francis Flynn)といった面々が大好きでね。新たな世代による伝統的なアイリッシュ・フォークの再解釈ぶり、あれはアイルランド音楽に久々に起きたもっともエキサイティングなことではないかと我々は思っている。実際、70年代初期以来のことだ。(※上記アクトはいずれも〈ラフ・トレード〉、もしくはジェフとジャネットが音楽ライターのティム・チッピングと始めたフォーク音楽を紹介するための傘下レーベル〈River Lea〉所属)

なるほど。

GT:それだけではなく、文学界も興味深くなっている。労働者階級や少数派文化の背景を持つ作家の作品がもっと出版されるようになっていて、それは出版界ではかなり久々のことであり、本当にエキサイティングな展開だ。他のレーベル所属アクトのライヴはあまり観に行かなくてね(苦笑)……

JL:ミカ・リーヴィ(Mica Levi/ミカチュー名義で〈ラフ・トレード〉から2009年にアルバム・デビュー)は、〈ラフ・トレード〉外ね。彼女も以前〈ラフ・トレード〉所属だったけれども、いまは自分自身で活動している。わたしたちは彼女が本当に大好きで。

同感です。最近はサントラ仕事を多くやってきましたよね。ものすごい才能の持ち主だと思います。

JL:ええ。彼女は本当にアメイジング。

いまの若いロック・バンドは、Z世代やミレニアルに属している子たちも少なくないと思うのですが、昔のロック・バンドのようにまずドラッグ(大麻は除く)はやらないし、酒に溺れることもないですし――

GT&JL:(苦笑)。

また、人種問題や環境問題、フェミニズムにも意識的だと人伝いに聞いています。おふたりから見てもそう思いますか? 70〜80年代のロックンロール・ピープルとは違う、と?

JL:間違いなくそう。わたしは確実に彼らから勉強させてもらっているから。彼らは食生活も健康的で、お酒も飲まないし、PC(政治的に正しい)でもあって(笑)。

(笑)口の悪いスリーフォード・モッズは除いて。

JL:(笑)その通り。ただ、あなたの言う通りで、若い人たちのアプローチの仕方は本当に違う。だから、むしろわたしたちの方が彼らから学べると思う(苦笑)。彼らの方が、かつてのわたしたちよりももっと妥当なルートをたどっている——というか、いまですらわたしたちはその面はダメかもしれない(笑)。

GT:フフフッ!

スリーフォード・モッズのようなバンドは、質問者のようなオヤジ世代にしたら堪らないバンドですが、UKの若い子たちはジェイソンのことをどう思っているのでしょうか? いまのバンドに彼らの影響はあると思いますか?

JL:若い子たちは彼にあこがれていると思う。彼はちょっとしたヒーローだし、若い人たちの見方もそれだと思う。彼は自分の考えをはっきり外に向けて出しているし、しかも人生経験もちゃんとある人だから。

階級闘争と文化闘争の問題についてはどう思われますか? つまり、いまのUKの文化、音楽はもちろんテレビ/映画界等の担い手から労働者階級が昔にくらべて激減し、文化が富裕層に乗っ取られているという話です。PiLやザ・フォールのようなバンドは現代では出にくい状況にあるという。

GT&JL:フム……(考えている)

ある意味、より複雑な状況のように思えます。たとえば先ほどおっしゃっていたように、いまバンドをやっている人びとにはカレッジやブリット・スクールに通った者もいて、親の学費負担もそれなりでしょうし。

GT:それは部分的には誤解だね。ブリット・スクールは実は学費を払わないで済む学校だから。

ああ、そうなんですか!

GT:あれは有料校ではないはずだし、それ自体があの学校の意義であって。入校するためにオーディションを受けるとはいえ、学費は払わないでいい。金持ちの子供のための、彼らが世に出る前に教養を積む学校だ、と思われているけれども実はその逆。才能さえあれば誰でも入校できるし、労働者階級の面々もブリット・スクールに通っている(※通訳より:ブリット・スクールに通ったことのある有名なアクトであるエイミー・ワインハウスもアデルも労働者階級なので、これは当方の理解不足です)。そこは思い違いだし、ブリット・スクールの側ももっとPRをやってその点をはっきりさせるべきだな。とはいえ、ファット・ホワイト・ファミリーのようなバンドもいるわけで……(ジャネットに向かって)彼らはどんな連中なんだい? 労働者階級?

(笑)。

JL:……(考えている)

GT:あれは、また別の系統だ。

JL:彼らは彼らだけの無比階級(笑)!

GT:そうだね、たしかに他にいない。彼らは違う感じだ。ただ、とりわけいまのロンドンのミュージシャンにとって、彼らは非常に影響力の大きいバンドでね。まあ、いろいろな人間が混じり合っていると思うし、労働者階級の面々にもいずれ、リッチな層と同じくらい、音楽界に入っていく可能性が訪れると思う。

JL:でもわたしは、いまは中流〜中流よりちょっと上の階級の人びとがバンドに多い、その意見は本当だと思う(笑)。それは本当にそうだと思うし。ただ、人生における何もかもがそうであるように、物事はさまざまなフェーズを潜っていくものであって。たとえば70年代には、お洒落で高そうな学校に通ったことがあってバンドをやっていると、あざ笑われることがかなり多かったと思う。
けれども、とにかくいまはもうそんなことはないし、もっと人びとが混ざり合っている。だから、そうした類いのタブーが消えたんだと思う。もっと混ぜこぜだし、いまはもっと、しっかり教育を受けた若者たちがバンド活動と音楽にのめり込んでいる、そういうものではないかと思うし、とにかく時代は変化している、ということなんでしょうね。ある意味、わたしたちは向上した、というか。

なるほど。そうしたタブーは逆差別にもなりますしね。中流やそれ以上の階級の人間であっても、音楽作りが好きでバンドをやりたければやっていいわけで。

JL:でも、スリーフォード・モッズ、間違いなく彼らは、そうしたバックグラウンドからは出て来ていないし。それに、質問にあった、ザ・フォールやパブリック・イメージのようなバンドは現在でも出てこれるか? に対するわたしの回答は、絶対に出てこれるだろう、そう思う。仮にわたしたちが明日彼らのライヴを観に行き、素晴らしかったら、その場で契約しているでしょうし。要は才能があるかないか、それだけの話だと思う。

1970年代末のポスト・パンク時代にはサッチャーという大きな敵がいましたが——

JL:(苦笑)ええ。

いま現在のロック・バンドにとって当時のサッチャーに匹敵するものとは何だと思いますか? 

GT:たぶん、内務大臣のプリティ・パテルは国でもっとも人気が低いんじゃない? 

なるほど。

GT:彼女は嫌悪の対象だ。けれども、現政府が若者たちの多くに対して発してきた嘘の山々、あれはとにかく過去に前例のないひどさという感じだ。いやおそらく、過去にも同じだけの嘘をつかれてきたんだろうが、かつては秘密のとばりにもっと隠されていたのが、いまやもっとあからさまになっている、ということなんだろうね。
で、先ほど君が言っていたように、いまの若者はもっと政治に関して意識的だし、この国でいま何が起きているかについてとても詳しい。気象変動をはじめとするさまざまな問題に対するアクションの欠如も知っているし、それを我々も過去数年起きてきた大規模なデモ行動の形で目にしてきたわけで。

BLM運動など、いろいろありますね。

GT:そう。とはいえ、君の指摘は正しいよ、マーガレット・サッチャーがある意味、若者を団結させた存在だった、というのはね。「この政府はうんざりだ」と彼らも思ったわけで(苦笑)。

JL:でも、あの頃も保守政権だったし、いまも保守政権なわけで。

GT:そうだね。憂鬱にさせられるのは、この保守党政府がしばらく長く続きそうな点で。そこは最悪だ。

政治・社会状況が困難であるほどアートは活発になると思うので、それを祈りましょう。でも、ということはボリス・ジョンソン首相はサッチャーほどの「敵」として見られてはいない?

