Home > Reviews > Album Reviews > Eternal Summers- The Dawn Of Eternal Summers
イターナル・サマーズ――終わらない夏、永遠の夏、このバンド名が暗示するのは昔ながらのポップのユートピアである。永遠の夏はヴァージアニ州のロアノークを拠点とする女性ひとり+男性ひとりのふたり組、ノー・エイジやタッツィオのようなドラム&ギターのチームで、今年に入って2枚のアルバムを出している。『ザ・ドーン・オブ・イターナル・サマーズ(終わらない夏の夜明け)』は先に発表した1枚で、セカンド・アルバムらしい。
この作品を言葉で説明するのは簡単だ。ファースト・アルバムの頃のザ・レインコーツがヴァイオリンを捨てて、ギターとドラムと歌だけでドリーム・ポップをやったような音楽。つまり、とても良い。
あるライターは、イターナル・サマーズの音楽を「あらゆるニッチを埋める」と説明している。ビーチ・ハウスのすき間、シャロン・ヴァン・エッテンのすき間、ダム・ダム・ガールズのすき間、このバンドはそれらを埋める。なるほど。エフェクターを使わずギターアンプに直接シールドを差し込んだテレキャスターのコード弾きは、ペダルを多用する今日的なUSインディへの反論とも言えるが、逆らっているというよりも、おおらかさを感じる演奏だ。曲自体は実にシンプルに作られているが、メロディラインと歌声はキャッチーで、しっかりしている。ポスト・パンク的なアプローチを取りながら、聴き方によっては、ビーチ・ハウスのように、もしくはシャロン・ヴァン・エッテンのように聴こえる。ずば抜けた個性はないが、ギター・ポップにおけるカタルシスが何たるかを知っている。
......それにしても眠い。日本の女子サッカー代表は、調子が良いときは機械仕掛けのような素早いパス回しをする。あの連動性にはイターナル・サマーズのフリー・ダウンロード曲(サード・アルバムに収録の)"ユー・キル"がよく似合う。本作『ザ・ドーン・オブ・イターナル・サマーズ』に対して、サード・アルバム『コレクト・ビヘイヴィア』はよりスピーディーで、ディストーションが効いている。
さて、我々は数日間、夏休みに入ります。毎年、川で泳ぎ、魚を釣って、焼いて食べる。それから大浜のプールに行く。完全にマンネリ化しつつも飽きないのは、夏という季節のマジックである。しかし、もしもこの国が常夏だったら、水遊びや釣りにこんなにもいちいちワクワクしないだろう。そういう意味では夏がイターナルでないことは悪いことではない。が、イターナル・サマーズ――終わらない夏、永遠の夏はとても良い。
野田 努