「The Men」と一致するもの

Beatrice Dillon - ele-king

 モーゼは「パンのみに生きるにあらず」とおっしゃるけれど、〈パン〉がなければもはやエレクトロニック・ミュージックを聴くことで精神的な豊かさまで得ることは不可能に近い……とまでは言わないにしても、それほどにベルリンの〈パン〉は心や頭に届いてくる音楽を絶え間なく発信し続けている(ジョークがわからない人への注→小麦粉のパンとレーベル名をかけています)。昨年のスティーン・ジャンヴァンやアースイーターに続いて、2019年も春先にリリースされたヘルム『Chemical Flowers』がまずは素晴らしく、秋にリリースされたスティーヴ・ウォーマック(=ヒートシック)『Moi』も鼻歌交じりの実にとぼけた作風で、さらにビアトリス・ディロンによる実質的なファースト・アルバムが目を見張る出来であった。これまでのキャリアを考えると、レーベルはよりどりみどりだったはずだけれど、そうか、ディロンは〈パン〉を選んだか、と。ダンス・カルチャーと実験音楽を拮抗させ、どちらのジャンルにも刺激を与えているという意味ではこれ以上ない組み合わせだろう(ジョークがわかる人への注→パンがなければケークスで木津毅の連載を読めばいいのよ〜)。

 これまでルパート・クラヴォーと2作続けて制作したコラボレイト・アルバムはどちらかといえば実験的で、リズム・トラックでありながら着地点がダンスフロアのど真ん中ではなかった(テクノ・ジャズと評された「The Same River Twice」はある意味傑作)のに対し、〈ブームキャット〉や〈ヘッスル・オーディオ〉からのシングルではヒネりを効かせたクラブ・ミュージックと両輪を並び立たせてきた彼女がこれらを過不足なくフュージョンさせ、新しいステップを踏み出したものが『Workaround(回避策)』である。『回避策』というタイトルは、そのようにして二刀流で続けてきた試行錯誤の結果、彼女にとって避けられなかった問題をクリアーしたという意味にも受け取れるし、まるでブレクシット(ジットじゃないよシットだよ)に対してエクスキューズを放っているようにも推し測れる。いい意味で思わせぶりなタイトルである。ジェームズ・P・カーズの宗教研究だとかトマ・アブツヨリンデ・フォイクトの抽象画などに影響を受けたそうだから、もっと違う意味があるのかもしれないけれど(リンク先の絵を見ると、なるほどとは思う)。

 全体的にカリビアン・サウンドがモチーフとされ、それはまるで新種のウエイトレスのように再構成されていく。富裕層じゃなかった……浮遊感しかない感触はベンUFOとカップリングでリリースされたカセットのDJミックスやちょうど1年前に〈リヴェンジ・インターナショナル〉の15周年を記念してリリースされたミックステープ『RVNG Intl. At 15: Selects / Dissects』にも通じる内容で、『RVNG Intl. At 15』では同レーベルからの正式リリース(Selects)と未発表曲(Dissects)を素材としていたのに対し、『Workaround』の元ネタはFM音源やアコースティック楽器を使った生演奏だという。ブリティッシュ・バングラのパイオニアとされるクルジット・バムラのタブラやシンケインなどに客演するジョニー・ラムのギター、あるいは昨年、〈モダン・ラヴ〉から猛々しい雰囲気の『Paradise 94』をリリースしたルーシー・レイルトンによるチェロに〈ヘムロック・レコーディングス〉のオーナー、アントールドなどが加わり、‘Workaround Two’ではローレル・ヘイローが金属的なヴォーカルもちらりと披露している。

 タブラをフィーチャーした緩やかな導入から前半は琴を含む様々な弦楽器がいい味を出している。スウィング・ビートを縦横にシンコペートさせるのが本当に楽しいのだろう、“Workaround Four”ではリズムの抜き差しに多くのヴァリエーションをつくりだし、間が抜けてしまうギリギリのタイミングでタムがひらめいたり、忘れた頃にタブラがカツンと鳴る。“Strings Of Life”のビートレス・ヴァージョンをUKガラージにしたらこうなるかなあという感じで、民族楽器を多用しているわりにワールド・ミュージック然としたところはなく、そういう意味では『Mala In Cuba』(12)を実験的な面へと傾かせたというか(本人の意識ではマーク・エルネスタスの『Jeri-Jeri』(13)や〈ナーヴァス・ホライズン〉の新しいコンピレーションでカッコいいドラムを連発していたDJプリードらに負うところが大きいらしい)。“Workaround Eight”からスピード感が増し……と言いつつ、すべての曲はBPM150で統一されているらしく、音数が増えたということでしかないのだけれど、曲が進むにつれてどんどん気持ちが上向いていくのがいい(DJミックス的な構成というか)。明るいというわけではなく、むしろ暗いサウンドなのに2010年代を覆っていた陰鬱なムードとははっきりと隔たりがあり、岩盤浴でもしたようにさっぱりした気分になれるのが嬉しい。『RVNG Intl. At 15』もかなりリピートしたけれど、『Workaround』もしばらくはやめられそうにない〜。

 ちなみに彼女の本名はディオン・ウェンデルで、カッセ・モッセことガンナー・ウェンデルとはコラボ・シングルもリリースしていたりするけれど、この2人は兄妹とか何かそういうものなのだろうか。ビアトリスというのもゲームのキャラクター名なのか、ダンテの『神曲』に出てくるベアトリーチェに由来するのだろうか。はて。

Moses Boyd - ele-king

 ついにつながった。UKジャズ・シーンにおける最重要ドラマーといっても過言ではないモーゼズ・ボイド──昨年もジョー・アーモン=ジョーンズを筆頭にさまざまな作品に参加──が、2018年の『Displaced Diaspora』以来となるアルバムを2月21日にリリースするのだけれど、なんとそこにクラインが参加しているのである。すなわち、UKジャズとブラック・エクスペリメンタリズムの邂逅である。これは今年の重要な1枚になりそうだ。


新世代UKジャズシーンの真打がついに見渡す新境地。UKのベースミュージック史まで更新する圧巻の演奏。

2020年、グライムとジャズは同じ夜に鳴り響く。

真打がついに動く。
Joe Armon-Jones、Nubya Garcia、Gary Crosby、Obongjayar、Klein ら参加。前作から格段にアップグレードされた1.5TB相当の情報処理能力で最新ビートをジャズ/アフロビートにフォーマットする、いかつすぎる……とにかく、いかつすぎる驚異の若手による 2nd。
Beyonce 監修による『ライオンキング』のサウンドトラック楽曲への参加や、Little Simz や Lonnie Liston Smith らとのコラボを経て、Tony Allen から直々に受け継いだアフロビートが、最新型の異形のジャズへと変換されていく。

Moses Boyd (モーゼズ・ボイド)
Dark Matter (ダーク・マター)
国内盤CD ¥2,300+税 / 帯付き国内流通2LP ¥3,600+税
IPM-8124 / AMIP-0205
2020年2月21日リリース
レーベル:インパートメント

Track listing:
01. Stranger Than Fiction
02. Hard Food (interlude)
03. BTB
04. Y.O.Y.O
05. Shades of You ft Poppy Ajudha
06. Dancing In The Dark ft Obongjayar
07. Only You
08. 2 Far Gone
09. Nommos Descent ft Nonku Phiri & Nubya Garcia
10. What Now ft Gary Crosby

11. Stranger Than Fiction [Instrumental] *
12. 2 Far Gone [Instrumental]*
13. What Now [Instrumental]*
14. Axiom*
*日本盤CDボーナストラック(LP未収録)

◎CD/LP 日本独占流通

https://www.inpartmaint.com/site/28920/

Moses Boyd
モーゼズ・ボイド

新世代UKジャズシーンの立役者のひとりとして、Lonnie Liston Smith、Ed Motta、Little Simz、Four Tet、Floating Points、Sampha、Kelsey Lu、Sons of Kemet、DJ Khalab など挙げていけばきりがないほどに、様々なシーンと絡み、その度に最先端のビート感覚を養ってきた若き天才ドラマー。サックス奏者 Binker Golding との Binker & Moses 名義でも、名高い評価を得ており、2018年発表の 1st ソロ『Displaced Diaspora』はシーンの代表作として位置づけられている。約2年ぶりとなる 2nd ソロは自身によるバンド、そして自主レーベルの〈Exodus〉からリリースされる。Beyonce 監修により大きな話題を呼んだ実写版『ライオンキング』のサウンドトラック楽曲への参加や、2019年にスマッシュヒットした Little Simz の出世作への参加など、英米問わず様々なシーンの最先端に顔を出すその突出したドラムスキルと豊富なリズムへの知識と探究心は、この 2nd アルバムで爆発し、ジャズやアフロビートが、完全にベースミュージックとして機能している喜びと驚きを世界に知らしめることとなる。