GT:ああ、彼もそうだけれども、うん……

JL:……いまは、保守党全体がそういう感じで(苦笑)。

何人ものサッチャーから成り立つ政党、と。

JL:そう。だから、単純に「このひとりを敵視する」という象徴的な存在はいない。

GT:でもミュージシャンにとっては、ボリス・ジョンソンはミュージシャンがヴィザ無しで欧州に渡り、ライヴをやり、現地でお金を自由に使うのを許可する協定をEUとの間で締結しそこねた、という事実があるわけで。まだ駆け出しのバンドが外に出て行ってプレイするのは不可能な話だし、ミュージシャンには深刻だ。若いバンドに限らず誰であれ、欧州で演奏するのが以前よりもっとずっとむずかしくなっている。現政府のアートに対する感謝の念の欠如、そこにはただただ、ショックを受けるばかりだ。

それもありますが、まずはCOVID状況の克服が先決ですよね。それが起きればライヴ・セクターも回復するでしょう。音楽界にとってもまだまだ困難な時期は続きますが、〈ラフ・トレード〉の活況を祈っています。

GT&JL:ありがとう。

(初出:別冊エレキング『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの世界』2021年7月刊行)


(追記)
 ついでながら、ぼく(野田)が気に入っているのは、ドライ・クリーニングとブラック・ミディ、次点でスクイッドです。2021年の洋楽シーンは良い作品が多かった、それはたしかでしょう。が、コロナ禍ということがあってだいたいが内省的だった。そんななか、ブラック・ミディから聞こえる場違いな騒々しさとスクイッドの“Narrator”には元気をいただきました。
 というわけで、ブラック・ミディ、スクイッド、ブラック・カントリー・ニュー・ロードの最新インタヴュー掲載の紙エレキング「年間ベスト・アルバム号」、どうぞよろしくお願いします。(ロレイン・ジェイムズの本邦初インタヴューもありまっせ)

interview with Jun Miyake - ele-king

 ジャズ、ロック、エレクトロニカ、クラシック、現代音楽、フランスやブラジルをはじめ世界各地の音楽など、多彩な音楽の要素をハイブリッドに融合し、映像性も豊かに展開する作曲家、三宅純の音楽は、ユニバーサルにしてパーソナル。聴き手の五感を刺激し、自由な想像の世界へと誘う。
 80年代、10代で日野皓正に才能を見出され、USAボストンのバークリー音楽大学で学び、帰国後、ジャズ・トランペッターとして活動をはじめた三宅純は、既成のジャンルにとらわれず冒頭に記した多彩な音楽を飲み込んで、独自の音楽世界を築いてきた。この15年余りは、パリを拠点に活動し、映画、演劇、舞踏、CMの音楽なども手がけ、中でも舞踏家・振付家、故ピナ・バウシュのドキュメンタリー映画『ピナ/踊り続けるいのち』(ヴィム・ヴェンダース監)の音楽は名高い。
 海外でも高い評価を得た三部作のアルバム『Lost Memory Theatre』(2013~2017年)に続き、2021年12月に発表したニュー・アルバムが『Whispered Garden』。東京、ヨーロッパ、南北アメリカで主にリモート録音をおこない、世界各国の多彩な歌手と演奏家が参加した新作について、話を聞いた。

「時間の流れる速さや順番が、訪れるたびに異なる庭園」というところに落とし込もうと思って。その庭園に行くと同じ曲が「あれ? この曲さっき別の人が歌っていなかったっけ? でも何かが違う」みたいになってるような。

『Lost Memory Theatre』の三部作が完結して次のチャプター、この『Whispered Garden』の構想に着手したのはいつでしたか?

三宅純(以下JM):構想、コンセプトが先ではなく、2015年ぐらいから単発で思いついた曲を作っていったのですが、実はアルバム・タイトルが全然決まらなくて、ほぼ全曲、出揃った後に、これは何か庭園にまつわる作品なのかもしれないと気づいたんです。「ガーデン」という言葉が最初に出てきて、歌手のリサ・パピノーに「ガーデンを使ったタイトルを思いついたら全部教えて」と相談して、自分でもいっぱい提案して、結局5~60個は出たと思います。そうこうするうちに『トムは真夜中の庭で』という本のことを思い出して。小さい頃に読んだ本なのでディテールはあまり覚えてなかったんですけど、ウィキペディアで粗筋を読んだら、これはもしかしたらアルバムと同じ世界観かもと思ったんです。「ガーデン」という言葉をどこかから囁かれた気がしたので、『Whispered Garden』というタイトルにしました。

このアルバムを最初に聴いたときに、三宅さんの脳内を旅行しているようなイメージが勝手に浮かんできました。いまうかがった、曲から作っていったというプロセスの影響があるんでしょうか。

JM:パンデミックをはさんだ、自分の環境も含めていろんなことがめまぐるしく変わっていった時期なので、脳内光景みたいなものが変わっていったのは確かだと思います。『トムは真夜中の庭で』の粗筋で僕がいちばん「あっ!」と思ったのは「時間の流れや速さや順番が訪れるたびに異なる庭園」というところで、それは僕が描きたかった、自分の中の世界と外の世界が交わるところでもある気がして。

今回もいろんな国の、いろんな分野のミュージシャンが参加しています。中でも「おっ!」と思ったのが2曲に参加したジャズのレジェンド、デイヴ・リーブマンでした。彼との出会いからはじまる歴史を聞かせてください。

JM:最初に彼の音を聴いたのは高校生のときだったと思います。彼が入ったマイルス・デイヴィスのバンドや菊地雅章さんのユニットはじめ、いちばんよく聴いてたのは、エルヴィン・ジョーンズの『Live at the Lighthouse』、スティーヴ・グロスマンとの2サックスのバンドでした。その頃から、彼らのフレージングがいちばん好きで、僕もトランペットでああいうふうに吹きたいと思っていました。76年に18歳でニューヨークに行って日野皓正さんのお宅に2カ月ほど居候してた頃、日野さんがデイヴ・リーブマンのバンドのメンバーになり、彼のロフトでのリハーサルに連れてってくれたんです。そこで初めて間近で見て、リハーサルが終わった後、スティーヴ・グロスマンも遊びに来てセッションになり、2曲ぐらい参加させてもらったんです。太刀打ちできないなっていう印象しかなかったですけど。そこで初めて個人的な接点がありました。向こうは覚えてないですけどね、自分のところに1回来ただけの若造のことなんて。

日野(皓正)さんがデイヴ・リーブマンのバンドのメンバーになり、彼のロフトでのリハーサルに連れてってくれたんです。リハーサルが終わった後、スティーヴ・グロスマンも遊びに来てセッションになり。太刀打ちできないなっていう印象しかなかったですけど。

今回、デイヴ・リーブマンとコンタクトをとったきっかけは?

JM:流れとしては本末転倒なのかもしれませんが、宮本大路というサックス奏者が亡くなってしまい(注:2016年、ガンで他界。享年59歳)、彼が生きてたら「じゃあここはちょっと、グロスマンとリーブマンを混ぜた感じで」とお願いしてたと思うのですが、いっそのこと一足飛びに本物まで行っちゃえ、というのが発想の原点です。

アルバムにはいま話に出た宮本大路さんの演奏もあります。他にも、以前のアルバムの中で聴いていたような既視感をおぼえる瞬間が何度かあって、ベタな言い方ですが音楽にもサステナビリティがあるのかなあ、なんて感じてしまいました。

JM:サステナビリティ(笑)! 彼(宮本氏)の存在は自分の音楽にとってすごく大事で、作り込んだ青写真を混ぜ返してくれると言うか、裏を見せてくれるようなところがあって、曲を書いていると彼の演奏が聞こえてくることがあるんですね。でも新しい演奏をしてもらえないことになっちゃったので、過去に録りためたものから、いわゆるウィリアム・バロウズ的なカットアップで、嵌めていってるんです。なので既視感がそこから生まれるかもしれません。ただ “Progeny” は、2015年に録った未公開の曲です。他の人の演奏の中にも、以前の音源をまたもってきたものもあります。アート・リンゼイのノイズ・ギターとか。それなりに大変な作業なんですけどね、全部掘り起こして、ここならハマるかなあという試行錯誤……。

“Undreamt Chapter” は2020年、TOKION(webカルチャーマガジン)の依頼で作った曲ですね。近年、大活躍のピアニスト、林正樹さんが参加していて、おそらく初共演だと思いますが、彼と知り合ったのはいつ頃ですか?

