「!K7」と一致するもの

 なぜレディオヘッドはこんなにも音楽偏執狂を惹きつけるのか。筆者にとって、彼らはずっと気になる存在だ。筆者とレディオヘッドとの出会いは『OK Computer』にさかのぼる。このアルバムを1997年の発売当時に聴いて以来、ロックに限らず、音楽全体の潮目が確実に変わったのだと感じた。このアルバムの各曲は基本的にロックのフォーマットを維持しつつも、一度聴いただけでは全体を把握できない複雑さを秘めている。そして、この傾向は、その後の『Kid A』(2000)、『Amnesiac』(2001)のなかでますます顕著になっていく。以来、レディオヘッドは筆者にとって常に注意を払うべき存在となった。曖昧な調性、微分音の使用、複雑に聴こえるリズムと拍子、次々と新たな部分へと進むので何度も聴かないと覚えられない構成など、彼らの音楽はロックのセオリーを易々と逸脱し続ける。そのたびに聴き手は驚き、戸惑いながらも、一緒に歌ったり、手拍子を打ったり、音楽を身体に染み込ませる。
『OK Computer』がリリースされた1997年は、コーネリアス『Fantasma』、ビョーク『Homogenic』、プロディジー『The Fat of The Land』、ステレオラブ『Dots and Loops』といった、1990年代後半を代表するアルバムがいくつもリリースされた年だ。それは同時に、「オルタナティヴ」とされていたものが音楽的にも商業的にもメインストリームになったことを意味する。
 1990年代後半の「オルタナティヴ」の回想はさておき、レディオヘッドはロックと他のジャンルとの距離を縮めるどころか、その境界さえも曖昧にしてしまった。ポップあるいはロックと他のジャンル、とりわけ現代音楽との接近について、音楽批評家のアレックス・ロスは次のように記している。

二一世紀が始まったいま、クラシック音楽とポップ文化を対立させようという欲求は、もはや知的にも感情的にも意味を持たない。若い作曲家たちは、ポップ・ミュージックを耳にしながら育っていて、その場の求めに従って、それを利用したり無視したりする。彼らは知性の活動と街のノイズの中間地点を求めている。それと同じように、二〇世紀音楽、現代のクラシック音楽にたいする活発な反応は、大雑把な言い方だが、ポップ界から起こっている。ソニック・ユースの微分音調律、レディオヘッドの豊かな和声的手法、マスロックとインテリジェント・ダンス・ミュージックの崩れて急速に変化する拍子記号、スフィアン・スティーヴンズとジョアンナ・ニューサムの歌を支える哀愁に満ちたオーケストラの編曲。これらすべてが、クラシックとポピュラーの伝統のあいだで長いあいだ交わされてきた対話を引き継いでいる。(アレックス・ロス『20世紀を語る音楽』第2巻、柿沼敏江訳、みすず書房、2010年、570頁。原書はThe Rest Is Noise: Listening to the Twentieth Centuryとして2007年出版。)

「大融合」を目的の1つとする20世紀音楽(ロス、同前、571頁)以降、クラシックもポップも同じ言語で対話できるようになった。ここでいう「対話」を体現しているのがジョニー・グリーンウッドの活動である。グリーンウッドの映画音楽を高く評価する作曲家スティーヴ・ライヒは、彼との対談で、「あなたには、少なくとも二つの音楽的な人生があるように感じます。」(スティーヴ・ライヒ『スティーヴ・ライヒ対談集』大西穣訳、左右社、2025年、208頁)と述べた。自身もクラシック音楽と他の様々な音楽のバックグランドを持つ彼は、グリーンウッドに強いシンパシーを抱いているのだろう。2011年にグリーンウッドは、生演奏のギターのパートと、事前に録音したギター10パートとベース2パートによる、ライヒの“Electric Counterpoint”(1987)を演奏した。かたやライヒはレディオヘッドの“Everything In Its Right Place”と“Jigsaw Falling Into Place”を選び、この2曲をいったん更地に戻して彼の様式で再構築したアンサンブル曲“Radio Rewrite”(2012)を作曲した。
 ライヒの他にも、グリーンウッドは現代音楽との対話を続けている。ポーランドの作曲家クシシュトフ・ペンデレツキとの共同作業(2012年に2人の名義でアルバムがリリースされた)や、彼が敬愛する作曲家オリヴィエ・メシアンの楽曲で知られる電子楽器、オンド・マルトノ(1)をレディオヘッドで使用している様子から、彼ひとりの活動をとってみるだけでも、たとえ熱心なファンに限らずとも、このバンドに惹きつけられてしまう。その証拠として、レディオヘッドの音楽を極めてまじめに学術的な方法と態度でとりあげた論考や研究が既に存在している。ライターや研究者を名乗る人々が、このバンドの音源を何度も聴き、それを楽譜に書き起こして分析し、日々、謎解きを行っている(2)。リリース当時はあんなに議論された謎多き“Pyramid Song”だが、色々な説が飛び交った拍子の数え方どころか、今やその元ネタさえも解明されているのだ。聴いて楽しむ以外の享受方法をもたらしてくれるレディオヘッドは、音楽について何か言いたい人にとって、非常に「やりがいのある」バンドだともいえる。
 思考や分析の沼に誘うレディオヘッドだが、もちろん彼らの音楽にも直感的、身体的な側面がある。その一役を担うのがトム・ヨークだ。去年、筆者は彼のソロのステージを観た。彼は、そこで出す音すべての責任をひとりで担い、全力で私たちに音楽を聴かせてくれた。かつて、ブライアン・イーノは録音スタジオを作曲の道具とみなして音楽制作に勤しんでいた。トム・ヨークの場合は、彼の手に触れる楽器、声、身体全体が音楽を生み出す有機体に見えてくる。このたびリリースされたライヴ・アルバム『Hail to the Thief Live Recordings 2003-2009』からも音楽の身体性や躍動を聴くことができる。いうまでもなく、この動的な側面がバンドの音の醍醐味なのだ。

『Hail to the Thief Live Recordings 2003-2009』はレディオヘッドの6枚目のスタジオ・アルバム『Hail to the Thief』全14曲のうち“Backdrifts”と“A Punch Up at Wedding“を除いた12曲のライヴ音源で構成されている。タイトルの“Hail to the Thief(盗人万歳)”は、2000年のアメリカ大統領選挙の際のジョージ・ブッシュのスローガン「Hail to the Chief(大統領万歳)」を揶揄した言い回しに由来する。このことから、このアルバムを政治的な作品とする見方もあるが、特定の出来事というよりは、デジタル監視主義やグローバル・ファシズムが世界を覆い始めた空気のなかで『Hail to the Thief』は生まれたのだと考えられる。パンデミックを経た2025年現在、2003年当時は予兆や空気だったものが、どんどん現実化している。
 1曲目“2 +2=5”は、オーウェルの『1984』に繰り返し出てくる、事実の改竄と洗脳と服従を象徴するスローガン「2+2=5」のことだ。フェイク・ニュースやAIに翻弄されている私たちが「2+2がいつだって5になる場所(where two and two always makes up five)」の住民になりかけている今、この曲はリリース当時の2003年よりも切実な訴えとして聴こえてきてしまう。曲の構成はやや複雑で、A(イントロ)-B(are you such a dreamer?)-C(It’s the devil’s way)-D(Because you have not been)-E(短い間奏)-F(I try to sing)の6つの異なる部分からできていて、聴き覚えのあるAやBの部分に戻るのではなく、ひたすらまっすぐ突き進んで曲が終わる。最後のEの部分から荒れ狂った演奏が始まり、ここにロック・バンドとしてのレディオヘッドを再確認できる。
 「2 +2=5」をはじめとして、スタジオ・アルバム盤とライヴ盤のアレンジの間に大きな違いはあまり見られない。むしろ、この再現性の高さがライヴ・バンドとしてのレディオヘッドの高い技量を裏付けているともいえる。だが、彼らはアルバムの曲をただなぞっているわけではない。たとえば5曲目の“Where I End You Begin”では、グリーンウッドがギターのリフとそう変わらないテンションでオンド・マルトノを荒々しく弾いている。この激しさはスタジオ・アルバム盤とは明らかに異なる。6曲目の“We Suck Young Blood”前半のヴォーカルのメロディは8拍でひとまとまりのゆっくりとしたフレーズでできている。スタジオ・アルバム盤では7拍目という、なんとも数えにくいタイミングで手拍子が入るのだが、このライヴ盤では観客がこのやりにくい手拍子を打っているではないか。これは普通のロックのコンサートの基準に照らし合わせても、かなり特殊な現象だ。ある程度、意識的に拍を数えていないと、このタイミングで手を打つことはできないからだ。
観客の反応も含めて、レディオヘッドが規格外の演奏をステージで展開できるのは、エフェクトのかかったギターをじっと聴かせるエド・オブライエン、忍耐強いリズム・セクションのコリン・グリーンウッドとフィル・セルウェイによる3人の磐石な体制のおかげだろう。このようなバンド内の力学も考えると、やはりレディオヘッドはいつまでも興味深い存在である。日本でライヴを観られる日は来るのだろうか。