J.A.K.A.M. - ele-king

 日本において果敢にグローバル・ビーツを開拓しつづける JUZU a.k.a. MOOCHY こと J.A.K.A.M. が2月11日に新たなアルバムをリリースする。タイトルは『ASTRAL DUB WORX』で、2016年からヴァイナルで展開されてきた「ASIAN DUB」シリーズを中心に、世界各地の民族音楽を導入、多彩なゲストを招きながら、これまでの彼の歩みを凝縮した1枚に仕上がっている模様。ダブ処理は内田直之。リビア空爆に反対するジャーナリスト、ダム開発で故郷を失った民族、エジプトの大御所ウーム・クルスームなど、素材も気になるものがたくさん。期待大です。

Amazon / Tower / HMV / disk union / JET SET

Boreal Massif - ele-king

 人新世。あるいはアントロポセン。もうすぐ出るグライムス新作のタイトルもそうだけど、日本でもここ何年かで、地質学由来のこの術語がじょじょに一般レヴェルにまで浸透するようになってきたのではないかと思う。これまで長らくわたしたちの生きている時代は「完新世」だとみなされてきたが、じつはもうその時代は終わりを迎えており、現在の地球にはかつての惑星の衝突と比肩しうるような巨大な変化が訪れている、そしてその変化は二酸化炭素や放射性物質の排出など、産業革命以降の人間の活動によってもたらされたものである──そのような考えが「人新世」なるワードには反映されている。もちろん、異論もある。なぜなら「人新世」ということばは、まるで人間たちがみなひとしく同列の存在であるかのような錯覚をもたらしてしまうからだ。
 考えてもみてほしい。日々の生活に四苦八苦している貧乏人ひとりが排出する二酸化炭素の量と、大企業の排出する二酸化炭素の量がおなじであるはずがない。2年半前の『ガーディアン』の記事によれば、温室効果ガスの70%はたった100の企業によって排出されている。原因だけではない。気候変動の結果もまた、万人に平等に訪れることはない。酷暑や土砂崩れのようなしっぺ返しが来たときに、それをそのまま耐えなければならない貧乏人と、いくらでも対処のしようのある金持ちとでは、受けるダメージがちがいすぎる。その非対称性をないことにするのはいかがなものか……というわけで、「人新世」なる語が隠蔽してしまう格差をちゃんと見つめようとする動きが出てきているのだ。
 対案のひとつは「資本新世(キャピタロセン)」である。地球なり自然なりを今日のような壊滅的な状況へと追いやった主犯は、けっして人間全般ではなく、ひとにぎりの富裕層なのであり、ひいては資本主義そのものである──たしかにこっちの考えのほうがしっくりくる。環境を守るために個々人がエコ活動にいそしむのもけっして悪いことではないのだろうけど、そのまえにまず資本主義をなんとかしなければならない。

 ロウで、磨かれていない、アナルコ=エレクトロニクス。レーベルのプレス・リリースにはそう記されている。その文言だけでもうテンションがブチ上がってくるけれど、2010年代の重要な潮流のひとつ、インダストリアル~ジャングル~ダブの更新者のひとりであり、残念ながら昨年クローズしてしまった〈Blackest Ever Black〉からのアルバム(紙エレ最新号77頁)がいまなおいびつな輝きを放ちつづけているブリストルのプロデューサー、ペシミストことクリスティアン・ジャブスと、同作に参加していたコーンウォールのループ・ファクションことルーベン・クレイマーによるコラボレイション・プロジェクト、それがこのボーリアル・マスィーフである(「北の山塊」の意)。
 すでにかの悲観主義者の音楽に親しんでいるリスナーは、あの寒々しい極北のサウンドを思い浮かべてしまうかもしれない。が、ボーリアル・マスィーフの音楽はペシミストほどダークではない。たしかに彼は2019年、おなじラフハウスのメンバーであるカリム・マアス(トム・クーパー)とともに、あいかわらず暗いドローン作品を送り出してもいるが、今回のアルバムはそれとも異なる趣で、おそらくは「トリップホップ2.0」なる標語を掲げるループ・ファクションからの影響が大きいのだろう、「フィールド・レコーディングを駆使したトリップホップ」とでも呼ぶべき内容に仕上がっている。
 レーベルのインフォが誘導しているように、往年の〈Mo’ Wax〉を彷彿させるサウンドです、と紹介すれば伝わりやすいだろうか。冒頭 “We All Have An Impact” から種々のノイズとパーカッションがなんとも気だるい空気を漂わせている。もっともそれらしいビートを聞かせてくれるのは “The Brink Of Extinction” だが、とはいえ “Low Forties” や “Deerhound” なんかのドラムはやはりインダストリアルで、その辺がペシミストによる仕事なのかもしれない。“Fast Fashion” まで来るともうほとんどゾウナルである。
 大半の曲がベリアルばりのクラックル・ノイズ(=過去性の喚起)に覆われているのもポイントだろう。“Artificial World” や B12 を思わせる “Weather In August” あたりがわかりやすいけれど、インダストリアルとの両立という点では “Black Rapids” に注目したい。この曲が呼び覚ます風景は完全にスティームパンクのそれであり、どうやら過ぎ去りしかつての産業革命を想起させることこそがこのアルバムの主眼のようだ。
 その点を踏まえて全体を聴きなおすと、ギターの音色を活かした “Angel Of Dub” や “Somewhere In Galicia” なんかは、産業革命以前の非工業的な風景を映像資料として眺めているような感覚をもたらしてくれる。随所に練りこまれた具体音も本作の肝で、虫ないし鳥のような鳴き声が強調される “Dew Point Rising” は、最良のアンビエントとしても機能する。まるで自然破壊の惨状を憂いているかのごときこの……いや、というか、じっさいにそれこそが本作のテーマなのだ。

 わたしたちみんなが影響をおよぼす──タイトルを直訳するとそうなるだろうか。プラッドの力作同様、気候変動や自然破壊にたいする強烈なメッセージを搭載したこのアルバムは、たんにフィールド・レコーディングによって「美しい自然」の風景を幻視させるのではなく、インダストリアルの手法とクラックル・ノイズにより工業性と過去性を喚起させることで、逆説的に、わたしたちみんなが平等に影響をおよぼすわけではないことをほのめかしている。産業革命以降の世界を加速させたものとはなんだったのか、本作を聴いているとそのことに思いを馳せずにはいられない。

Jon Hassell - ele-king

 やはり2018年の新作『Listening To Pictures』で、現役感ばりばりの尖ったサウンドを呈示したことが大きかったのだろう。昨年のラファウンダ『Ancestor Boy』における客演もそうだけど、最近「第四世界」のコンセプトがグローバル・ビーツの動きと共振してきているというか、世のジョン・ハッセルにたいする関心がますます高まってきているように思われる。
 この絶妙なタイミングで、ハッセルのファースト・アルバム『Vernal Equinox』(1977)が、本人主宰の〈Ndeya〉からリイシューされることになった。CDでは30年ぶり、ヴァイナルにいたってはじつに42年ぶりのお目見えである。もちろん、オリジナルのマスターテープをもとにリマスタリングが施されている。日本盤CDにはハッセル本人とブライアン・イーノによるライナーノーツが付属。発売は3月20日。
 ちなみに、ハッセルがブルキナ・ファソの伝統音楽グループ=ファラフィーナと共作した1988年の『Flash Of The Spirit』も、この2月に〈Glitterbeat〉傘下の〈tak: til〉からリイシューされることになっている。合わせてチェックしておこう。

JON HASSELL

オリジナル・マスターテープからリマスタリングした
伝説的名盤『VERNAL EQUINOX』の再発が決定!
高音質CDで発売される国内盤CDは、ジョン・ハッセルとブライアン・イーノによるライナーノーツ訳付き!

