「S」と一致するもの

interview with Kensho Omori - ele-king

『Ryuichi Sakamoto: Diaries』
11月28日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

©“Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners

 イスラエルとの結びつきが問題視されているボイラールームで、去年、最高のDJを聴かせてくれたアルカはクライマックスで“Rain”をドロップ。ピュリティ・リングはセルフ・タイトルの新作に「坂本龍一の思い出に」という副題をつけた“Glacier”で“戦場のメリークリスマス”をモチーフにした曲をアルバムの締めくくりに置き、イーライ・ケズラーは今年のブリープ・ミックスに“Chasm”をフィーチャーするなど、世界各地で、そして、思わぬ方向から坂本龍一への追悼が途切れなく続いている。坂本龍一が過ごした最後の3年半を追ったNHKスペシャル「Last Days 坂本龍一 最期の日々」(2024年4月7日放送)はその後、『Ryuichi Sakamoto: Diaries』として新たに映画公開されることに。ディレクターとして携わったNHKスペシャルの制作時から、映画版もつくるつもりで始めたという、大森健生監督に制作当初の話からその過程で気がついたことなどを訊いた。

「受け入れた」と仮定しないと進めない部分もあるのですが、撮っている映像などを見返すと、ある1日を境に言葉も写真もポジティヴに見えるところがありました。2022年4月18日の、「こうなったらどんな運命も受け入れる準備がある」というところです。

最初は「一人の人間の死」と「坂本龍一」であることは分けて考えたいと思います。これまでに誰か個人の死を扱った作品や番組をつくったことはありましたか? 今回が初めてだった場合、人の死を扱う時に初めて感じた感情や気持ちはありましたか。初めてではない場合、他の作品との違いは何でしたか?

大森:人の死ということでは戦争を扱ったことがあります。NHKのディレクターになり1年目から2年目の時に、NHKスペシャル「樺太地上戦 終戦後7日間の悲劇」という番組を制作した時です。人の死を扱ったのはそれが初めてでした。北海道の北に広がるサハリンはかつて「樺太」と呼ばれ、40万人の日本人が暮らしていたんですけど、昭和20年8月、終戦後にもかかわらず、住民を巻き込んだ地上戦が1週間にわたって続き、5000人とも6000人とも言われる人たちが命を落としたんですね。沖縄以外でも地上戦が起きていたということを伝えるために、その時は生き残った方々と何度も対話を重ねました。

有名無名を問わず、一人の死を追ったことは?

大森:有名という意味では、三島由紀夫、森鴎外、山本五十六などの生涯を追いました。今回の作品ほどディープに、一人の方の晩年を見つめたのは初めてです。

これまでと違ったところはありましたか?

大森:坂本さんはお亡くなりになってすぐのタイミングでしたし、歴史上の人物を扱う時とはどうしても肌感覚が違います。ご遺族も、世間も、そして私もまだ完全にはその死を受け入れていない時期でしたし、さっきまでそこにいたという気配が残っているんです。そこが大きく違いました。

坂本さんの音楽は以前からお好きだったんですか?

大森:YMOのアルバムや、よく知られている曲は聴いていました。

ファン目線というよりは距離をおいて題材に取り組めたということですね。

大森:曲をどんどん聴くところから始めました。日記を読みつつ、映像を見つつ。全般的にピアノ曲がすごく好きなんです。坂本さんは節目節目に、同じ曲を弾いて、アルバムに残されているんですよね。制作を続けている間に聞こえ方はだんだん変わっていきました。例えば“戦場のメリークリスマス”も繰り返し演奏されてきて、いろんなタイミングの坂本さんが記録として残されているからこその変化を感じられますよね。

NHKサイドの企画としてスタートした話だと聞きましたけれど、そもそも「坂本龍一の最期」を番組化しようと思ったのはなぜですか。また、番組用につくられたものが映画になるという話はいつ・どこから始まったのですか。

大森:坂本さんが亡くなって2日後に追悼番組を「クローズアップ現代」で放送すると決まり、僕はディレクターの一人として参加するところから始まりました。「クローズアップ現代」以外にもNHKでは「NHK MUSIC SPECIAL」で(最後のピアノ演奏を収めた)『Opus』の映像を通して軌跡を辿るなど、さまざまな番組で紹介してきました。本作のプロデューサーでもある佐渡岳利さんがほとんどの番組を担当されていたと思います。長尺版にしたいというのは最初から考えていて、それをかたちにできるのは映画というフォーマットかなということもぼんやり考えていたかもしれません。

坂本龍一に関する様々な番組のなかで「LAST DAYS~」を担当されたというのは、ある意味一番ヘヴィーな部分を担ったことになりますよね。

大森:「クローズアップ現代」で追悼番組を担当して、それ以前から坂本さんにアプローチしていた記者の方がいて、その方と一緒に遺族にお会いする機会を持てたんです。その時にお話をさせていただいたところが始まりでした。坂本さんはいったい、どんな晩年を過されたのか。それをテーマとして企画・構想しつつ、ご遺族と徐々に対話を重ねていきました。余談ですが、「世に名を残した人々は、晩年をどのように過ごし、何を考えていたのか」というテーマについて、大学生くらいの時に調べることに熱中したことがあるんです。正岡子規をはじめ、梶井基次郎、宮沢賢治などを調べました。川端康成、芥川龍之介、三島由紀夫……晩年はみんなすごいんです。いまは私が生まれた年に亡くなった、安倍公房が気になっているんですけど。

作家さんがお好きなんですかね?

大森:言われてみたらそうかもしれません。政治家や思想家にも興味はありますが、まったく違う世界にも興味はありますね。

人の晩年に興味を持っていたのは昔から?

大森:昔から、「なぜ人は○○するのか」という人類普遍のテーマに興味を持ちやすいタイプなんですよね。例えば「人は最期をどう迎えるか」というような感じで。急にある対象の「なぜ?」に興味が向くんです。これまでも、なぜ手紙を?とか、なぜ往復書簡を?とか。今回は、なぜ日記を? ですよね。ハマるとテーマ読みしてしまうところがあるんですよね。

『Ryuichi Sakamoto: Diaries』の要所要所で田中泯さんが読み上げていく坂本さんの日記も、大森さんはすべてお読みになったんですよね?