脚注

(1) オンド・マルトノ(Ondes Martenot)はフランスの電気技師でチェリストでもあったモリス・マルトノが1928年に発明した電子楽器。ピアノのように鍵盤を使って弾く方法と、鍵盤の前に張られたワイヤーのついた指輪をスライドさせて音高やダイナミクスを自分で操作しながら音を作る方法がある。この楽器を用いた楽曲として、メシアンの「トゥランガリーラ交響曲」(1946-48)が挙げられる。楽器の歴史と仕組みについては、ジョニー・グリーンウッドとも親交のあるオンド・マルトノ奏者、原田節が東京フィルハーモニー交響楽団のウェブサイトで詳しく解説している。「オンディスト、原田節が語る メシアン『トゥランガリーラ交響曲』に寄せて」2024年3月29日 参照。
 原田節「音大生にエール 連載60 其の六〈ジョニーが来たから伝えたい〉」2022年12月 で描かれている原田氏とグリーンウッドの交流の様子は非常に興味深い。ぜひとも一読されたい。

(2) 一例を挙げると、カンザス大学で教鞭を執るブラッド・オズボーン(Brad Osborn)によるEverything In Its Right Place: Analyzing Radiohead (Oxford University Press, 2017)は音楽理論や心理学を援用しながらレディオヘッドの楽曲を、形式、リズム、音色、和声の4つの視点から分析している。最終章の第6章は1章まるごと“Pyramid Song”の分析に充てられており、よい意味での狂気さえ感じられる。


[追記]
この原稿を書き終えた直後に、レディオヘッドとしては7年ぶりとなるインタヴューがThe Timesに公開された
インタヴューでは、2017年のテルアビブ公演をめぐってレディオヘッドに対して起きた、BDSこと「ボイコット・投資撤退、制裁運動(Boycott, Divestment and Sanctions)」問題についてのメンバーそれぞれの考えが語られている。また、まもなく始まる英国とヨーロッパ・ツアーに関して、彼らが65曲ほどを準備中で、セットリストは固定されたものではなく公演ごとに変わること、観客が舞台を取り囲むようなかたちでショーが行われる予定であることも明らかにされている。インタヴューについては以下のウェブサイト参照。

Daniel Kreps, 「レディオヘッドが語る活動休止と再始動の背景、イスラエル・パレスチナ問題との向き合い方」、『Rolling Stone Japan』2025年10月27日

Damian Jones, “Thom Yorke says Radiohead will “absolutely not” return to Israel and he wouldn’t want to be 5,000 miles anywhere near the Netanyahu regime,” NME, 26th October

Mac Pilley, “Radiohead reveal they’ll be playing in the round on UK and European tour and talk setlists: “We have too many songs,” NME, 26th October 2025.

Whatever The Weather - ele-king

 今年も嬉しいお知らせです。ロレイン・ジェイムズ、3年連続となる来日公演が決定しました。今回はワットエヴァー・ザ・ウェザー名義のみでのツアー、東京と大阪のCIRCUSをまわります。新作がリリースされたその年にパフォーマンスを体験できるのは……いやこれはかなり嬉しいですね。
 そして、共演者たちにも注目しておきましょう。東京では、先日ソロ・デビュー作を発表し新たな一歩を踏み出した篠田ミルがライヴを披露。大阪ではヴェテランのAOKI takamasaがDJを担当します。相乗効果、起こりますねこれはきっと。

Whatever The Weather Japan Tour 2025 | Loraine JamesのWhatever The Weather名義での来日ツアー決定

現代のエレクトロニック・ミュージック・シーンにおいて中核を担う才人Loraine Jamesのアンビエント志向のエイリアス、Whatever The Weather名義の来日ツアーが決定!
今年3月にGhostly Internationalから待望のセカンド・アルバム『Whatever The Weather II』を祝しての東京・大阪公演となります。
東京公演にはyahyelのメンバーで先日ソロ・デビューEP『Pressure Field』をリリースしたばかりの篠田ミルがライヴ・セットで、大阪公演にはLoraineが予てからリスペクトしているAOKI takamasaがDJとして出演致します。
今回の来日はWhatever The Weather名義でのみの来日となります。

Whatever The Weather Japan Tour 2025

◆Whatever The Weather 東京公演
日程:11/28(金)
会場:CIRCUS Tokyo
時間:OPEN 18:30 / START 19:30
料金:ADV ¥4,500 / DOOR ¥5,000 *別途1ドリンク代金800円必要

出演:
Whatever The Weather (Live)
篠田ミル (Live)

◆Whatever Ther Weather 大阪公演
日程:11/29(土)
会場:CIRCUS Osaka
時間:OPEN 18:30 START 19:30
料金:ADV ¥4,500 / DOOR ¥5,000 *別途1ドリンク代金800円必要

出演:
Loraine James (Live)
AOKI takamasa (DJ)

主催・企画制作:CIRCUS / PLANCHA

Jerskin Fendrix - ele-king

 2020年に『Winterreise』をリリースして以降、ロンドンのインディ・アーティスト、ジャースキン・フェンドリックスを取り囲む景色は大きく変わった。UKアンダーグラウンド・シーンを支えるレーベル〈Untitled(recs)〉から出された彼のデビュー・アルバムが『籠の中の乙女』や『女王陛下のお気に入り』でオスカーにノミネートされた映画監督ヨルゴス・ランティモスの心に届き、次回作の劇伴をジャースキンに担当して欲しいと願い出たというのだ。当時のジャースキンはサウスロンドンのライヴ・ハウス・ウィンドミルの周辺シーンのミュージシャンたちから称賛を集めるカルトヒーローといった立ち位置で大きな場所ではほとんど無名に近かった。そんな中でランティモスは彼の才能に惚れ込み直接メールを送って映画の世界を一緒に形作ることを求めた(オーヴァーグラウンドのシーンとアンダーグラウンドのシーンがダイレクトに結びついたこの事例は現代のインターネット社会における美しさが集約された出来事だといってもきっと過言ではないはずだ)。事前にこうして欲しいという大きなリクエストも制約もなく、それどころか撮影時に脚本を元に作られたサウンドトラックを流してからカメラを回したというのだからランティモスがいかにジャースキンの才能を信頼していたかがわかるだろう。そうやって制作された『哀れなるものたち』は高い評価を得た。ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲得し、主演のエマ・ストーンがアカデミー賞で主演女優賞に輝き、ランティモスは監督賞にノミネートされ、そして我らがジャースキン・フェンドリックスは初の映画スコアでオスカー・ノミネート作家になった。
 これが2023年のことだ。そして2024年にはランティモスの次回作『憐れみの3章』が公開されこちらも続いてジャースキン・フェンドリックスが劇伴を務めた。さらにこれから公開される『Bugonia(原題)』でもジャースキンが音楽を手がけている(なんでも90人のオーケストラを使ったとのこと)。これまでの2作と同じく制作にエマ・ストーンが入り主演を務めるランティモス作品、ここまでくるとジャースキン・フェンドリックスもこのチームの欠かせない一部のような感じだ。もはやインディ・ミュージックのカルト・ヒーローとしてではなく、映画音楽作家としての顔の方が知られているのかもしれない。

 だが彼はこのふたつの世界を隔てることを選ばなかった。本名であるジョスリン・デント=プーリー名義を使わずに学生時代の友人がふざけてつけたジャースキン・フェンドリックスという名前のままで映画業界に関わり、そうして2025年のいま再び故郷に帰ってきた。インディーミュージシャンとしての帰還、そして文字通り少年時代を過ごしてきたふるさとへの帰還。この2枚目のアルバムは彼が幼少期からティーンエイジャーの頃まで暮らした牧歌的な田舎町シュロップシャーを舞台に展開する。森や風景、光と動物、それらの全ては子ども時代の思い出と芸術的な感覚に包まれている。音楽家にかかわらず小説家や映画監督が晩年に自分の生まれ故郷をテーマに作品を作ることは珍しいことではないが彼はキャリアのこのタイミングでそれをおこなうことに決めたのだ。

