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Pulled Apart by Horses

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Transgressive

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橋元優歩   Dec 20,2010 UP
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 ロックといえばミクスチャー、ラウド・ロック。そんな時代があった。『月刊少年マガジン』連載の人気マンガ『ベック』などは、主人公の佇まいこそ現代風の草食系だが、結成するのがミクスチャー・バンドだという点に日本の30代~40代前半ロック・リスナーのリアリティが滲んでいる。
 今年6月に初のフル・アルバムをリリースしたUKの4ピース、プルド・アパート・バイ・ホーシズ(以下PABH)は、そうしたミクスチャーの面影を偲ばせながら、アークティック・モンキーズやクラクソンズを通過したポップ・センスと、恥知らずで発狂寸前と形容されるギャグ・センスを閃かせるという希有な才能だ。店頭で耳にしたりすれば「おや?」と思う人も多いだろう。久々にメタリックでポップな音がインディ・シーンから出てきて、私はヘッドバンギングしながら上下にぴょんぴょんと飛び跳ねている。

 PABHは2007年から地元リーズで活動を続けているが、これが初のフル・アルバムとなる。もっぱらライヴ・バンドとしての評判が高く、想像するだにハイエナジーで熱狂的なショウなのだろう。曲もよくできていて、スタジオ録音でも充分に刺激的だ。ジャンルに括りきれない多様性と現代的なフィーリングに満ちている。スラッシュ・メタルからデス・メタル、スクリーモやポスト・ハードコアまで射程に含めたヘヴィなサウンドをアイデンティティとしながら、プログレ、マスロック的なアプローチも見せている。フォワード・ロシアやザ・ミュージック、ハドウケンなど同郷のグルーヴィーでダンサブルなギター・ロック・バンドの雰囲気も持っている。なによりカラッと乾いた音を出していて、よい。ホラー・ムーヴィーを愛するというが、根が明るい。 ハイ・トーンのデス・ヴォイスで「パワー、カーリッジ、ウィズダム!」と繰り返されると思わず笑ってしまう。

 冒頭の"バック・トゥ・ザ・ファック・ヤー"をはじめ、ギターとベースのユニゾンのリフが多いが、おどろおどろしい重低音が仲良く同じ旋律をなぞる様子も爆笑ものだ。4人がめいめいに「ヤー」とシャウトするだけのパートなど普通にバカバカしい。しかもジョークの感覚と真剣さが分かちがたく混じりあっている。それが全開のエネルギーで飛んでくるのだ。"アイヴ・ゴット・ゲスト・リスト・トゥ・ローリー・オハラズ・スーサイド"のPVを参照すれば、その全開のバカバカしさを目の当たりにできる。
 演奏の熱量も半端なものではない。過剰さが正のエネルギーに結びついているところが素晴らしい。PABHはメタルヘッドではないし、キング・クリムゾンやライトニング・ボルトからジョアンナ・ニューサム、ニーナ・シモンといった多彩な影響を挙げている。
 急転直下の展開も楽しい。ブラック・サバス"クレイジー・トレイン"のような牧歌的なイントロが二転三転して、高速ダンスビートに駆動される中盤からストーナー風のラストを迎える"ミート・バルーン"。せわしないブラストビートとタメのある2拍子のあいだを激しく往復する"ゲット・オフ・マイ・ゴースト・トレイン"。"ハイ・ファイヴ・スワン・ダイヴ・ノーズ・ダイヴ"など後半立ち上がり直してからのヴァイオレントなベースが水際立っている。"ムーンリット・タロンズ"も唐突にはじまるリフが延々と幾何学的な模様を描きながら高揚して、ホーリーファックやナイス・ナイスのようなヴァーチャルな世界を開く。どの曲もまったく遜色なく、何度でも通しで聴けるのだが、圧巻は終曲"デン・ホーン"。7分以上あって、そのほとんどが単一のリフの変奏に費やされる。これがじつにドライヴィンでクールだ。

 バンド名に込められた意味も面白い。プルド・アパート・バイ・ホーシズとは知ってのとおり「馬裂きの刑」のこと。中世の拷問の名だが、その残酷な趣味はともかく、4頭の馬を4人のメンバーに見立てたものだ。合図とともに、4人がそれぞれの方向に勢いよく駆け出す。まさにこのバンドにぴったりの命名だ。
 後続があるのか、単体の才能なのかわからないが、シングル、アルバムともにゼロ年代のUKの優良レーベル〈トランスグレッシヴ〉からリリースされているのを興味深く眺めた。「テムズ・ビート」で流行を築いた英国トラッドなイメージのレーベルが、PABHのような音を積極的に掲げるのならば、それはUKの次世代として大きく育つ可能性を秘めているだろう。

橋元優歩