大森:読みました。最初はびっくりしましたよね。「僕は古本とガードレールが好きだ」とか書いてあって(笑)。ただテキストだけを読者に届けるのとは違って、メディアを通して日記を紹介するとなると、全文を出すことは難しい。だからこそ全部読んだ上で、大事なエッセンスをより精査・吟味した上で、出さないといけないなと思いましたね。それはご遺族とも話したことでした。

制作しながら、他の誰でもなく、扱っているのが「坂本龍一」だと感じることがあったとしたら、それはどの部分でしたか。

大森:坂本さんの私物をたくさんお預かりしたので、それはもう非常にリアリティがありました。そういう意味では、何から何まで坂本龍一だし、坂本龍一を扱っているという実感につながりました。撮影はリアルのみでやりきりたいと粘る一方で、さまざまな事情があり、打診をしたすべての場所で撮影許可が下りたわけではありませんでした。なので例えば、病院内のシーンでは、預かった私物を配置して坂本さんがいた病室を再現したりして。坂本さんのそばにあったものがどのように置かれていたか、出来る限り忠実に再現していきました。そして言葉だけではなく音楽もあるという点ですよね。坂本さんの場合は。音楽を聴いてその人を知っていくという作業は他の方とは違います。坂本龍一という固有名詞とまではいかないかもしれませんが、”音楽家”を扱っているという気持ちがありました。

曲としてインプレッションがもっとも強かったものは何ですか?

大森:坂本さんの若い頃の演奏が好きです。若くて元気な頃の演奏と、映画にも出てきた最期の演奏『Opus』の両方があるからこそ、坂本さんが“生きてきた”ということがよくわかる。僕はいま32歳なのですが、とにかくアグレッシヴで過剰とも思えるほどエネルギーが注ぎ込まれた音のほうが、自分のなかに入ってくる感じがあります。爆発が起きているみたいで。そして50代くらいになってから、その頃の楽曲をピアノアレンジしていることにもすごく感動しました。“千のナイフ”で、あそこまで過剰とも思えるほどエネルギッシュに音が詰め込まれていたサウンドを、ハンドクラップに置き換えることで表現したり、大人にならないとできない余裕を強く感じました。YMOのアルバムや『/05』も好きですし、30代・50代・70代と変化していく音楽が好きだなと思えるきっかけになったのは、やっぱり最後の演奏を記録したアルバム『Opus』ですね。

テレビ版はあれでひとつの完成形ですが、映画版はもう一度、ゼロから再構築する必要がありました。なので音を中心に編集をし直しまして。内容面でいうと、譫妄のシーンであったり、入院してから苦しんでいる話は少なくしたり。

坂本龍一が「死に抗う」と「死を受け入れる」を交互に繰り返したと感じますか、それともどこかで「抗う」から「受け入れる」に切り替わったと思う瞬間はありましたか。

大森:「受け入れた」と仮定しないと進めない部分もあるのですが、撮っている映像などを見返すと、ある1日を境に言葉も写真もポジティヴに見えるところがありました。2022年4月18日の、「こうなったらどんな運命も受け入れる準備がある」というところです。もっとも体調がすぐれない時期については、映像や写真というものが他の時期に比べて少ないんですよね。日記に記述はあるけれど、写真や映像が非常に少ない。病気や精神的に苦しい時は、日常生活で記録を残すどころではないですよね。それに対して、4月18日を境に、記録が爆発的に増えてきて、メンタルの変化がもたらした変化としても見て取れたように思えます。

そうか、表現しようとする気力や欲求がない時期もそれなりにあったんですね。そこは言われてみないとわからなかったな。『Ryuichi Sakamoto: Diaries』はテレビで放送した「Last Days 坂本龍一 最期の日々」に要素を増やしただけですか? ラストシーンは違っていましたけれど、ほかに削ったところもありますか?

大森:テレビ版はあれでひとつの完成形ですが、映画版はもう一度、ゼロから再構築する必要がありました。なので音を中心に編集をし直しまして。内容面でいうと、譫妄のシーンであったり、入院してから苦しんでいる話は少なくしたり。それをフィーチャーしてしまうと、視点が身体に行きすぎてしまうかなと、あとは松尾西行の句を読むところなども文学表現も、少し引き算しています。その分、月をモチーフにする目的もあって「8月8日 僕の身体はぼろぼろだ」という部分にニコライ・ネフスキーの『月と不死』を入れるなど、編集は随分変えました。

坂本龍一の気力をもっとも感じた部分はどこでしたか?

大森:ずっとですね。熱が39.6度ある、とか書いてたりするんです。そんなに高熱だったら、自分だったら日記なんて書けないんじゃないかなと思ったり。驚きました。

坂本さんの映像は家族が撮影したものですが、もしも大森さんがあの場にいて、自分で撮影していたとしたら坂本さん本人に直接、訊いてみたかったことはありますか?

大森:たくさんありますけどね……ちょっと言えないです(笑)。

「言えない」って(笑)。言えるようになったらいつでも連絡ください(笑)。それはあまりにも気になります。

 2024年に放送された「Last Days 坂本龍一 最期の日々」はTV番組としては演出がとても抑制されていて、必要以上に感情を刺激するものではなかった。NHKだけではないけれど、番組の演出があまりに大袈裟で、とくに音楽が番組の感じ方を特定の方向に誘導するものが多く、もう少しフラットに番組を進めてくれないものかなと思うことが多い。内容に興味があっても途中で見るに耐えられなくなってしまうことも少なくない。当時、ディレクターを担当していた大森監督による演出はその点、坂本龍一が最後に過ごした3年半を素材のまま見ているような気持ちにさせてくれ、どのように感じるかは観るものに委ねられる自由があった。映画版となった『Ryuichi Sakamoto: Diaries』でもその演出方法はそのまま活かされている。全体の中で大きな意味を持つものではないけれど、僕は多くの人が「キョージュ」と呼んできた坂本龍一を東北ユースオーケストラを構成する若いメンバーだけが「カントク」と呼ぶシーンがとても好きだった。「キョージュ」と呼ばれ続けた男が亡くなる少し前は「カントク」と呼ばれていた。どういう欲望なのか自分でもよくわからないけれど、僕も坂本さんのことを「キョージュ」ではなく「カントク」と呼んでみたくなった。
 日本を代表する曲だと言われながら、〝戦場のメリークリスマス〟に賞を与えたのは世界でもこれまでにイギリス・アカデミー賞だけである。坂本龍一は紫綬褒章も授けられていないし、日本で与えられた賞といえばレコード大賞編曲賞や都民栄誉賞ぐらい。ブラジルやフランスが国民栄誉賞を坂本龍一に授けているのとは雲泥の差がある。それだけにNHKがこうして坂本龍一の番組をいくつもつくり続けていることは坂本龍一を正当に評価してこなかった日本において大きな意味を持ってくるのではないかと僕は思う。