 その最初のきっかけは2020年に亡くなった幼なじみに捧げるアルバムを作ろうと考えたことだった。「自分たちが育った場所がどんな場所であったのか、その文脈を切り離して書く事はできないと思ったんだ。そうして子ども時代や思春期について自分たちのあいだで共有されていたものについて書きたいという思いに発展した」The Quietusのインタヴューでジャースキンはそう話している。しかしこのアルバムの制作を前にもうひとつの死がそこに重なる。2022年に彼の父親が進行性の運動ニューロン疾患を発症しその年に亡くなったのだという(レコードのブックレットの最後のページにはこのふたりの名前が並んで記されている)。

 だから当然のことなのかもしれないが、このアルバムの中の故郷シュロップシャーにはノスタルジアと共につねに死の影が付きまとっている。「太陽の熱を恐れるな/2001年にここに引っ越した時からずっと感じている」その街で過ごした牧歌的な日々を唄った優しく柔らかな幕開けのポップ・ソング “Beth’s Farm”の中にも「ベスの農場では誰も死なない」と繰り返しその外にある死が意識され、その後に起こることの予兆を静かに感じさせる。けたたましく人を食ったようなラップトップの狂騒 “Jerskin Fendrix Freestyle”でも悪い予感を胸に破れかぶれになったようなニュアンスがそこに乗る。この曲は特にアルバムの流れの中で聞くと印象が一変する曲だ。「これがThe Universeだ/俺は決して死なない、約束する」誰彼構わずに噛みつき、不遜にまくしたてているように思えるその中に友を失い、父を失おうとしている人間の強がりが見え隠れするのだ。
 そこで予告されている次曲 “The Universe” では酔っ払い子ども時代に戻ったような答えを探し意味を求める弱く優しい人間の姿が映し出される。この街では都会と違い気心の知れた、心安らげる人たちに囲まれている。「こんなに長くスマホを気にしなかったなんて/ 愛する人がみんなここにいる」そう、だからこそいなくなった人の姿をそこに見るのだ。アカペラで始まり、心の波を映し出すかのようなストリングスの震えが添えられるこの曲は虚飾が取り除かれたジャースキンの生の感情がそのまま出ているかのようだ(レコードで聞くとちょうどここで2枚目に入り、交換のための空白の時間が入るので余計にこの曲たちが重なり合っているように感じられる。裏と表、弱音と強がり、中にしまいそうして別のものを取り出す。それは人間の言葉が常に正しいわけではないということと同じなのだ)。

 この曲だけではなく、このアルバムには物語全体のイメージ、文脈とも言えるそれを伝えるべく、曲と曲とをつなぐ断片がいたるところに埋め込まれている。そしてそれはブラック・カントリー・ニュー・ロードの1stアルバム2ndアルバムでも用いられたような手法でもある。「僕のやりたかったことがジャースキンのセットの中ですでに完成されていたんだ」というのはBCNRを脱退したアイザック・ウッドの言葉だが(2019年The Quietusのインタヴューでの発言)どうして彼がジャースキンをここまで信奉したのかこのアルバムを聞くとよくわかる。彼は言葉やサウンドをキーにして映画のように多面的で複雑に捻れた人の心を描き出すのだ。それもふざけたようなユーモア混じりで。うさんくさく人を食ったようないスタイルの、マジメで弱く優しい男、その全てが物語の中に、ひとりの人間の中に存在するというのがたまらなく心を惹きつける。

 そうしていくつもの気配が重ねられ複雑に歪む “Together Again”に繋がる。父の最期を看取る為にシュロップシャーに帰ってきた息子。母と兄弟、家族の時間が描かれたこの曲は避けられない出来事への哀しみや優しさに包まれ、慈しみや戸惑い、過去に思いをはせるノスタルジアと未来への不安、そしてそこから逃れるためのユーモアが絡み合っている。「父はキッチンにいて/僕は彼の脳を心配する/きっと壊れていくのを見ることになるだろう」「ウサギと、その頭を食べた猫がいる/そしてここに死を悼む家族がいる」田園地帯の風景の中に死の気配が漂うこの曲はこのアルバムを象徴するような曲だ。それはまるで重厚な映画の劇伴のようにも、小さな部屋で録音されたアーティストの個人的な記録のようにも聞こえてくる。おそらくこれは1stアルバムとの間に挟まれた映画の経験が大きかったのだろう。そのままストレートに制作に入ったならばこのようなアレンジにも映画のように故郷の景色を描くという手法にも至らなかったはずだ。ピアノを基調とし、そこに様々な人間の気配やいびつで複雑な感情の揺らぎの音(それはストリングスの波やエレクトロニクスのひび割れとして現れる)が挟み込まれたアルバムは1stアルバムだけでなく『哀れなるものたち』のサウンドトラックの延長線上にあるように感じられるのだ。映画のサウンドトラックのようにキャラクターに寄り添い描かれるアルバムの物語、ここでの死は克服すべき物語上のメタファーではなく常に隣にあるもののように描かれる。死を意識するからこそ生を考え、ノスタルジックに故郷を想うからこそいまを強く意識する。我々はもう存在しないものと共に生きている。それはないものを感じられるという人の想像力の賜物であり、そしてその創造の隙間にこそ芸術は入り込む。

 故郷と死をテーマにしたジャースキン・フェンドリックスの試みはこの2ndアルバムで見事結実しているように思える。子ども時代の安寧のように優しく牧歌的で、哀しみと慈しみ無常感と強がりに包まれた複雑な人の感情が混じった物語。父と友人の死という極めてパーソナルな出来事を作品の中に落とし込み普遍的なものへと繋げるのはまさに優れた作家としての仕事だ。そしてこれを個人的なものとして作り上げ提示するというのがまた素晴らしい。ブラック・ミディの面々やイーサン・P・フリン、ロビー&モナのウィリアム・カーキートら、昔から知っている仲間の手を借り、古巣である〈Untitled (Recs)〉からリリースする。それはオスカー・ノミネート以前のうさんくさく誠実な彼の姿勢となんら変わりがないように思えるし、それでいて “Beth’s Farm”のビデオではヨルゴス・ランティモス監督、自身とエマ・ストーンが主演という信じられないような贅沢なことをしていたりもする(3人のオスカー・ノミネートの共作、これはおそらくインディーレーベル史上最も豪華なビデオだろう)。彼を見ているとオーヴァーグラウンドもアンダーグラウンドも死や生、過去も未来も全てが地続きで繋がっているように感じられる。もしかしたらこれこそがあるべき姿で、そして理想なのかもしれない。インディのカルト・ヒーローであり続けながらもオスカー像を手にする姿を見たいと望まれる希有な存在、ジャースキン・フェンドリックスはなんと興味深い人なのだろう。この2枚目のアルバムには彼の子ども時代から現在に至るまで、ジャースキン・フェンドリクスの世界の空気が詰まっている。

Jonny Nash & Tomo Katsurada - ele-king

 オランダ拠点の音楽家、ジョニー・ナッシュによる9年ぶりの来日が決定。同じくオランダを拠点とし、昨年ナッシュも参加したソロ・デビュー作『Dream of the Egg』をリリースしているTomo Katsurada(ex. Kikagaku Moyo)が帯同。ダブル・ヘッドラインでのジャパン・ツアーとなる。互いの楽曲を演奏するという、役割を交代しながらのパフォーマンスが披露されるようだ。
 なお、ツアー前日の11月14日(金)には赤坂・草月ホールにて開催されるmaya ongakuのワンマン・ライヴにもTomo Katsurada with Jonny Nash & Kotsuguyとしてゲスト出演予定。
 今夏リリースされた7枚目の新作アルバム『Once Was Ours Forever』はフォークとアンビエント・ジャズ、そしてドリーム・ポップの境界をまたぐような作品であり、サトミマガエや池田抄英(maya ongaku)なども参加している。日本の音楽家たちとも接近したこの新作を引っ提げ、群馬・山梨・大阪・兵庫・愛知・東京を巡ります。

BAYON PRODUCTION presents
Jonny Nash & Tomo Katsurada Co-Headline Japan Tour 2025

[ACT] Jonny Nash / Tomo Katsurada (Kikagaku Moyo)

11月15日(土) 群馬 高崎・新島学園短期大学講堂
11月16日(日) 山梨 甲府・こうふ亀屋座
11月18日(火) 大阪・旧桜宮公会堂
11月21日(金) 兵庫 神戸・KOBE QUILT
11月22日(土) 愛知 名古屋・秀葉院
11月23日(日) 東京 渋谷・7th Floor
11月24日(月/祝) 東京 青山・青山月見ル君想フ

群馬公演

日程:2025年11月15日(土)
会場:新島学園短期大学 講堂(群馬県高崎市昭和町53番地)
アクセス:北高崎駅から徒歩5分
時間:開場14:00 / 開演15:00
料金:前売5,000円 / 当日5,500円

