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Chan Fang 禅房/Buddha Machine 3.0

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野田 努   Dec 30,2010 UP
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E王

 東洋の音楽においては譜面よりもどの楽器で演奏されるのかが重要だ。尺八の演奏は尺八で演奏されるから良いのであって、同じ音程を他の楽器で代用することには意味がない。楽器は音楽を演奏するための道具ではなく、楽器そのものがひとつの宇宙となる。演奏の技術を堪能するのではなく、その楽器のみが発信する音そのものに陶酔する。楽器を道具として徹底的にいじりまくるブラック・ミュージックとはそこが決定的に違う。われわれは、ジミ・ヘンドリックスの演奏に狂喜するいっぽうで、無造作に鳴ったガットギターの短音の響きなかに宇宙を感じてしまう......。そしてこの「聴き方次第」というコンセプトはアンビエントへと繋がる。

 今日のアンビエント・ミュージックに大きな影響を与えている1960年代のミニマル・ミュージックやジョン・ケージの発想の背後には、禅の思想が絡んでいる。部屋を綺麗にしたいから掃除をするのではない。掃除をしたいからするのだ。心を落ち着かせたいから瞑想したいのではない。瞑想したいから瞑想するのだ。健康を考えて走るのではない。走りたいから走るのだ。行為における意味は破壊的に剥奪される。ステージと客席の境界線は溶解し、再生装置から出される音と聴覚とのあいだの隔たりも消える。

 というわけで、2010年最後のレヴューは『ブッダマシーン3.0』。中国におけるアヴァンギャルド/エレクトロニック・ミュージックのふたり組(Christiaan Virant & Zhang Jian)によるプロジェクト、Fm3による人気シリーズの最新作で、数年前に1分弱のループが9本収録された小型の可愛らしいボックスとして発売され、手頃な価格ということもあってか、マニアックなリスナーのみならず、普段はミニマル・ミュージックなどには縁のないサラリーマンやOLのあいだでも話題となった。2009年にはスロッビング・グリッスルの代表曲のループを収録した『グリッスリズム(Gristleism )』("ハンバーガー・レディ"をはじめ13曲のループが収録)が発売されているが、このときは中原昌也がこれを使って店頭ライヴをやったほどだった。

 今回リリースされる『ブッダマシーン3.0』は、中国の古い楽器、古琴を使ったもので、ずいぶんと長い4つのループが収録されている(試聴はこちら→http://www.inpartmaint.com/)。曲名は"春""夏""秋""冬"となっているそうだが、はっきり言ってどれが"春"でどれが"冬"なのかはわからない......が、そんなことはどうでも良いと思えるほど素晴らしいのだ。何よりも作風がいままでとは違っていいて、『ブッダマシーン2.0』よりも大胆な音のすき間がある。しじまとともに古琴の音そのものの宇宙は広がり、そして本当に何時間も流していても飽きることがない。音質も12kまで向上しているので、僕は家のアンプに差し込んで聴いている。ボディーがスケルトン仕様で5色もあるし、正直言うと、もう一台手に入れようかと考えている。同じループをずらしてミックスすれば、これが極上のミニマル・ダブになるんです。

 それではみなさん良いお年をー。

野田 努