Home > News > 戸川純写真集『ジャンヌ・ダルクのような人』がようやく刊行、そしてライヴのお知らせ
©︎池田敬太
戸川純のデビュー・ライヴに衝撃を受けたことは前にも書いた。その後、すべてのステージではなかったものの、ポツポツと彼女のライヴには足を運んでいた。自分ではずっとファンの立場にいるつもりだったし、ライヴにはたいてい1人で行っていた。
驚いたのはRCサクセションの全盛期を支えていたマネージャーの藤井さんから電話があり、ヤプーズのファンクラブが発行している会報の編集をやらないかと誘われた時である。藤井さんは『カバーズ』が発売中止になり、あまりにもいろんな揉め事があったために音楽業界そのものに嫌気がさしてしまい、事務所を辞めただけでなく、子どもが生まれたことを機に埼玉の実家を継ぐとかなんとか言って、みんなの前から姿を消してしまった人だった。藤井さんはいつの間にか業界に舞い戻っていて、彼が新しく働き出した事務所には、そう、戸川純が所属していたのである。僕はすぐにその仕事を引き受けたし、しばらくしてヤプーズのドラマーは元RCの新井田耕造になった。新井田さんはRCの時とはまったく違うキャラクターになっていた。
『疾風怒濤ときどき晴れ』でも戸川純本人が話しているように、やがてその事務所と戸川純は決裂し、言ってみれば事務所側の人間だった僕は戸川純には会いづらくなってしまった。ファンクラブも解散することになり、ファンの皆さまには事の次第を説明しなければならないということで、最後に行ったインタビューはいまもよく覚えている。それは混乱の極みであり、いま読み返しても涙が出るような内容である。
戸川純が怪我をし、ライヴから遠ざかっていた時期にも、僕はとにかく口実をつくっては戸川純にインタビューを申し込んでいた。どうやら自分が思っていたほど事務所側の人間とはみなされていなかったようで、彼女はインタビューに快く応じてくれた。そして、いつも、興味深い話を聞かせてくれた。
戸川純がライヴ活動を再開してから10年ぐらいが経ったころだろうか、僕は『疾風怒濤ときどき晴れ』という本をつくることができた。ちょっとした思いつきから生まれた本ではあったけれど、我が人生で5本の指に入れたい本となった。デビュー・ライヴを観てから30年目のことだった。そして、『疾風怒濤ときどき晴れ』が世に出て、少し経った頃に現在のマネージャーである石戸さんから吉祥寺で戸川純の写真展があると連絡を受けた。最終日になってしまったけれど、駅からの長い長い道を歩いて「Gallery ナベサン」にたどり着いた。手前には花屋さんがあり、店先には食虫植物が何種類も売られていた。その隣には肉屋……はなかった。
写真展は池田敬太さんという写真家の個展と謳ってあり、プリントではなく、ペランペランの打ち出しが壁に重なり合うようにしてぶら下げられていた。見づらい。写真がしなっている。しかも、毎日のように展示内容は入れ替えられていたという。とにかく数が膨大だったのである。なのに、どの写真にも見覚えがない。曲がりなりにも会報の編集をやっていて、雑誌などに掲載された写真はすべて目を通していたつもりだった。なのに、見覚えがない。しかもステージの写真ばかりで、戸川純を真横から捉えたものに印象的なものが多かった。外は夏で、いわゆる眩しい景色が広がっているなか、モノクロだったせいか、写真展自体が非常にダークな印象を与えたことも記憶には残っている。
その頃から僕は「話し言葉」でつくった『疾風怒濤ときどき晴れ』に対して、戸川純の「書き言葉」を集めた『ピーポー&メー』をまとめる作業に入っていた。その過程で鋤田正義さんや川上尚見さんに未発表の写真はありませんかと尋ねてまわり、意外にないもんなんだなということを知った。ということは、吉祥寺の写真展で見たステージ写真は思ったよりも貴重なもので、そう簡単に未発表写真を発掘することはできないと再認識し、改めて池田さんに連絡を取り、写真集にまとめませんかと相談を持ちかけた。池田さんは当初、自費出版で出すつもりだと仰っていたいたものの、最終的には同意してくれて、こうして形にすることができた。編集作業が少し進んだ頃に、いつ頃、撮影したものなんですかと池田さんに訊いたところ、1ヶ月ぐらい経ってから「2003年から2006年です」という返事が返ってきた。僕がまったくライヴを観ていなかった頃である。ああ、だから、まったく見覚えがなかったのか。この時期のライヴは簡単にいえばレアである。観た人の絶対数も少ないかと思う。神聖かまってちゃんのの子が戸川純を観たくてライヴに駆けつけた時期でもある(本誌対談を参照)。戸川純のライヴはいつも楽しいし、笑いが巻き起こることも多い。しかし、20代の彼女ががむしゃらに、腰を痛めるほどなりふり構わぬ勢いで飛ばしていたり、最近のライヴのように重厚な響きを加えたものとは違い、どこか鬼気迫る表情でステージに経っていた時期は2度と目にすることができないものだろう。逆風の中に立っている彼女には独特の雰囲気がある。衣装もこの時期だけのものが多い。『ジャンヌ・ダルクのような人』は『疾風怒濤ときどき晴れ』や『ピーポー&メー』をデザインしてくれた鈴木聖が戸川純のステージを体験しているかのように流れをつくり、緻密に構成してくれた写真集です。銀をメインにしたカヴァーも写真では伝わりづらい質感のものなので、是非、書店で現物を手にとってみてください。(三田格)
戸川純、バースデイライヴのお知らせ
JUN TOGAWA BIRTHDAY LIVE 2020
★3/29(日)新宿ロフト
前売り4000円・ドリンク別
開演18時
戸川純、中原信雄、ライオン・メリィ、矢壁アツノブ、山口慎一、ヤマジカズヒデ
・入場時にdrink代が別途かかります。
・会場での録音・撮影は禁止です。
・未就学児童の入場は不可になります。
*当日はサイン本の販売があるかもしれません(ないかもしれません)。
■なお、池田 敬太『戸川純写真集──ジャンヌ・ダルクのような人 』は3月25日刊行!
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