JM:僕の、めったにやらないライヴによく来てくれていることを大路くんに聞いてたんです。で彼が鬼怒無月さんとアコーディオンの佐藤芳明さんとやってるバンドでパリに来たときに紹介されたのが、10年くらい前でしょうか。その後、CMで演奏をお願いして以来、折に触れて参加していただいています。とても優秀な演奏家ですね。

“Le Rêve de L’eau” で歌っているアルチュール・アッシュ。昔からいろんな関係があったと思いますが、今回の参加に至るストーリーを教えてください。

JM:アルチュールにとって、それが名誉かはわからないんですけど、この曲は最初、デヴィッド・シルヴィアンにお願いするつもりで、どんなコラボにするか、2ヶ月ほど往復書簡を続けていたんです。彼はクリエイションに関して本当に真摯で、過去の自分を再現したくないって思いが強くて、もしかしたら引退するかもってところから、「君とだったらやってみようかな」というところまでは揺り戻せたんです。でもこの曲を聞かせたら、「過去の自分が聞こえてくる」と言われて、それはそうかもなぁと、アラビック・レゲエのような曲も作ってみたのですが「それでもやっぱり歌うと自分になっちゃう」と。結局、今回のアルバム・リリースには間に合わないということになったんです。それでもこの曲は収録したかったので、事情は伏せてアルチュールに聞いてもらったところ、ぜひやりたいと言ってくれたんです。彼は表現も存在感も独特で素晴らしいですよね、音域によって声の響きが変わるのが興味深いです。

“Time Song Time” を歌っているブロン・ティエメンは、初共演ですね?

JM:この曲はそもそもイメージとして、ギャヴィン・ブライアーズの “Jesus Blood Never Failed Me Yet” や、ハル・ウィルナーがプロデュースしたウィリアム・バロウズの “Falling in Love Again” といった酔いどれの雰囲気が欲しくて、このパンデミックの世へのララバイを作ってみたかったんですね。で、リサ・パピノーを通じて、彼女と同じバンドにいたことがあるブロン・ティエメンを知りました。彼は独特のライフスタイルで生きていて、曲の最後のほうで喋ってるところは自分で作った言語だったりして。不思議な才能なんですよ。

ブラジルの音楽家では、前作に続いてブルーノ・カピナン、そしてヴィニシウス・カントゥアリアは久々の参加ですね。

JM:ヴィニシウスにはいままで、ギターでは何度か参加してもらってたんですが、歌ってもらったのは『Innocent Bossa in the mirror』(2000年)以来です。ヴィニシウスが歌った “Parece até Carnaval” と同じメロディーが、ブルーノの歌った最後の曲 “Arraiada” で、途中まで出てくるんですが、これは最初、ブルーノに作詞と歌を頼んだんです。ただ、大サビのメロディーに詞をつけられずに止まっちゃって、そのうちに彼がコロナにかかってしまいました。それをヴィニシウスに伝えたらすぐに歌詞を付けて歌ってくれたんです。しばらくしてブルーノから治ったという連絡が来たので、それならアレンジを変えて大サビ違いの曲も作ってみようと。ライナーノーツにも書いた「時間の流れる速さや順番が、訪れるたびに異なる庭園」というところに落とし込もうと思って。その庭園に行くと同じ曲が「あれ? この曲さっき別の人が歌っていなかったっけ? でも何かが違う」みたいになってるような。

究極的には時間を操作したい、支配したいっていうか。それはつまり過去と未来と現在の共存でもあり、それが混濁した世界でもあり。音楽にはそういう力があると思うので。

三宅さんの音楽には、最初にお話しした脳内旅行の面と同時に、聴き手の僕たちに、個々の幼児体験だったり風景だったり、「あれ? これって……」というデジャ・ヴ現象を引き起こす力があると思います。

JM:それは僕にとっても嬉しいコメントです。究極的には時間を操作したい、支配したいっていうか。それはつまり過去と未来と現在の共存でもあり、それが混濁した世界でもあり。音楽にはそういう力があると思うので。

作曲に関して、パンデミック以前と以降で変わったところ、違いなど、ご自身で感じられてますか?

JM:特にTOKIONの依頼で作った “Undreamt Chapter” は、打ち合わせが最初の緊急事態宣言の前夜、六本木だったんですよ。街も雰囲気が違っていて、これから何が起こるんだっていう緊迫感がすごかったですね。でも帰宅すると、窓から見える景色は全く平穏で、静と動のコントラストが面白くて、僕にとっては今回のパンデミックの象徴みたいなのがこの曲。これが分岐点でした。

こんな時代ではありますが『Whispered Garden』をライヴで展開するとしたら、『Lost Memory Theatre』のライヴと編成などは変わりますか?

JM:近年やらせていただいたライヴは、いろんなものに対応できる編成だったので、あの16人編成を許していただける境遇であれば、このアルバムも再現できます。このアルバムは、パンデミック以降に書いた曲が9曲、それ以前の曲と、7/9ぐらいの割合ですね。

2005年からパリを拠点に活動されてきて、いまはコロナ禍で長期間、日本におられますが、今後の活動拠点のプランは何かありますか?

JM:目下それが最大の悩みです。そうこうしているうちにヴィザが切れちゃったんですよ。苦労してスタジオを作りこんだ家も、再来年の2月か3月までしかいられないことになって。それと日本のインフラの整ったところに比べると、パリは熾烈な環境なんですよ。家の中で水害が起こるとか、郵便が届かないとか、暖房が止まるとか、ネットが来ないとか、あらゆることがなぜか週末に起こる。週末だと誰も修理に来てくれないんですよね。そこにもう一回、立ち向かえるかなっていう不安もあり、もうパリにも16年住んでいるから、ちょっとヴィジョンを変えたいなって気持ちも実はあるんです。じゃあどこか、というのがすごく難しくて、例えばイタリアなら、食事は美味しいし、暖かいところ、海がきれいなところもあるし、いいなあと思うんですけど、インフラ的にパリと変わらないし、言葉もわからないですからね。じゃあ英語圏となると、いまのところ40年ぶりにニューヨークっていうのが有力ではあるんですけど、ニューヨークもずいぶん変わったと聞くので、一回行ってみないとわからない。いろいろと逡巡してますが、まずはパリの家を整理しにいくのが先決かもしれません。

 インタヴューの数日後、『Whispered Garden』リリース前夜祭と銘打って全曲を試聴しながら、ジャケットに作品を提供した画家、寺門孝之氏とトークするイヴェントが開催された。
 興味深い裏話もたくさん聞けたが、ひとつだけ発言を引用しておきたい。『Whispered Garden』には、三宅純がばりばりのジャズ・トランペッターだった20歳前後の時期に作曲した “1979” があり、そこでは当時から敬愛していたデイヴ・リーブマンが演奏している。また、ニーノ・ロータやクルト・ワイル、そしてこのふたりへのトリビュート・アルバムをプロデュースし三宅純との交流も深かったハル・ウィルナーへのオマージュが感じられる曲もある、彼の個人史を垣間見ることができるアルバムとも言える。このことについて彼はこう語った。

「自分の好きなものを隠さない」

 簡潔にして正直、そして見事な説得力! 年輪とキャリアを重ねた三宅純はいま、新たなチャプターを迎えている。そんな想いがした。

稀代の音楽家 “三宅純” が大作『Lost Memory Theatre』三部作完結から4年の歳月を経て導き出した最新作『Whispered Garden』発売&LP(2枚組)のリリースも決定!

