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HB

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Black Hole in Love

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野田 努   Jun 23,2010 UP
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E王

 本能や直観を理想化して、とかくイノセンスを賞揚し......と同時に自然のサイクルを祈願しながら、モダン・ライフを病んでいると思うとき、音楽はときにアフリカないしは非西欧的なリズムへと向かう。ミルフォード・グレイヴス、マニ・ノイマイヤー、ザ・スリッツやポップ・グループ、あるいはじゃがたらやボアダムスやあふりらんぽ、あるいはレッド・プラネット・シリーズにおけるマイク・バンクス、あるいはUKファンキー......まで入れて良いのかどうかわからないけれど、まあ、とにかくそうしたプリミティヴィズムというのは、われわれにとって確実にひとつの武器であることは間違いない。プリミティヴィズムにおける反知識的な態度、要するに「考える前に踊りなよ」という姿勢はつねに商業主義のワナに晒されているものの(たとえば、インディアンや東南アジアなどの民芸品を扱う雑貨屋を見ればよい)、しかし、ひとつだけはっきりしているのは、それはそれまで教えられてきた知識への素朴な抵抗である、ということだ。

 とくに僕の世代ではその感覚がよくわかる。パンク・ロックにおいてレゲエのリズムが重要視されたのもそれで、世界史を作ってきた文化が支配してきた文化のリズムをわれわれは積極的に選んだのだった......と、まあ、そこまで気合いを入れなくても、50年代のエキゾチカにおけるそれ(アフロ、ラテン、ヴードゥーのようなドラミング)でさえ上流階級の気持ちを解放したのだから彼らのリズムには特別な力があるのだ。ボアダムスやあふりらんぽのように神秘的な宇宙をのぞき込まなくても、リズムはわれわれに不思議な活力を与えるのである。

 HBは、ドラマーのmaki999を中心に2004年12月に東京で結成された女性3人によるバンドで、すでに2007年に〈残響レコード〉からデビュー・アルバム『Hard Black』をリリースしている。他のふたりはmuupy(パーカッション)とtucchie(ベース)。今回の『ブラック・ホール・イン・ラヴ』はセカンド・アルバムとなる。収録された8曲すべてがインストゥルメンタル曲で、1曲ヒゴヒロシさんが参加している。メロディといったものはほとんどなく、たまに演奏されるメロディ楽器もリズムを強調する。大雑把に言えば、ただひたすらリズムが刻まれている。笑い声からはじまり、ドラムとパーカッションは素晴らしい律動を生み、ベースは唸っている。その迷いのない演奏は誰もが言うように「心地よく」、聴く者を清々しい気分にする。この手のアイデアは決して目新しいものでないが、スネアとハイハットの音は耳にこびり付いて、パーカッションは頭のなかでこだまする。ベースは身体を震わせ、気がつくと繰り返し聴いているという有様だ。

 近いうちiPodに入れてみようかと思う。歩きながら聴くのが楽しみだ。もちろん、評判のライヴ演奏もいつか聴いてみたい。ワールドカップ期間中の僕にとっての"サプライズ"はこの『ブラック・ホール・イン・ラヴ』だった!

野田 努