11月のジャズ - ele-king

Omasta
Jazz Report from the Hood

Astigmatic

 昨今のジャズ・シーンではあまり取り上げられることのないポーランドだが、かつて共産時代の1960~70年代には多くのミュージシャンやバンドが活動し、隣国のドイツと並んでヨーロッパの中でもジャズが盛んな国のひとつだった。基本的にジャズの伝統が流れている国と言っていいが、最近は若いミュージシャンもいろいろ出てきている。たとえばテンダーロニアスジャウビと共演し、サン・ラーやポーランド・ジャズ界の伝説的なピアニスト/作曲家であるクシシュトフ・コメダのトリビュート作品をリリースするEABS(イーブス)、UKの〈ゴンドワナ〉から作品をリリースするハニア・ラニといった新しい感性を持つアーティストなどが目につくところだ。イーブスはUKの〈アスティグマティック〉から作品をリリースしているが、このたび同レーベルから登場したオマスタもポーランドの期待のバンドと言える。

 クラクフという町出身の彼らは、その地方の方言で「風味付けのために料理に加える脂」という意味のグループ名を持つクインテットで、ポーランドからイギリス、ベルギーなどヨーロッパ各地でライヴ活動を行っている。そうしたライヴでは地元クラクフ出身のジャズ・サックスのベテランであるレスシェク・ジャンドヴォから、テンダーロニアス、スラム・ヴィレッジなどジャズに限らないいろいろなアーティストとステージを共にしてきた。ジャズにとどまらないミクスチャーな感覚はJ・ディラマッドリブなどに影響を受けたところから導かれており、彼らの作り出すビートをジャズの生演奏へと落とし込むと同時に、ロイ・エアーズ、ロニー・リストン・スミス、ドナルド・バードなど1970年代のジャズ・ファンクのエッセンスも注入している。ファースト・アルバムとなる『Jazz Report from the Hood』は、そんなオマスタの魅力がぎっしりと詰め込まれている。“Cornerstone”はネオ・バップを軸とした楽曲だが、ブロークン・ビーツを咀嚼したようなリズムが現代的で、2000年代半ばのクラブ・ジャズに近い雰囲気もある。“Kazimierz”も基本的には1960~70年代のジャズの骨格を持ちながらも、ソリッドで研ぎ澄まされたビートを持つことによってダンサブルなサウンドとなっている。疾走感に満ちたジャズ・ファンクの“Burner”やジャズ・ボッサ調の“Ankle Breaker”も同様で、全体的にクラブ・サウンドを意識した演奏や楽曲づくりが行われている。“Mandem”や“Who They Was”などダウンビートの作品はヒップホップを意識していて、ドープなジャズ・ファンクの“Dead End”のビートはクエストラヴやクリス・デイヴなどのドラミングを彷彿とさせる。


Anton De Bruin
Sounds of the Eclipse

Sundown Recordings

 4月にオランダのグループのY.O.P.Eを紹介したが、そのキーボード奏者であるアントン・デ・ブルーインのソロ・アルバム『Sounds of the Eclipse』がリリースされた。彼はY.O.P.Eの前にもジャズとヒップホップをミックスしたグループのドラゴンフルーツでもアルバムを出しており、そのほかにアフロビート・バンドのアンタレス・フレアを結成し、ジャズ・トランペット奏者のピーター・ソムアのアルバムに参加するなど、いろいろなキャリアを積むミュージシャン/プロデューサーである。自身のソロ・アルバムとしては2024年に『Imaginarium』を発表していて、これにはY.O.P.Eのリーダーであるヨープ・デ・フラーフ、ドラゴンフルーツのメンバーのティジメン・モレマとシェルド・ヒスーン、ピーター・ソムアなども参加していて、彼が拠点とするロッテルダム周辺の音楽仲間が集まった作品と言える。内容的にはジャズ、ファンク、アフロ、ダブ、ヒップホップなどをミックスした上でエレクトロニクスを加え、UKのジョー・アーモン・ジョーンズあたりに近い印象を受けた。

 それから1年半ぶりとなるニュー・アルバムが『Sounds of the Eclipse』である。今回の演奏もヨープ・デ・フラーフ(ベース)、ピーター・ソムア(トランペット)、ジェシー・シルダーリンク(テナー・サックス)、ミラン・ブーン(ギター)、ティジメン・モレマ(ドラムス)と核になるメンバーは一緒。ほかにルーマニア出身のフルート奏者のファニ・ザハールやストリングス・セクション、シンガーのニア・ラリノヴァ、K.O.G、アジザ・ジェイ、ジャーメイン・パークアウトなどが参加し、ヴァラエティに富むレコーディング・メンバーとなっている。“Running on Slippers”はファニ・ザハールのフルートをフィーチャーし、高速のビートで駆け抜けるコズミック・ジャズとなっている。テクノやブロークン・ビーツなどのクラブ・サウンドの要素やアフロもミックスし、ザ・コメット・イズ・カミングあたりにも通じる作品と言えよう。ニア・ラリノヴァがメランコリックなムードで歌う“Keep Your Distance”は、リチャード・スペイヴンのような人力ダブステップ風ドラミングが印象的なジャズとクラブ・サウンドの折衷的作品。“Same Story”はアフロビートで、“Long Way Around”はレゲエ/ダブの要素が強く、K.O.Gとアジザ・ジェイが歌う“B3sin”はアフロ~カリビアン・ソウルとUKジャズのミクスチャー感覚から影響を受けていて、全体としてジョー・アーモン・ジョーンズからエズラ・コレクティヴ、スティーム・ダウンといったサウス・ロンドンのサウンドに近い印象だ。


