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interview with shotahirama

interview with shotahirama

じぶんだけのオーセンティック

──shotahirama、インタヴュー

取材・文:小林拓音    写真:shiki sawamura (於ほんとレコード・京都)   Feb 10,2020 UP

愛が詰まっているんです。「このひと、これが好きなんだな~」っていうのが伝わってくれるといいな。「俺はこういうのを聴いて、こういうふうにつくったんだよ」っていう。

■ラッパーを入れることは考えなかったんですか?

SH:やってみたいとは思います。やってみたいですけど、こういう性格なので、いっぺんにいろいろはできないんですよね(笑)。なにかにハマったらそれだけになっちゃう。あるひとりのアーティストだけにハマるというわけではないんですけど、そこからその周辺や時代を探っていって。この曲はこの人がプロデュースしてるんだとか、その界隈をずっとぐるぐるまわって、じぶんのなかに落としこんでいく。それがわかるまで聴きつづける。オタク気質なのかな。だからその間はペイヴメントもまったく聴かなかった。

■おもしろいのは、今回のヒップホップにせよペイヴメントにせよ、90年代というところですよね。

SH:グランジもですけど、あの時代のニューヨークのヒップホップはすごくおもしろい。

■それはやっぱりじっさいそこに住んでいたから、なにかが刷りこまれちゃってるんでしょうか?

SH:そんなかっこいいものではないと思う。ナインティーズっていうところに、たぶんじぶんのモードというか、基本的にそこになにか核のようなものがあるのかなって。くすぐられるものがたくさんあるというか。じぶんのなかのオーセンティックが90年代なんですね。

■前半と後半とでちょっと雰囲気が変わりますよね。今回はデジタルのみでのリリースですけど、しっかりA面・B面でわかれているような印象がある。単純に分数で割ったら収まらないかもですが。

SH:前半はまだグリッチも多くて、後半はサンプリングだけでトラックメイクするような感じ。

■こういう流れにした狙いは?

SH:“SLACKER” と “SLACK HOUSE” はもともと1曲だったんです。俺の悪い癖で(笑)。だから切ったんですよね。前半4曲くらいはたしか、つくっている時期がおなじだったんじゃないかな。そのころはまだ1曲10数分でアルバム、みたいなことを考えていたと思う。でも意外とさくさくつくれて、その前半4曲とはまったくべつのものができた。この調子で行けば、(長い)この曲もちがう曲になる、あれもちがう曲にできる、という感じで10曲に絞っていた。

■そうすることで、いわゆるアルバムの形態になったと。手ごろな長さの曲がしっかり10曲も入っている、こういうかたちは初めてですよね。

SH:そうそう! フル・アルバム。10曲で50分くらいあって。そんなのやったことないですからね。

■キャリア10年目にして、ついに。

SH:自分のレーベルをはじめたのが2009年だから。

■たしかに。先ほどハウスっぽいという話が出ましたけど、前半の曲のタイトルに「HOUSE」とついているのはそういう理由から?

SH:いや、これはラフ・ハウス・サヴァイヴァーズっていう、ニュージャージーのヒップホップ・トリオからとりました。ふだんヒップホップを聴いているひとでも知らなかったりする、いわゆるマイナー・ヒップですね。ニュースクールっぽい感じです。そのジャケがまたかっこよくて。でもあとで聴きなおしたら “SLACK HOUSE” とかは意外とクリック・ハウスぽい。意識したわけじゃないけど。そもそもハウスとヒップホップは親戚みたいなものだし、ダンス・ミュージックを聴いていたひとがつくったからそうなったのかな。

■今回は音数が少なめなのもポイントですかね。

SH:『Maybe Baby』は多かった。『Post Punk』もそうだし。それはヒップホップを聴いた影響じゃないですかね。

■以前、トラックは0.1秒ずつつくっていくといっていましたよね。そのペースでざっくり計算してみると、今回はめちゃくちゃはやく仕上がっているのでは?

SH:めっちゃはやいです。今回メインでつかっているのはエレクトロンのデジタクトという機材で、ビートがつくれて、サンプラーにもなっている。『Maybe Baby』のときは使っていなかった。前回は基本的にリアクターっていうソフトとずっとにらめっこしていて。そのちがいじゃないですかね。ノイズっぽいところ、グリッチっぽいところもあるけど、ほんとうにわずかなので。ターンテーブルはビートメイクをするうえで、ほんとうにはやくつくれる。大丈夫かなって思うくらい。前作とはぜんぜん制作期間がちがいますね。『Maybe Baby』は、あれだけ頑張ったのに、結果10数分だった(笑)。今回はこの期間で10曲もできているし、アウトテイクも含めたらもっとある。