ジョン・ハッセルのコンテンポラリー・ミュージック史における偉大さは、マイルス・デイヴィス、ジミ・ヘンドリックス、ジェームス・ブラウン、もしくはヴェルヴェット・アンダーグラウンドに匹敵する。 ──The Wire 誌

鬼才ジョン・ハッセルの記念すべきデビュー作にして、実験音楽史に残る大名盤『Vernal Equinox』が、 “春分” を意味するタイトル通り、3月20日(金)に自身のレーベル〈Ndeya〉から再発されることが決定! 音源は、当時のオリジナルのマスターテープからリマスタリングされたものとなり、CDは30年ぶり、アナログ盤は実に42年ぶりに商品化されることとなる。国内盤CDは、高音質UHQCD(Ultimate High Quality CD)仕様で、解説書に加え、ジョン・ハッセルとブライアン・イーノによるライナーノーツ訳も封入される。

Jon Hassell - Vernal Equinox (Remastered Reissue)
https://youtu.be/4Vv3snJ56MY

米ピッチフォークが選ぶ歴代最高のアンビエント・アルバム50枚にも選出されている傑作『Vernal Equinox』は、1977年に〈Lovely Music〉からリリースされたジョン・ハッセルにとって初の公式リリース作品である。同時に、西洋と非西洋の合体をコンセプトに、フィールド・レコーディング、エレクトリック・ジャズ、アンビエント、ワールド・ミュージックを融合させた「第四世界」シリーズの第一作目としても位置づけられた実験音楽史に残る超重要作。ハッセルのトレードマークでもある、音響信号処理された不可思議なトランペットのサウンドを主役に、ブラジルが誇る世界的パーカッション奏者、ナナ・ヴァスコンセロスによるパーカッションと、バイオフィードバック音楽のパイオニアとして知られる電子音楽家、デヴィッド・ローゼンブームによるシンセサイザーを含む至高のアンサンブルが、静謐で瞑想的で独創的な音響美を生み出している。

ジョン・ハッセルJON HASSELL
トランペット奏者、作曲家、コンセプチュアリストであるジョン・ハッセルは、前衛音楽と先鋭的な音楽の発展の歴史において、大きな功績を残してきた。後のカンのメンバーらとともに、ケルンのカール・ハインツ・シュトックハウゼンに師事した後、テリー・ライリーの『In C』(1968)のレコーディングに参加。ラ・モンテ・ヤングが結成したシアター・オブ・エターナル・ミュージックのメンバーにも名を連ね、パンディット・プラン・ナートと共に、キラニック・スタイルの歌唱を学ぶ。それらすべてが、彼の演奏と異なる音響信号処理を施したトランペットの音作りに影響を与えている。世界中の先住音楽に対する関心が高まった結果、「第四世界」のコンセプトを開発。様々なスタイルを融合させた音楽は、1970年代後半に『Vernal Equinox』や『Earthquake Island』などのアルバム作品で世に送り出された。またそれらの作品は『Possible Music』でコラボレートしているブライアン・イーノを魅了し、デヴィッド・バーンとブライアン・イーノによる名作『My Life In The Bush Of Ghosts』にも多大なる影響を与えている。そこからトーキング・ヘッズの『Remain In Light』やピーター・ガブリエル、デヴィッド・シルヴィアン、ビョークらの作品に参加。また多くの映画音楽や舞台音楽を手がけている。近年では、2018年にリリースされた『Listening To Pictures: Pentimento Volume One』が賞賛され、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーやフエコ・エス、ヴィジブル・クロークスら新世代の実験音楽家たちにも影響を与え続けている。

label: BEAT RECORDS / NDEYA
artist: JON HASSELL
title: Vernal Equinox
release: 2020/03/20 FRI ON SALE

高音質国内盤CD BRC-634 ¥2,500+tax
国内盤特典 高音質UHQCD / 解説書+ジョン・ハッセルとブライアン・イーノによる解説訳封入

[ご予約はこちら]
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10832

Tracklisting
01. Toucan Ocean
02. Viva Shona
03. Hex
04. Blues Nile
05. Vernal Equinox
06. Caracas Night September 11, 1975

Jockstrap - ele-king

 ジョックストラップといえば男性用の下着だけれど、そう名乗るロンドンのオルタナティヴ・ポップ・デュオが〈Warp〉のファミリーに加わることになった。年内になんらかのリリースを控えているとのことで、本日ファースト・シングル “Acid” がデジタルで公開されている。試聴・購入はこちらから……って、ぜんぜん「アシッド」じゃないやんけ! いや、でも良質なポップです。

 ヴォーカリストにしてヴァイオリニストでもあるジョージア・エラリー(Georgia Ellery)と、おそらくはエレクトロニクス担当だろうテイラー・スカイ(Taylor Skye)の2名からなるこのプロジェクトは、2018年の4月にミニ・アルバム『Love Is The Key To The City』で〈Kaya Kaya〉からデビューを飾ったばかりの新星だ。
 ふたりともロンドンのギルドホール音楽演劇学校──チェリストのジャクリーヌ・デュ・プレや歌手のダイドを輩出したことで有名──の出身で、同年9月にはディーン・ブラントのミックステープ『Soul On Fire』にミカ・レヴィとともに参加、10月にアイスランドのフェスティヴァルに出演した際には、ビョークがわざわざ彼らのギグを観にきたという。
 翌2019年にはデーモン・アルバーン率いるアフリカ・イクスプレスのショウに参加する一方、リミックス盤『Lost My Key In The Club』を発表、BBCに紹介記事が掲載され、同年ファースト・アルバムをリリースしたばかりのアリゾナのヒップホップ・トリオ、インジュリー・リザーヴ(アルバムではフレディ・ギブスJPEGMAFIA をフィーチャー)のUKツアーに同行してもいる。

 それぞれソロ活動も熱心で、エラリーのほうは昨年、アンダーワールドの「Drift」シリーズに参加するかたわら俳優としても活躍、コーンウォールの漁村で起こった観光客と地元民との間の緊張を描いた話題のドラマ映画『Bait』──同作は BAFTA(英国アカデミー賞)の「英国映画賞」にケン・ローチ『家族を想うとき』などと並んでノミネートされ、つい先週「英国デビュー賞」を勝ちとったばかり──に出演し、先月その映画のライヴでグウェノーとともにパフォーマンスを披露している。スカイのほうは昨年末、上述のインジュリー・リザーヴのアルバムをほぼまるごとリミックスした音源をユーチューブに公開している。
 というわけで今後の活躍が楽しみな新人の登場だけれども、名前が名前だけに、検索するときはひと工夫されたし。

JOCKSTRAP
オルタナ・ポップ・デュオ、ジョックストラップが〈WARP〉と契約!
シングル “ACID” を解禁。

ロンドンで最も明るく、奇妙なポップを作り 出すデュオ、Jockstrapを聴くべきだ。 ──Dazed

催眠性エキゾティカ」 ──The Guardian

ロンドンを拠点にしたオルタナ・ポップ・デュオ、Jockstrap (ジョックストラップ)が、英名門レー ベル〈Warp〉と契約を結んだことを発表し、移籍後第一弾となるシングル “Acid” を解禁した。

Jockstrap “Acid”
https://youtu.be/oOXho8yVaKk

ジョージア・エレリー、テイラー・スカイの2人による Jockstrap。2018年にデビュー・ミニ・アル バム『Love Is the Key to the City』を発表以降、リミックス・バージョン『Lost My Key In The❤️ Club❤️ 』を公開したことをはじめ、非常にエキサイティングな18ヶ月間を過ごしていた。
エレリーは英国インディペント映画賞を受賞(BIFA)、第73回英国アカデミー賞で新人賞を獲得したコー ンウォールの映画『BAIT』に出演しており、ウェールズの歌手グウェノー・ピペットとともに BFI で映画 のスコアのパフォーマンスを披露。一方スカイは独自にソロ・プロジェクトを進め、以前 Jockstrap とともにUKツアーを廻った仲間であるアリゾナのバンド Injury Reserve の最新作をリミックスした。エレリーは、昨年 Underworld が行なった実験的プロジェクト『DRIFT』にも参加している。

二人で参加したプロジェクトも多く、Dean Blunt の『Soul on Fire』(2018)では A$AP Rocky & Mica Levi らに並び参加アーティストとして名を連ね、昨年行われた blur / Gorillaz のデーモン・アルバーン率いる Africa Express のサーカステントで行われた1回限りの完売公演ライブの客演も果たしている。