[参加ミュージシャン]
デイヴ・リーブマン、リサ・パピノー、ヴィニシウス・カントゥアーリア、アルチュール・アッシュ、コスミック・ヴォイセズ・フロム・ブルガリア、ブルーノ・カピナン、ダファー・ユーセフ、アート・リンゼイ、ヴァンサン・セガール、クリストフ・クラヴェロ、コンスタンチェ・ルッツァーティ、宮本 大路、渡辺 等、山木 秀夫、伊丹 雅博、内田 麒麟、村田 陽一、勝沼 恭子 ほか

ご購入/ストリーミングはこちら
https://p-vine.lnk.to/aXoERz

アーティスト:三宅純
タイトル:Whispered Garden
発売日:【CD】2021年12月15日 / 【2LP】2022年5月11日
定価:【CD】¥3,300(税抜 ¥3,000) / 【2LP】¥6,600(税抜 ¥6,000)
品番:【CD】PCD18890 / 【2LP】PLP-7793/4
発売元:P-VINE

-収録曲-

【CD】
01.Untrodden Sphere
02.Hollow Bones
03.Counterflect
04.The Jamestown Bridge
05.Paradica
06.Farois Distantes
07.Undreamt Chapter
08.1979
09.Fluctations
10.Seshat
11.Parece até Carnaval
12.Progeny
13.Le Rêve de L’eau
14.Witness
15.Time Song Time
16.Arraiada

【LP】
SIDE A :M1-M4
SIDE B :M5-M8
SIDE C :M9-M12
SIDE D :M13-M16

三宅純official
https://www.junmiyake.com/
https://twitter.com/jun_miyake

Contact - ele-king

 コロナ禍で迎える年末年始のカウントダウン・パーティ、渋谷コンタクトの「New Year’s Eve Countdown Party 2011-2022」には、BOREDOMSの∈Y∋のライヴをはじめ、あっこゴリラと食品まつりとの共演、なかむらみなみのライヴほか、滝見憲司ほか、Contactでお馴染みのDJやMOTORPOOLのレギュラー陣、ファビュラスなDrag QueenやGoGo Boysも加わって、2022年の幕開けをお祝いする。

Félicia Atkinson & Jefre Cantu-Ledesma - ele-king

 フランスのエクスペリメンタル・アンビエント・ミュージック・アーティストのフェリシア・アトキンソン(エクスペリメンタル・レーベル〈Shelter Press〉運営者としても知られている)と、アメリカのノイズ・アンビエント・アーティストのジェフリー・キャントゥ=レデスマ(Tarentel、The Alps としても活動し、〈RootStrata〉の共同創設者としても知られている)の新作コラボレーション・アルバムが〈Shelter Press〉からリリースされた。

 「真夏の冬」と題されたこのアルバムは2021年の新しいアンビエント・ミュージックにおける最高の達成のひとつである。サウンドの質、構造、構成、そのどれもが瀟洒なガラス細工のように磨き上げられているのだ。澄んでいて透明。精密でやわらか。部屋に流しているだけで空間の凜とした空気が変わる。まさに「真夏の冬」のごとき音響作品である。美しくて浮遊するようなサウンドスケープは絶品としか言いようがない。
 
 フェリシア・アトキンソンとジェフリー・キャントゥ=レデスマのコラボレーション・アルバムは今回が初ではない。2016年に『Comme Un Seul Narcisse』、2018年に『Limpid As The Solitudes』の二作を〈Shelter Press〉からすでに発表している。どちらも10年代のエクスペリメンタル・ミュージックを代表するといっていいアルバムである。ちなみにこれら二作のアルバムは、ギー・ドゥボール、ボードレール、ブリオン・ガイシン、シルヴィア・プラスなどから導かれたコンセプトや引用によって成り立っているというのだから、このふたりの文学や芸術への造詣の深さもわかるというものである。

 そんなフェリシア・アトキンソンとジェフリー・キャントゥ=レデスマの出会いは2009年にさかのぼる。そこからふたりの音源のファイル交換がはじまったという。交換された音楽ファイルは積み重なり、やがてそれが先の二作のアルバムへと結実した。
 対して本作『Un Hiver En Plein Été』は、アトキンソンとキャントゥ=レデスマのふたりが初めてレコーディング・スタジオに入り、対面して録音した音源が基礎となっているアルバムである。録音は2019年8月にブルックリンでおこなわれた。つまり最初の出会いから10年後の出来事であり、コロナウィルスが世界を覆うほんの少し前の時期だ。
 そこで録音された音源は、まるでガラス細工を精密に加工するように、ふたりによって磨き上げられ、本アルバムに収録された宝石のような美しい音響音楽に生まれ変わったというわけだ。

 アトキンソンは本作の録音を「遊び場」のようだったと述べている。加えて「ゴダールの『はなればなれに』(1964)おけるルーヴルでの慌しさに少し似ている」(あの有名なルーヴル美術館疾走のシーンだ)とも語っている。比喩が的確で、録音の現場の楽しさが伝わってくる。一方、キャントゥ=レデスマは本作の制作過程を「それ自身の心」を持っているようだと言い、「ふたりは一緒に乗り込んだ」とも述べている。両者の意見の相違も面白いが通底しているのはレコーディング・スタジオで「共に、対面で、作りはじめた」ことよる反応・変化であろう。
 じっさい新作『Un Hiver En Plein Été』は、これまでの二作と随分と趣の異なるサウンドスケープに仕上がっている。印象でいえば『Comme Un Seul Narcisse』、『Limpid As The Solitudes』のキャントゥ=レデスマ的なノイズ・アンビエント感覚でなく、フェリシア・アトキンソンのソロ作品(それも近作)で展開されるASMR的なアンビエントのムードに近いのだ。
 とはいえエレクトロニクスの多くをキャントゥ=レデスマが手がけているようである。推測するにこの「変化」は対面でのレコーディングによって、それぞれが直接的に影響を受け合ったからかもしれない。

 じじつ全6曲、まるで澄んだ空気のように、もしくは浮遊する時間のようなアンビエントが生成されているのだ。1曲目 “And All The Spirals Of The World” ではアトキンソンの声に導かれ、柔らかな質感のアンビエント・ドローンが展開する。音の心地よさで時間が浮遊するよう感覚を得ることができる。
 続く2曲目 “Quelque Chose” では澄み切った音色の美麗なピアノの旋律も交錯し、モダン・クラシカルな様相を見せはじめる。
 3曲目 “Septembers” ではクラシカルでありながら即興的なピアノに、環境音やアトキンソンの声が交錯し、そこにジャズのリハーサル風景のような音が重なる。いわば音が堆積していくような音響空間を実現しているのだ。ここから音響世界はよりディープになっていく。
 4曲目 “Not Knowing” では現代音楽的な無調のピアノに、より硬いノイズが細やかにレイヤーされていくトラックだ。これまでの美麗なムードから一変し、不穏なムードに満ちていることも特徴だろう。アルバム中、もっともエクスペリメンタルなトラックともいえる。
 5曲目 “Ornithologie” は2分48秒程度の短い曲だが、4曲目 “Not Knowing” から続けて聴くと、まるで爽やかな朝を迎えたような清冽なサウンドである。耳の感覚が一気に拓かれるような感覚を得ることができた。
 アルバム最終曲である6曲目 “The Hidden” は、環境音で幕を開ける。そこに煌めくような電子音と細やかな持続音が微かに重ねられ、やがてそれらが環境音の音世界に侵食・交錯し、時空間を変えていくような音世界を展開する。アンビエント/アンビエンスな電子音が、まるでクラシカルな曲のアダージョのように鳴り響く。「持続する電子音のオーケストレーション」とでも形容したいほどに美しいサウンドである。モダン・アンビエントの粋とでもいうような楽曲といえる。