Harper Trio
Dialogue of Thoughts

Little Yellow Man

 ハーパー・トリオはギリシャ出身でロンドンを拠点に活動するハープ奏者のマリー・クリスティーナ・ハーパーを中心に、ニール・コウリーのトリオでジャズ、マット・スコフィールドのトリオでブルース・ロックを演奏するエヴァン・ジェンキンス(ドラムス)、コルトレーンを聴いてジャズの道に進んだジョセフィン・デイヴィス(テナー&ソプラノ・サックス)というほかにはあまり類を見ない異色のトリオである。そもそもハープという楽器がジャズの世界ではマイナーだが、近年はニューヨークのブランディ・ヤンガーはじめ、マシュー・ハルソール率いるゴンドワナ・オーケストラのレイチェル・グラッドウィンやアリス・ロバーツ、マシューやチップ・ウィッカムと共演するアマンダ・ウィッティングなど女性ハープ奏者が活躍する場面も増えてきた。彼女たちはドロシー・アシュビー、アリス・コルトレーンというジャズ・ハープ奏者の草分けの影響を受けているが、マリー・クリスティーナ・ハーパーはそれとはやや異なるタイプの演奏家である。ハープは民族音楽にも多く用いられ、古くはクラシックの分野で発展してきたが、マリー・クリスティーナ・ハーパーはハープにエレクトリックなエフェクターをつけた実験性の強いアーティストである。また、ほかのハープ奏者に比べて即興演奏の度合いが高く、フリー・ジャズとロックや民族音楽を融合するようなところも見られる。2023年に『Passing By』というファースト・アルバムをリリースするが、そこではギリシャやエジプト、スペインという地中海周辺の国々をモチーフとする楽曲が収められていた。

 それから2年ぶりの新作となるのが『Dialogue of Thoughts』である。力強いビートにいるジャズ・ロックの“Walk”で、マリー・クリスティーナ・ハーパーのハープは基本的にはベースのような役割を果たしつつ、エフェクトをかけて次第にエレクトロニックな様相を呈していく。エヴァン・ジェンキンスのテナー・サックスはシャバカ・ハッチングスのような演奏で、彼が参加するザ・コメット・イズ・カミングに近いタイプの作品だ。“Sometime in Cairo”はエジプト音楽を取り入れ、ダークでミステリアスな世界を作り出していく。タイトル曲の“Dialogue of Thoughts”はアヴァンギャルド色の強い混沌とした演奏で、“Inner Thoughts”はメンバーのダイアローグ(会話)を楽器の一部のように用いた実験的な作品。“Madness While Trying to Meditate”はハープをまるでエレキ・ギターのように使用しており、非常にアグレッシヴな演奏を展開する。一方で“Quiet Mind”や“In Between Dreams”ではミニマルやアンビエントの影響を受けた抒情的な演奏も行う。ハープという楽器の可能性をさまざまな方向で追及した作品である。


The Cosmic Tones Research Trio
The Cosmic Tones Research Trio

Mississippi

 恐らくサン・ラー・アーケストラのアルバム『Cosmic Tones For Mental Therapy』(1967年)から名前をつけたのではないかと想像されるコズミック・トーンズ・リサーチ・トリオ。サン・ラーのような宇宙観、アフロ・フューチャリズムと同様に、精神的な癒しも彼らの音楽の重要な要素なのだろう。アメリカのポートランドを拠点にローマン・ノーフリート(サックス、フルート、クラリネット、パーカッション、ヴォーカル)、ハーラン・シルバーマン(チェロ、ベース、フルート、ハープ、スティール・ギター、パーカッション、シンセ、エレクトロニクス)、ケネディ・ヴェレット(ピアノ、キーボード、フルート、パーカッション、ヴォーカル)から成るグループで、最初はローマンとハーランがやっているビー・プレゼント・アート・グループというコミュニティ・プロジェクトにケネディが参加し、いろいろとセッションを繰り返す中でコズミック・トーンズ・リサーチ・トリオとなっていった。ジョン&アリス・コルトレーン、サン・ラー、ファラオ・サンダース、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ、アンソニー・ブラクストン、ジョージ・ルイス、デューク・エリントン、現役で今も活躍するドワイト・トリブルなどのジャズから、ミニマル/実験音楽のジュリアス・イーストマン、現代音楽のベンジャミン・パターソン、R&Bやブルースのジェイムズ・ブッカーからスティーヴィー・ワンダーに至る幅広いアーティストたちに影響を受け、ブライアン・イーノを通じてアンビエントの分野にも興味を持つという彼ら(ファラオ・サンダースについては実際に会って学ぶ機会があり、アリス・コルトレーンの教えを受けた弟子たちとも交流があるそうだ)。3人が一堂に会したのは〈ミシシッピ・レコーズ〉が主催したレコード・ショップでのコンサートだったが、そのときにドローン・サウンドを取り入れた演奏をしていて、そうした中から瞑想的なヒーリング・ミュージックを志向し、ファースト・アルバムの『All Is Sound』(2024年)が作られた。

 3人ともがマルチ・ミュージシャンで、それぞれパーカッションなどを使って多重のアンサンブルを重ねる姿は、1970年代のファラオ・サンダースやアート・アンサンブル・オブ・シカゴなどにも共通する。特にフルートは3人全員が演奏し、そこから広げて尺八など世界各国の吹奏楽器にも興味を伸ばしている。『All Is Sound』はスピリチュアル・ジャズとアンビエントを繋ぐような作品だが、どちらかと言えば比重はアンビエントの方に寄っていた。それから1年ぶりのグループ名をそのままタイトルとしたニュー・アルバムも、全体的にはノンビートのアンビエント色の強い作品が多い。そして、民族音楽の要素も交えながらオーガニックな色彩も感じさせる。ケネディがアルメニアやアゼルバイジャンなど中央アジアで用いられる木管楽器のドゥドゥクを演奏していて、その優しく円やかな音色がオーガニックなトーンにも一役買っている。そうした中、神秘的なチェロとピアノのハーモニーに原初的なパーカッションがゆったりとしたグルーヴを導き出す“Sonkofa”が、もっともスピリチュアル・ジャズの色合いが強い作品と言えそうだ。

STARFESTIVAL CLOSING 2025 - ele-king

 関西発のオルタナティヴ・フェスとしてローカル・シーンと世界を接続しつづける〈STARFESTIVAL〉が、年末恒例のクロージング・パーティを今年も開催。12月30日(火)にクリエイティブセンター大阪(名村造船所跡地)にて。

 今年のゲストにはUKを代表するクラブ〈Fabric〉のレジデントDJとして知られるクレイグ・リチャーズ、〈Hospital Records〉のオーナーでありUKにおけるドラムン・ベース・シーンを牽引するロンドン・エレクトリシティを迎え、ローカル・アクトにはDJ KRUSH、DJ MASDA、¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U(行松陽介)をはじめとする実力者をラインナップ。UKダンス・ミュージック愛好家にとっては見逃せない機会でしょう。