本日解禁されたシングル “Acid” はスカイがプロデュースしており、バンドのリリースの中で初めて彼のヴォーカルをフィーチャーしている。エレリーはこう語る──「これは私の兄弟に向けた曲なの。広大で、活気があって、愛に満ちている。テイラーはこの美しい音世界をデザインしてくれた。8分の6拍子のバラードを彼に送ったら、予想外なものが返ってきたわ」。スカイはこう語る──「ジョージアが圧倒的で表情豊かな、柔らかい ピアノのデモを送ってくれたから、僕もベストを尽くしたよ。制作は本当に楽しかった。今までに作った中で、 一番元気づけられる歌だと思うよ。夏の雰囲気もあるしね」。

『Love Is Key to the City』と『Lost My Key In The❤️ Club❤️ 』が、Loud And Quiet、Dazed、Noisey、BBC、The Guardian、Apple など数々のメディアから賞賛され、強いサポートを受けた彼らが、2020年いよいよ世界に向けて活動を本格化させる。現在も新作を制作中であり、今年の後半には〈Warp〉からリリースされる予定だ。リリース予定を前に、初のライブやアンナ・メレディスのサポートなども決定しており、これからが何より楽しみなバンドと言えるだろう。

label: Warp Records
artist: Jockstrap
title: Acid
release date: 2020.02.04 TUE ON SALE

MOMENT 2 - ele-king

 日本のエレクトロニック・ミュージックを支えるレーベルのひとつ、〈PROGRESSIVE FOrM〉が新たにコンピレーション盤をリリースする。同コンピは2015年にリリースされた『MOMENTS』の第2弾にあたるもので、エレクトロニックありアコースティックありの多彩なサウンドを堪能することができるようだ。Anemone、Fugenn & The White Elephants、網守将平、VOQ (オルガノラウンジ)、LASTorder、M-Koda、fraqsea、Smany、Utae など多数のアーティストが参加しているとのことで、現在の同レーベルの方向性を確認する良いチャンスにもなるだろう。本日2月5日(水)から、Ototoy にて一週間先行で 24bit ハイレゾ先行配信が開始。詳細は下記より。

Various Artists "MOMENT 2" PFCD95 2020.2.12 release
https://www.progressiveform.com

発売日: 2020年2月12日(水曜日)
アーティスト: Various Artists (バリアスアーティスト)
タイトル: MOMENT 2 (モーメントツー)
発売元: PROGRESSIVE FOrM
販売元: ULTRA-VYBE, INC.
規格番号: PFCD95
価格(CD): 税抜本体価格¥2,000
収録曲数: 17曲
JAN: 4526180510567

◆Tracklisting

01. Anemone - Killing Me Softly
02. Yuichi Nagao - Harmonia feat. Makoto
03. Shohei Amimori – Kuzira with Satoko SHibata
04. Fugenn & The White Elephants - State Of Mind feat. KURO from iLU
05. VOQ - Ĉielarko
06. Satohyoh - Sukimakaze To Mikansei Na Uta
07. Fraqsea - Always With U
08. Super Magic Hats - Sleepless
09. Guitarsisyo - Redo feat. KURO from iLU
10. Abirdwhale - I Never Know
11. Nu:Gravity - Dorime
12. M-Koda - I Need Run Ahead feat. Mon
13. iLU - Today
14. Soejima Takuma - Coelacanth feat. Smany
15. LASTorder - Clockwork feat. Utae
16. Ninomiya Tatsuki - Regret
17. Kita Kouhei - I Can Not Remember Blue

◆【MOMENT 2】紹介文

時をかける調べ、永遠に続く響き

Fugenn & The White Elephants、網守将平、VOQ (オルガノラウンジ)、LASTorder、M-Koda、fraqsea、Smany、Utae をはじめとした多数アーティストが参加した必聴コンピ!

2015年12月にリリースされた『MOMENTS』の第二弾となる本作では、エレクトロニックやアコースティックをベースにした多様なサウンドにボーカルが溶け込み、それぞれの要素が美しく重なり合った至高の楽曲群より構成されています。
様々な季節やシチュエーションで多くの人が心地よくまた味わい深く堪能出来るアルバムです。

また本作収録17曲(約76分)中12曲にはオリジナルのミュージックビデオもあり、視覚の面からもお楽しみ頂ける内容になっています。

ハイ・クオリティーな音の魔法箱であり、多くの方に長く聴いて頂けるアルバムです。

Various ‎Artists - ele-king

 『Vanity Box』
幻の音源が一挙再発~動き続ける音の先端だけをとらえた記録

〈ヴァニティ・レコーズ〉ほど謎と伝説に満ちた日本のインディ・レーベルはないだろう。一昨年に亡くなった阿木譲氏が『ロック・マガジン』の刊行と並行して78〜81年に主宰した大阪のインディ・レーベル(おそらくJ-インディ界最古)であり、そこからは、フューがリード・ヴォーカルをとったアーント・サリー、エレクトロニック・ユニットのDADAやシンパシー・ナーヴァスなどの作品がリリースされていた……熱心なロック・マニアであっても、おそらくその程度が平均的な知識であり、カタログ中の数枚はきいたことがある……といったところではなかろうか。

 〈ヴァニティ〉からは4年弱の間に11枚のLP(うちひとつは2枚組オムニバス・アルバム)、3枚の7インチ・シングル盤、6本のカセット・テープがリリースされ、その他にもロック・マガジンの付録として世に出た12枚のソノシート(79〜82年)もあった。タイトル数としてはたいした数ではないが、なにしろ各タイトル(ソノシート以外)のプレス枚数が各300〜500枚であり、カセット作品に至っては数十本程度のコピー商品だったため、リアルタイムで全てを聴いていた者は極めて稀だったはずだ。
 もちろん私も例外ではない。最初に聴いたのはアーント・サリー『アーント・サリー』(79年)だったが、それは友人にコピーしてもらったカセットであり、現物を入手したのは84年、コジマ録音からの再発LPだった。80年代にはシンパシー・ナーヴァスやダダなどいくつかの中古盤やコピー・カセットを入手したが、全作品制覇はとても無理だった。6本のカセット作品に至っては、全く聴いたことがなかったし。つまり、名前だけは知っているけど全容は霧の中……そんなレーベルだったのだ。40年間も。

 しかし今、そうしたモヤモヤがやっと解消される時が来た。昨年10月の一挙再発によって。リリースされたのは『Vanity Box』、『Vanity Tapes』、『Musik』という三つの箱だ。内訳は以下のとおり。

■『Vanity Box』11CD  限定500セット
 (/)内はオリジナル盤の発売年と品番 
・DADA『浄 (Jyo)』(78年/vanity 0001)
・SAB『Crystallization』(78年/vanity 0002)
・Aunt Sally『Aunt Sally』(79年/vanity 0003)
・Tolerance『Anonym』(80年/vanity 0004)
・あがた森魚『乗物図鑑』 (80年/vanity 0005)
・R.N.A. Organism『R.N.A.O Meets P.O.P.O』(80年/vanity 0006)
・Sympathy Nervous『Sympathy Nervous』(80年/vanity 0007)
・BGM『Back Ground Music』(80年/vanity 0008)
・Normal Brain『Lady Maid』(81年/vanity 0009)
・Tolerance『Divin』(81年/vanity 0012)
・7インチ・シングル集
  Sympathy Nervous「Polaroid」(80年/VA-S1)
  Mad Tea Party「Hide And Seek」(80年/VA-S2)
  Perfect Mother「Youll No So Wit」(80年/VA-S3)
  の各3曲、計9曲を収録。

■『Musik』2CD  限定400セット
 81年に「vanity 0010-11」としてリリースされた2枚組オムニバス・アルバム『Music』をそのままCD化。13組のアーティストによる計19曲を収録。タイトルのスペル(『Musik』)とジャケット・デザインは変更。