 この『Un Hiver En Plein Été』を聴き終わったとき、真っ先に思い浮かんだのは、「2020年代のエリック・サティ」という言葉だった。家具の音楽から、インテリアの音響へ? 彼らはサティの音楽的コンセプトを現代に再現しているのではないか。
 さらにいえば『Un Hiver En Plein Été』の優雅な音響実験の数々は、タイプライターの音、ラジオの雑音、空き瓶やパイプを叩く音などを取り入れたサティが1917年に手がけたバレエ音楽『パラード』を受け継ぐような音楽のようにも聴こえた。
 こう考えると、20世紀初頭、1917年にサティがおこなった音の実験は、2019年から2021年にかけて新しい感性と知性と技術によって蘇生・新生したのかもしれない。それほどまでに、この『Un Hiver En Plein Été』には、深化した実験的音響音楽の魅惑が横溢しているのだ。

interview with Kinkajous - ele-king

 世界中でもっとも新陳代謝の激しい音楽シーンといえばイギリス、特にロンドンだろう。現在のジャズの世界でもそれは当てはまり、サウス・ロンドンはじめマンチェスターやブリストルなどから続々と新しいアーティストが登場している。キンカジューもそんなイギリスから生まれた新進のグループだ。キンカジューというユニークな名前は南米に住むアライグマ科の珍獣のことで、どうしてこれをグループ名にしたのかは不明だが、その名前どおりほかのバンドとは異なるユニークさを持ち、また自然界の音を巧みに取り入れている点も印象的だ。
 メンバーはサックス/クラリネット奏者のアドリアン・コウとドラマーのブノワ(ベン)・パルマンティエのふたりが中心となってセッションを重ねる中、そこへアンドレ・カステヤノス(ベース)、マリア・キアーラ・アルジロ(ピアノ)、ジャック・ドハーティー(キーボード)が加わって現在に至る。もともとロンドンではない場所に住んでいたアドリアンとブノワだが、その後ロンドンに出てきてキンカジューを結成している。従って、いわゆるサウス・ロンドン周辺のバンドとは異なるテイストがあり、アコースティック・サウンドとエレクトリックな質感のバランスなど、マンチェスターのゴーゴー・ペンギンあたりに通じるものも感じさせる。また、ジャックを除いてイギリス人ではないメンバー構成も、ロンドンのバンドの中において異色さを感じさせるところかもしれない。
 2019年にリリースした初のフル・アルバムとなる『ヒドゥン・ラインズ』がジャイルス・ピーターソンによるレコメンドを受け、またUKを代表する老舗レコード・レーベル&ショップである〈ミスター・ボンゴ〉の「トップ・オブ・アルバム2019」でベスト10内にセレクトされる。さらにはブルードット・フェスティヴァル、マンチェスター・ジャズ・フェスティヴァル、EFGロンドン・ジャズ・フェスティヴァルなどへ出演し、ロンドンの名門クラブであるジャズ・カフェでのショウがソールド・アウトするなど各方面から注目を集めるようになる。
 そして、2年振りの新作となるセカンド・アルバム『ビーイング・ウェイヴズ』は、ゴーゴー・ペンギン、ダッチ・アンクルズ、ウェルカーらを手掛けたマンチェスターを代表するプロデューサー/エンジニアのブレンダン・ウィリアムが制作に参加し、エレクトロニクスやオーケストレーションがクロスオーヴァーしたUKジャズの新たなる進化を予兆させるハイブリッドなジャズ・サウンドとなった。グループの中心人物であるアドリアン・コウとブノワ(ベン)・パルマンティエに、キンカジューの結成からファースト・アルバムにリリース、そして新作の『ビーイング・ウェイヴズ』に至る話を訊いた。

僕たちはふたりともフランス出身だけど、もうイギリスに14年住んでいる。他のメンバーはイングランド出身者もいれば、イタリアやコロンビアから来ている者もいる。でも、やっぱり僕たちのルーツはロンドンだと思っているよ。

まず、キンカジューの成り立ちから伺います。最初はサックス/クラリネット奏者のアドリアンさんとドラマー/プロデューサーのブノワさんが出会い、音作りをはじめました。そこから徐々にいろいろなメンバーが集まり、グループとなっていったと聞いています。そのあたりの経緯をお話しください。

ベン:まず、僕とアドリアンは数年前に出会ったんだ。そのときちょうど彼のバンドで新しいドラマーを探していて、この新しいプロジェクトをはじめる前の間は一緒にそのバンドでプレイしていた。僕たちはもっと柔軟にコラボレーションしたり、実験的にプロダクションを作れるような環境を作りたくて、そのときに生まれた土台こそが最終的にはキンカジューになった感じかな。僕たちはいくつかのライヴ・メンバーと一緒にプレイしてきたんだけど、デビュー・アルバムの『ヒドゥン・ラインズ』をリリースして以降は現在のメンバーで落ち着いているよ。ベースのアンドレとは音楽大学で知りあって、彼がピアノのマリア・キアーラを紹介してくれた。そのマリアがシンセサイザーのジャックを紹介してくれたんだ。それぞれのメンバーの繋がりがあってこそ生まれたバンドなんだ。

グループとして最初はマンチェスターで活動していて、その後ロンドンに拠点を移したのですか? ロンドンに移住するには活動していく上で何か理由などあったのですか?

アドリアン:誤解されることが多いけど、このバンドとしてはマンチェスターを活動拠点にしてたことはないんだ。最初からロンドンを拠点にしている。ロンドンに来る以前のことはもうだいぶ昔のことだから思い出すのが難しいなあ。マンチェスターには親しい友人はいるんだけど、キンカジューがスタートした場所ではないんだ。それに僕たちの故郷はバラバラだしね。バンドというか個人的な話になるけど、ロンドンの活気のある生活やスタイルは僕にとっては魅力的で、新しい経験やチャレンジを見つけるには完璧な街だったんだ。いまのところここでの出来事すべてが最高だし、望んでいた通りの街だよ。

そうですか、マンチェスターの話をしたのはゴーゴー・ペンギンの拠点の街であり、あなたたちとゴーゴー・ペンギンには共通する要素もあるかなと感じ、それがマンチェスターという土地柄にも関係するのではと考えたからです。話を少し変えますが、ゴーゴー・ペンギンが有名なマンチェスター、サウス・ロンドン・シーンが注目されるロンドンと、同じイギリスの都市でもそれぞれ違う個性を持つジャズ・シーンかと思いますが、あなた方から見てそれぞれ違いはありますか?

アドリアン:UKには世界の最前線で音楽を新しい方向に発展させてきた長い歴史があって、その中でここ数年間はジャズというジャンルはクリエイティヴィティーがピークを迎え、そこから多くの恩恵を受けていると思うよ。僕が考えるにいまのサウス・ロンドンのジャズはアフロビートからルーツが来ていて、マンチェスターはもっとエレクトロを軸にしたアプローチをしていると思う。しかしながらストリーミングが誕生したことやイギリス全体のとても活発的なシーンのおかげで、それぞれの地域のインスピレーションがミックスしてもっと面白いものが誕生していると思う。だからこそ自分たちなりのジャズと定義できるような新しいモノを作ることにいつも挑戦しているんだ。

ブノワさんとアドリアンさんは名前から察するにフランスとかベルギーあたりの出身のようですね? ほかのメンバーもイギリス的ではない名前が多いのですが、やはり世界の様々な国から集まってきているのですか?

ベン:僕たちはふたりともフランス出身だけど、もうイギリスに14年住んでいる。他のメンバーはイングランド出身者もいれば、イタリアやコロンビアから来ている者もいる。でも、やっぱり僕たちのルーツはロンドンだと思っているよ。もうここをホームにしてから長いからね。

別のインタヴューでそうしたメンバーの多国籍について、「作曲や演奏をする上で出身地はあまり関係がない」という旨の発言をしているようですが、とは言えほかのロンドンのバンド、イギリスのバンドとは違う個性がキンカジューにあると思います。その個性のもとを辿ると、そうしたほかの国の音楽や文化の影響もあるのではないかと思いますが、いかがでしょう?

