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借りパク音楽反省会

借りパク音楽反省会

第4回:エモ系義兄がまさかのフレンチ・ポップ

文:アサダワタル Nov 18,2015 UP

 風邪をひいたのかどうも喉が痛いです。そんなとき口ずさむのは破裂音が比較的少ない、フレッチポップあたりが喉に優しいのかもしれません(適当)。
 と言ったところで……、本日ご紹介するのはこちら!


注:手書きポップに書かれているイニシャル「W.A」とは僕のこと。このポップを書いた2012年当時は33歳だったが現在はもう少し歳をとっている。以後すべて同。

 このCDは、90年代以降のフレンチ・ポップを代表するミュージシャン、マチュー・ボガートの1998年のアルバム。端的にめちゃくちゃ小気味良くて超オサレサウンド。それだけでなくアンサンブルも重層感溢れる作り込みなのでかなり聴き込める内容です。最近では、齢を重ね小太りになったご本人が全裸でオルガン弾いているPVが、Youtubeで話題になったこともありましたね。

 まず、のっけから「おいおい、ジャケないじゃねぇか!」って感じなのですが、これは僕がなくしたのではなく、「CDだけ」を借りパクしてしまったパターンなのですよ。


ジャケはどんな感じだったかな……
Mathieu Boogaerts / J'En Ai Marre D'Être Deux / Island / 1998

 どういうことかと申しますと、たしか2000年代のはじめだったと思いますが、当時新婚ホヤホヤだった姉貴とその旦那(つまり僕の義兄)であるまっちゃんといっしょに車に乗っていたとき、運転しながら彼がこのアルバムをかけてくれたんですよね。まっちゃんは音楽好きで、学生時代にベースも演っていたらしく、ちょくちょく音楽の話もすることがあったんだけど、彼の口から出てくるミュージシャンはELLEGARDENとかマキシマムザホルモンとかまぁざっくりエモ系ロック(まずその2つをいっしょにすんなよって感じですよね……、でも音楽ジャンルの詳細は本コラムではひとまず置いておいて……)だったんですよ。そんな彼が突然、超クルーナー・ヴォイス(つぶやき系)バリバリのフレンチ・ポップをかけてきたもんだから、車中で思わずびっくりしちゃいまして。しかも、それが良かった。そして「ねぇ、これなに?」って訊いたら、彼も「ええっと、マシュー、いやいやマチュー……えー、ボガ、ヴォガ……」みたいになってしまって要領を得なかったので、自分であらためてネットで調べてみたのでした。まずは自分でマチューのCDを買う「参考までに」ですね、彼からこのCDを拝借。家にあるPCでCD-Rに焼いてその日中に返すつもりだったからジャケもケースも借りず、CDだけを裸で頂いた記憶があるんだけど、でもなぜ返さなかったのかが未だに思い出せず……。

 この「家族・親族ネタ」っていうのは、「いつでも会えるしね……」という謎の余裕感のもと、結局、お盆も、年末年始も、返すことはないのですよ。まだまだありますよ。親父からはあれを、姉貴からはあれを……。それはおいおい紹介していくとして、まずはまっちゃん、ごめんなさい。お仕事頑張ってますか? 改まって訊きますが、そもそもなんでこのCD、持ってたんですか?


Illust:うまの


パクラーのみなさまからのお便り

お名前:賭博食事録ヒマンジ
性別: 男性
年齢:23

借りパクした作品:
LIBRO / 雨降りの月曜(12インチ限定アナログ盤)(2007)

借りパクした背景、その作品にまつわる思い出など:

 高校生の頃の私は家が貧乏で小遣いも少なく、そこから部活動に必要な道具を買っていました。そして余ったお金を少しずつ必死に貯めて、中古とはいえ念願のターンテーブルを手に入れたところで貯金が尽きてしましました。田舎に住んでいたのでネットでしか物が買えず、送料等を考えると貧乏高校生にはとても買えるものではありませんでした。そこで、遠くに住んでいる音楽が好きな従兄に電話をしました。「何でもいいから、一枚でいいからレコードを貸して! 送って! ちょっとしたら返すから!」と。従兄は笑いながら承諾をしてくれて、数日後にこのレコードが送られてきました。うれしかったですよ。初めての生のレコード。興奮したのをいまでも覚えています。返さなきゃと思いながらも、もったいなくて返せずにいました。もう返すこともできません。従兄は事故にあって他界してしまいました。返してくれと一言も言わず、ずっと貸してくれていました。長くなってしまいましたし、本来の意向とはちがうものかもしれませんが、こんなことを思い出し投稿してしまいました。これが私がいまのところ人生で一度だけしてしまった借りパクです。

