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編集後記

編集後記

編集後記(2017年12月14日)

野田努 Dec 14,2017 UP

 webメディア/オンライン・マガジンと呼ばれるモノの多くには編集後記がないようなので書くことにした(たとえばぼくはBuzzFeedの読者だが、編集後記ってないよね?)。気楽に書くのでどうぞお気軽に読んでください。ただの編集後記ですから。

 先週の土曜日はリキッドルームでDYGLという若くて格好いいロック・バンド(次号の紙エレキングの表紙です)のライヴを観たあとに、UGの石崎雅章君と三茶で会って酒を飲みながら時間をつぶし、23時からOrbitというDJバーでやるという、デトロイトからやって来た永遠の絵描き、アブドゥール・ハックのライヴ・ペインティングに出向いた。
 恐ろしい偶然とはあるもので、11月のある日曜日、家で『Reworked by Detroiters』(URやムーディーマン、アンドレス、リクルースなどデトロイト・テクノ/ハウスの錚々たるメンツがファンカデリックの曲をリミックスするという素晴らしい企画盤)を聴いていたときにハックから「日本に行くよ〜」というメールが来た。もちろん彼はあのコンピレーションのジャケットを描いている。「ものすごい偶然なんだけど、いまジャケを見ながら聴いていたところで……云々」と返事したら、「その仕事は自分のキャリアのなかのハイライトだよ」と返ってきた。で、いつ会うという約束もなく、その話はそのときそのまま終わっていた。だから土曜日の夜はライヴを観たら家に帰るつもりだった……のだが、ライヴが終わる頃になって石崎君から「今夜ハックが三茶にいるらしいっすよ」というメールをもらった。「俺、今日、URのパーカ着てるんだよね!」と返事、これもう「行け!」ってことだよなと思った。DYGLのライヴに、20年前に買ったURのパーカを着て行くと、たんなる偶然とはいえ、こういうことが起きるのである。

 ハックと会うのは久しぶりで、今回は長男のカディム君も一緒だった。カディム君に最後に会ったのは、かれこれ10年以上前になるのかなぁ……デトロイトのハックの家で、まだ就学前の小さい頃だった。ぼくがたまたまTVの前に立っていたら、下の方から「シー、シー」と言うので、最初ぼくは「??」だったけれど、ああ「see, see」かと、「ごめんねカディム」と、精神年齢的にほぼ互角の会話をしたことを憶えている……んだけど、もう彼も立派な青年、30分後にはカフェの片隅で寝ておりました(笑)。まあとにかく嬉しいものですよ、初めてデトロイトで会ってから20年も経つのにこうしていまでも気さくに話せるのは。

 今月ぼくが買った12インチは、ロンドンの〈Wisdom Teeth〉というレーベルのLOFTという人のわりと最近出たばかりの「Three Settlements Four Ways(4つの方法3つの決定)」。テクノを追っている目利きにはすでに評判のレーベルからの話題作で、これはたしかに新しいかもしれない。

 今年のベスト12インチは〈Hessle Audio〉からリリースされたBatuの「Marius EP」だと断言する高橋勇人は、今月末に出る紙エレキングで「ブリアルの『アントゥルー』から10年」という記事を書いている。「ポスト・トゥルース」がキーワードとなった今日、『アントゥルー』(=非真実)とはなんて予見的なタイトルだったのかと、向こうでは、サイモン・レイノルズをはじめとする知性派たちの『アントゥルー』論が盛り上がっているそうだ。なるほどなー、先月買ったPessimist のCDにせよ、数ヶ月前に買ったVacantのアナログ盤にせよ、なんでいまさらブリアル・フォロワーなのだろうと思っていたのだけれど、腑に落ちた。今年の春ぐらいに購入したOctoberの「Death Drums」というカセットテープ作品もドラムンベースを土台としながらブリアル系のディストピックな作風だった。ブリアル系ではないが、UKのドラムンベース系のカセット作品では、〈Black Acre〉からのPrayerの「Prayer I / II 」という作品も良かったな。アンビエント・ジャングルというジャンル名がもし通用するならまさにそれ。

 こういうことを書いていると、エレクトロニック・ミュージックばかり聴いているようだが、2017年は、より生演奏が入っているものやクラブ仕様ではないエレクトロニック・ミュージックのほうを──ストリーミング、CD、アナログ、カセットによって──主に聴いていた。だいたい、エレクトロニックな音を出せば尖っていたというのは遠い昔の話で、現代においてそれはあまりにもカジュアルで普通で、ありふれている。また近年では、より耳に馴染みやすいソフトな方向にも広がっている。今年はむしろソフトなもののほうが巷では評判だったのではないだろうか。そしてその対極にいるのがチーノ・アモービなのだろう。その一派のひとり、ラビットのアルバムは高橋に勧められてストリーミングで聴いた。フランス語のそのタイトルを見てすぐに『悪の華』と言ったのは、編集部小林。
 これらの潮流は、良くも悪くも快楽主義とかクラブとは別の、なにか強いものを訴える表現手段としてのエレクトロニック・ミュージックである。現在もっとも尖っているであろう彼らのサウンドが、これからどのようにクラブ的なるものと接合するのか/まったくしないのか……注目している。

 あー、しかし、清水エスパルスはまだ監督が決まらないのかよ~。

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