ベン:アドリアンと僕はオーケストラにいたバッググラウンドを持っていて、ふたりともフランスでは大きなアンサンブルの中で演奏していたんだ。地域的なことよりも、そうした経験が僕たちの音楽に何かしらの影響を与えていると思うね。個人的にはプログレをたくさん聴いたり演奏したりして育ったから、すべての音楽的なテクニックにも興味があるんだけど、オーケストラでの経験がバンドという場所をエゴ表現する場所ではなく、グループ全体のサウンドとして表現するように向かわせたと思う。個々のプレイヤーではなく、指揮者/プロデューサーとしてバンド・サウンドを一番に考えるようにアプローチできるようになった。だから僕とアドリアンがある程度曲を作り上げてから、ほかのバンド・メンバーにそれを伝えていくという手法を取っているんだ。
僕たちの音楽は必ずしも地域や文化から影響を受けているとは的確には言い切れないけど、メンバーそれぞれがロンドンのシーンに参加する前の音楽体験は、どこかの部分で他にはない僕たちらしさを作り出していると思うよ。

そうして2019年にファースト・アルバムの『ヒドゥン・ラインズ』をリリースします。この中の “ブラック・イディオム” を聴くと、アドリアンの重厚なクラリネットに雄大なオーケストレーションが交わるオーガニックな作風ながら、随所にスペイシーなエレクトロニクスや動物の鳴き声のようなSEも混ざり、たとえばシネマティック・オーケストラなどに通じるものを感じさせます。ミニマルな質感を持つ “ジュピター” についてはゴーゴー・ペンギンに近い部分も感じさせます。変拍子を多用したブロークンビーツ調のリズム・セクションなど、クラブ・ミュージックのエッセンスも取り入れたジャズ~フュージョン作品というのが大まかな印象です。そして、ドラムやパーカッションの鳴り方に顕著ですが、ところどころに自然界の音を想起させるような仕掛けもあり、それがキンカジューの個性のひとつになっていたように思います。あなたたち自身は『ヒドゥン・ラインズ』についてどのような方向性で作っていったのですか?

ベン:『ヒドゥン・ラインズ』を作ったときのプロセスは、まだ自分たちが作りたい音楽を理解して、磨き上げている段階でもあったんだけど、その挑戦はとてもおもしろいプロセスだったよ。この制作はオーケストラ的なアプローチを目指した第一歩だったし、シンセを使ったのも野心的な試みだったんだ。このアルバムがリリースされるまでに多くのことを学べたし、その後のクリエイティヴ・ディレクションに対するヴィジョンも明確になったよ。そしてこのレコードを引っさげてツアーしている最中に、それはさらに明確になったとも言えるね。いまこのアルバムを聴くとまた面白いね。遠い昔の作品にも思えてくるけど、いまでも愛情を持てる大好きな作品だよ。とにかくいろんなコトを僕たちに与えてくれた作品だからね。

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サイレントを作ることでいちばん爆発してほしいところの威力が跳ね上がるからね。僕たちは自分たちの音楽で本当の意味で人を動かしたいと思っていて、この強弱の対比はとっても重要なんだ。

先ほども話したゴーゴー・ペンギンとの関係性について述べると、エンジニアを務めるブレンダン・ウィリアムスがあなたたちの作品制作にも関わっているとのことなので、自然と共通するテイストが生まれるのかなと思いますが、いかがでしょう? 彼は新作の『ビーイング・ウェイヴズ』についてもエンジニアをやっているのですよね?

ベン:ブレンダンとは僕たちがキンカジューとしてレコーディングするようになったときから一緒に仕事をしているんだ。彼は以前の作品をミックスしてくれたのと、『ビーイング・ウェイヴズ』でももうひとりのエンジニアのリー・アストンと一緒にエンジニアを担当しているよ。彼は洗練された素晴らしいエンジニアだからいつも一緒に仕事ができて光栄だよ。彼は僕らのクレイジーなアイデアにも付き合ってくれるし、それでいて全体のバランスを取るようにコントロールもしてくれる。ブレンダンは本当に素晴らしい仕事仲間であり友達でもあるんだ。もう家族のようなものだね。

そして、『ビーイング・ウェイヴズ』のストリングス・アレンジをするのは、先にリリースされたゴーゴー・ペンギンのリミックス・アルバムにも参加するシュンヤことアラン・ケアリーとここでも繋がりを感じさせるわけですが、こうした人たちとはどのように繫がっていったのでしょう?

ベン:アランはリーとブレンダンから紹介されたんだ。確か彼らはもともとマンチェスターの音楽仲間で一緒に仕事をしてたんだよ。アランは今作のストリングス・パートを去年のロックダウン中にリモートで彼のスタジオで録音してくれた。彼は僕らのヴィジョンをすぐに理解してくれたからレコーディングも早かったし、僕たちの予想を遥かに超えた素晴らしいアレンジで仕上げてくれた。僕たちは音楽で共通のセンスを持っていると確信したね。

『ヒドゥン・ラインズ』に続くセカンド・アルバムとして、『ビーイング・ウェイヴズ』は何かコンセプトやテーマなど設けて作りましたか? 基本的にはファーストの世界観を継承しているようですが、逆に何か変えてきたところなどあるのでしょうか?

ベン:『ビーイング・ウェイヴズ』は前作以上にオーケストラ的にプロデュースされた質感のサウンドを目指すアプローチを目指したよ。このアルバムのアイデアの核になっているのは、人それぞれが世界を違った風に認識すると同じように、僕たちのアルバムも人それぞれのリアルな感覚で聴いてほしいということだね。だから普段は合わさらないレイヤーを重ねて楽曲を作っている。僕たちは様々なプロダクションやサンプリングのテクニックを取り入れてリスナーにとって魅力的なモノを作り、いままで聴いたことのない幻想的で不思議な音だけど、なぜか再生してしまうようなサウンドを目指したよ。今回の制作はいままでと違ったから楽しくもあったけど、チャンレンジでもあった。いろんな方向性のサウンドがひとつにまとまったことを誇りに思うよ。

ジャズというよりもかなりインストゥルメンタルと呼ぶのに近づいた作品になったと思う。ジャズはプレイヤーに焦点をあてることが多いと思うんだけど、僕たちの音楽はもっとサウンドや質感や音の空間、そして楽曲の流れとかにフォーカスしているからね。

「前作以上にオーケストラ的にプロデュースされた質感のサウンド」という点でいくと、“イット・ブルームズ/ゼン・ナッシング” や “ジ・アイズ” などに見られるようにストリングスがより大きくクローズアップされ、強化された印象があります。それによって楽曲に有機的なイメージが増幅されていきます。先に述べたアラン・ケアリーがそのアレンジを担当するのですが、彼にはどのようなイメージを伝えてアレンジしてもらったのですか?

アドリアン:アランは僕たちが送った簡単な下書きやアレンジからストリングスのイメージを膨らませてくたんだ。僕たちは彼にヴィジュアルが浮かぶような質感のサウンドを作りたいとお願いした。レコーディングをするにあたって楽曲の長さやアルバムの中での立ち位置や意味、そしてヴィジョンもそれぞれ話し合ったよ。その後、彼が自分自身で自由に試行錯誤できるように十分な時間を与えたんだけど、それも今回のプロセスにとっては重要だったと思う。とても上手くいったね。

“ノームズ” や “ア・クワイエット・カオス” など、アンビエントなイメージの曲も印象的です。こうしたアンビエントやニュー・エイジ的な要素を取り入れるジャズ・ミュージシャンやバンドも昨今はいろいろ増えていて、たとえばイスラエルのリジョイサーがいたり、イギリスではアルファ・ミストがそうした作風のものを作ることもあります。キンカジューとしてはアンビエントについてどのように捉え、演奏や制作に取り入れているのですか?

ベン:僕たちの音楽は様々なモノが詰まった刺激的なスペースからできあがっているのだけど、ときには空白のスペースを作る作業が必要なときがあるんだ。その空白のスペースを作ることでそこから美しさ、脆さや静けさが浮き出てきてそれがエモーショナルに変わっていくんだ。ライヴでプレイするときにもサイレントな空白を作り出すのがいかに重要なのかがわかってきたし、音を空間として捉えて時間をかけて作っていくことが何よりも大事だと感じているよ。それがアンビエントの要素なのかもしれないね。サイレントを作ることでいちばん爆発してほしいところの威力が跳ね上がるからね。僕たちは自分たちの音楽で本当の意味で人を動かしたいと思っていて、この強弱の対比はとっても重要なんだ。

たとえば “クロークス” や “システム” などについて言えますが、今回のアルバムでもアコースティックな演奏とエレクトロニクスの融合が作品制作における大きな要素としてあります。イギリスのアーティストではポルティコ・カルテットリチャード・スペイヴンドミニック・J・マーシャルテンダーロニアスなど、こうしたアプローチをおこなうアーティストは多く、現代のジャズにおいてアコースティックとエレクトリックの融合はもはや抜きでは語れないものになっていると思います。キンカジューとして、アコースティックとエレクトリックの融合はどのようなバランスでおこなっていますか?

