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interview with tofubeats

interview with tofubeats

自分のことはハウスDJだと思っている

──トーフビーツ、インタヴュー

取材:小林拓音(●)+野田努(■)    写真:川島悠輝   May 24,2024 UP

いや、べつにAIはいいんですけど、ショックを受けてしまった自分自体がショックで。ふだん自分はそういうテクノロジーとか肯定派のツラしてたのに、ショック受けてるやん……って(笑)。


tofubeats
NOBODY

ワーナーミュージック・ジャパン

House

Amazon Tower HMV 配信

●今回ヴォーカルに「Synthesizer V」というAIの歌声合成ソフトを使用することになった経緯や理由を教えてください。

TB:M6の “I CAN FEEL IT” ってじつは、『REFRECTION』をつくってるときに7~8割ぐらいの完成度でできてたんですよ。でも『REFRECTION』には入れないだろうなと。歌詞も全部できて自分の仮歌が入ってたんですけど、これは自分じゃないわなって思って、女性ヴォーカルだろうとは思ったんですけど、それでもまだ「この青臭い歌詞を誰に歌わせるか?」というところで悩んで、また寝かせていた。そのタイミングで「Synthesizer V」が出て。ざっくり言うと、「すごいボーカロイド」みたいなものなんですけど、テクノロジー的にも興味があったんで、試しにこの曲で打ち込んだら、「これでよくねえか?」ってなって。

■恐ろしいよね。言われなきゃわからなかった。

TB:いやそうですよね。しかもとくに細かいこともしなくて、ほとんどベタ打ちしただけなんです。それで、できそうな気がして、M2の “EVERYONE CAN BE A DJ” もつくったら、「これはもうこのソフトで一枚つくれるな」ってなっていった感じです。一見 “I CAN FEEL IT” の歌詞ってそのソフトを前提にしたような歌詞ですけど、順番的には逆だったんです。

■なるほどね。これは、ミスター・フィンガーズに対する tofubeats からの回答だよ(笑)。

TB:じつは今回のEPには全体に通底してるフィーリングみたいなものがあって。去年スミスン・ハックのような、ブツ切りのカットアップ・ハウスみたいな曲を探しているときがあったんですけど、そのとき「めっちゃいいやん」って思った曲があって、調べたら生成AIでつくられた曲やったんですよ。もう、めっちゃショックで。いや、べつにAIはいいんですけど、ショックを受けてしまった自分自体がショックで。ふだん自分はそういうテクノロジーとか肯定派のツラしてたのに、ショック受けてるやん……って(笑)。人間がやってると思ってたら人間じゃなかったときのこの気持ち……たとえば最近やったらコールセンターもAIだったりするじゃないですか。人と喋ってると思ってたら「これ、AIや」みたいな。そういう感情ってこれまでなかったタイプのものだと思うんですよ。この曲を聴いて「こんな人かな?」みたいに想起した俺の感情ってなんなん……みたいな、そういう行き場のなさというか。
 人間ってつねにいろんなものを想定して話すわけじゃないですか、会話もそうで、でもそれが急にハシゴを外されることって、これまで生きてきてあんまりなかったと思うんですよね。そういう外され方がこれからめっちゃ増えてくんやなって思って、それが今回のEPのテーマになっています。“NOBODY” もまさしくそう。「待ってるよ」と言われて「誰が待ってるんだろう?」と思って調べたら「これ人ちゃうんかい」ってなるわけです。そういう行き場のなさみたいな感じが、人間側に勝手に生まれること、それこそが生成AIによって生まれる新しい一個のフィーリングかな、と思って、それが全体のテーマになってる。

●そういう意味で言うと、2曲目の歌詞で「誰でもDJにはなれる」っていうのをAI が歌っているのが、なんというか、処理しづらい感情を生みますよね(笑)。

TB:人間どもよ! と(笑)。これもふと口をついて出てきた単語なんですけど、歌わせてみたらすごい批評性が出るなあ、と。

●さらに「誰でもステップを踏み鳴らす」と。歌っているAI本人にはそれができないわけです。

TB:でもDJはAIにもできるじゃないですか。ぼく、AIのDJと一回戦ったことあるんで。YCAMのそういうイベントで。

●戦う、というのはどうやって?

TB:AIDJとのバック・トゥ・バックですね。もう10年近く前にYCAMで Licaxxx とぼくが、コスモという会社がつくった「AIDJマシーン」みたいなのとB2Bするっていうめっちゃ面白いイヴェントがあって。そのときは「AIなんてまだまだやな」とか言ってたんですけど、いまはたぶん相当すごいと思います。

●今回AIを使用したのはヴォーカルでしたが、今後はトラックとかにも使っていきたいですか?