Oneohtrix Point Never - ele-king

 ヴェイパーウェイヴが資本主義批判なんぞではなく、たんにオンライン音楽シーンにおけるいちジャンルだと理解されてからずいぶんと時間が経つ。キッチュさ、あるいはアイロニーは、とくに加速させるまでもなく、資本主義における陳列物のひとつになっていることは周知の通りである。80年代日本産のCMが醸し出す奇妙なオリエンタリズムも初期マッキントッシュ・コンピュータの倒錯的フェティッシュさも、すべてはデータ資本主義というモンスターが飲み込んでいく。その現実そのものが「ポスト・インターネット的状況」と化しているのだ。『Replica』が暗示させたあの耐え難いほど退屈でありながらその魅力に引き込まれる亡霊性は、10年先を読んでいた。
 ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー通算11枚目の新作『Tranquilizer(精神安定剤)』は、すでに多くのファンが指摘しているように、彼の人気作として三本の指に入るだろう2011年の作品『Replica』を想起させる。ファン目線でいえば、かつて『Rifts』(2009)としてまとめられた初期の作風の面影もあるように思う。“Measuring Ruins” や “Petro” のコーラス的な部分、“Storm Snow” における反復からは『R Plus Seven』(2013)の気配を感じ取ってみたりしている。そう思いながら聴いていると、2010年前後のOPNのスタイルをよりアップデートしたのが本作ではないかと思えてくる。
 じっさいこうしたアプローチは『Replica』以来のものだと当人もみとめているが、しかし同作が没入感のあるループを基調としていたのにたいし、本作はどの曲も先が読めないのだ。レゲエのリズムを応用したダビーなはじまりの “Cherry Blue” のような曲も、その反復は短く、曲は二転三転し、そしてもとには戻らない。それは一時期のBurial作品における支離滅裂さ、もしくは村上春樹の長編小説における収集のつかなさのようで、元いた場所から逸脱し、展開はもつれ、しかし無事結末を迎えることになる。こうしたその先の読めなさが本作の特徴であり、『Replica』との圧倒的な違いである。
 “D.I.S.” で切り刻まれる高音部はロレンツォ・センニ的な点描トランスを想起させるし、途中でいきなりレイヴの断片が接ぎ木される “Rodl Glide” なんかはパンデミック以降のパーティ熱への目配せととらえることもできるかもしれない。であると同時に、さまざまな音のコラージュにはじまり『R Plus Seven』で試みられていたようなミニマルな断片を経由、『Age Of』で導入されていたようなチェンバロまで導入しつつ、最終的にはアナログ・シンセによる壮美な旋律が印象的な最終曲 “Waterfalls” は、本作中もっともその展開を楽しめる1曲と言えよう。
 今回は、ネット上のアーカイヴから忽然と姿を消してしまったサンプル音源が幸いにも救出されたことがコンセプトになっているという。リアルなものは普遍であるという荒唐無稽な立場とリアルはすべて恣意的に決まり、ただ記号のみが存在するという立場があり、つねに「どちらでもない」という道がある。「ポスト・インターネット的状況」は、その「どちらでもない」を大義として、本作のスリーヴアートに描かれた鮮やかなポップアートをちらつかせながら人びとを取り込んできた。「対話的(ダイアロジック)」であると思われたことは下劣な落書きか、よくて趣味の競い合いであって、不気味なイメージさえもその神秘なまといは課金される。ぱっと聴きでは穏やかに聞こえる冒頭 “For Residue(残留物のために)” や “Vestigel(残存物、痕跡)” の、しかし妙にぞわぞわする感覚は、たんに「金輪際失われるかもしれない」という危機感のみならず、そうしたポスト・インターネット的状況下における包摂の不安を表現しているのかもしれない。
 『Tranquilizer』は音響的な迷路を楽しむ、娯楽作品的な側面もあるが、同時にこの不調和な並置は、リスナー/ファンに『Replica』から14年経った現在地の亡霊性を、おそらくは少々の時間をかけて、そして想起させるに違いない。そういう意味では、これこそファンが待ち望んでいたアルバムだと言えるだろう。

Sleaford Mods - ele-king

 2026年1月16日に約3年ぶりとなる最新作『The Demise of Planet X』のリリースを控えるUKのスリーフォード・モッズが、先行シングルとして“Bad Santa”をライヴ・セッション動画とともに公開している。

 なお、アルバムのリリースに際する日本限定特典として、スマホ・スタンドの付属が決定したとのこと。メンバーのアンドリュー・フェーンとジェイソン・ウィリアムソンそれぞれの似顔絵がデザインされた2種類がランダム収録される。さまざまな問題への怒りがやまない現代だからこそ、せめて笑いながらアゲインストしていこうぜ、というメッセージか。

Artist: Sleaford Mods
Title: The Demise of Planet X
Label: Rough Trade Records / Beat Records
Release Date: 2026.01.16
Pre-Order: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15448
Format:
・国内盤CD(解説書/歌詞対訳付き/ボーナストラック追加収録)
・輸入盤CD
・限定盤LP(数量限定/ネオングリーン・マーブル・ヴァイナル)
・輸入盤LP
・輸入盤カセット

Tracklist:

01. The Good Life feat. Gwendoline Christie & Big Special
02. Double Diamond
03. Elitest G.O.A.T. feat. Aldous Harding
04. Megaton
05. No Touch feat. Sue Tompkins
06. Bad Santa
07. The Demise of Planet X
08. Don Draper
09. Gina Was
10. Shoving the Images
11. Flood the Zone feat. Liam Bailey
12. Kill List feat. Snowy
13. The Unwrap
14. Give ‘Em What They Want (bonus track for Japan)

AVYSS Circle 2026 - ele-king

 2018年にCVNことNobuyuki Sakumaによって発足された「時代をアップデートする個性のある音楽やカルチャーを日々記録する」プラットフォーム・AVYSSが、サーキット企画〈AVYSS Circle 2026〉をデイ/ナイトの2部制で2026年1月23日(金)に開催する。