ベン:まず今作はジャズというよりもかなりインストゥルメンタルと呼ぶのに近づいた作品になったと思う。ジャズはプレイヤーに焦点をあてることが多いと思うんだけど、僕たちの音楽はもっとサウンドや質感や音の空間、そして楽曲の流れとかにフォーカスしているからね。今作では確かにそのポイントは重要で、アコースティックとエレクトロニックのサウンドのバランスをより細かく磨き上げるために、アコースティックのサウンドをより興味をそそるモノにして、エレクトロニックなサウンドをより親しみの生まれるようなサウンドにしたんだ。『ビーイング・ウェイヴズ』ではいくつかのアコースティックとエレクトロニックなサウンドの境目をなくすために、自分なりの手法をいろいろ試したんだ。

“ノームズ” で聴けるように、アドリアンさんの演奏ではバス・クラリネットが効果的に用いられています。現代のジャズ・シーンではバス・クラリネットを多用する人はあまり多くないと思うのですが、アドリアンさん自身はバス・クラリネットのどこに魅力を感じ、どのように用いているのですか?

アドリアン:僕はもともとクラリネット・プレイヤーで、そこからバス・クラリネットとテナー・サックスに転身したんだ。そして、バス・クラリネットはクラリネットとテナー・サックスの両方のアドヴァンテージを合わせ持っていると気づいた。それは奥行き、力強さ、臨場感を兼ね備えているのにもかかわらず、“ノームズ” でも表現できているとおり、柔らかく穏やかな音運びをサポートしてくれるんだ。僕たちはいつもどんな楽器でも使う準備ができていて、いつもその楽曲にどのようなサウンドが必要なのかを考えて、それにマッチするベストな楽器を選んでいるんだ。つねに新しいアイデアを試してみたいから、演奏する前にどの楽器を使うとかいうルールを楽曲制作の中では作りたくないんだよね。

ブノワさんのドラムに関しては、前作以上に複雑な変拍子の作品が多く、そうして生み出される多彩なリズムがキンカジューの特徴のひとつでもあります。ゴーゴー・ペンギンのロブ・ターナーはじめ、リチャード・スペイヴン、モーゼス・ボイドユセフ・デイズ、フェミ・コレオソ、トム・スキナー、ロブ・セッチフォード、エディ・ヒック、サラティ・コールワール、ジェイク・ロング、ティム・ドイルなど、現在のイギリスには優れたドラマーやパーカッション奏者が数多くいます。あなた自身は自分の演奏についてどのような特徴、個性があると思いますか?

ベン:面白いことにニュー・アルバムではほとんど変拍子を使用してはいないんだけど、それぞれのフレーズはいままで以上にイレギュラーにプレイされているんだ。僕のドラムのアプローチは自分がパーカッショニストとしてミニマルやシステム・ミュージックに強い関心を持っていたときのトレーニングに影響を受けていると思う。たくさんの細かいフレーズを作って、それぞれ重ねたり、並べたりしてひとつのモノにするようにリズムを組み立てて、それでいて、それぞれが最終的にはひとつの直線的な塊に聴こえるように目指しているんだ。僕はいつもお手本のようなプレイではなくて、自分らしいフレーズを繰り返したり、積み重ねるように心がけているよ。

今後の活動予定や目標などがあったら教えてください。

ベン:僕たちは既にいくつかのプロジェクトの準備を進めているよ。最近はVR空間をスタジオ ANRK と一緒に作っているんだ。来年公開できるように頑張っているところだよ。後はUKとヨーロッパで『ビーイング・ウェイヴズ』ツアーをするのが楽しみなんだ。パンデミックのせいで長らくツアーはできてなかったからね。あとは新曲も来年は作れたらいいなとはもちろん思っているよ!

Brian Eno - ele-king

 去る12月15日、ブライアン・イーノがロンドンのギャラリー、ポール・ストルパーと提携し、新たなアート作品を発表している。色彩の変化するLEDを搭載したアクリル製のターンテーブルがそれだ。署名入り&ナンバリング済みの、50台限定販売(すでに完売)。さまざまな色の組み合わせが発生するようになっており、すなわちこれまた彼が長らく探求しつづけてきた “自動生成” 作品のひとつということになる。
 インスタグラムに掲載されているイーノのコメントを紹介しておこう。「壁に絵がかかっているとき、とくにそれに注意を払わなかったからといって、なにかを見逃してしまったとは思わないでしょう。ですがそれが音楽や映像だった場合、わたしたちはついそこにドラマを求めてしまいます。わたしの音楽と映像作品は変化していきますが、あくまでゆっくりとした変化です。少しくらい見逃しても気にならない程度の変化なのです」。“非音楽家” の面目躍如。考えさせられます。



ELECTRONIC KUMOKO cloudchild - ele-king

 バルーチャ・ハシム&アキコの主宰するレーベル〈Plant Bass Records〉が、来年1月17日にコンピレーション『ELECTRONIC KUMOKO cloudchild』をリリースする。ふたりが創造した架空のキャラクター「KUMOKO」を、いろんなアーティストがエレクトロニック・ミュージックとして表現するというコンセプト。山口美央子&松武秀樹、サム・プレコップカルロス・ニーニョ、ジョン・テハダ、ロブ・マズレクマシューデイヴィッド、マニー・マーク、小久保隆など、USと日本から勢21人のアーティストが参加。あなただけのお気に入りの1曲を見つけよう。

[2022年1月13日追記]
 Spotify、Apple Music、Bandcamp などへのリンク先をまとめたページが公開されました。ご活用ください。
 https://plantbass.lnk.to/ELECTRONICKUMOKO

KUMOKOの世界とエレクトロニック・ミュージックの出会い。

『ELECTRONIC KUMOKO』は、2016年に初めてリリースされた『KUMOKO』コンピレーション・シリー
ズの第二弾。SunEye(アキコ&ハシム・バルーチャ)が考えた架空の雲の精霊、KUMOKOにインスパイアされた22曲のエレクトロニック・ミュージックが収録されている。

空の「大いなる目」から誕生したKUMOKOは、雲の子供であり自然界のクリエイター。KUMOKOは雲を使ってアートをクリエイトし、空を色鮮やかなに染め、雷を使って怒りを表現する。

アメリカと日本のアーティストがKUMOKOのストーリーを独自に解釈し、アンビエント、ミニマル、エレクトロ・ファンク、ダンス、エクスペリメンタル、環境音楽などあらゆるタイプのエレクトロニック・ミュージックが集結。

SunEyeが運営するレーベルPlant Bass Recordsから2022年1月17日にSpotify, Apple Musicなどからデジタルリリースが決定!

TITLE: ELECTRONIC KUMOKO cloudchild
ARTISTS: Various Artists
RELEASE DATE: January 17, 2022
FORMAT: DIGITAL
LABEL: Plant Bass Records
CATALOG NUMBER: PB005

https://plantbass.lnk.to/ELECTRONICKUMOKO

ELECTRONIC KUMOKO cloudchild Tracklist:
01. IMA & SunEye - Kumo Daisuki
02. Mioko Yamaguchi & Hideki Matsutake - KUMOKO Yume
03. Ray Barbee - Always Dreamin'
04. Sam Prekop - There is Kumoko
05. Jeremiah Chiu - Rocks Rise in Size
06. Carlos Nino & Friends - Found Scrolls of Hollow Earth (with Jamael Dean & Nate Mercereau)
07. TENTENKO - The Bug’s Dream
08. John Tejada - Kumoko’s Chase
09. BOY DUDE - KUMOKO - How can I reach you?
10. XL Middleton - Kumoko Takes To The Sky
11. YOKUBARI - Kumo Tono Kusen
12. Rob Mazurek - Future Energy Beam Song
13. Brin & Matthewdavid - imaginary creature clouds
14. Jira >< - Shores
15. lucky dragons - the wheel
16. r beny - Heart Leap
17. Yumi Iwaki & Eishi Segawa - Seed Cycling
18. Money Mark - Cloudy Kumoko
19. Takashi Kokubo - 雲を超えて-Kumo wo Koete-
20. Turn On The Sunlight featuring Thalma & Yohei - Kumoko Na Praia
21. SunEye - Yummy Cloud
22. IMA & SunEye - Kumoko Outro