出演:Jonny Nash / Tomo Katsurada

[ご予約&お問い合わせ]
cowandmouse489@gmail.com / 080-3136-2673

※件名に【Jonny & Tomo’s 群馬公演】と明記の上、お名前(フルネーム)・お電話番号・チケット枚数をご記入いただき、上記メールアドレスにお申し込み下さい。確認後、ご購入方法などを折り返しご返信致します。

注意事項:
※開場時間前の会場のご入場はご遠慮ください。
※会場内飲食禁止です。
※大学の駐車場(西門駐車場または正門駐車場)をご利用いただけます。
※駐車場利用の場合は必ずご予約の際にお申込みください。


山梨公演

日程:2025年11月16日(日)
会場:こうふ亀屋座(山梨県甲府市丸の内1丁目11-5)
アクセス: 甲府駅から徒歩10分
時間:開場17:00 / 開演18:00
料金:前売5,000円 / 当日5,500円

出演:Jonny Nash / Tomo Katsurada

[ご予約&お問い合わせ]
cowandmouse489@gmail.com / 080-3136-2673

※件名に【Jonny & Tomo’s 山梨公演】と明記の上、お名前(フルネーム)・お電話番号・チケット枚数をご記入いただき、上記メールアドレスにお申し込み下さい。確認後、ご購入方法などを折り返しご返信致します。

注意事項:
※開場時間前の会場のご入場はご遠慮ください。


大阪公演

日程:2025年11月18日(火)
会場:旧桜宮公会堂 (大阪市北区天満橋1丁目1-1)
アクセス: https://produce.novarese.jp/kyusakuranomiya-kokaido/access/
時間:開場19:00 / 開演19:30
料金:前売5,000円 / 当日5,500円(別途ドリンク代)

出演:Jonny Nash / Tomo Katsurada

[ご予約&お問い合わせ]
cowandmouse489@gmail.com / 080-3136-2673

※件名に【Jonny & Tomo’s 大阪公演】と明記の上、お名前(フルネーム)・お電話番号・チケット枚数をご記入いただき、上記メールアドレスにお申し込み下さい。確認後、ご購入方法などを折り返しご返信致します。

注意事項:
※開場時間前の会場のご入場はご遠慮ください。
※入場時にドリンク代別途800円を現金でお支払いください。


神戸公演

日程:2025年11月21日(金)
会場:KOBE QUILT(神戸市中央区山本通1丁目7-21 B1)
アクセス: 三宮駅から徒歩 約10分 / 新神戸駅から徒歩 約15分
時間:開場18:00 / 開演19:00
料金:前売5,000円 / 当日5,500円(別途ドリンク代)

[ご予約&お問い合わせ]
cowandmouse489@gmail.com / 080-3136-2673

※件名に【Jonny & Tomo’s 神戸公演】と明記の上、お名前(フルネーム)・お電話番号・チケット枚数をご記入いただき、上記メールアドレスにお申し込み下さい。確認後、ご購入方法などを折り返しご返信致します。

注意事項:
※開場時間前の会場のご入場はご遠慮ください。
※入場時にドリンク代別途700円を現金でお支払いください。


名古屋公演

日程:2025年11月22日(土)
会場:秀葉院(名古屋市港区作倉町2-46)
アクセス: 地下鉄名港線「港区役所」より東へ徒歩8分
時間:開場17:00 / 開演18:00
料金:前売5,000円 / 当日5,500円

出演:Jonny Nash / Tomo Katsurada

[ご予約&お問い合わせ]
cowandmouse489@gmail.com / 080-3136-2673

※件名に【Jonny & Tomo’s 名古屋公演】と明記の上、お名前(フルネーム)・お電話番号・チケット枚数をご記入いただき、上記メールアドレスにお申し込み下さい。確認後、ご購入方法などを折り返しご返信致します。

注意事項:
※開場時間前の会場のご入場はご遠慮ください。
※ドリンクや軽食の出店を予定しております。1オーダーのご協力お願いします。
※会場無料駐車場あり。


東京公演 DAY1

日程:2025年11月23日(日)
会場:渋谷 7th FLOOR(渋谷区円山町2−3 O-WESTビル 7F)
時間:開場18:00 / 開演18:30
料金:前売5,000円 / 当日5,500円 共に+1drink別途 (座席自由)

出演:Jonny Nash / Tomo Katsurada

[お問い合わせ]
7th FLOOR 03-3462-4466

<TICKET INFO>
ぴあ
イープラス
ZAIKO


東京公演 DAY2

日程:2025年11月24日(月・祝)
会場:青山 月見ル君想フ(港区南青山4丁目9−1 シンプル青山ビル 地下1階)
時間:開場18:00 / 開演18:30
料金:前売5,000円 / 当日5,500円 共に+1drink代別途 (座席自由)

出演:Jonny Nash / Tomo Katsurada

[お問い合わせ]
月見ル君想フ 03-5474-8115

<TICKET INFO>
店舗メール予約
ぴあ
イープラス
ZAIKO

主催:BAYON PRODUCTION
企画・制作:BAYON PRODUCTION / Cow and Mouce
協力:PLANCHA / BRIDGE INC.

maya ongaku “Maybe Psychic” Japan Tour 2025 -Final-

日程:2025年11月14日(金)
会場:東京・赤坂 草月ホール
時間:開場17:30 / 開演18:20
料金:¥5,000
チケット(※座席指定):https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2532271&rlsCd=001

出演:
maya ongaku

[GUEST ACT]
Tomo Katsurada with Jonny Nash & Kotsuguy
※Jonny NashはTomo Katsuradaのバック・メンバーで出演

主催:SMASH
企画/制作:BAYON PRODUCTION / BIAS & RELAX adv.
INFO:SMASH

NIIA - ele-king

 イタリア系アメリカ人女性ヴォーカリスト、NIIA(ナイア)の『Ⅴ』に関する資料を見て、「〈Candid〉から出るの!?」とひとりごちてしまった。リリース元が筆者の信頼/愛好する米国の老舗〈Candid〉だったことに驚いたのだ。〈Candid〉はチャールズ・ミンガスやマックス・ローチといったビバップ期のジャズ・ミュージシャンやブルースの名盤をリリースしてきた由緒あるレーベル。特に、ローチが公民権運動を背景に人種差別に抵抗した『We Insist!』は、長年に渡り語り継がれるレベル・ミュージックの嚆矢である。

 驚いたのはなぜかといえば、NIIAの音楽が正統派のジャズやブルースには到底収まり切らない、多様なエレメントから成り立っているからだ。この驚きは例えば、〈ブルーノート〉がフリー・ジャズの雄セシル・テイラーと契約したと知った時や、〈ECM〉がフューチュー・ジャズを背負っていたニルス・ペッター・モルヴェルの作品をリリースした時と似たものといってもいい。いずれも、レーベルの度量の大きさと懐の深さと柔軟性を知らしめるという意味で、NIIA『V』の発売と似たような感慨があった。

 なるほど、ジャズ・ヴォーカルとクラシック・ピアノがNIIAのバックグラウンドなのは分かる。だが、繰り出される音楽的ヴォキャブラリーは多彩で乱脈。ある意味、節操がない。彼女はアンビエントもトリップ・ホップもドラムンベースも自家薬籠中のものとしており、それらが重なり合った交点に『V』は位置している。

 漆黒の闇のような音像がレディオヘッドにも通じる“fucking happy”、重厚なベースのループにエフェクトをかけたヴォーカルが乗る“Ronny Cammareri”、ポーティスヘッドを想わせるダークで不穏な“Again with Feeling”、四つ打ちのキックとエキゾティックなメロディが融和する“Dice”など、いずれの曲も一筋縄ではいかない。

 特に面白いのは、ジャズを出自とするNIIAが〈Candid〉から発表した本作が、決してスウィングしないということだ。フォー・ビートの曲がないというのもあるが、そこは本質的な問題ではない。ピアノもヴォーカルも、点描的にぽつりぽつりと置かれている印象で、全体で線や面になることがない。テンポも遅めだしヴォーカルは今にも消え入りそうなかそけき囁きがメインとなっている。少なくとも筆者には、思わず身体が動いてしまうような音楽ではない。

 決してスウィングしない、そして、まったくダンス衝動を誘発しない本作はしかし、筆者の耳を捉えて離さない。気怠くて体温が低く、煙が目に沁みるような甘美なメランコリー。それは従来の〈Candid〉のパブリック・イメージとは大きく異なっている。『We Insist!』のような怒りや憤りは微塵も感じられない。泥臭さやいなたさも感知できない。むしろ、本作はNIIA が自己の内部に沈潜していくような、内省的でパーソナルな響きが基調となっている。鎮静剤のような一枚と言ってもいい。

