ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  2. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  3. Brian Eno ──ブライアン・イーノがレーベル〈Opal〉を再始動、あわせて00年代の2作品がリイシュー
  4. Arca - XXXXX
  5. Loraine James ——ロレイン・ジェイムズの新作、突如のリリース(しかも無料DL)
  6. Klara Lewis - Opening | クララ・ルイス
  7. R.I.P. 鷲巣功
  8. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  9. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  10. RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO - TOKYO -
  11. Dusty - Dusty & Friends / Commodo - Deep Harbour ft. Alfa Mist / Untold - False Vacuum
  12. Future Sound of Jazz ——蘇る「フューチャー・ジャズ」、ドイツの〈Compost〉の人気シリーズが16作目
  13. Tohji - angel
  14. interview with Wendell Harrison 音楽の楽園=デトロイトから、ウェンデル・ハリソンがファラオ・サンダースとサン・ラーの思い出を語る
  15. Kim Doeon - SLAPSTICK | キム・ドオン
  16. This Is Lorelei - The Singer in My Band | ディス・イズ・ローレライ
  17. 異次元の常識──パンク/ハードコアの思想とメッセージ
  18. interview with caroline いま、これほどロマンティックに聞こえる音楽はほかにない | キャロライン、インタヴュー
  19. Cornelius - Refractions | コーネリアス
  20. Haruomi Hosono ──細野晴臣のドキュメンタリー映画が公開

Home >  Interviews > interview with Swindle - グライムで愛と平和を叫んで何が悪い?

interview with Swindle

interview with Swindle

グライムで愛と平和を叫んで何が悪い?

――スウィンドル、インタヴュー

取材・文:高橋勇人    Feb 05,2016 UP


人生でベストDJができたと語る2015年3月21日DBSの様子

世界をツアーして、旅先の音楽を自分の音楽に取り入れるってことの重要性もマーラから学んだ。いまって世界中をツアーで回るDJはたくさんいるけど、彼らがその経験を自分たちの曲に反映させることって、あんまりなくない? それってすごくつまんないことだ。未知なる場所での新しい出会いから得られるものってすごく大きいし、その影響は絶対に音楽にもいい形で現れるって俺は思うんだけどね。

ちなみにMCをやったことはないんですか?

S:実は昔、ドラムンベースのMCをやっていたよ(笑)。マジメにやっていたわけじゃなかったけどね。MCでは自分を表現できないってわかったから、そっちの方向には進まなかったな。

あなたがファンクやドラムンベースに熱中しているとき、周りのひとたちもそういった音楽を聴いていたんですか?

S:親父がジャズ、友だちはガラージやドラムンベースって感じだったね。だから俺のなかで音楽のバランスが取れているんだと思う。グライムやファンキー・ハウスを聴くようになっても、いろんなジャンルを並行して聴いていたよ。

当時のあなたはオーバーグラウンドのチャート・ミュージックをどのように捉えていましたか?

S:あんまりチェックはしてなかったね。自分がフォローすべき音楽があまりないように思えたんだ。チャートのなかには金儲けにために作られているようにしか思えない曲もあったしね。そういった類のモノに昔から興味が持てなくてね。いまでもメジャーのラジオ番組は全然聴かない。

ラジオということばが出ましたが、『ピース, ラヴ&ミュージック』ではラジオのような編集がされている箇所もあります。10代の頃、あなたは海賊ラジオを聴いて育ったとも聞いています。

S:その通り。毎日聴いてたよ。俺にとってラジオとは海賊ラジオだっていうくらいにね。10代? もっと若かったよ(笑)。初めて海賊ラジオを聴いたのって、たぶん6歳のときだ。うちに古いコンピューターがあって、それを使ってカセットにラジオを録音してたのを覚えているな。海賊ラジオの電波を探すのって本当に巡り合わせが重要だったんだよ。特定の日、サウス・ロンドンの特定の場所、特定の時間。この条件が揃わないと電波を受信することすらできなかったし、かっこいい曲がかかった途端に電波が途切れて、同じ曲には二度と出会えないってことなんてしょっちゅうだったよ。ネットのポッドキャストやCDじゃ絶対に味わえない体験だった。

エリック・ドルフィーみたいですね。「音楽を聴き、終わった後、それは空中に消えてしまい、二度と捕まえることはできない」。

S:それそれ(笑)! ホント、音を捕まえるためにカセットがあってよかった(笑)。そういった具合に、本当のラジオが何なのかを知る前に海賊ラジオに出会ったわけ。

6歳だったわけですもんね(笑)。このアルバムでは、グラスゴーのマンゴズ・ハイファイとの“グローバル・ダンス”の前に、ラジオ中継のようにマンゴズの会話が入ってきます。