■『Vanity Tapes』6CD  限定300セット
 81年にリリースされた6アーティストのカセットテープ作品計6本のCD化。当時は単品での発売(それぞれ数十本ずつ)と共に、『Limited Edition Vanity Records Box Set』としてセットでも販売された。
・Salaried Man Club『Gray Cross』(81年/VAT1)
・Kiilo Radical『Denki Noise Dance』(81年/VAT2)
・Den Sei Kwan『Pocket Planetaria』(81年/VAT3)
・Invivo『B.B.B.』(81年/VAT4)
・Wireless Sight『Endless Dark Dream』(81年/VAT5)
・Nishimura Alimoti『Shibou』(81年/VAT6)

 つまり今回、『ロック・マガジン』付録のソノシート音源以外の全〈ヴァニティ〉作品が計19枚のCDとして一挙に再発されたわけだ。全国の読者から送られてきたカセット音源(おそらくほとんどが宅録)である『Musik』と『Vanity Tapes』に対し、阿木譲がプロデュースしてちゃんとスタジオで録音された『Vanity Box』のLP音源の方がクオリティが高いのは当然だが、といって、すべてが秀作というわけでもなく……。
 まずは『Vanity Box』に収められた全作品を、オリジナル盤の発売順に聴いていこう。

DADA『浄 (Jyo)』

 〈ヴァニティ〉の栄えあるLP第1弾は、キーボード(シンセサイザー/ピアノ)とギターのデュオ・ユニット、ダダのデビュー作である。ダダは、キング・クリムゾンの影響を受けたプログレ・バンド、カリスマのギタリストだった泉陸奥彦と、同じくプログレ系バンド飢餓同盟で活動していた小西健司によって結成された。本作のジャケットでは、平安〜鎌倉時代に描かれた「餓鬼草紙」が流用され、「鬱雲鉢」や「六神通」といった収録曲もすべて「餓鬼草紙」から着想されている。「イーノに捧ぐ」なるクレジットどおり、サウンド全体の土台にはアンビエント・ミュージックがあり、そこに彼らのルーツであるプログレが絡む、といった感じ。あるいは、ファー・イースト・ファミリー・バンド×ポポル・ヴーとでも言うか。そのサウンド・マナーは、当時の阿木譲の志向そのものだったと思われる。
 『ロック・マガジン』15号の編集後記に、阿木のこんな記述がある。「この2年、ずっと僕の心の中で暖め続けていた自身のレーベルである〈ヴァニティ・レコード〉も、いよいよ外に向けて活動を開始する時が来たようだ。第一弾として6月25日発売のダダのレコーディングのため一日中スタジオに籠る。泉陸奥彦君のギターを前面に押し出し、それに小西健司君のエレクトロニクス機器とピアノで作り出した簡素で静謐な音世界は心が洗われる」。『ロック・マガジン』創刊が76年2月なので、つまり阿木は雑誌創刊時からレコード制作を計画し、その第一号としてダダを出そうと考えていたわけだ。
 ちなみに、79年の『ロック・マガジン』26号では、「Vanity Records は無名だが才能をもったアーティストにレコード製作という機会を活用し、このレーベルを足場により広範囲に活動できることを目的として発足された」という文言があり、続いて、レーベルの制作方針として以下の4項目を挙げつつ、カセットテープでの応募も呼びかけている。
①エレクトロニクス・ミュージック
②“家具としての音楽”シリーズ(現代音楽)
③歌謡曲業界への進出
④実験的な新しいヴィジョンを持つ音楽(パンク、ニューウェイヴ、フリー・ミュージック、現代音楽等)
 ダダのデビュー作は、この中の特に①②に該当していたと言える。実は私は、本作のリリース直後(78年10月)に彼らのライヴを観たことがある。その時点ではまだアルバムをは聴いてなかったが、プログレ・マニアの間では「〈ヴァニティ〉が送り出した関西の新しいシンセ・バンド」としてけっこう話題になっていた。ライヴの印象は“稚拙なタンジェリン・ドリーム”といった感じで、正直退屈したのだが、その後にLPを聴いた時は、かなり楽しめた。78年の時点では、アルバムのコンセプトをライヴで十分に表現できるまでにはなっていなかったということだろう。彼らはその後メジャーからもアルバムを出し、バンド解散後も個別に活動を続けてきたこと(小西はP-MODEL他で、泉はゲーム音楽作曲家として活躍)は言うまでもない。

SAB『Crystallization』

 私はYoutubeが登場するまでSABの音を一切聴いたことがなかったし、どういう人物なのかも知らなかった。いや、今でも「〈ヴァニティ〉初期に、レーベルの専属エンジニア的役割を担っていた若者」ということぐらいしか知らない。今回の『Vanity Box』リリースに際して、発売元の〈きょうレコーズ〉は各ミュージシャンに再発許可及び版権返却の連絡をとったが、結局 SABとトレランス(後述)だけは連絡がつかなかった(行方不明)という。昔も今も謎の人物だ。一部でシタールやフルートなどのゲストも参加しているが、基本的には、当時19才だったという SABがシンセサイザー、ピアノ、ギターなど様々な楽器を多重録音したワンマン・ワーク。水音など自然音を混ぜるなどニューエイジ感覚を先取りしたエレクトロニク・サウンドはオール・レーベルのコズミック・セッションや70年代後半のクラスターにも通じるし、全体のバロッキーな迷宮感と瞑想性はちょっとマジカル・パワー・マコを思い出させたりもする。SABは本作発表後、インドの神秘思想家バグワン・シュリ・ラジニーシに傾倒し、間もなく音楽の世界から消えたというが、本作の世界は現在のヤソスやアリエル・カルマ、ララージなどとも確実につながっている。

アーント・サリー『アーント・サリー』

 本作に関しては、ここで改めて言及する必要もないと思う。シンガーのフューやギタリストの Bikke 等を擁した神話的バンドによる唯一のスタジオ録音アルバム。これこそは〈ヴァニティ〉の象徴であり、唯一、広く聴き継がれてきた〈ヴァニティ〉作品だろう。サラヴァ・レーベルにおけるブリジット・フォンテーヌ『ラジオのように』みたいなものか。本作を初めて聴いた時の衝撃は今も忘れがたい。当時19才だったフューはアンチ・ロック、アンチ・ヒッピーを身上としていたとかつて私に語ったが、確かに長髪ナマステ野郎もゲバ棒全共闘も一瞬に火炎放射器で焼き尽くしてしまうような凍りつくニヒリズムに満ちている。ジョン・ライドンがジュリエット・グレコに憑依したようなフュー(彼女は神戸のカトリック系超名門女子校出身)の歌声がカトリック的原罪意識と反カトリック的逸脱熱の間で揺れ動く様はなんともエロティックだ。
 以下の発言は、20年ほど前におこなったフューへのインタヴューからの抜粋。「突然ロック・マガジンのオフィスに行って、阿木さんにカセットを聴かせた。何の根拠もなく、なぜか〈ヴァニティ〉から絶対にアルバムを出せると思ってたんですよ。録音は一日でやりました。阿木さんは自分が元々歌手だったせいもあるんだろうけど、スタジオに入ってきて、お手本を示す感じで歌い出してね。勘弁してほしかったですよ、ほんと」。阿木譲の歌う怨念と自己愛いっぱいの“醒めた火事場で”も聴いてみたいけど。

トレランス『Anonym』

 ジャケ裏に書かれた文言「dedicated to the quiet men from a tiny girl」を元にナース・ウィズ・ウーンドが80年の2ndアルバムに『To The Quiet Men From A Tiny Girl』なるタイトルを付け、更に、かの《Nurse With Wound List》でも本作がリストアップされていた。といった事情もあって、海外のマニアの間では昔から人気が高い。日本では昔も今も知名度は低いけど、〈ヴァニティ〉から2枚のフル・アルバムを出した唯一のバンドだった。つまり、阿木譲は高く評価していたということだろう。トレランスは関西ではなく東京で活動していた丹下順子のソロ・プロジェクトで、2枚とも吉川マサミがギター他でサポートしている。シンセサイザー他によるノイジーな電子音とピアノ、語り風ヴォイスなどを駆使してモノトーンのキャンヴァス上に描かれた抽象画といった感じ。その手法と冷ややかなエロティシズムは、まさにナース・ウィズ・ウーンドやSPKなど当時の海外のノイズ・コラージュ・ワーク勢とも地続きだ。