 彼女は自分の音楽について「私は“ジャズ=博物館”としての捉え方には興味がないの。むしろ、その言語を変形させて、今までに語られたことのない物語を語ること——その可能性に興味があるの」と述べている。ちなみに、ほかに2025年に〈Candid〉からリリースされたのは、ナンシー・ハロー『Wild Women Don't Have the Blues』、ジャキ・バイアード『Blues for Smoke』、メンフィス・スリム『Memphis Slim, U.S.A.』のリマスター盤である。ここにNIIAの新作が加わる。なんだかこの事実だけで心が浮き立ってくるじゃないか。そう、レーベルにとっても、NIIAにとっても、本作は新しい物語のはじまりを告げるのに相応しい。そう断言したい。

Shinichi Atobe - ele-king

 00年代初頭に〈Basic Channel〉の直系レーベル〈Chain Reaction〉より『Ship-Scope』をリリースしたのち十数年にわたり沈黙、2014年に〈DDS〉よりアルバム『Butterfly Effect』を発表して以降は精力的な活動を続ける日本の電子音楽家・Shinichi Atobe。2025年7月には自主レーベル〈Plastic & Sounds〉を立ち上げるなど、また新たな動きを見せている。

 そんなShinichi Atobeの2018年作『Heat』より“Heat 1”を、2000年生まれの音楽家・E.O.Uとその盟友・Vísがリミックス。E.O.U主宰レーベル〈halo〉より2曲入シングルとしてデジタル・リリースされた。10月30日(木)には〈Plastic & Sounds〉のローンチ・パーティがデイタイムの渋谷WWWにて開催。Atobeのほかにフエアコ・S名義で知られるブライアン・リーズ(Loidis名義)とデッドビートが出演するほか、サブ・フロアをE.O.Uによるパーティ・シリーズ〈loopな〉がキュレーションするなど、世代を超えた交歓が生まれているようだ。ミニマル・テクノを、斬新な解釈とともに。

Artist:Shinichi Atobe, E.O.U, Vís
Title:Heat 1 (Remixes)
Label:halo
Release: 2025.10.22
Format:Digital
Stream / Download:https://haloooo.bandcamp.com/album/shinichi-atobe-heat-1-remixes

Tracklist:

1. Shinichi Atobe - Heat 1 (eV流mix)
2. Shinichi Atobe - Heat 1 (Vís Remix)

10月28日 川上哲治(プロ野球選手) - ele-king

※安田謙一(略歴担当)による序文はこちらから

川上哲治(プロ野球選手)

1920年3月23日生まれ。野球選手。トレードマークは赤バット。プロ初の2千本安打を記録した打撃の神様。「ボールが止まって見えた」の名言を残す。巨人軍の監督としてV9を達成。「巨人の星」や「アストロ球団」など創作物にとどまらず、57年の映画「川上哲治物語 背番号16」では本人を熱演。

1920.3.23-2013.10.28

フランク永井(歌手)

1932年3月18日生まれ。歌手。「有楽町で逢いましょう」、「夜霧の第二国道」、「夜霧に消えたチャコ」、松尾和子との「東京ナイト・クラブ」、「君恋し」などヒット曲を多数生み出す。「西銀座駅前」の歌詞“ABC,XYZ。これはおいらの口癖さ”さえも、低音の魅力で魅惑のムードに仕立てあげた。

1932.3.18-2008.10.27

赤瀬川原平(美術家)

1937年3月27日生まれ。芸術家。ハイレッドセンターでの清掃パフォーマンス、裁判沙汰となった千円札の模写作品など特異な表現で驚かせる。「超芸術トマソン」では眼で日常に芸術を幻視した。雑誌「ガロ」に漫画を寄稿、「朝日ジャーナル」に「櫻画報」を連載。尾辻克彦名義で小説を書き、芥川賞受賞。

1937.3.27-2014.10.26

アベベ・ビキラ(陸上競技選手)

1932年8月7日生まれ。陸上競技選手。エチオピアから強化選手としてローマオリンピックのマラソン競技に出場、世界新記録で金メダルを獲得。レース前に靴が破れたため裸足で完走し、世界に衝撃を与えた。東京大会ではプーマ社の運動靴を履いて連覇。36歳で参加したメキシコ大会は途中棄権に終わる。

1932.8.7-1973.10.25

ファッツ・ドミノ(歌手)

1928年2月26日生まれ。歌手。ピアニスト。「エイント・ザット・ア・シェイム」、「ブルーベリー・ヒル」、「ブルー・マンデー」、「アイム・ウォーキン」、「ウォーキング・トゥ・ニューオリンズ」など全米ポップ・チャートを賑わすヒットを連発。ニューオリンズ産リズム&ブルースの表看板となる。

1928.2.26-2017.10.24

天野祐吉(編集者)

1933年4月27日生まれ。編集者。明治学院大学中退後、創元社、博報堂で勤務。独立して誌「広告批評」を創刊。朝日新聞での連載コラム「私のCMウォッチ」、「天野祐吉のCM天気図」は29年続いた。易しい言葉の、鋭い社会時評が人気を集める。著作も多く、テレビのコメンテイターとしても活躍した。

1933.4.27-2013.10.20

Wけんじ(漫才コンビ)

宮城けんじ。1924年8月20日生まれ。漫才師。Wけんじのツッコミ担当。映画の子役から、春日八郎ショウの司会業の前歴がある。東のズレた「痛てーなー」に「遅せーよ」と返す。東の死去でコンビは解散。

1924.8.20-2005.10.19

東けんじ。1923年12月17日生まれ。漫才師。Wけんじのボケ担当。レンズのないロイド眼鏡と、とぼけた口調で笑いを誘う。宮城けんじのツッコミに「痛てーなー」と遅れて返す。時に「やんなっ!」とキレる。

1923.12.17-1999.1.7

加藤和彦(歌手)

1947年3月21日生まれ。ミュージシャン。ザ・フォーク・クルセダース「帰ってきたヨッパライ」が大ヒット。最初の妻、加藤ミカとのサディスティック・ミカ・バンド、二番目の妻、安井かずみとのコンビによる作家活動など都会的センスを極めた表現をいくつも繰りひろげる。プロデュース作も多数。

1947.3.21-2009.10.16

輪島大士(力士)

1948年1月11日生まれ。力士。第54代横綱。ライバルの北の湖と熱戦を繰り広げた。金色の廻しのイメージから力士としての特性を「黄金の左」と命名される。プロレスラー転向後のデビューとなった、故郷の七尾体育会館でのタイガー・ジェット・シン戦は、遠藤賢司「輪島の瞳」で歌になった。

1948.1.11-2018.10.8

和田誠(イラストレーター)

1936年4月10日生まれ。イラストレーター。日本にまだ定着していなかったイラストレーションという職業を先駆け、圧倒的な美意識とユーモアを持って、その魅力を広く深く浸透させた。ハイライト、話の特集、週刊文春、ゴールデン洋画劇場、映画「麻雀放浪記」……と、数多くの記憶に残る意匠を残す。

1936.4.10-2019.10.7

Blawan - ele-king

 コロナ禍に入ってからのシングルがほぼすべて当たりだったベース系インダストリアル・テクノのブラワンことジェイミー・ロバーツによるセカンド・アルバム。タイトルは「病気になるための秘薬」とでも解すればいいのか、ボルヘスやトム・ロビンズの魔術的な小説みたいで、作品に迷い込む気を満々にさせる。ブラワンのダンス・ミュージックはいつも人間性のダークな面に焦点が当てられる。ファニーな側面はもちろんあるけれど、不必要にハッピーであった試しはない。13年前に彼の名を一躍有名にした“どうして僕のガレージに死体を隠すんだよ?(Why They Hide Their Bodies Under My Garage?)”も、母親のフェイヴァリットだったというフージーズの“How Many Mics”から「部隊を殲滅させて死体をガレージの下に隠すんだ」と軽くトーンを上げてラップされる歌詞に愚直なアンサーを返したもので、人間の不可解な行動を誇張して示すことに成功し、ジェフ・ミルズからスキルレックスまでノン・ジャンルでヘヴィープレイされる結果となった。くだらないベースラインの氾濫で多幸感に支配されたダンスフロアに異質な感触を持ち込むのがブラワンであり、『SickElixir』には“心配しないで、僕たちは幸せだよ(Don’t Worry We Happy)”と、ダークサイドに興味を持つ人々を否定しようとする動きにもあらかじめ楔は打たれている。ブラワンという名義はちなみにジャワ・コーヒーの銘柄で、ダンフロアに苦味を注ぎ込むのがロバーツの役割ということだろう。