■あとやはり随所にダブの要素も仕込まれていますよね。最後の曲とか。

SH:これは(リカルド・)ヴィラロボスの影響なんです。あの読み方が難しいアルバムの……

■赤いジャケの?(『Fizheuer Zieheuer』)

SH:そう! あのジャケの盤を3枚くらい持っていたんです。何回も再発されて黒いジャケになってるんですけど、赤いジャケありのやつは高いんですよ。

■あれはぼくも一時期めっちゃハマりましたけど、3枚はすごい(笑)。

SH:あれをずっとひきずっていて。ほんとうにお気に入りで、いつかああいうのをつくりたいと思っていた。ヒューっていう亡霊みたいな声が入ってくる部分も、じぶんのなかでたまたま近いネタをみつけて、それをピッチダウンしたら幽霊みたいになって、「あれっ、この感じ、発明したかも」と。ヴィラロボスはもっとクリックで、テクノですけど、それをダウンテンポでできるのではないかと思いついた。音数を極端に減らして、たまにディレイをかけて。そういう思い入れもあったので、最後のその曲だけ10分超えてたと思います。

■なるほど。ヴィラロボスだったとは。いやー、懐かしい。

SH:呪術的な、すごい妖しい感じでね。アガる声ネタも入っていて、祝祭感もある。トランペットも入っていて、南米のノリですよね。ヴィラロボスはほんとうに好きですね。ぼくのはもうちょっと暗い感じになってる。

この歳になってじぶんの好きな領域がまた増えたというか、かつてギタポを聴いていたときのように、しっかり勉強して買ってという感じになれたので、すごく幸せな2年間でしたね。

■今回の制作中に聴いた唯一のヒップホップではない作品?

SH:いや、聴いてはいないですね。じぶんのなかでずっとひきずってきたって感じです。ほんとうに好きな12インチなので。おもしろいですよね。サンプリングしようと思ってつくりながら、「あれ?」という発見がある。「こういうふうに聞こえるんだ」みたいな、そういう発見はめちゃくちゃ楽しいです。それって、0.1秒ずつグリッチさせてノイズつくっていくのよりもはるかに健康的じゃないですか(笑)。

■たしかに。ほかに工夫したことはありますか?

SH:たぶんヒップホップのトラックをつくるときって、ふつうはジャズとかソウルから元ネタを引っぱってくると思うんですが、俺は今回、基本的にはヒップホップの12インチを使いましたね。ほんとうはその元ネタを探してつくるんでしょうけど。だから、わかるひとは聴いたらわかるんじゃないかな。ギャングスターも入ってるし。最後の曲の冒頭はジェルー・ザ・ダマジャの “Come Clean” って曲ですね。

■デビュー作の。

SH:シェリー・マンっていうドラマーの “Infinity” という曲があるんですけど、その曲で鳴っている、水がしたたるような音をジェルー、正確にはプレミア(プロデュースはギャングスターのDJプレミア)が使っているんです。その12インチをそのまま使って、ピッチを落としてテンポも遅くして、ビートに乗っけて。そのやり方に愛が詰まっているんです。「このひと、これが好きなんだな~」っていうのが伝わってくれるといいな。

■孫引きみたいな感じですよね。その場合オリジナル盤じゃないから、それをサンプリングしているほうの微妙な音の感じも入ってくるということですよね。

SH:そうです。さらに指でピッチを変えているし、当然サンプラーでもまためちゃくちゃいじるし。いくつかの過程を経ているので、まったくそのままでは絶対にないはずです。あとはスラム・ブラザーズとか。1曲目の “STOP FRONTING” はスラム・ブラザーズの同名曲からとっていますね。ネタもそのまま。ピッチはだいぶ変えてるけど。だから、「俺はこういうのを聴いて、こういうふうにつくったんだよ」っていうのが伝わるといいな。

■まずなにより音楽好きであるというか。

SH:やっぱり音楽オタクなんですね。それで前回のときにはいっさい話していなかったヒップホップにもついにハマってしまったと思ってもらえれば(笑)。とか言いつつ、ちゃっかり去年の(スティーヴン・)マルクマスのライヴにも行ってるんですけどね。この歳になってじぶんの好きな領域がまた増えたというか、かつてギタポを聴いていたときのように、しっかり勉強して買ってという感じになれたので、すごく幸せな2年間でしたね。でも、このインタヴューがきっかけで、じぶんのなかのヒップホップのブームが終わったらと思うと怖いな(笑)。次のアルバムのときはラテンの話をしていたりするかもしれない(笑)。

取材・文:小林拓音(2020年2月10日)

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