TB:今回AIを使ってはいますけど、歌詞を書いたのは自分だし歌わせたのも自分だし、どうなるかわからないところはありますね。「音楽をつくる」っていうこと自体がめっちゃ簡素化していくと──自分もそもそも簡素化した後の世代ではあるんですけど──どこまでが楽しみになるのか。文字を書いて音楽を生成することに、音楽をつくる楽しみを味わえるのか味わえないのか興味があります。文字を書くことが音楽をつくることになって、そこに未来を見出した若者たちがプロンプトを書き合って、次世代の〈マルチネ〉みたいなものが生まれるのか、それとも逆にそういうものがなくなって、音楽というものがただただドライなものになるのか。「つくる」ということの概念がどうなるか、その予想のつかなさ。今回みたいにAIを使うのは、意外とそんなに使ってないという感じなんですよね。ほかのソフトも試しで使ったりはするんですけど、ただボンって生成するっていうのはあんまり……。自分は過程が好きでやってるんで、「ただボン!」をやるとそれを省略することになっちゃうんで、それ自体に楽しみみたいなものをまだあんまり見出せてないですね。

●日常で Chat GPT に問いかけたりとかはよくあるんですか?

TB:ああ、それはもう全然ありますよ。文面考えてもらったりとか、英語添削してもらったりとか。あとぶっちゃけると、「こういう歌詞考えてんねんけど、候補を100個出してください」とか。そういう使い方は全然ふだんからしていますね。提案してもらうために使うという感じで。回答を出してもらうためには使っていなくて。選ばせるのをAIにやらせはじめると話は変わってくるかな。「肝になる部分を決めさせるかどうか」っていうのはポイントかもしれない。

●芥川賞を獲った九段理江さんもAIを使っていて。すごい時代になってきたなあ、と。

TB:そうですよね、それは。マジでビビりますよ(笑)。「つくる」っていうのはどこまで人間の領分なのかっていうのはけっこう考えさせられますね。

●今後つくり手の役割は監督みたいなものになっていく、というような。

TB:いやあ、それもきっとできるようになると思うんですよね。脳ってモノじゃないですか。モノである以上絶対再現できると思うんですよ、技術さえ発展すれば。

●たとえば「tofubeats の脳のコピーです」みたいなAIが出てきたらどうしますか?

TB:いや、どうなんですかね(笑)。ただ、そうなったときってほかのひとも全員そうなので、流れに身を任せようかな、と。そのときの流行りに。

まあDJからしたら、お客様は警察みたいなもんですから(笑)。

●今回、アートワークもすごく強烈です。

TB:ヤバいですよね(笑)。ビックリしました、これ。

●これはどっちなんでしょう? 「警官だけど本当は俺たちも楽しんで踊りたいんだぜ」とも読みとれるし、フロアや踊ることそれ自体が警察に奪われてしまっているようにも見えます。

TB:まあDJからしたら、お客様は警察みたいなもんですから(笑)。

●(笑)。どういうことですか?

TB:厳しく見られてるなあ……という。毎回なんですが、山根慶丈さんのアートワークにかんしては口は出さず、出てきたものを選ぶだけっていう決まりにしています。お願いするときもいつも2、3行だけ、たとえば「ヴィヴィッドな感じにしてください」とか、そのくらいの指示しかしないんですよ。そうしたらラフが2、3パターン来るので、そこから選ぶだけなんです。内容についても聞かないっていうルールもあって、毎回なんでこういうアートワークになったかは知らないんです。

■描く前に音楽は聴いてるんでしょ?

TB:はい。聴いてもらって。

■じゃあ聴いて、彼女のなかでああいうふうに。

TB:でも「なるほどな」って感じはやっぱりあって。山根さんがここ1、2年で出してる作品って、こういうおなじ顔のひとがいっぱいいるシルク作品なんです。去年2枚似たような、構図の作品を出していて、片方を買ったんですが、それと似た構図でしたので、もしかしたらなにかを汲みとってくれているのかもとは思います。その作品は資本主義を強烈に風刺した作品だったので、まあたぶんなんらかの山根さんの怒りみたいなものは入ってるのではないかと勝手に想像してはいます(笑)。

取材:小林拓音(●)+野田努(■)(2024年5月24日)

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