あがた森魚『乗物図鑑』

 〈ヴァニティ〉のLP群中で最大の異色作ではあるが、前述したレーベル方針の③「歌謡曲業界への進出」を念頭に置きつつ①「エレクトロニクス・ミュージック」、④「実験的な新しいヴィジョンを持つ音楽」も取り込んでいるという点で、〈ヴァニティ〉ならではの作品だとも言える。“赤色エレジー”等のレトロ・フォークで知られたあがたと阿木は以前からの知り合いだったようで、制作に際し阿木は「コンセプトはテクノ・ポップで、泣きの曲はなし」と注文をつけたという(音楽史的には一応、この「テクノ・ポップ」なる新タームは阿木が考案したということになっている)。録音は、シンセサイザーやギターなど様々な演奏とアレンジを手掛けた前述のSABと、後述するノーマル・ブレインの藤本由紀夫が中心になっておこなわれ、向井千恵、INU の北田昌宏、コンチネンタル・キッズのしのやん(篠田純)、ウルトラ・ビデのTaiqui などがサポート。また、ジョイ・ディヴィジョン風の名曲“サブマリン”ではコーラスでフューが参加し、“エアプレイン”ではあがたが敬愛する稲垣足穂の肉声(ラジオでの対談音源)をコラージュ使用している。多士済々のサポート陣による音作りは、〈ヴァニティ〉のカタログ中、いやあがたの全作品中でも際立って多彩かつ実験的であり、また、翌81年から始動するあがた版テクノ・ポップ・ユニット、ヴァージンVSヘの助走となったという点でも非常に重要な作品だ。しかし、当時まだフォノグラムとのアーティスト契約が切れてない時期だったため、発売後間もなく回収され市場から姿を消したのだった。


R.N.A. Organism『R.N.A.O Meets P.O.P.O』

 80年代J-ニューウェイヴ・シーンで異彩を放った佐藤薫のEP-4の前身プロジェクト。ロンドンからの海外郵便を偽装して〈ヴァニティ〉に送られてきたカセット音源を元に制作されたという。シンセやリズム・マシーン等によるビートフルなエレクトロニク・サウンドとコラージュ・ワークはキャバレー・ヴォルテールに対する大阪からの返答といった感じか。メンバー(3人)クレジットの匿名性やジャケット・デザインのミニマリズム等々、高度にデザインされた総合的戦略性も佐藤薫ならでは。

Sympathy Nervous『Sympathy Nervous』

 90年代以降、ベルギー〈KKレコーズ〉傘下の〈Nova Zembla〉や米〈Minimal Wave〉等から多くのテクノ系作品を発表し、晩年にはテルミン制作工房も運営していた新沼好文(2014年逝去)によるソロ・プロジェクト。このデビュー・アルバムも2018年に〈Minimal Wave〉からLP再発されている。「U.C.G.」と名づけられた自作のコンピュータ・システムとコルグのシンセサイザーを駆使した手作り感満載のエレクトロニク・サウンドに、サポートの千崎達也がノイジーなエレキ・ギターを加えるというスタイル。諧謔性と珍味溢れるノイズ・インダストリアル指向の分裂症的テクノ・ポップは、後のマックス・ツンドラやスクエアプッシャーなどにもつながっているように見える。

BGM『Back Ground Music』

 電子音楽家/プロデューサー/DJとして現在も第一線で活躍している白石隆之が初めて世に問うた作品。シンセサイザー/ギター/ヴォーカル担当の白石(当時17才の高校生)を中心とする4人組(白石以外はベイス、キーボード、ドラム)。無機質な電子ノイズをやたらとふりまく荒削りでファンキーなガレージ・ロック・サウンドは、彼らがア・サーテン・レイシオやP.I.L、あるいはキャバレー・ヴォルテールといった当時のポスト・パンク〜インダストリアル・シーンから強く影響されていたことを物語っている。演奏力はないし完成度も高くないが、日本におけるロック受容史の記録としては貴重な1枚だと思う。今回の『Vanity Box』リリースと同時期に〈Mule Musiq〉からも単品でLP再発されたが、それまでオリジナル盤は数万円で取り引きされるほどの人気盤だったようだ。

Normal Brain『Lady Maid』

 サウンド・アートのパフォーマーとして現在も世界的に活躍している藤本由紀夫のソロ・プロジェクトによる唯一のアルバム。タイトルのネタはもちろんマルセル・デュシャンの「レディメイド」。デュシャンやジョン・ケイジへの傾倒/研究を通し、オブジェとしての音/音響にこだわり続けてきた藤本の視点と姿勢は、既にこの作品でも明確に示されている。クラフトワークをパクった感じのオープニング・ナンバーからコンラート・シュニッツラー流「ディスクリート・ミュージック」風のラスト曲(B面全体を占める)まで様々なタイプのエレクトロニク・サウンドが聴けるが、いずれもドライ&ストレインジな感覚が横溢しており、デイヴィッド・カニンガム(フライング・リザーズ)の日本の兄弟といった趣。なお本作も、『Vanity Box』に先駆けてスイスのレーベル〈We Release Whatever The Fuck We Want Records〉から単品再発されている。

Tolerance『Divin』

 トレランスは前述どおり、〈ヴァニティ〉から2枚のLPを発表した唯一のユニットであり、これはその2作目にして〈ヴァニティ〉の掉尾を飾ったアルバムでもある。今回もまたほとんどメロディのない抽象的エレクトロニク・サウンドだが、溢れ出るイメージに沿って暗闇でやみくもにデッサンしていたような1作目に対し、音作りのアイデアがかなり絞られており、その分聴きやすい。多くの曲でドラム・マシーンを多用してリズミックなアプロウチをとり、テクノ・ポップの時代性を実感させる(けっしてポップじゃない)が、一方でテープの逆回転とパンニングによるファウスト〜スロッビング・グリッスルのような凶悪チューンもあったり。この孤絶し荒涼とした風景ゆえか、阿木譲は〈ヴァニティ〉のカタログ中で本作を最も気に入っていたという。

『7インチ・シングル集』

 同じ80年にアルバムも出したシンパシー・ナーヴァスの他、マッド・ティー・パーティ、パーフェクト・マザーの計3バンドによるシングル盤3枚(計9曲)を収録。マッド・ティー・パーティとパーフェクト・マザーは、当時メルツバウの初期音源など実験的カセット作品をたくさんリリースしていた東京のインディ・レーベル/総合アート集団《イーレム》の関係グループだ。シンパシー・ナーヴァスはアルバム同様、自作コンピューター制御されたエレクトロニク・サウンドだが、アルバムに先駆けてリリースされたこのシングル盤の音作りは、よりプリミティヴ。吉祥寺マイナーなどにも出ていたというガールズ・トリオのマッド・ティー・パーティは、ちょっとフリクションを想起させるA面の表題曲以下、全体的にダブ処理された音響実験が面白い。パーフェクト・マザーは《イーレム》の中心人物だった上田雅寛によるソロ・プロジェクトで、計4人で制作されたこのシングル盤には、後にTACOにも参加する“新人類”野々村文宏もテープ・エフェクトで参加している。リズム・ボックスとシーケンサーによる不気味な律動、ノイジーな楽器音と言葉/声のコラージュ、初期ゲーム音楽風のチープな電子音など様々なアイデアがランダムに詰め込まれた若さいっぱいの強欲宅録集。

 『Musik』(限定400セット)と『Vanity Tapes』(限定300セット)は前述どおり、〈ヴァニティ〉に全国から送られてきたカセット音源からの選集。
 2枚組CDセット『Musik』(オリジナルは2LP『Music』)に収録されたのは、Pessimist、Un Able Mirror、Mr、Adode/Cathode、Kiiro Radical、Tokyo、Daily Expression、Plazma Music、Nose、New York、Arbeit、Isolation、Necter Low の13組による計19曲。
 『Vanity Tapes』は、カセットでリリースされた6作品のCD6枚組セットで、収録アーティストと作品名は前述どおり。

