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Belong

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Realistic IX

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デンシノオト Sep 19,2024 UP

 脈打つように規則的に刻まれるシンプルなリズム/ビート。その規則性から逸脱するように刻まれるノイズ。マイケル・ジョーンズとターク・ディートリックによるUSはニューオリンズ出身のビロング、その13年ぶりの新作アルバム『Realistic IX』は、00年代に華開いたネオ・シューゲイザーの極限、いや極北とでもいうべきか。じつにソリッドなサウンドを全編に渡って展開しているのだ。かといって大袈裟な作風ではない。サウンドはソリッドにしてシンプル。そこがたまらないのだ。リリースは〈Kranky〉。マスタリングはステファン・マシューが手がけている。

 ビロングはこれまでアルバムを二作リリースしている。まず2006年に〈Carpark〉からリリースした『October Language』。同アルバムは2018年に元エメラルズのジョン・エリオットが主宰する〈Spectrum Spools〉からリイシューされた。セカンド・アルバムは、2011年に〈Kranky〉からリリースされた『Common Era』。
 この二作はシューゲイザーのサウンドをアンビエント/ドローン化したような仕上がりで、アンビエント/ドローン・マニアやシューゲイズ・マニアから高く評価された。ちなみにメンバーのターク・ディートリックはインダストリアル・ユニットのセカンド・ウーマンのメンバーでもあり、2016年に『Second Woman』、2019年に『S/W』を〈Spectrum Spools〉からリリースしている(この二作のアートワークをマイケル・ジョーンズが手掛けている)。

 新作『Realistic IX』では、前二作において全面的に展開されていたアンビエント/ドローン的な要素は控えめであり、対してソリッドなリズム/ビートが導入されている。そうすることによって何をあぶり出しているかといえば、シューゲイザーがロックであること、そしてパンク、ポスト・パンクの継承であることを全面化させているように思える。いわば、シューゲイズとポスト・パンクの「交錯点」がここにあるのだ。
 この新作でマイケル・ジョーンズとターク・ディートリックのふたりが実現したかったことは、(おそらくだが)シューゲイザーのもうひとつの側面である「ロック」を全面化することだったのではないか。00年代以降、エレクトロニカ/アンビエントの系譜として再評価されることが多かったシューゲイザーから「ロックとしてのシューゲイズ」を再獲得すること。簡単にいえば、ざっくりとしたギターのノイズとリズムによって生まれる中毒性の再獲得とでもいうべきか。
 とはいえ13年ぶりのアルバムで、しかも〈Kranky〉からのリリースである。聴き手も前二作と同様のシューゲイザー風味のアンビエントを期待するはず。そこでソリッドなポスト・パンク/オルタナティヴ風味の音を鳴らすというのはなかなか挑戦的な試みだ。たとえるなら「シューゲイザー・パンク」とでもいうべきか。私は彼らの果敢な挑戦を断固支持したい。
 とはいえ音を聴き込んでいくと、ミニマムなリズムのむこうにマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン『Loveless』直系の甘美なノイズやコーラス(声)が鳴っていることにも気が付くはず。いわばアンビエント/アンビエンスのエレメントは消失したわけではなく、全面化していないだけであり、サウンドの色彩のように、アンビエンスは鳴り響いているのだ。いっけんラフなロック・サウンドでありながらも、じつに繊細な音響も構築されているのである。

 ビートとシューゲイズ・ノイズで始まる1曲目 “Realistic (I'm Still Waiting)” でアルバムのトーンが明確に提示される。ギター・ノイズと霧のような声と性急なリズムの交錯は、彼らがマイブラの後継者であることを示しもする。切り刻むような鋭いギターリフもリズムからわかるようにロック・サイドのマイブラの後継というわけだ。いわばアンビエント/ドローンではないビロングのはじまりというわけである。2曲目 “Difficult Boy” も同様の曲だ。
 3曲目 “Crucial Years” では彼らのアンビエント・サイドを聴かせる。破壊された音響のアンビエント化とでもいうべきサウンドである。4曲目 “Souvenir” ではリズムが復活し、軽快にビートを刻む。一方ノイズは控えめになり、全体に軽やかな印象のシューゲイザーを展開する。
 5曲目 “Image of Love” ではインダストリアル・ミーツ・シューゲイザーのようなサウンドを展開する。続く6曲目 “Bleach” はブラックゲイズ的な硬質かつ激しいノイズと簡素なリズムが折り重なり、これも新機軸といってもいいサウンドである。
 7曲目 “Jealousy” はシューゲイザーらしいギターの刻みと声のレイヤーが新時代のシューゲイザーとでもいうべき音を作り上げている。そしてアルバム最終曲にして8曲目 “AM / PM” ではアンビエント・ノイズを展開する。カチカチと小さな音で刻まれるハットのような音がリズムを奏でてはいるが、サウンド全体はアルバム中もっともアンビエント/ドローンを思わせるものである。それもかつてのような薄暗いアンビエンスではく、まるで光の中に吸い込まれていくような、どこか煌びやかなアンビエントなのだ。

 全8曲、計37分。比較的コンパクトなアルバムである。一気に聴き通せることができる尺でもある。アルバム一枚を通してリズムとノイズを一気に堪能できるように考えられた構成ではないかと思う。
 何より重要なのは「過去」を反復していない点だ。彼らはかつてシューゲイズなアンビエント/ドローンの名作を作り上げたわけだが、しかし本作では同じことを繰り返していない。シューゲイザーというフォームに敬意を表し探求しつつも、ネクストを目指し、新たな音楽と音響を探求しているのである。シューゲイザー・リスナー、アンビエント・リスナーの両方に加えて、(
シューゲイザー以外の)ロックのリスナーですらも納得させるにアルバムといえよう。

デンシノオト