 〈AVYSS Circle〉はこれまで2022年、2024年に下北沢のクラブ・ライヴハウスを舞台に開催されてきた回遊式のイヴェント。先日〈Warp〉より新作『Lick The Lens – Pt. 1』をリリースしたオリ・エクセル(https://www.ele-king.net/review/album/007379/)や韓国在住・アジア圏におけるデジコア・シーンの旗手・エフィー(Effie)、オーストラリアの新星ニーナ・ジラーチとのコラボレーションやチャーリーXCX、100ゲックスのサポートアクトなどで注目を集めるデイン(daine)などを招聘しつつ、日本のアンダーグラウンド・シーンで活躍するローカル・アクトたちを多数ラインナップ。

 舞台となるのは渋谷クアトロ、WWW、WWWβ、R Lounge、SUPER DOMMUNE、PBOX(旧・ComMunE)の5会場・7フロア。過去最大規模となる本企画では「2020年代以降のジャンルやカテゴリーを超越する感覚をAVYSSの視点で包括した」とのことで、ハイパーポップをはじめとするネオ・インディな新世代の感性が集う一日となるか。追加ラインナップも後日発表予定。以下詳細。

 「今回のAVYSS Circleは、ローカルで育まれてきた小さな円環が、ゆっくりと着実に外側へ同心円状に広がっていくのを想像しています。地理や距離を横断する“横軸”と、音楽から周辺のカルチャーへ潜る“縦軸”が交差し、ローカルとワールド、リアルとオンラインが同じような地平で融解します。そこに集まる表現は、わかりやすい線引きではなく、流れついた「個」の感覚の連なりです。雨の日も雪の日も、毎日積み重ねてきたキュレーションの螺旋ループがレイヤーの外側に接続し、静かに拡張していくことを目指します。」
──Nobuyuki Sakuma (CVN)

AVYSS Circle 2026

◆公演日:2026年1月23日(金)
◆開場/開演:【DAY】18:00 【NIGHT】24:00
◆会場:SHIBUYA CLUB QUATTRO 4F・5F / WWW・WWWβ / R Lounge / SUPER DOMMUNE / PBOX (5会場・7フロア)
◆TICKET:https://eplus.jp/avysscircle-2026/
◆価格:
【通し券】前売:10,000円 / 早割:9,000円
【DAY】前売:7,900円 / 早割:6,900円 / U-18:5,900円
【NIGHT】前売:4,800円 / 早割:3,800円
(税込/スタンディング/整理番号付/ドリンク代別)

◆出演者 (A-Z)

■ DAY

【CLUB QUATTRO 5F】
daine (AUS)・ほしのおと・トップシークレットマン・雪国・and more…

【CLUB QUATTRO 4F】
Emma Aibara・ikea・Le Makeup・Lilniina・safmusic・死夏・XAMIYA・諭吉佳作/men・yuzuha

【WWW】
AssToro・dodo・Effie (KR)・iiso (KR)・It’s US!!!!・kegøn・lilbesh ramko・SxC Loser・sysmo・Yoyou

【WWWβ】
Amuxax・荒井優作・iga・LAUSBUB・鯖・Saren・serah trax・宇宙チンチラ・uku kasai

【R Lounge】
AOTO・discordsquad2k・goku sasaki・lazydoll・Mishaguzi・Number Collector・otuyyuto・PAX0・Siero・Yog*

【SUPER DOMMUNE】
cyber milkちゃん・DJ HOSHIMIYA TOTO・ひがしやしき・Magnolia Cacophony・おそロシア革命・and more…
〈TALK〉 千代田修平 + JACKSON kaki + ~離 MC : NordOst ※トークテーマ後日発表

【PBOX】
DjuBumba・eijin・fui w/ innerscape by ITOAOI・百年の孤独・いむ電波.wav・小松成彰 うーたん・うしろ(Ritual Workshop Set)・MON/KU
〈TALK〉 AfterParty 公開収録 ゲスト:つやちゃん ※トークテーマ後日発表
〈AVYSS COLLABORATION〉 BALMUNG・chloma・GB MOUTH ※コラボ内容後日発表


■ NIGHT

【CLUB QUATTRO 5F】
iVy・SleepInside・Texas 3000・and more…
〈VJ〉 Higurashi・JACKSON kaki

【CLUB QUATTRO 4F】
CVN・E.O.U・imai・in the blue shirt・nano odorine・nerdcamp.com・食品まつり a.k.a foodman・and more…

【WWW】
Dos Monos・JUN INAGAWA・music fm・Oli XL (SWE)・釈迦坊主・wagahai is neko
〈VJ〉 naka renya・O.G.I

【WWWβ】
FELINE・okadada・らりる連合・TORIENA
〈AVYSS Cup〉(テーマ:元気)loli主語・前澤・seaketa・ ~離 MC : 徳利

Organize:AVYSS / CLUB QUATTRO
Cooperation:WWW / R Lounge / SUPER DOMMUNE / PBOX
Supported by melting bot
Partner:GALLERIA
Key Visual : QINGYI
Design & Layout : naka renya
Staging : yoh
Food : Geek Eggs Food Team XD

◆注意事項:
※身分証明書は右記いずれかの写真付きのもの(学生証、運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等)
※U-18の対象者は公演当日2026.1.23時点で18歳以下の方。ID/身分証の確認ができない場合、当日差額分をいただきます。
※NIGHTは深夜公演です。20歳未満は入場不可。要写真付きID。ID/身分証の確認ができない場合、入場をお断りする場合がございます。
※身分証明書は右記いずれかの写真付きのもの(学生証、運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等)
※各種チケットは枚数に制限がございます。上限に達し次第受付を終了します。予めご了承ください。
※DAYとNIGHTは入れ替え制。(通しチケットお持ちのお客様も一度ご退場いただきます。)

◆お問い合わせ:
渋谷クラブクアトロ 03-3477-8750

◆AVYSS:https://avyss-magazine.com

BO NINGEN - ele-king

 ロンドンを拠点に活動するサイケデリック・ロック・バンド、BO NINGENによる3年ぶりの単独来日公演が決定した。彼らの評価を高めることになったセカンド・アルバム『Line The Wall』の全曲再現ライヴになるとのことで、こうした試みはリリース時以来13年ぶりのことだという。来年1月13日(火)、会場は新代田FEVER。ゲストとしてGrimm Grimmの参加も予定されている。貴重な機会を逃すなかれ。

BO NINGEN、約3年振りの日本単独公演として、英国での評価を決定づけた2ndアルバム『Line The Wall』全曲演奏の特別企画ライヴが決定!!