 『Musik』と『Vanity Tapes』を全部聴いて、個人的に耳を惹かれたのは、電子ノイズの新たな可能性を探ったKiiro Radical、BCレモンズ(後にCDも出すサイケ・ポップ・女子バンド)の前身であるPlazma Musicによる和製スーサイド・ポップ、ピアノとメトロノームとラジオ・ノイズだけを用いた Wireless Sight によるノイズ・アンビエント・ワークス、ギターのドローン・ノイズとドイツ語の語りをコラージュしたArbeit(これだけは日本人ではなくドイツ人画家アヒム・デュホウ。彼は、ラ・デュッセルドルフのロゴ・デザインや『シンパシー・ナーヴァス』のジャケット写真も手掛けていた)といったところだろうか。また、Tokyo は数年後にハイ・ライズ等で有名になるギタリスト成田宗弘のバンド、New York「1976」は阿木譲本人によるニューヨークでのフィールド録音である。当然ながら玉石混交だが、機材の低価格化によって誰でも手軽に宅録できるようになったDIY時代ならではの奔放さと音楽的アイデアの多様性は間違いなく堪能できる貴重な記録だ。音質の悪さ(今回の再発に際し、すべてデジタル・リマスタリングされているが、元が元だし)も、ここでは逆にあの時代の空気感とリアリティを呼び起こしてくれる。


 以上、今回リリースされた三つのCDセットを駆け足で紹介してみた。それぞれが限定発売であり、しかもスイスのレーベル〈We Release Whatever The Fuck We Want Records〉が大量に予約購入したこともあり、実は10月のリリース時点で既にほとんど売り切れ状態だったという。つまり、ここで紹介しても、なかなか入手困難であることは最初から了解ずみだったのだが、本文中でも随時触れたとおり、今回各アーティストに版権が戻されたため、個別に他レーベルから単品発売されている(もしくはこれから発売される)作品も少なくないし、ネットでもある程度は聴けるので、ご了承いただきたい。
 ちなみに、〈ヴァニティ〉では当時、ヒカシューやノイズ(工藤冬里+大村礼子)、ウルトラ・ビデなどのリリース計画もあったようだ。

 最後に阿木譲の言葉を紹介しておきたい。篠原章氏の著書『日本ロック雑誌クロニクル』(初出は『クイック・ジャパン』Vol.34、34)から。『ロック・マガジン』での活動に関する発言だが、〈ヴァニティ〉に関してもそのまま当てはまると思うので。

「関心のあるのは先のことだけですね。留まるのがイヤなんですね。商売のことを考えるとどこかで留まったほうがいいんだけど、僕はやはり音楽の先端というかエッジに一番興味があって。もうそればっかり」
 「メジャーになってくると、もう僕別のところにいるんです。僕の役割は先端のもの、運動中のわけのわからない、まだ意味も判明していないものを、形にしていくことなんですね。音楽に普遍的なものなんかないっていう考えだから。──(略)──先端のことは、だいたい最初は僕がやったんじゃないかと自負していますが、評論家として確立したかっていうと、ちょっと疑問ですけどね」

日本語ラップ最前線 - ele-king

 端的に、いま日本のヒップホップはどうなっているのか? ヴァイナルやカセットテープ、CDといったフィジカルな形態はもちろんのこと、配信での販売や YouTube のような動画共有サイトまで含めると、とてつもない数の音楽たちが日々リリースされつづけている。去る2019年は舐達麻や釈迦坊主、Tohji らの名をいろんな人の口から頻繁に聞かされたけれど、若手だけでなくヴェテランたちもまた精力的に活動を繰り広げている。さまざまなラップがあり、さまざまなビートがある。進化と細分化を重ねる現在の日本のヒップホップの状況について、吉田雅史と二木信のふたりに語りあってもらった。

王道なき時代

トラップやマンブル・ラップのグローバルな普及で、歌詞の意味内容の理解は別として、単純に音楽としてラップ楽曲を楽しむ流れに拍車がかかっている感がありますよね。(吉田)

いまヒップホップは海外でも日本でも、フィジカルでもストリーミングでも、次々と新しいものが出てきていますが、初心者はいったい何から聴いたらいいのでしょう?

二木:いきなりかなり難しい質問ですねぇ……、では、すこし長くなりますが、まず国内のヒップホップについて大掴みで大局的な話をしますね。例えば、PUNPEE が星野源の “さらしもの” に客演参加、さらにNHKの『おげんさんといっしょに』に出演して日本のポップスの “ど真ん中” に現代のラップとブレイクビーツを持ち込んだ。それは画期的というよりも、2人のキャラクターもありますが、ナチュラルに実現しているように見えるのが、いまの時代の日本のラップとポップの成熟を示す出来事だなと感じました。一方でストリート系の DOBERMAN INFINITY や AK-69 らも作品を発表して変わらず存在感を示している。Creepy Nuts は作品の発表と並行してラジオ・パーソナリティとしても大活躍で、お笑いやアイドルの世界と接点をもって独自の立ち位置を確立している。R‐指定は般若から引き継いで、『フリースタイルダンジョン』の二代目ラスボスにもなった。他方で、2019年は自分のまとまった作品は発表しませんでしたけど、全国各地をライヴで回りつづける沖縄・那覇の唾奇のようなラッパーがいる。唾奇は新しい世代のインディ・シーンの象徴的存在だと思います。テレビやラジオで目立たっていなくても、全国各地のライヴハウスやクラブでのステージで腕を磨いて着実にファンを増やしていますね。彼のライヴは本当に素晴らしいのでぜひ観てほしいです。
 視点をすこしうつせば、鎮座DOPENESS と環ROY が U-zhaan、そして坂本龍一と “エナジー風呂 (Energy Flo)” を発表しました。あの教授と、です。曲名から察することができるように、“energy flow” を U-zhaan がタブラでアレンジしたラップ・ミュージック。シンプルに良い曲ですし、日本のヒップホップ史という観点でみると、ラップしているのは細野晴臣ですが、1981年にこの国の初期のラップである “RAP PHENOMENA/ラップ現象” を発表したYMOの教授と後続の世代との共作でもある。RHYMESTER は岡村靖幸と「岡村靖幸さらにライムスター」として “マクガフィン” を共作した。RHYMESTER が岡村靖幸とコラボすることそのものが彼らの日本のファンクの先駆者へのリスペクトの表明としてうつる。それら2曲は、そういう “ヒップホップ史” のような視点で見ても興味深い。それでもこれらは氷山の一角ですね。サブスクの浸透も大きいですし、単純にリリース量も尋常ではない。仮に『フリースタイルダンジョン』放送開始(2015年9月)をひとつの起点とすると、そこからのここ約4年ちょっとは、日本のヒップホップ史においても急激な変化の時代として記憶されるはずです。いろんな出来事が同時多発的に起きている。そういった数多くのアーティストの注目に値する楽曲や現象や動向を念頭に置いた上で、僕と吉田さんが2019年を振り返り、2020年に突入したいま、国内のヒップホップ、ラップについて語るといったときに、何に着眼するかということになりますね。どうでしょうか?

星野源 “さらしもの (feat. PUNPEE)”

吉田:そこでひとつの着眼点として、やはりサウンド面が挙げられると思うんですよね。ちょっとこれも長くなりそうですが(笑)、2019年の日本のヒップホップもUSと同様にざっくり、ブーム・バップ的なものとトラップ的なものの違いがまずは目に入ってきますよね。見立てとしては、前者については90年代からどうやって日本語で韻を踏むかという格闘の歴史があって、いまもその延長線上に括弧付きの「日本語ラップの歴史」的なものが続いていると。そのフィールドにトラップ的なものが新たに加わってきたとする。2019年の日本語のトラップ的な表現においては、もはやかつてのように日本語がフィットするのかしないのか、というような議論が出てくる段階にはないですよね。これはひとつには今日ラップ・ミュージックがいかにグローバルな言語となっているかということを示しているし、トラップの BPM70 にオンビートで言葉を置いていくスタイルが日本語ともいかに相性が良いかということも示していると思います。例えば LEX の『!!!』にしても、OZworld の『OZWOLRD』にしても、英語にちゃんぽんされている日本語含め、海外の人が聞いても、この曲って英語も聞こえてくるけど別の言語も少し入ってるよね、くらいの感覚で聞けるというか。トラップやマンブル・ラップのグローバルな普及で、歌詞の意味内容の理解は別として、単純に音楽としてラップ楽曲を楽しむ流れに拍車がかかっている感がありますよね。そもそも日本は90年代以前から必ずしも英語リリックの意味を理解することなしにUSヒップホップを楽しんできたという意味でも、ヒップホップ/ラップ・ミュージック先進国と言えると思いますが。

二木:ビートに関してはどうですか?