参加アーティストについて:
80年代にリリースしたテクノポップ作品が世界的に注目されてい山口美央子とYMOとの活動で知られる松武秀樹、プロスケーター兼ミュージシャンのレイ・バービー、ザ・シー・アンド・ケークの活動で知られるサム・プレコップ、グラフィック・デザイナー兼ミュージシャンのジェレマイア・チュウ、ロサンゼルスの実験音楽シーンのキーパーソンであるカルロス・ニーニョ、アイドルから実験音楽家に転身したTENTENKO、LAテクノ・シーンのジョン・テハダ、ウェスト・コースト・ファンクの代表的アーティストであるBOY DUDEとXLミドルトン、ビジュアル・アーティスト兼ミュージシャンのYOKUBARI(ヒシャム・バルーチャ)、テキサス州マーファを拠点に活動するジャズ・アーティストのロブ・マズレク、Leaving Recordsのブリン&マシューデイヴィッド、新世代のジャズ・ピアニスト兼ビートメイカーのJiraことジャメル・ディーン、音楽とテクノロジーを追求するラッキー・ドラゴンズ、北カリフォルニアのアンビエント・アーティストr beny、日本で映画音楽の世界で活躍する岩城由美&瀬川英史、ビースティーボーイズやジャック・ジョンソンとのコラボで知られるマニー・マーク、環境音楽作曲家の小久保隆、フォークとエレクトロニクスを融合するターン・オン・ザ・サンライト、そして今作のキュレーターでもあるSunEyeが参加しています。

Instagram:
@kumokocloudchild
@suneyemusic
@plantbassrecords

Twitter:
@kumokosays
@suneyemusic
@Plant_Bass

ZEN RYDAZ - ele-king

 NITRO MICROPHONE UNDERGROUND の MACKA-CHIN と PART2STYLE の MaL、そして JUZU a.k.a. MOOCHY の3人から成るユニット、ZEN RYDAZ のセカンド・アルバムがリリースされている。
 ディジェリドゥや三味線、アラビック・ヴァイオリンなどが入り乱れ、ヒップホップやダンスホールやジャングルのリズムが揺らす大地の上を、多様なスタイルのラップや歌が駆け抜けていく。日本ラップのファンもベース・ミュージックのファンも要チェックです。

弛まぬ想像力によって昇華されたZEN RYDAZの2ndアルバムがリリース!

極東発HIP HOP x WORLD MUSIC!!!
新時代のベースミュージック・ユニット ZEN RYDAZ が豪華ゲストミュージシャン達と共に、廃墟の遊園地(宮城県・化女沼レジャーランド)にて満月の下繰り広げた1発撮りの奇跡のライブセッション! 朝陽へ向かう瞬間を捉えた貴重な映像作品とともにリリースされます。

https://www.youtube.com/watch?v=WnBh7LolsQw

映像制作は近年、絶景 x MUSICで話題を集めるTHAT IS GOOD。
ドローンによる風景美を得意とするチームとの連携により、独自の近未来感と映画的情緒を持つ唯一無二な作品が出来上がりました。

●ZEN RYDAZ
MACKA-CHIN, MAL, J.A.K.A.M. (JUZU a.k.a. MOOCHY)
●ゲストMC/シンガー
ACHARU, AZ3(RABIRABI), D.D.S, EVO, NAGAN SERVER, MIKRIS, RHYDA, 愛染eyezen, なかむらみなみ
●ゲストミュージシャン
GORO(ディジュリドゥ、ホーミー、口琴), KENJI IKEGAMI(尺八), KYOKO OIKAWA(アラビックバイオリン), 東京月桃三味線(三味線)

●発売開始日
2021年12月02日(木曜日)
CD: 2000円(税別)

各種サブスク、ストリーミング
https://ultravybe.lnk.to/zentrax2

CROSSPOINT bandcamp
https://crosspointproception.bandcamp.com/album/zen-trax2

NXS Shop
https://nxsshop.buyshop.jp/items/55581725

TRACK LIST
01. WISDOM 04:57
 Vocal: ACHARU / Digeridoo & Jews Harp: GORO
02. CLOUD9 03:19
 Voice: MIKRIS / Violin: KYOKO OIKAWA
03. CLOUDLESS MIND 04:22
 Voice: NAGAN SERVER / Shamisen: 東京月桃三味線 / Flute: GORO
04. KOKORO 04:33
 Voice: AZ3,EVO / Violin: KYOKO OIKAWA
05. QUEST 04:28
 Voice: RHYDA, ACHARU, NISI-P / Shakuhachi: KENJI IKEGAMI
06. SLOW BURNING 03:32
 Voice: D.D.S / Violin: KYOKO OIKAWA
07. CROSS-BORDER 04:01
 Voice: 愛染 eyezen / Turkish Flute & Jewish Harp: GORO
08. CANCANCAN 03:43
 Voice: なかむらみなみ
09. MIRRORS 04:21
 Voice: ACHARU / Violin : KYOKO OIKAWA
10. VEDA 05:36
 Voice: NAGAN SERVER & NISI-P / Shakuhachi: KENJI IKEGAMI

Total Time: 41:50

Arrangement: J.A.K.A.M.
Mix: J.A.K.A.M. (01,03,05,07,09) & MAL (02,04,06,08,10)
Mastering: Robert Thomas (Ten Eight Seven Mastering London / UK)
Logo, Illustration: USUGROW
Picture: NANDE
Photo: Nobuhiro Fukami
Design: sati.

PRODUCED BY ZEN RYDAZ (MACKA-CHIN, MAL, J.A.K.A.M.)

P&C 2021 CROSSPOINT KOKO-099
https://www.nxs.jp/

プロフィール
ZEN RYDAZ:

NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのMACKA-CHIN、PART2STYLEのMaL、JUZU a.k.a. MOOCHYことJ.A.K.A.M.
2019年、それぞれのフィールドで20年以上活動してきた同年代の個性派3人が、満を持してジャンルを越え“ZEN RYDAZ”としてWORLD MUSICをテーマに、メンバーが旅して得た世界観、常にアップデートされていく其々の感性、追及から生まれるスキルを結集し、21世紀的ハイブリッドサウンドver3.0としてここTOKYOでクラクションを響き渡らす。
MADE IN JAPANの島リズムが生み出すZEN SOUNDはバウンシーでドープそして自由な発想と飽くなき音楽魂を“禅FLAVA”に乗せ、大空高くASIA発のニューライダーズサウンドとして言葉を越え世界にアップデートされたWORLD MUSICを送信中。
https://zenrydaz.tumblr.com/

BANDCAMP
https://crosspointproception.bandcamp.com/
SHOP
https://nxsshop.buyshop.jp
WEBSITE
https://www.nxs.jp/label

daydreamnation - ele-king

 京都のレーベル〈iiirecordings〉が12月下旬にdaydreamnationによるアンビエント作品の7インチ「DAYDREAM_STEPPERS EP」をリリースする。7曲(1曲が1分〜1分半ぐらい)の、美しい無重力状態(ウェイトレス)を体験できるというわけだ。
 daydreamnationはハードコア・シーンで活動する.islea.のメンバーでもあるseiyaの別名義で、これまでにBushmind、DJ Highschool、StarburstによるBBHのアルバムや〈Seminishukei〉のコンピレーションへの参加をはじめ、福岡Genocide CannonのラッパーInnoとの共作『Funky Response』や、降神や志人のライヴ・トラックなども手掛けている。注目です。
 

.daydreamnation.
DAYDREAM_STEPPERS EP (7inch+DL)
7inchレコード/ダウンロードコード付
限定250枚プレス/ナンバリング入
¥1,540 (税込)
https://iiirecordings.com/main/

 ちなみに、BushmindまわりではChiyori×Yamaanによる『Mystic High』(もう売り切れだが、配信で聴けるし、CDは再プレス)もかなり面白い。真の意味でのヴェイパー、すなわち水パイプ的な陶酔とユーモアを求めている方には推薦したい。なお同作には、Bushmindの4/4ビートのハウス・ミックスも収録されている。

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