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野田 努 Nov 11,2009 UP
E王

 00年代において僕をサイケデリック・ギター・サウンドに導いたのは、アニマル・コレクティヴだった。2003年にロンドンの〈ファット・キャット〉レーベルがブルックリンの若き夢見人たちのファーストとセカンドの2枚をカップリングして発表したとき、シド・バレットとジ・オーブとボアダムスがセッションしたようなその音楽に強烈な魅力を感じ、そして2004年に『Sung Tongs』を聴いたときには、すっかり心の準備はできていた。ようこそ、ピーターパン系サイケデリアの楽園へ。

 2008年に素晴らしいアルバムを発表したディアハンターのリード・シンガー、ブラッドフォード・コックスによる別プロジェクト、アトラス・サウンドのセカンド・アルバには、1曲、アニマル・コレクティヴの中心メンバー、ノア・レノックス(パンダ・ベア)が参加している。"Walkabout"というその曲は、アルバムにおいてもっともキャッチーな、いわばアニコレ的コーラスとエレクトロニクスの効いた明るい曲となっている。そしてステレオラブのレティシア・サディエールが参加した"Quick Canal"は、アルバムにおいてもっとも疾走感のある、いわばクラウトロック的な景色の広がりを持った曲となっている。エモーショナルで、意識を失いそうなほど、歌は容赦なく飛んでいくような......。

 こうした豪華なゲストも作品のトピックではあるが、僕にはこのアルバムは、ここ10年のあいだ子供たちのベッドルームで繰り広げられている(そう、90年代はそれがテクノだった)、ギターとエレクトロニクスのなかば妄想的な実験の最良の成果のひとつのように思える。アルバムの1曲目"The Light That Failed"は、爪弾かれるアコースティック・ギターの音色と奇妙な音の細かいループ、そして深いリヴァーブとエコーに輪郭をぼやかされた歌との組み合わせである。これは、それこそアニマル・コレクティヴが広めた新世代のサイケデリックにおける常套手段であり、ブラッドボード・コックスもそれを借用しているだけだと言ってしまえばそれまでだが、この病的なルックスをした男には、ソングライターとして非凡なものがあるわけだ(ディアハンターの『マイクロキャッスル』で証明済み)。2曲目の"An Orchid"や4曲目の"Criminals"は、コックスのそうした曲作りの巧さの所産であり、そのことがこのアルバムの立ち位置を決定している。まあ、早い話、アニマル・コレクティヴが歌やコーラスをほとんど完璧なまでに"音"の次元へと変換してしまっているのに対して、コックスはギリギリ、歌うという古典的なスタイルを保持していると言えよう。その絶妙なバランス感覚のなかでこのアルバム『ロゴス』は鳴っている(彼がカヴァーしたヴェルヴェッツの"アイル・ビー・ユア・ミラー"は、ただ今風にリヴァーブが深くかけらてたものでしかないが、しかし、それでも素晴らしく感動的である)。

 僕にとって興味深いのは、人間の幼稚性を賞揚するかのように、およそここ10年のUSサイケデリック・ミュージックは退行的な、いわばピーターパン的な様相を躊躇なく見せている。アニマル・コレクティヴにしてもアトラス・サウンドにしても、彼らの無邪気な子供っぽさは、そして確実に大人たちの様式を破壊し、因習打破を果たしている。

野田 努

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