 7年前に闇の中を突っ走っていくようなデビュー・アルバム『Wet Will Always Dry』でシンプルな力強さを見せたロバーツは(最近だと“Caterpillar”が素晴らしかった)パーリア(Pariah)ことアーサー・ケイザーと組んだカレン(Karenn)名義のジョイント・アルバム『Grapefruit Regret』(19)でテクノ以外の要素をすべて削ぎ落としたことが裏目に出たとしか思えず、無限に思えたポテンシャルももはや尽きたかと思われたものの、ソロでは再びダブステップやウォンキーのようなテクノ以外の要素も回復させ、『SickElixir』ではついに別人のような風格を伴って堂々たるリターンを果たしている。ケイザーとはその後も〈Thrill Jockey〉からパーシャー(Persher)名義でメタル系のアルバムを立て続けにリリースしていて、『SickElixir』にはあからさまにそのフィードバックも感じ取れる。最も特徴的なのはハード・ドラムの多用で、バーミンガム・サウンドと称されるイギリス流のポスト・インダストリアルがベース・ミュージックに埋め込まれた様は、それこそバーミンガム・サウンドを代表するサージョンがヒップホップをやっているように聞こえたりと、アグレッシヴな破壊衝動がダンス・ミュージックのフォーマットにがっちりと畳み込まれている。この4年間にリリースされた「Soft Waahls EP」「Woke Up Right Handed」「Dismantled Into Juice」といったEPはいずれも野心的で発想も多岐に渡っているのはさすがで、とくに「Bou Q」は素晴らしいのひと言だけれど、『SickElixir』に詰め込まれた曲の数々はそれらとも一線を画す強度があり、それこそリスナーを病気にしてやるという熱量が全編に漲っている。ここ数年、批評に熱量を求める声が高まっていて、論破を忌避する人たちがよりにもよって精神論に回帰していく感じはなんだかなーと思うのだけれど、音楽自体に熱量が宿ることはもちろん素晴らしいことである。

 基本的にはイーブン・キックだった『Wet Will Always Dry』とは異なり、『SickElixir』の基調をなしているのは広義のブレイクビーツ。全体にザ・バグがキャバレー・ヴォルテールをブラッシュ・アップさせたような響きに満ち、ディスコやハウスと出会ったインダストリアル・ミュージックがダンスフロアに感じた可能性や初期衝動を再燃させているかのよう。曲の長さも平均で3分ちょいと『Wet will always dry』の半分ぐらいになり、酩酊感よりもイメージの喚起が優先されている。BPM90~110に収まる曲が多く、これに80や130で緩急をつけ、アルバム全体の展開も迷宮的な構成を助長している(“Birf Song”はヘン過ぎてBPMがとれない)。何度聴いても頭にスヌープの“Drop It Like It's Hot”が浮かんでくる“NOS”や、空中分解したUKガラージを無理やり曲として成立させている“Creature Brigade”など、多種多様な曲のどれもが印象的で、好きな曲は人それぞれに異なることだろう。ノイズがねっとりと絡みつく“Sonkind”もクセになるし、アシッドヘッドには“Rabbit Hole”がたまらないことでしょう。今年はエレクトロが奇妙な変化を遂げた年で、その動きに反応したらしき“Style Teef”はシェレルばりにBPM160で展開される高速エレクトロ。リック・ジェイムズやMCハマーがてんてこ舞いで回転している姿が目に浮かぶ。

 実は、この夏に〈Planet Mu〉からリリースされたスリックバックのデビュー・アルバムに多大な期待を寄せていた。オフィシャルでは初となるアルバムであり、なによりも〈Planet Mu〉にレーベルを定めたという安心感もあったのだけれど、この5年間にアンフィシャルで8枚ものアルバムをリリースしてきたことが裏目に出たとしか思えず、皮肉なことに『Attrition(消耗)』と題されたアルバムは確かに疲れを感じさせるものがあり、〈Nyege Nyege〉から頭角を現してきた時のスリリングな響きには遠く及ばないものを感じてしまった。『消耗』というタイトルは、実際にはケニアからポーランドへ移住する際に、1年間にわたって国境付近で待機させられたことに由来し、音楽性と直接結びつくことではないらしいのだけれど、どうしてもこの5年間にやってきたことが悪い意味で投影されているタイトルだという印象を受けざるを得なかった。そこに、等しくデコンストラクテッド・クラブの要素としてハードコアやポスト・インダストリアルを取り入れた『SickElixir』が届けられたことで、肩透かしに終わってしまったスリックバックに対する期待感は見事なほどレスキューされてしまった。しかも、UKベースの文脈にポスト・インダストリアルを取り入れる手際がより巧みであり、ハードコアやポスト・インダストリアルといった荒々しいモードを現在の文脈で活性化させるにはこれ以上はないと思うほど『SickElixir』はよくできていると思う(もちろん、スリックバックにもまだまだ期待はしたい。それにしてもケニアからポーランドへと、どうして2次大戦中にナチスが支配していた国を渡り歩こうと思ったのだろう?)。

10月のジャズ - ele-king

Ruby Rushton
Legacy!

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 テンダーロニアスことエド・コーソーン率いるルビー・ラシュトンは2010年代初頭より活動しているが、当初はジャズにヒップホップやビートダウンなどの要素も交え、生演奏にエレクトロニクスも融合したグループだった。当時はメンバーも流動的なところがあり、テンダーロニアスのアイデアを具現化するプロジェクト的な色彩が強かったのだが、アルバムやライヴを重ねるにつれてグループを精査していき、2019年の『Ironside』ではテンダーロニアス(フルート、サックス、パーカッションほか)以下、ニック・ウォルターズ(トランペット、パーカッション)、エイダン・シェパード(フェンダー・ローズ、ピアノ、シンセほか)、ティム・カーネギー(ドラムス)に固定され、ジャズ・バンドとしての姿を完成させた。楽曲もクラブ・サウンド的なアプローチは後退し、より純粋なジャズ・ファンク、モーダル・ジャズ、スピリチュアル・ジャズなどの即興的な演奏が強まっていった。その後、グループとしてシングルやEPのリリースはあったが、テンダーロニアスとしての数々のプロジェクトが忙しかったり、ニック・ウォルターズもパラドックス・アンサンブルやソロ活動があったりで、ルビー・ラシュトンとしてのアルバムはしばらくお預けとなっていた。そうして6年の歳月が経過したが、ここにようやくニュー・アルバム『Legacy!』が完成した。

 ファースト・アルバムの『Two For Joy』のレコーディングから14年が経過した2025年初頭、英国ケント州にあるスタジオで4日間に渡って集中的にレコーディングされた。オーヴァーダビングを排した一発録音を基本とするルビー・ラシュトンだが、今回はテンダーロニアスとエイダン・シェパードが作曲した楽曲をメンバーで演奏し、それらのライヴ・テイクの上にホーンとフルートのメロディを重ね、最終的にテンダーロニアスによるスタジオ・ワークを交えて完成させている。“Charlie’s Way” は滑らかなエレピの上をピッコロが舞うムーディーな出だしから、6/8拍のアフロ風味のジャズ・サンバへと変化していく。“Walk to Regio’s” もモーダルな7/8拍のナンバーで、ルビー・ラシュトンにはこうした変拍子の作品が多い点が特徴的だ。“The Lighthouse” も3拍子のジャズ・ワルツで、エモーショナルなテナー・サックスもフィーチャーされたスピリチュアルなムードの作品。チップ・ウィッカムにも通じるタイプの作品でもあるが、1960年代後半から1970年代のヨーロッパに見られる硬質で洗練されたムードのジャズに近い。テンダーロニアスとチップ・ウィッカムには影響を受けたジャズ・ミュージシャンや作品に共通するところがあるのだろう。