本公演は2022年末に表参道Wall & Wallで行われた『Sudden Fictions』のリリース・パーティ以来となる、3年ぶりの単独公演。本公演では2025年オランダのRoadburn Festivalで企画され、現地で大絶賛された、2ndアルバム「Line The Wall」(2013)全曲演奏 & More のスペシャル・セット。さらに本公演のスペシャル・ゲストとして盟友Grimm Grimmが参加する予定。
今、UK/ヨーロッパの現代アート/音楽シーンにおいて、さらに評価と人気を高めているBO NINGENの現在を知る貴重な単独公演となる。

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BO NINGEN performing Line The Wall
過去を縫い合わせて遠くに投げる。

2025年、オランダのRoadburn Festivalより、「メインステージで、セカンドアルバム”Line The Wall”を全曲演奏するセット」という非常に具体的なオファーを受け、過去の作品を再現する、ことに多少戸惑いながらも私たちは承諾し、スタジオに入り、そして本番に臨みました。

過去から未来へ、未来から過去へ、時間や季節の流れを横断することで、Line The Wallの楽曲が、新たな響きを持つようになったと、ステージ上の私たちは確かに全身で感じ、ライブを盛況で終えました。

日本でこのアルバムを全曲演奏するのは、当時の日本盤リリース時2013年以来、実に13年ぶりになります。その間、私たち自身も、そして私たちの音楽も大きく変化してきました。

2026年の今、何度でも初めて出会う過去と語り合い、何か、結晶化した歴史ではない、常に新しくあるようなエネルギーを取り出して、できるだけ遠くに投げてみたいと思います。

【公演詳細】

タイトル:BO NINGEN performing "Line The Wall"
出演: BO NINGEN
SPECIAL GUEST: GRIMM GRIMM
2026年1月13日(火)
会場:新代田FEVER
18:30 開場 / 19:30 開演
チケット 前売り 5,000円 / 当日券 未定
チケット・リンク:https://t.livepocket.jp/e/19cfg

ABOUT BO NINGEN

Glastonbury、Coachella、FUJI ROCKなど世界中の大型フェスに出演を果たし、PRIMAL SCREAM、Pixies、伝説的ポスト・パンク・バンド THE POP GROUPといったレジェンドとの共演も果たしてきた、英国ロンドンを拠点に活動する日本人男性4 人組オルタナティヴ・ロック・バンド、BO NINGEN。
2021年1月に、実に6年ぶりとなる4thアルバム『Sudden Fictions』をリリース。RadioheadやBeckなどの作品のエンジニアを務めているDrew Brownがプロデュースを担当。本作からのリード・シングル「Minimal」にはプライマル・スクリームのボビー・グレスピーがスペシャル・ゲストとして参加するなど、世代、国籍を越えて、その才能は高く評価されている。

Roméo Poirier - ele-king

 かつてライフガードだったロメオ・ポワリエは、デビュー作『Plage Arrière』(2016)で、ギリシャの浜辺と、そこから続く海底の静寂を、サウンド・コラージュとして描いた。そのとき彼は、まさに水の中の住人だった。
 4年後の『Hotel Nota』では、ジョン・ハッセルの “第四世界” を思わせるオープニングに導かれながら、ポワリエは海からほど近いホテルの一室で、かつての自分をじっと見つめていた。その光景は、アラン・レネの映画『ジュ・テーム、ジュ・テーム』の、海辺の記憶が渦のように繰り返される場面を想起させる。
 さらに『Living Room』(2022)では、身の回りの音から “室内の海” を築きあげる。だが、最後の曲 “Superstudio” で、彼はついに海を離れ、録音の現場、スタジオへと向かう。その “音楽が生まれる場所” から始まったのが本作『Off the Record』である。

 彼によれば、今回の制作はこれまでとまったく異なるものだったという。作曲や録音に取りかかる前に、まずノートに音のアイデアを書き留めていった。それと並行して、スタジオ・セッションのアーカイヴ、映画のドキュメンタリー、YouTube動画など、あらゆる場所から音素材を集めていった。さらに、〈Faitiche〉のレーベル・デザイナーであるティム・テッツナーからも、膨大なアーカイヴ音源を受け取り、そこからいよいよコラージュと編集の作業が始まる。彼は1年以上をかけて音を集めたという。その時間もまた、作曲の一部だと言えるだろう。

 タイピング、鼻をすする、少し歩いたあと、段差を降りる。マイクチェック(ヘイヘイ、オーオー、ツーツー)、咳払い……。本作のオープニング曲 “Diapason” は、そんな〈本編の外側〉から始まる。
 2曲目 “Control Room” から9曲目 “Silencio” までは、地続きの夢。
 “Langsam” では、ドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』と思われるリハーサル音源が、さざ波のような揺れるヴェールに包まれ、うっすらと霧が立ち込める情景が、幾度となく目の前に浮かびあがる。
 “One Two One Two” は、ユーモラスであたたかい。ポワリエはこの曲について、こう語っている。
 「この曲では、およそ100人の人々が “1、2、3、4” とカウントする声を集めた。何かが始まろうとして、結局始まらない──その前の瞬間の声なんだ」
 それぞれの声の下に、カウントの流れに合わせて、リズムやハーモニーの要素を重ねていったという。彼にとってそれは、単なる積み重ねではなく “構成” そのものだった。この〈始まりの前にとどまり続ける音楽〉は、私たちに全く新しい感覚をもたらす。クリスチャン・マークレーの『The Clock』を初めて観たときの驚きが、耳に訪れる。
 レコードのノイズと、物静かなピアノで始まる “Et vous” では、誰もいない階段の踊り場で少女が小さなステップを踏む──世界中の誰も知り得ない、充足した瞬間を切り取った宝物のような風景が広がる。
 ひと呼吸置いた後の “The List”。彼と親交のあるアーティストやプロデューサー──スペース・アフリカのジョシュ・インヤング、アンビエント作家のアンドリュー・ペクラー、サウンド・アーティストのパトリシア・ウルフ、そして彼の父フィリップ・ポワリエらが、各国の名スタジオの名前を次々と読み上げていく。そこには、録音という行為そのものへの穏やかな敬意が漂っている。
 ここでふと思い出すのは、坂本龍一の “War & Peace” だ。戦争と平和について語る様々な人たちの声が、坂本の編集によってひとつの楽曲として構成されている。どちらの作品も、他者の声を素材としているが、その扱い方はまったく異なる。坂本の方は、他者の声を “問いの媒体” として用いている。それは現実を突きつけるテーマと共鳴し、曲は力強い推進力をもって前へ前へと進んでいく。一方、ポワリエの方は、他者の声を “存在の断片” として用いている。音楽が生まれる場所や人々の記録が、地層のごとく空間へ積み重なっていく。反復される淡い響きの軌跡は、アンモナイトの螺旋のように美しい。
 “Steve A.” は、シカゴ出身の著名なサウンド・エンジニアへのオマージュだ。恐らくそれはスティーヴ・アルビニのことで、彼のインタヴュー音声から「studio」と発する部分だけを抜き出し、再構成したユニークな約30秒の小品である。
 “Fast Forward” では、実際の早送り音が過ぎゆく時間を折りたたみ、その連なりを容赦なく押し流していく。

