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Forgotten Punk

Forgotten Punk

#6:質問は答えよりも重要

――『ポストパンク・ジェネレーション 1978-1984 』を読んで

野田 努 Jul 01,2010 UP


ポストパンク・
ジェネレーション
1978-1984

サイモン・レイノルズ (著)
野中モモ (監修, 翻訳)
新井崇嗣 (翻訳)
シンコーミュージック・エンタテイメント

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 質問は、答えよりも重要である――答えるよりも圧倒的な速度で質問ばかりが溢れ出てしまう。涙のように、とめどなく。感傷的な書き出しだが仕方がない、30年前の話だし、少しばかりは許して欲しい。
 もうひとつある。音楽とはメッセージを伝達するメディアであるという考えに対する反論だ。音楽とは言葉の乗り物であり、サウンドは乗り物の役目さえ果たすならそれで良いという考え、たとえばある種の青春パンクのように、言葉がそれなりに機能しているなら、サウンドはまあまあカタチになっていればそれでよいという考え方の否定だ。サイモン・レイノルズの言を借りれば「音楽を単なるアジテーションの道具とみなすのではなく、このラディカリズムが言葉とサウンドにおいて等しく現れ」ること。つまり、語り口そのものも更新されなければならない、主題とともに文体そのものもフレッシュでなければならない、ということ。そうした意志がポスト・パンクと呼ばれたムーヴメントのもうひとつの大きな特徴だった。
 ゆえにポスト・パンクは、チャック・ベリーを墓に埋めて、おおよそロックンロール以外すべての音楽にアプローチするのだった。

 イギリスの評論家、サイモン・レイノルズの著書『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』の翻訳が出た。原題は『Rip It Up and Start Again』(引きちぎって、もういちどはじめよう)、グラスゴーのバンド、オレンジ・ジュースのデビュー・アルバムのタイトルからの引用だ。原書は2005年に上梓され、欧米ではずいぶんと評判になり、そしてまた議論を呼んだ。
 評判となったのは、率直に言ってこの本が素晴らしいからだ。ザ・レインコーツのジーナ・バーチは冗談めかしながら女性バンドへの注意の欠如を指摘していたけれど、ジョン・サヴェージの『イングランズ・ドリーミング』に続く本があるとしたら、間違いなく本書だ。決定版だと言って差し支えない。レイノルズはポスト・パンクの多様なバンドたちを手際よく分別し、許される限り細かくしっかりと論評している。読み応えがあり、あたらめて知るところも多い。
 そもそもこの本は求められていたのだ。ゼロ年代がポスト・パンク・リヴァイヴァルのディケイドだったからである。われわれはもういちどレコード棚からザ・スリッツやザ・ポップ・グループを、ザ・フォールやスロッビング・グリッスルを引っ張り出した。アシッド・ハウスから20年、もう用はないだろうと奥のほうに仕舞い込んでいた幼児ポルノのジャケットを(TGの『D.o.A.』だ)、ホコリまみれになりながら探し出すとは思ってもいなかった。そして......ギャング・オブ・フォーやヒューマン・リーグが新世代のバンドに影響を与え、ザ・スリッツやザ・レインコーツが来日する日がまさか来るとは......。

 世代的なことをいえば、僕はレイノルズとまったく同じ年齢で、ポスト・パンクを思春期の好奇心のかたまりのなかで聴いている。ザ・レインコーツのインタヴュー記事でも書いているように、いま思えばそれはパンクという火山が爆発したあとに空から無数の素晴らしい音楽が降ってきたようだった。それらのうちの数枚が静岡市という小さな地方都市の輸入盤店の壁に並び、そして僕の人生を変えた。いはやはなんとも......。

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