Alfa Mist
Roulette

Sekito

 2025年のアルファ・ミストは非常に精力的に活動していて、リチャード・スペイヴンとのユニットである44th Move(フォーティーフォース・ムーヴ)のアルバム『Anthem』を春にリリースし、そして秋には新作の『Roulette』をリリースした。彼は昨年弦楽四重奏のアミカ・カルテットと共演した『Recurring』というライヴ・アルバムをリリースしているが、スタジオ録音盤としては2023年の『Variables』以来の作品集となる。『Variables』は「無限の可能性」をテーマとしており、自身が興味を持つさまざまな音やアートを具現化したものとなっていた。それ以外にもメンタル・ヘルス、家族コミュニティ、議論文化、個人的な成長など内面や精神にかかわることが、これまでの彼の作品のテーマや手掛かりとなってきた。今回は「輪廻転生」がテーマになっていて、夢の世界と前世を繋ぐものが輪廻転生であり、近未来へと想像を巡らせる旅がアルバムの底辺に流れている。参加ミュージシャンは長年のコラボレーターであるカヤ・トーマス・ダイク(ベース、ヴォーカル)に、ジェイミー・リーミング(ギター)、ジョニー・ウッドハム(トランペット、フリューゲルホーン)、サミュエル・ラプリー(サックス、バス・クラリネット)、ペギー・ノートン(チェロ)など、『Variables』にも参加していた面々が中心となる。そのほかゲストでアメリカからラッパーのホームボーイ・サンドマンと、2000年代からクラブ・シーンを中心に活動するソウル・シンガーで、シネマティック・オーケストラにも参加してきたタウィアがフィーチャーされる。

 テーマである「輪廻転生」を曲名とした “Reincarnation” は、ホームボーイ・サンドマンのラップをフィーチャー。楽曲自体は重厚なストリングスを用いた深みのある作品で、ホームボーイ・サンドマンの理知的なラップともうまくマッチしている。アルファ・ミストらしいジャズとヒップホップの融合で、彼がデビューの頃から一貫してやっているスタイルと言える。“All Time” はタウィアをフィーチャーし、ギターがダークでメランコリックな雰囲気を奏でる。こうした繊細でフォーキーな質感の楽曲もまたアルファ・ミストらしいもので、内省的なテーマの作品にぴったりである。“From East” はダビーでコズミックな質感のインスト曲で、エレピ、ドラムス、ギター、トランペット、サックスのインタープレイもディープで幻想的な世界を繰り広げる。ジョー・アーモン・ジョーンズなどと並び、いまのロンドンらしい現代ジャズと言えるだろう。


Matt Wilde
Find A Way

Hello World

 マット・ワイルドはマンチェスター出身のキーボード奏者/プロデューサーで、2021年頃から作品リリースを続けている。DJ/ビートメイカーからキャリアを始め、J・ディラマッドリブ、ピート・ロックなどの影響を受け、J・ディラがマイルス・デイヴィスをサンプリングしていたことからジャズそのものにも興味を持つようになった。そのJ・ディラへのトリビュートである “Dilla Impressed Me” という作品もリリースしているが、トロンボーン奏者のロージー・タートンなどジャズ・ミュージシャンと共演し、単なるビートメイカーではないピアニストへと成長を遂げている。こうしたDJ/ビートメイカーからミュージシャンになった人はアルファ・ミスト、テンダーロニアスなどいろいろいるが、マット・ワイルドは edbl やアメリカのキーファーあたりに近いタイプのミュージシャンで、ヒップホップと親密な結びつきを持っている。ファースト・アルバムは2023年の『Hello World』で、ジョー・ラッキン(ドラムス)、オスカー・オグデン(ドラムス)、スタン・スコット(ベース)、ナッティ・リーヴズ(ギター)、アーロン・ウッド(トランペット)などさまざまなミュージシャンたちとコラボしている。ヒップホップのビートを咀嚼したリズム・セクションに、マット・ワイルドによるメロウなエレピやホーンなどのフレーズを差し込み、生演奏とプログラミングやサンプリングを極めて精巧に融和している。

 新作の『Find a Way』はファースト・アルバムの名前をレーベル名にした自主レーベルからのリリース。今回は参加ミュージシャンを絞り、スタン・スコット、アーロン・ウッドと、一部オスカー・オグデンのドラムス・パターンを借用している。マット自身はキーボード演奏とドラム・プログラミングをおこない、複雑にプログラムされたドラムの上にピアノ、ベース、トランペットを重ねて全体構築している。『Hello World』をよりコンパクトにした形であるが、ヒップホップ色の濃かった前作よりサウンドの幅は広がっている。“It’s OK, Feel It” はブロークンビーツ的なビートで、ロニー・リストン・スミスやアジムスを想起させる1970年代フュージョンのエッセンスに包まれる。“Yellow Days” や “Everyday Words” もジャズ・ファンクとブロークンビーツをミックスしたような楽曲で、透明感に溢れたマットのピアノが印象的。“Windup” は変拍子によるミステリアスなムードで、ルビー・ラシュトンあたりに近い作品と言える。“Smile Today” はメロウなテイストの重厚なジャズ・ファンクだが、ビートの作り方など非常に凝ったものである。


Glass Museum
4N4LOG CITY

Sdban Ultra

 グラス・ミュージアムはベルギーのブリュッセルを拠点とするユニットで、2016年にアントワーヌ・フリポ(ピアノ)、マルタン・グレゴワール(ドラムス)によって結成された。方向性としてはゴーゴー・ペンギンに近く、コンテンポラリー・ジャズにテクノなどエレクトリック・サウンドやクラブ・サウンドのアプローチをミックスしている。これまでアルバムは『Deux』(2018年)、『Reykjavik』(2020年)、『Reflet』(2022年)とリリースしていて、『Deux』では一部にトランペット奏者を加えた作品もあったが、基本的にふたりのコンビネーションで楽曲を作ってきた。そして、新作の『4N4LOG CITY』では新たにサポート・ベーシストのブリュー・アンジュノを加えたトリオとなっている(ただ、アルバム・レコーディング後に正式なベーシストとしてイッサム・ラベンが加入し、現在はこの3名でライヴなどを行っている模様)。ほかにサックスやシンガーも加え、いままでに比べてより多彩な表現が可能となった。また、スイスのドラマー/作曲家/プロデューサーであるアーサー・フナテックとのコラボから始まって “Gate 1” という楽曲も作るなど、外部との交流や広がりが見られるアルバムだ。

 その “Gate 1” は電子音の反復によるミニマルな始まりから、パワフルなビートが前進していくテクノとジャズ・ファンクが融合したような楽曲。クラークフランチェスコ・トリスターノが共演したようなイメージというか、グラス・ミュージアムとしてもこれまで以上にエレクトリック・サウンドに振り切ったサウンドである。“Rewind” はドラムンベース的なビートを持つナンバーで、途中で半分のテンポのジャズ・ファンクへと変わる。ゴーゴー・ペンギンに近いイメージのエレクトロニック・ジャズだ。“Call Me Names” は新進気鋭のヴォーカリストである JDs を起用しているが、彼の歌声はスペイセックを思わせるソウルフルなもの。そして、少しレゲエ・シンガー風のアクセントを持っていて、ナイトメアズ・オン・ワックスのような独特のスモーキーな風味を出すナンバーとなっている。いままでの路線のジャズ的なナンバーとは異なるが、グラス・ミュージアムの新しい魅力を引き出す作品となっている。

 Hello Hello! hey hey! はろはろ! へいへい!
 今月からこの連載を書かせていただくことになりました、DJのheykazmaですッ!!

 普段は東京で高校一年生をかましつつ、experimentalを軸に、TechnoやHouse系のDJをしたり、ギャルマインド満載なトラックを作ったり、モデルをしたり、パーティを主催したり、遊びに行ったり……。アーティストとして、学業の傍ら、楽しく活動しています。

https://lit.link/heykazma

 この連載では、ワタクシことheyが制作した音源の話や、最近聴いてムネアツな音楽、日常のワラえることなど、みなさんと共有したいものをひたすら書いていく予定(キリッッッ)。ゆる〜く読んでもらえたら嬉しいhey!

 hey的にお気に入りのheyの現在地的なDJ Mixはこちら! 1億回聴いておくんなまし〜

 初回のテーマは……10/1にU/M/A/AからリリースされたRemix EP「Happy Halloween Remixes 2025 Curated by heykazma」について。
 この作品は、毎年10月になるとSNSでよく耳にするハロウィンソング定番曲!再生数がマジでヤバいJunkyさんのボカロ楽曲『Happy Halloween』をテーマに、heyがキュレーションを担当したEPです!