S:それは彼らがやっている本物のラジオ番組からの抜粋なんだよね。曲を作った日にそのラジオの放送があったんだけど、そこに俺も出演したんだよ。音楽に対して正直になることはオレのテーマなんだけど、ラジオは人生の重要な一部でそのテーマともつながってもいる。

そうでしたか。あなたはその曲でコラボしているグライムMCのフロウダンとグラスゴーでプレイしています。スコットランドってグライムがそんなに人気がないようにも見えるんですが、あなたはどう思いますか? またスコットランドとイングランドとオーディエンスの反応に違いはありますか?

S:いまはそんなことないんだよ。スコットランドに限らず、UKのメインストリームでもグライムはすごく大きな存在感を持っている。反応の違い? 酒だよ(笑)。「こいつらどれだけ飲むんだ!?」っていうくらいスコティッシュはウィスキーが好きだよね。ケルトの血はクレイジーだ(笑)。ロンドンは雰囲気的にちょっと閉じているところもあるけど、スコットランドはオープンだからやりやすかった。

2013年にあなたはソロと『マーラ・イン・キューバ』のキーボーディストとして2回来日していますよね。マーラからバンドへの参加のオファーがあったそうですね。

S:マーラとはいっしょに作業をする機会があったんだけど、ちょうどそのときに彼は『マーラ・イン・キューバ』をライヴでやることを計画していてね。「キーボード弾けるんだからセッションに参加しないか?」って誘われて、すぐに了解の返事をしたよ。
 あの作品、それから一連のセッションからはものすごくインスパイアされた。音楽を表現するのに必ずしもDJである必要はないんだって気づけたから、自分のバンドを持とうと思ったし、それを実行する上でマーラ・バンドへの参加は大きな自信にもなった。
 世界をツアーして、旅先の音楽を自分の音楽に取り入れるってことの重要性もマーラから学んだ。いまって世界中をツアーで回るDJはたくさんいるけど、彼らがその経験を自分たちの曲に反映させることって、あんまりなくない? それってすごくつまんないことだ。未知なる場所での新しい出会いから得られるものってすごく大きいし、その影響は絶対に音楽にもいい形で現れるって俺は思うんだけどね。

おっしゃるように、あなた自身も自分のバンドを率いて演奏を行いますが、それは文字通りライヴです。いまって、クラブにラップトップを持ち込んでエイブルトンのコントローラーをいじっているだけでもライヴって呼ばれる時代ですよね。そういう状況についてどう思いますか?

S:すごい音楽をやるプレイヤーもいるから、そのスタイルを決して否定はしないよ。でもなかにはステージに立ってタバコ吸ってプレイ・ボタンを押して金を貰っているヤツもいる。ふざけんなって話だよな。そんなのオーディエンスにとっては、家でユーチューブを見ているのと変わらない。ちなみに俺もよく「ツアーでエイブルトンを使ってライヴをやれば?」って言われるんだけど、これからもそれは絶対にやらないと思う。やっぱり俺が考えるライヴはバンドがいてこそ成り立つものなんだよね。それにDJするのも大好きだから、ひとりでツアーをするときはDJで十分だよ。もし現場にキーボードがあったら曲に合わせて弾きたいけどね。

マーラのレーベル、〈ディープ・メディ・ミュージック〉から出した“ドゥ・ザ・ジャズ”であなたを知ったリスナーは多いと思います。あの曲はどうやって生まれたのか教えてくれますか?

S:オーケー。本当のことを話そう。あの曲が生まれたのは、母親の家の地下室で夜も遅かったな。それで俺はめちゃくちゃクサを吸っててさ……(笑)。で、気づいたら朝になっていて曲が完成してたんだよ。作っている間のことはまったく覚えてない。あのベースラインが先にできたのか、ハンドクラップが先だったのかも記憶にないね(笑)。

Swindle - Do The Jazz (DEEP MEDi Musik) 2012

取材・文:高橋勇人(2016年2月05日)

123

Profile

髙橋勇人(たかはし はやと)髙橋勇人(たかはし はやと)
1990年、静岡県浜松市生まれ。ロンドン在住。音楽ライター。電子音楽や思想について『ele-king』や『現代思想』などに寄稿。

INTERVIEWS