 ポワリエが語ってくれた制作の背景には、もうひとつ心に残るエピソードがある。彼は長いツアーのなかで、いつしかサウンドチェックそのものに魅了されるようになったというのだ。
 「サウンドチェックのあいだは、会場にはまだ観客がおらず、ミュージシャンとサウンド・エンジニアが肩の力を抜いて、適切なバランスを探りながら音や意図を調整していく──そんな “ダンス” のような時間があるんです。そこには魔法のような瞬間があって、ときには本番よりサウンドチェックのほうが良いことさえあります。この体験が、今回のアルバムの出発点のひとつになりました」

 〈本編の外側〉にある、本来なら切り捨てられてしまう副産物を、彼はそこにしかないかけがえのない素材として扱い、驚くほど表情豊かな〈本編〉へと反転させた。それが可能なのは、音楽が生まれるまでの過程を支えるすべて──ノートに書きとめたアイデアから、共に働く仲間たち、無数のスタジオの歴史まで──を、彼が等しく “音楽の本編” として慈しんできたからだろう。

 そして、ラストの “On Suite”。彼はいつも、アルバムの最後の曲に、次の作品の予感を忍ばせている。ラスト数秒、音が消える直前に立ち上がる微かな気配。それこそ、彼の美学の結晶だ。『Off the Record』の幕が閉じる余白に耳を澄ませながら、私はただ、海辺でも、ホテルでも、スタジオでもない “どこか” で、次の作品を待ち続けている。


Shintaro Sakamoto - ele-king

 坂本慎太郎が2022年の『物語のように』以来の、通算5枚目となるソロ・アルバムが来年年明けの1月にリリースされると、〈zelone records〉が発表した。タイトルは、『ヤッホー』。発売日は、2026年1月23日(金)、例によって〈zelone records〉からのリリースである。
 なお、すでに「おじいさんへ」を発表している坂本だが、新作からの先行配信シングル「あなたの場所はありますか?」も本日11月19日(水)にリリース。

■デジタル・シングル
あなたの場所はありますか / 坂本慎太郎 (Is There A Place For You There? / Shintaro Sakamoto)

2025年11月19日(水) 配信リリース:
国内再生・購入: https://virginmusic.lnk.to/IsThereAPlaceForYouThere
YouTube (Official Audio): https://www.youtube.com/watch?v=y-Ve_3cUIFQ


■ニュー・アルバム
ヤッホー / 坂本慎太郎 (Yoo-hoo / Shintaro Sakamoto)

2026年1月23日(金) Digital/CD/LP/リリース
国内Pre-save / Pre-add: https://virginmusic.lnk.to/Yoo-hoo_pre
1. おじいさんへ (Dear Grandpa)
2. あなたの場所はありますか? (Is There A Place For You There?)
3. 正義 (Justice)
4. 脳をまもろう (Protect Your Brain)
5. 時の向こうで (On The Other Side Of Time)
6. 時計が動きだした (The Clock Began To Move)
7. 麻痺 (Numb)
8. なぜわざわざ (Why Do This?)
9. ゴーストタウン (Ghost Town)
10. ヤッホー (Yoo-hoo)

Written & Produced by Shintaro Sakamoto
Recorded, Mixed & Mastered by Soichiro Nakamura at Peace Music, Tokyo, Japan 2025

Vocals, Bass (10), Keyboard, Acoustic, Electric & Lap Steel Guitar: Shintaro Sakamoto
Bass & Chorus: AYA
Drums & Percussion: Yuta Suganuma
Flute & Saxophone: Tetsu Nishiuchi
Marimba: Manami Kakudo (8, 9)

●CD (zel-029): 価格: ¥2,600+税 (2枚組/インストBONUS CD付)
●LP (zel-030): 価格: ¥3,200+税
●Digital (DL/ST)


坂本慎太郎

1989年、ロックバンド、ゆらゆら帝国のボーカル&ギターとして活動を始める。
2010年バンド解散後、2011年に自身のレーベル“zelone records”にてソロ活動をスタート。
2017年、ドイツのケルンでライブ活動を再開。2022年、4thソロアルバム「物語のように (Like A Fable)」を発表。
2024年、USツアー、インドネシア、タイ、台湾、韓国でのLIVEを国内ツアーと並行して展開。
2025年、NetflixにてLIVEフィルム作品「坂本慎太郎LIVE2022@キャバレーニュー白馬」期間限定配信中。グラミー受賞プロデューサーのLeon Michels率いるEl Michels Affairの新作「24Hr Sports」収録の『Indifference』にで歌唱と作詞で参加。 10/15に新曲「おじいさんへ」を配信リリース、3度目のUSツアーとメキシコ公演、12月には中国公演を展開。

また、様々なアーティストへの楽曲提供、アートワーク提供他、活動は多岐に渡る。 

Official Site: https://linktr.ee/shintarosakamoto_official

Charli XCX × John Cale - ele-king

 先日、エミリー・ブロンテの古典『嵐が丘』がエメラルド・フェネル監督によって映画化されることが発表されているけれども、そのサウンドトラックを手がけているのがチャーリー・XCXだ。〈Atlantic〉から来年2月13日にリリース予定の同作からはすでに “House” と “Chains Of Love” の2曲が公開されているが、前者にはなんとジョン・ケイルがフィーチャーされている。ケイルは2023年の『Mercy』でもローレル・ヘイローアクトレスを招いていたように、異なる世代とのコラボレイションに積極的だ。注目しておこう。

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