Home > Interviews > interview with ROTH BART BARON - アンユージュアルなふたり
あんまり東京に生まれたということを意識したことはないんですが、「帰る家」がある人はいいなって思ったりしたことはありますよ(笑)。(三船)
■……東京生まれって、そこに何か関係あるんですかね?
三船:あんまり東京に生まれたということを意識したことはないんですが、「帰る家」がある人はいいなって思ったりしたことはありますよ(笑)。実家に帰るっていう感覚もよくわからないし、東京というところを目指して「上って」いくという感覚もないですし。
■ふるさと的なものへの憧れはありますか?
三船:僕はありますね。原風景みたいなものへの、というか。
■この、アー写に映った沼とかは? 原風景的なものだったりします?
三船:なんでしょうね?
中原:その写真はボツになったやつなんですが……。
■ははは! これはボツですか。でも、ROTH BART BARONのふるさとのようなものが、どこかに像を結んでいたりするのかもしれませんね。
三船:なんだろう、そういうものを探しているところはありますね。
■中原さんはどうですか?
中原:僕も東京生まれ、東京育ちなんで、帰る場所というようなものはあまりイメージできないですね。あったらいいな、という憧れはちょっとあります。
「上京」っていう感覚は、僕もわからないですね。目指すべき憧れの地というものもないから、そういうところではハングリーさが足りないかもしれないです。なんか、そんなふうに言われたりもします。(中原)
三船:お正月でたくさんの人がご実家に帰られたあとは、この辺はすごく静かで、おもしろいですよ。
中原:うん。それから「上京」っていう感覚は、僕もわからないですね。目指すべき憧れの地というものもないから、そういうところではハングリーさが足りないかもしれないです。なんか、そんなふうに言われたりもします。
■ええっ! そうなんですか。でも、それと同じで、守りたい東京のイメージというものもとくにないかもしれないですね。
三船:でも、みんなが心に描く東京があるなら、守らなきゃいけないということになるんじゃないかな。……わかんない、みんなの勘違いが寄り集まっている街が東京だと思っているから。
いま話していて思いだしたんですが、僕の父親はボートの修理工なんですよ。それで、台風のときなんかは、水かさが上がったり大洪水になったりするから、丘に泊めてある舟を縛っておかなきゃいけないんです。そうじゃないと商売上がったりだから、大人の人たちがものすごい勢いで作業をする。みんな半分水に浸かりながら必死にやっているのに、そんなことお構いなしに幼少期の僕は自転車に乗って遊びまわったりしていて……そういうことを強烈に覚えていますね。原風景のようなものかもしれません。
■ボートってよるべないものでもありますから、なにか象徴的ですね。
■それから、以前の『化け物山と合唱団』っていうタイトルにも入っていますけど、「合唱団」というものに何か思い入れがあったりしますか? 三船さんの声はひとりだけど、合唱的だと感じるときがあって。
三船:「クワイアー」っていうものが作り出すあの感じ……。宗教音楽にも感じるし、ボーイ・ソプラノを聴いたりしても感じるんですが、ああいう教会音楽のようなものは人間に向かって鳴っているものではないじゃないですか。人間を超越したものに向けられている音が好きなのかもしれないです。
■ああー!
三船:……っていうとちょっと電波くんな感じになりますが(笑)。
■ぜんぜん。まさに、です。よくわかります。
三船:バッハとかもそうですね。
■だから日本っぽくないんですかね。空気に向かって、共感に向かって投げるのが日本的なポップ・ソングだとすれば、ROTH BART BARONのはある絶対的なものに向かって投げられる音というか。
三船:アンノウンなものに対してではなくて、見えないけれども人間がどこかで感じているはずのもの。ちょっと複雑だけど、そういうものに向けている気がします。いま思っただけですが。
■なるほどなあ。神秘的っていうんじゃなくて、ふつうとちょっと違うところに向けて歌われているんですよ。
三船:向こうでも、「アンユージュアル」ってよく言われました。よくわかんないんですけど。
■それ、どういうニュアンスなんでしょうね。わたしもよくわかりませんが、きっと何か本質的なことを言っているんでしょうね。
三船:ははは。べつに、そうなるように目指しているわけではないんですけどね。
■最後にそのお話が訊けてよかったです。ありがとうございました。
取材:橋元優歩(2014年4月22日)