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Tanz Tanz Berlin

Tanz Tanz Berlin

#3:FESTIVAL WITH AN ATTITUDE ―― 'FUSION 2011'体験記

浅沼優子 Jul 16,2011 UP

 とても面白いフェスティヴァルに行ってきた。ベルリンでは誰もが知っているが、ドイツ国外ではほとんど知られていないフェスティヴァル、FUSION(https://www.fusion-festival.de/)。その理由はノン・コマーシャル、ノー・プレスというポリシーにある。いっさいの宣伝、PRをしないばかりか、ラインナップすらほとんど公表しない。そこに毎年なんと8万人にも上る来場者がやってくる。

 1997年からはじまったというこのFUSION、数年前から「他のフェスティヴァルとは全然違う、面白いから行ってみろ」といろんな人に薦められていた。ただ今年になるまで行く機会がなかったのは、チケットが入手出来なかったから。プレス枠なんてものはないので、取材を申し込んで潜入、という裏の手も使えない。毎年記録的な速さで売り切れるチケット、今年の分は昨年の12月に発売され、数十分で確か6万枚を完売したというから驚愕だ。今年の分も気づいたときにはとっくに売り切れていたわけだが、たまたま知人が余分に買っていて譲ってくれるというので行けることになった。(尚、毎年日曜日1日券だけ当日に会場入口で販売される。)

 あらゆる意味で特殊なフェスティヴァルだ。まず、ラインナップがほとんど事前に公表されない。ウェブサイト上でいち部のバンドなどは告知されていたが、それが告知される際にはすでにチケットは売り切れているので集客にはまったく影響しない。入場の際に配られる地図付きプログラムを見て、初めてその内容の全貌が明かされる。しかし、はっきり言って大して有名なアーティストは出ない。今年は初日である6/30(木)にスティーヴ・バグやモグワイ、最終日にM.A.N.D.Y.といった知名度の高いアクトが出ていたものの、数百組に上る出演者のうち、日本でも知られているような有名どころは一割以下。つまり、ほとんどが地元で活躍するアーティスト。私もそういう人たちのことはそれほどわからないのだが、どうやら主にベルリン、ハンブルグ、ライプツィヒのアンダーグラウンド・シーンを支えている人たちのようだ。

 つまり、来場者は「~~が見れる」という理由ではなく、フェスティヴァルそのものに魅力を感じてやって来る。その意味では日本でいうところの朝霧ジャムやラビリンスに近いかもしれない。しかし、規模は全然違う。なんとステージは20もある! ダンス・ミュージックだけでなく、ワールド系からロック、ダブ/レゲエ、演劇に映画、子供向けエリアなどもある。そしてほとんどの来場者がキャンプをするので、キャンプ・エリアが広大。グリッド状に仕切られたキャンプ・エリアには「道」が作ってあり、それぞれにストリート名までついている。ちょっとした村が出現したような感じだ。

 公式な開催期間は木曜日から翌週月曜の昼くらいまでだが、聞いた話によると、水曜くらいまで音を出しているステージもあるとか。私は4泊もキャンプをする気合いも道具も持ち合わせていなかったので(生温くてスミマセン!)、土曜の午後から日曜にかけて、一泊だけ行ってきた。場所は、ベルリンから来たに車で2時間ほど(あるいは電車で1時間、さらにバスで30分強)のところにあるレヒリンという村にある、レーツというソ連の空軍基地跡地。少しググってみたところ、1918年に建造され、第三帝国時代にドイツ空軍が軍用機の設計や訓練に使用され、第二次世界大戦後にはソ連軍の戦闘機やヘリコプターの基地として1993年まで使用されていたそうだ。なんとも東ドイツらしい歴史を持った場所である。

 FUSIONは1997年からはじまっているので、今年で14回目。現在は、主催者がこの敷地を買い取り、管理している。主催しているのはKulturkosmosという非営利団体。「取材はお断り」というスタンスのようなので直接問い合わせることは控えたが、ウェブサイトにフェスティヴァルの趣旨などがきちんと説明されている(でもいつかは主催者に話を聞いてみたいものだ)。それによると、彼らのモットーは4日間の「共産主義ホリデー」を提供すること。日本の感覚だとドキリとさせられるような政治的ステートメントだが、すべてのプログラムはこの考えに基づいて組まれている。その徹底ぶりは感心してしまう。

 先に述べた通り、完全にノン・コマーシャルを貫いている。当然のことながら、企業によるスポンサーシップ、広告、プロモーション等はいっさいない。チケットの価格も4日間で80ユーロと手頃で、到底利益を出そうとしている価格設定ではない。キャンプ・エリア、駐車場の使用料はナシ。これもチケット代に含まれているのだ。フェスティヴァルを実現する経費をまかなうために有料になっているだけ。実際、100以上、2000~2500人のネットワーク団体のスタッフに加え、3000人以上のボランティアが運営を支えているらしい。80ユーロのチケットには10ユーロの「ゴミ券」がついている。入場時に全員に渡される大きなゴミ袋いっぱいにゴミを集めて換金所に持って行くと、10ユーロが戻って来る仕組み。だから会場はゴミが少なく、チケット代は実質70ユーロということになる。さらに、フェスティヴァル内には「労働省」があり、事前にか開催期間中にここに申し出て6時間の労働に従事すると、なんと40ユーロがもらえる! どんな人でも遊びに来れるように、完全にバリアフリー設計。会場には一切の段差がない。13歳以下の子供は無料!(13歳~18歳の未成年者は、親の許可書を持ってくれば同伴でなくてもいいらしい)

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Profile

浅沼優子浅沼優子/Yuko Asanuma
フリーランス音楽ライター/通訳/翻訳家。複数の雑誌、ウェブサイトに執筆している他、歌詞の対訳や書籍の翻訳や映像作品の字幕制作なども手がける。ポリシーは「徹底現場主義」。現場で鍛えた耳と足腰には自信アリ。ディープでグルーヴィーな音楽はだいたい好き。2009年8月に東京からベルリンに拠点を移し、アーティストのマネージメントやブッキングも行っている。

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