Junky- Happy Halloween (heykazma Remix)

 このお話をいただいたきっかけは、「Happy Halloween」の原曲をリリースしたレーベルのみなさんが、私が主催しているパーティ「yuu.ten」に遊びに来てくれちゃったことでした(感謝!!♡)

 「yuu.ten」は、2024年からスタートした“音に溶ける”をコンセプトにしたダンスパーティ\(^o^)/

 初回となるvol.1は、地元・仙台で愛しているお店「ファシュタ -Första-」で開催したの。東京から、普段一緒にユニットを組んだりしているマヴ・北村蕗をゲストに迎え、2人会をやっちゃいましたよ。

 そして、6月20日に開催したvol.2は下北沢SPREADにて。LIVE、DJ、アートパフォーマンス、似顔絵ワークショップなど、私の“好き”と“友人”をぎゅっと詰め込んだ内容に(((o(*゚▽゚*)o)))♡

 会場は満員で、来てくれたまゔたちからも「こんなイベント待ってた!」と言ってもらえて、本当に嬉しい夜だったよん˚ˑ༄

 後日、「heyちゃんにお願いしたいことがあったんだよね!」と、今回のリミックスEPの企画のお話をレーベルの方からいただきました。すごく光栄でテンション爆上がり!(わーーい

 今回私が担当したのは、いわばディレクター的な役割。
 リミキサーの選定、アートワークをお願いするアーティストの選定、MV監督の起用、リリースパーティの企画などなど…。

 特に最初に取りかかったのが、「誰にリミックスをお願いするか?」という部分。hey的に、原曲の“Happy Halloween”が持つ、ポップでキャッチーで、ちょっとホラーでかわいい世界観を、それぞれの解釈で楽しく再構築してくれそうなアーティストたちをピックアップ!

 結果、リミックスをお願いしたのが、Shökaちゃん、清水文太くん、バイレファンキかけ子さま、foodmanパイセンの4名! そしてアートワークを村田みのりせんせー、MVをALi(anttkc)っちにオファ〜しました!

 ジャンルも活動スタイルもバラバラだけど、それぞれの個性がピカピカで、hey的に「この人たちが並んだら絶対おもしろい!」と思える方々ばかり。
この選定には、これまでheyが遊びに行ったパーティや出会ったアーティスト、SNSで気になっていた方など、これまでの縁やつながりがめちゃくちゃ活きているchanょ。

 ここからは、今回リミックスをお願いした4組のアーティストについて、heyとその人たちとの出会いや制作までの流れを書いてみますっ!

Shöka (Remixer)
 Shökaちゃんとは、もともと共通の友人を通じて知り合いました。最初にちゃんと話すようになったのは、彼女が出演していたイベントに遊びに行ったときのこと。そこから、会ったり会わなかったりを何度か繰り返して、気づけば自然と仲良くなっていました。
 あるとき、「高校時代にボカロをよく聴いてた」って話をしてて、それを聞いた瞬間に「これはShökaちゃんにリミックスお願いしたいかも!」って直感で思ったんです。
 思い切ってオファーしたら快く引き受けてくれて、出来上がった曲を聴いたときは本当にびっくりしました。普段のShökaちゃんの独特なバイブスが音にも滲み出ている一方で、作品ではあまり見せていない音楽性もあって、すごくドープに仕上がっていて……不思議で、でもクセになるタッチの曲。何度も聴いては刺激受けまくりで、ひたすら最高!!

ライヴ観に行ったとき謎の遊びをしている写真...

清水文太 (Remixer)
 文太くんのことは、小学生のころハマっていた「水曜日のカンパネラ」のスタイリストをしていたり、私がずっと好きなクィア&フェミをテーマにした東京のDJパーティ「WAIFU」でライブ出演していたりと、名前を見かけるたびに気になる存在でした。
 ちゃんと話すようになったのは、実は今年に入ってから。私が出演したパーティにふらっと遊びに来てくれたのがきっかけでした。
 話してみたら、表現の幅広さとか感性の鋭さとか、想像以上で。彼の実験的かつ自由なバイブスにめちゃくちゃ惹かれて、今回のリミックスもぜひお願いしたいと!!!!
 実際に届いた音源は、まさに文太くんの空気感そのまま。“ハロウィン”というテーマに対して、甘すぎず、美しくて、でもちょっと毒もある。その微妙なバランスを取れるのは、やっぱり文太くんしかいないなって〜〜〜!♡

一緒に新宿御苑行ったら急にストレッチをし始める文太くん

バイレファンキかけ子 (Remixer)
 かけ子さまとは、クラブの現場で出会ったというより、SNSでかけ子様のDJ Mixや情熱大陸のBootlegを先に聴いて、「この人やばっ!」ってなったのが最初。
 初めて実際にお会いしたのは、上京してすぐ。かけ子さまが出演しているパーティに遊びに行って、フロア最前でマヴと爆踊りしてました(笑)。
 プレイ後に話しかけたら、めちゃくちゃ優しくて面白くて、バイブスが最高すぎて! かけ子様の音楽のお祭り感とハロウィンのお祭り感をMixしたら絶対最高になると思って、すぐオファーしちゃた! 結果、めちゃくちゃフロア爆発しそうなリミックスが届いて感動。安心信頼、安定のかけ子大先生!!

初めてお会いした時に撮ったツーショ!!

食品まつり a.k.a foodman (Remixer)
 食まつパイセンとも、かけ子様と同じく最初はSNSにアップされていた音源を聴いて強く惹かれたの.........!!!!!
 さらに、大好きな作家・アーティストのシシヤマザキちゃんと「1980YEN」というユニットを組んでいたこともあり、当時からすごく気になる存在。昨年の夏、下北沢SPREADで初めてライブを拝見したのですが、そのパフォーマンスが圧倒的で、やっと会えました!
 そんな中ふと!「ボカロと食まつパイセンの音楽が混ざったら面白いのでは!?」と思い、今回無茶振りオファーを〜〜〜〜(*´∇`*)
 そして生まれたのが、めちゃくちゃ異色でエグいサウンド。聴けば聴くほどクセになる、“スルメ楽曲”の極みです!! パイセン サイコー!

りんご音楽祭で会ったときの写真!!

村田みのり(アートワーク)
 みのり教授と出会ったのは6月。コムアイさんとみのり教授が主催する「おかしなおかね」に、参加したのがきっかけ。
 もともとインスタで作品を見ていて、「この世界観めっちゃかわいい!」って思ってたんです。
 実際にお会いしてみたら、テンションの波長がすごく合うし、初対面でもすぐに仲良くなれちゃた。
 そのあともイベントで何度か会ううちに、みのり教授の持つ柔らかさとか、アイデアの発想力にどんどん惹かれていって。今回のハロウィンのテーマを考えたときに、真っ先ににお願いしたい!って思いました。

はじめてみのりさんとbonoboでお会いした日
w/もりたみどりちゃん&Yoshiko Kurataさん

ALi(anttkc) (Music Video監督)
 ALiっちは、普段からよく遊ぶマイメンのひとりで、もう説明いらないくらい信頼しまくってる存在。私が主催している「yuu.ten」でもVJを担当してくれたり、彼が運営している神保町のイベントスペース「RRR」でブッキングしてくれたりと、お互いに呼び合ったり、遊びに行ったりな関係!映像制作に関しては本当に安心と信頼のクオリティで、今回も絶対にお願いしようって迷いなく思いました。打ち合わせではふわっと伝えただけなのに、彼が作ってくれた映像はPOPでかわいくて、動きもテンポも最高。本当に、ALiっちの映像が加わったことで、今回のEPやハロウィン企画全体の世界観が一気にぐっと立体的になったな〜と感じています。

りんご音楽祭で会ったときの写真!!

 そして最後に、hey自身が制作したRemixについて〜。
 heyはこの曲の「アゲな部分」にフォーカスして、Hard Technoでわっしょい感を大切に、数々の有名ダンスアンセムから影響を受けて、NEO盆踊りの極みmixに仕上げました! 500,000,000回聴いてくれ!

 今回の企画を通して、改めて「人と人とのつながり」や「音楽が持つ広がりの力」を強く感じました。heyがこれまで現場で出会ってきた人たちと、ひとつの作品を一緒に作り上げられたことが本当に嬉しい( ; ; )

 それぞれのリミックスが持つ世界を聴きながら、ぜひハロウィンという季節を自由に楽しんでほしいなと思うよんっ♪

 またリリースを記念して、日本橋にあるアートホテル”BnA_WALL”でhey主催リリパを開催します!!こちらも激アツな企画になってるので...絶対に来て欲しいです!!!!!!!!!!

 これからも私heyは己かましまくりで前に進んでいこうと思うよっ
 それでは次回の連載、どこかのパーティでお会いしましょう˖ . ݁

Happy Halloween Remixes 2025 Curated by heykazma
Release Party at BnA_WALL 日本橋

2025年10月31日(金)
18:00 Open
19:00 Start
22:00 Finish

■ DJ
heykazma
バイレファンキかけ子
カワムラユキ
CASE(Wangone)
■ Live
Shöka
清水文太

■チケット
¥3.500 当日(会場のみで販売)
¥3.000 前売り ※非売品ステッカー付 50枚限定
¥2.000 Under 25
※小学生以下のお子様のご入場は無料です。
※会場キャパシティの上限に達した際には当日券が販売中止となる場合があります。

Peatix | eplus

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