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interview with Girls

interview with Girls

これはロックンロールなんかじゃない

――21世紀のロックンロール考(2)、ガールズ登場!

野田 努    通訳:原口美穂   Sep 06,2011 UP

ユーモアが少ないってのは同感だよ。今回はもっとシリアスだからね。前回はユーモアをマスクとして使ってたんだ。フェイク・ヴォイスをジョークで使ったりとかね。でも今回はオープンで、もっとシリアスで正直なんだ。


Girls
Father, Son, Holy Ghost

True Panther Sounds/よしもとアール・アンド・シー E王

Amazon

さんざん取材で訊かれたと思うので、申し訳ないないのですが、いまいちど、当時の記憶をたどってもらえないでしょうか? "Children of God"()はヒッピーが作ったディストピアとも言えるようなものですよね? そうしたあなたの幼少期の経験に対するあなたの思いに、この数年で何か変化はありましたか? あったら教えてください。

クリストファー:子供の頃に対する思いは毎日かわる。説明するには複雑だけど......。僕は若いとき、良いことを含め何に対しても感謝できなかった。怒りでいっぱいだったし、自由になりたいとばかり考えていたからね。反抗的だったんだ。でもいまは、人生でいろいろと経験してきて、いろんな角度から物事をみたり、先を見るようになった。というか、見れるようになった。だから、何を自分が失ったかを振り返ることもあれば、何が自分を幸せにしているかを見つめることもある。自分は特別な経験をしてきたなとも思うし、そのおかげでいまの自分があること、そして同時にそのせいで特別なものを失ってきたこともわかってる。その繰り返しなんだ。

そのカルト教団を作ったヒッピーが愛していた音楽がロック・ミュージックだったという事実、そしていまあなた自身がロック・ミュージックをやっていることを我々はどのように解釈したらいいのでしょう?

クリストファー:さっきも言ったように、僕はロックンロールをやってるとは思わない。僕がやってるのはポップ。ロックンロールはヒッピーだし、自分はそのなかにいたけど、僕が好きなのはポップなんだ。僕たちの曲のなかで、ロックンロール・ソングはすごく少ないはずだよ。たぶん、ロックンロールの質問をしてくる人たちは、僕とロックンロールの解釈が違うんだろうね。アメリカでは、ロックンロールっていったら僕の姿勢とは違うものを意味する。君の意見が間違ってるとは思わないけど、もっと一般的にロックってものを考えたら、それがちょっと違うってことに気づくはずだよ。ロックンロールをもっと世界的に考えてみて。ロックは、自分にとっては全然違うことだし、僕はもっとジェントルマンだよ。

では、あなたにとってのロックンロールとはどういう意味なのでしょう?

クリストファー:自分勝手で、人に失礼な態度をとることを気にしない。ある意味、アグレッション(強引さ)を通した自由って感じだね。

自分がそうじゃないだけで、キライではない?

クリストファー:うーん......オールド・ロックンロールは好きだよ。そうだね、好きなロックンロールはたくさんある。ただ自分がそうじゃないだけだね。

そして『ファーザー、サン、ホーリー・ゴースト』というアルバム・タイトルは何を意味しているのですか?

クリストファー:このタイトルは、聖書からの引用なんだけど、意味はちょっと複雑なんだ。このフレーズは、聖書の引用っていうのもあるけど、アメリカの人びとにとっては誰でも知ってる御馴染みの言葉なんだよ。イエスと精霊と神は三位一体なんだ。だから使うことにした。みんながすでに聞いたことのあるフレーズだからね。それがこれをタイトルにした理由のひとつ。もうひとつは、このアルバムは自分にとって......というか、このアルバムだけじゃなくてすべてがそうだけど、どんな作品でも、Origin(原点)とIdentity(アイデンティティ)、そしてSpirit(魂)があると思うんだ。だから、僕にとってFather、Son、Holy Ghostの3つは、原点、アイデンティティ、魂を意味してるんだよ。うまく説明できないけど、このタイトルの意味はそれなんだ。

アルバムのオープニング・トラック"ハニー・バニー"は、エネルギッシュで爽快な曲であり、直球なラヴ・ソングですが、しかしアルバムには"ダイ"というヘヴィーな曲もあるし、そして"マイ・マー"のような深いエモーションを持った曲もあります。何故いま、"マイ・マー"のような曲を歌ったのでしょう? 

クリストファー:この曲で、僕は自分の気持ちを認めてるんだ。いま、僕が母親を恋しがってることをね。歌詞もすごくシンプル。母親ともっと近くなれたらいいのにっていう願いがその内容なんだ。僕と母さんは親しいけど、複雑なんだよね。同じ街に住んでないし、僕はすごく忙しいし。恋しいってことを彼女に言いたいんだ。自分の人生に、母さんが必要だってね。

前よりもっと恋しいですか?

クリストファー:そうだね。最初に家をでたときは、自立することが目的だったし、家を出たからこそできることがたくさんあった。でもいまは、そういうのを超えたから、彼女の存在がすごく恋しいんだ。

"ヴォミット"もまた、とてもハートブレイキングな曲です。これはどんな思いで作ったのでしょうか? とくに後半のゴスペルのような展開がすごいのですが。

クリストファー:これは随分前にかいた曲なんだ。この曲で表現してるのは......人について。他人からの愛が必要すぎる人。彼は毎日毎日、愛を探して探して、探しまくってる。自分にとって良くないしがみつきがある人の歌なんだ。たとえば、誰かがアル中のグループのなかにいたら、最初に必要なのは、自分がアル中であること、問題を抱えてることを認めること。この曲は、自分にとってその"認めること"なんだ。オープンに、自分は問題があると曲のなかでみとめてるんだ。

あなたの音楽からはファーストにあったようなユーモアはなくなってしまったのでしょうか?

クリストファー:うーん......答えるのは難しいね。僕は、アルバム単位で曲は書かないから。だからいつもアルバム自体にテーマがないんだ。それぞれの曲は独立してるんだよ。共通してるのは、すべてのアルバムの曲が自分たちのお気に入りでできてるってこと。ユーモアが少ないってのは同感だよ。今回はもっとシリアスだからね。前回はユーモアをマスクとして使ってたんだ。フェイク・ヴォイスをジョークで使ったりとかね。ファニー・ボーイズをふるまってた。でも今回はオープンで、もっとシリアスで正直なんだ。

なぜそれ(ユーモア)をやめたんですか?

クリストファー:もっと成長したし、前より気持ちが楽なんだ。リラックスしてるから、マスクを被って何かを隠す必要はもうない。ときどき遊びでやったりはするけどね。前はシリアスになりすぎないためにユーモアを敢えていれたりしてたけどいまではもうやらないんだ。


(注)"Children of God(神の子)"とは"Family International"としても知られる欧米では有名なカルト教団。1968年に設立されたそれは、60年代のキリスト革命(反体制的なヒッピーイズムのなかに見たキリスト教的な要素とキリスト教のなかに見たヒッピー的な要素によってうながされている)というなんとも実に歴史的に皮肉なムーヴメントのなかから生まれている。科学療法を信用しない教団は、乳児だった頃にオウェンスの兄を死なせている。父親はどこかへ消えてしまい、母親は売春も強制させれている。世界で最初の反カルト団体の組織化の契機にもなっている。

質問:野田 努(2011年9月06日)

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