借りパク相手への一言メッセージ:
いまでも大事に持ってるよ。音楽が、日本語ラップが好きになったきっかけだよ。おかげで音楽に携わる仕事に就くことができています。ありがとう。

※文字表記等は一部編集部にて変更させていただいております


LIBRO / 雨降りの月曜


アサダからのエール

 賭博食事録ヒマンジさん、お手紙ありがとうございます!!
 じつはヒマンジさんはいちばん最初にお便りをくださった方なんです。あらためて御礼を申し上げつつ、僕なりにエールを送らせてください。

 まず返そうと思っても返す相手がもうこの世の中に存在しないという空虚さについては、正直僕はまだ経験したことがないので、軽はずみなことは言えないなと思っています。
 でも、この従兄さんの一枚のレコードがとにかくヒマンジさんの人生を確実に変えたこと、それ自体は僕はとっても素晴らしいことだと思います。

 そのレコードがLIBROの「再発盤」だったということがとても気になりました。
 LIBROの“雨降りの月曜”が収録されているアルバム『胎動』はたしか1998年リリースで、まさに僕にとっては10代後半のもっとも音楽に多感な時期に聴いたものでした。
 そしてこの頃聴いていた音楽というのは30才を越えてからなぜだか再び聴きたくなるもので、いまでもそういった音楽が僕のまわりにはたくさんあって心の中で「リサイクル」されています。
 従兄さんの世代はお手紙ではわかりませんが、ひょっとしたら1998年やそのあたりにこの“雨降りの月曜”をリアルタイムに聴かれていたのではないでしょうか?
 それを「懐かしい」と感じて2007年に再発された限定アナログ盤を再び聴き、その音楽をヒマンジさんのようなさらに若い世代に引き継ぐ責任(もちろん直感に近いものだと思いますが)のようなものを持ちながら、あなたにこのレコードを貸したのではないかと、勝手に妄想してしまうのです。

 そう、あくまで僕の妄想です。でももしそうだとしたら、まさに、いまヒマンジさんがJ-HIPHOPに目覚め、そして、音楽に携わる道へと導かれたことは、月並みな言い方なのは覚悟の上ですが、きっと従兄さんは空の上からそのことをとても喜んでいるのではないかと思うのです。なんだか勝手なことを申してごめんなさい。

 とにかく、僕も久しぶりに『胎動』をApple Music‎で堪能しながら、この返答を書いています。この曲、ほんといいですね。
 まとまりがありませんが、どうぞ、これからも音楽のお仕事頑張ってくださいね。


■借りパク音楽大募集!

この連載では、ぜひ皆さまの「借りパク音楽」をご紹介いただき、ともにその記憶を旅し、音を偲び、前を向いて反省していきたいと思っております。
 ぜひ下記フォームよりあなたの一枚をお寄せください。限りはございますが、連載内にてご紹介し、ささやかながらコメントとともにその供養をさせていただきます。

Profile

うまのうまの
兵庫県在住。人物の絵が得意です。さまざまなタッチでイラストを描いております。
http://aoeuia.tumblr.com

Profile

アサダワタル/Wataru Asadaアサダワタル/Wataru Asada
1979年大阪生まれ。作家、ミュージシャン。2000年代初頭より「越後屋」(NMR)や「SjQ」 (HEADZ)でのドラム担当、「大和川レコード」名義でのソロ活動にて、ライブやリリースを行う。その後、表現活動を"音"から"場/事"に拡張し、スペースの運営や教育・福祉現場における音楽ワークショップの実施、それらに纏わる文筆活動を開始。著書に『住み開き 家から始めるコミュニティ』(筑摩書房)、『コミュニティ難民のススメ 表現と仕事のハザマにあること』(木楽舎)など。2013年に、ドラムを担当する「SjQ++」が、アルス・エレクトロニカ2013デジタルミュージック部門にて準グランプリ受賞。

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