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借りパク音楽反省会

借りパク音楽反省会

第5回:あの日きみは来なくなった。稲葉くんと2枚のハードロック

文:アサダワタル Dec 17,2015 UP

 師走になりましたね。「そろそろ大掃除に着手しないと!」と思われている読者の方には、ぜひともCDラックをまばたきひとつせず見つめ直し、あなただけの「借りパク音楽」とまっすぐに向き合っていただきたいと思います。そう、あなたには向き合う責任があります。

 と、上から目線ですいません。さっそく本日のCDを紹介しましょう。
 なんと今日は2枚!



注:手書きポップに書かれているイニシャル「W.A」とは僕のこと。このポップを書いた2012年当時は33歳だったが現在はもう少し歳をとっている。以後すべて同。

 まず1枚めはモトリー・クルーの『ドクター・フィールグッド(DR.FEELGOOD)』。そして2枚めはエクストリームのギタリスト、ヌーノ・ベッテンコートのソロ・アルバム『スキゾフォニック(SCHIZOPHONIC)』。ジャケットから湯気が立ち上がってきそうなこれらハードロック・アルバム2枚を貸してくれたのは、予備校時代の友人だった稲葉くん。

 忘れもしない1997年。17歳の僕は大学受験に失敗し、高校時代につづけてきた音楽活動もしばし休止。予備校生として悶々とした日々を過ごすことになったんです。でもまぁ当然勉強ばっかりできるわけもなく、また悪い友だちは悪い友だちとつるんでいくもので。「お前さ、予備校にいったい何しにきてんの!?」ってくらいギャルソンやゴルチェをごりごり着こなす黒ずくめのやつとか、はたまた、予備校デビューである日突然金髪にしてくるやつとか、休憩時簡になったら一目散に公衆電話に走り、ポケベル(←当時)のメッセージをケンシロウばりに猛烈な速度でたたき出すやつとか。そんな自意識過剰な連中の仲間になって、その自意識のシンボルとして多分に「音楽」が使われていくという事態にどっぷりハマっていくわけですよ。たとえばある日、ふと隣の席を見ると分厚いヘッドフォンをしながらリズムに合わせてシャーペンをすごい勢いでカチャカチャ押しているやつがおりまして。そいつに「何聴いてるの?」って尋ねると、無駄に大きい声で「えっ?ハイスタ!」→「ハイスタってなに?」→「ハイスタンダード! メロコアとか聴かんの?メロコアとか!」と言われるわけです。そんな時代ですよ、1997年とは。
 そこで当時渋谷系ドップリであまり激しい系のロックを体験していなかった僕としては、もうちょっといろんなジャンル(とはいえ、大きくは「ロック」の範疇なわけだけど)の音楽を聴きかじろうと思っていた矢先、「隣のクラスにバンドをやっているやつがいて、そいつは相当ロック、詳しいらしい」という噂を聞きつけ、あらためて友人になったのが、今回の貸し主である稲葉くんだったんです。色黒でワイルドで一見近づきがたそうな見た目に反して、とても気さくなキャラの彼。僕は彼にアラニス・モリセットとシェリル・クロウを貸して、そのかわりに貸してくれたのがこの2枚のハードロック・アルバムだったんですが、その結果、なんとお互いが2枚とも借りパクという事態に……。

 僕はね、あくまで返そうと思っていたんですよ。とりわけモトリー・クルーはぜんぜんピンとこなかったから速攻返そうと思っていたくらい。でも、彼はいつしか予備校からフェードアウトしていたんです。まわりに訊いても「ああ、あいつ最近まったく来ないね。もう辞めたんじゃない?」みたいになってしまって……。

 稲葉くんにあらためて訊きたいのは、こっちがアラニスを貸したらヌーノで被せてきたのは、なんとなく理解できた。
 でも、なんでシェリル・クローはモトリー・クルー返しだったの……??

 いま考えてもやっぱりわからない。きみ、ロックに詳しかったし、なんか意図があったんだよね!? なんか意図が……。


Illust:うまの



■借りパク音楽大募集!

この連載では、ぜひ皆さまの「借りパク音楽」をご紹介いただき、ともにその記憶を旅し、音を偲び、前を向いて反省していきたいと思っております。
 ぜひ下記フォームよりあなたの一枚をお寄せください。限りはございますが、連載内にてご紹介し、ささやかながらコメントとともにその供養をさせていただきます。

お名前もしくはペンネーム

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借りパクした作品の「アーティスト名/タイトル」

借りパクした背景、その作品にまつわる思い出など(※~300字程度)

借りパク相手への一言メッセージ

Profile

うまのうまの
兵庫県在住。人物の絵が得意です。さまざまなタッチでイラストを描いております。
http://aoeuia.tumblr.com

Profile

アサダワタル/Wataru Asadaアサダワタル/Wataru Asada
1979年大阪生まれ。作家、ミュージシャン。2000年代初頭より「越後屋」(NMR)や「SjQ」 (HEADZ)でのドラム担当、「大和川レコード」名義でのソロ活動にて、ライブやリリースを行う。その後、表現活動を"音"から"場/事"に拡張し、スペースの運営や教育・福祉現場における音楽ワークショップの実施、それらに纏わる文筆活動を開始。著書に『住み開き 家から始めるコミュニティ』(筑摩書房)、『コミュニティ難民のススメ 表現と仕事のハザマにあること』(木楽舎)など。2013年に、ドラムを担当する「SjQ++」が、アルス・エレクトロニカ2013デジタルミュージック部門にて準グランプリ受賞。

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