吉田:ビート面で言えば、先ほど挙げた LEX や OZworld がUSメインストリーム的な音で勝負する一方、トラップと一概にいっても、サウンドには相当の多様性があるわけですよね。USメインストリームのビートといったときに思い出すのが、2000年前後のティンバランドやネプチューンズの当時日本では「チキチキ」と呼ばれることもあったサウスのサウンド。それらがチャートを席巻したとき違和感を覚えた人たちがいた理由のひとつは、そのビートが非常にキャッチーで商業的な楽曲やアーティストと結びついていた点だと思うんです。当時のそういった新しいビートのモードを伴う商業化への反発を最近のトラップへの違和感と重ねる見方があるのはすごく理解できる。でもトラップというプラットフォームが面白いのは、かつてのホラーコアをルーツとするようなフロリダ勢のダークで激しく歪んだ表現や、トラップコアやトラップメタルと呼ばれるエクストリームなサウンドも同時に生み出していることです。例えば Tohji 『Angel』では MURASAKI BEATZ がアルバムのゴシックなムードと違わずダークで叙情的かつ歪んだビートをぶつけているし、Jin Dogg の『MAD JAKE』ではキラーチューン “黙(SHUT UP)” に象徴的なようにタイプビートを活用しながらトラップコアを展開しているし、MonyHorse の『TBOA Journey』の3chのビートも、メロウ寄りもダーク寄りもシンプルながら耳に残る異形のループを追求しているように聞こえる。

Jin Dogg “黙(SHUT UP)”

商業化への反発を最近のトラップへの違和感と重ねる見方があるのはすごく理解できる。でもトラップというプラットフォームが面白いのは、ダークで激しく歪んだ表現やエクストリームなサウンドも同時に生み出していることです。(吉田)

二木:MonyHorse といえば、MONYPETZJNKMN の “Gimme Da Dope” はやたら気持ち良い曲でした。これぞ快楽至上主義といった感じです。

吉田:一方でトラップ的なもの以外ではどうだったかというと、全編ビートを担当する Illmore がブーム・バップを再解釈する Buppon の『I’ll』、シングルですけど相変わらずぶっ飛んだ Ramza と Campanella の “Douglas fir”、全編アトモスフェリックなテクノ・サウンドの Hiyadam の『Antwerp Juggle』、田我流の『Ride On Time』も自身のビート・メイキングが満を持してすごく面白いところに到達したし、かと思えば釈迦坊主の『HEISEI』もそれこそカテゴライズを拒絶するようなサウンドで、少し前ならエレクトロニカと呼ばれたかもしれない。そういう状況だから MEGA-G のブーム・バップが超目立つわけですよね。そこには英語を内面化するトラップとは違って、これまでの日本語におけるライミングの格闘の蓄積をベースにさらにそれを突き詰めようとする、いわば良い意味でガラパゴス的な日本語ラップが追求してきた日本語のライムが乗る。例えば THA BLUE HERB、ZORN、田我流、舐達麻らが、それぞれブーム・バップを基軸にしたビートで、それぞれの日本語表現を追求する作品をリリースした。こうやってみると、王道と言われるようなサウンドは存在しないといっても過言じゃない。というか、日本のヒップホップが王道なき時代に突入していることを確認させられた2019年ですよね。

Campanella “Douglas fir (Prod by Ramza)”

二木:王道なき時代だからこそ、Campanella と Ramza の曲とかはもっと騒がれてほしい。2019年のこの国で、あえて言えば、菊地成孔の言う “ヒップホップはジャズの孫” をもっとも先鋭的に提示した曲のひとつではないでしょうか。ちなみにこの曲のMVを撮っている土屋貴史は、先日公開され話題となっている SEEDA の伝記映画『花と雨』を撮った監督でもあります。ところで、吉田さんがおっしゃった “ガラパゴス的な日本語ラップ” の追求で忘れてならないのは、Creepy Nuts ですよね。R‐指定がライターの高木 “JET” 晋一郎を聞き手にして日本語ラップについて語りまくった『Rの異常な愛情──或る男の日本語ラップについての妄想──』(白夜書房)がとても面白い。この本の Mummy‐D との対談を読むと、R‐指定の “日本人のヒップホップ” へのこだわりが内包するアンビヴァレントな感情が彼のラップのアプローチや方法論に直結しているのがわかる。『よふかしのうた』収録の表題曲は、「オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアー」のテーマソングということもあると思いますが、フックのメロディには “ラップ歌謡” 的な側面がある。一方 “生業” ではトラップでセルフ・ボースティングを展開するわけですが、吉田さんの言葉を借りれば、これぞ “日本語におけるライミングの格闘の蓄積” の賜物。2019年時点でその最高峰のひとつと言って間違いないと思います。彼の、まさに異常ともいえる日本語ラップの知識量を考えれば、いろんな引用やオマージュが散りばめられていると推測できますが、ひとつ、イントロの「アカペラでも聴けるラップだぜ」というリリックは Maccho の「アカペラで聴けねえラップじゃねえぜ」(“24 Bars To Kill”)のオマージュだと思われます。
 そして、“日本人のヒップホップ” という課題にたいして、R‐指定とはまた異なる角度からアプローチをしていたのが、2018年2月に惜しくもこの世を去った FEBB ではないでしょうか。去年、GRADIS NICE & YOUNG MAS (FEBB)名義の『SUPREME SEASON 1.5』が出ています。この作品は、『L.O.C -Talkin' About Money-』(2017)に連なる作品です。『L.O.C』に収録された “THE FIRST” で FEBB は日本語を英語の発音に近づけたり、英語を日本語の発音に近づけるようにするのではなく、ふたつの言語を同居させて、おのおのの発音の特性を素直に活かして明瞭にフロウしている。言い換えると、ガラパゴス的な日本語ラップと英語を内面化したラップを1曲のなかで共存させている。彼がこの曲で歌う「引けを取らない日本人のヒップホップ」を体現したクラシックだと思います。

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ブーム・バップとトラップ

いまでもブーム・バップとトラップはどこかで対立するものとして語られたり、捉えられがちだけど、そういう二元論で思考していると聴き逃してしまうものがあまりに多くてもったいない。(二木)

吉田:USでは、ミーゴスやフューチャーのマンブル的な楽曲に加えて、毎年新人の注目ラッパーを紹介する XXL のフレッシュマンのサイファーの2016年版に、21サヴェージ、コダック・ブラック、リル・ウーズィ・バートらが登場してそのスキルが疑問視されたりした。5人もいてまともなのはデンゼル・カリーしかいないじゃないか!って(笑)。それでどうしても「マンブル・ラップ対インテリジェント・ラップ」のような図式が生まれて、ベテランのスキルフルなラッパーがマンブルを否定するというような対立構造になっていますよね。日本でも、両者が完全に異質なもの、相容れないもののように見えている感がある。でも、USでも、そもそもクリエイティヴな表現を追求しているアーティストは、いろんなスタイルでラップしたいと思っているはずですよね。エミネムの『Kamikaze』(2018)のように、トラップという文法に対して自分ならどうアンサーするかっていうのかっていうのがモチベーションになる。例えばケンドリックもリッチ・ザ・キッドとの “New Freezer” (2018)で俺だったらこう乗りこなすぜって感じの圧巻のフロウを披露しているし、フレディ・ギブスなんかも『Shadow of a Doubt』(2015)の頃から一枚のアルバムのなかにマーダ・ビーツとの曲もありつつ、ボブ・ジェームスネタのブーンバップでブラック・ソートと一緒にラップしちゃう(笑)。J・コールにしても、あからさまなトラップらしいビートはなくても、BPMがトラップ並みに遅い曲を挿入してブーム・バップ曲とのメリハリをつけている。BPM 90や100のブーム・バップでフロウするのと、60や70のトラップビートで三連符や32分音符でやるのはルールの違うゲームみたいなものだから、アーティストとしては自分でも試したくなるだろうと。

二木:そのようなルールの違いを認識していたからこそ、GRADIS NICE は “THE FIRST” について「トラップについていけない人たちのためだったりもする」とCDジャーナルの小野田雄のインタヴューで発言したのだと思います。FEBB とも共有されていたその目的意識のもとに作られたのが、『L.O.C』、そして『SUPREME SEASON 1.5』だったと考えられます。つまり、ブーム・バップとトラップというある種の “分断” をこえる、あるいはビートにしてもラップにしても両者の良さを融合してオリジナルのヒップホップを作る、そういった明確な目的のもとに作られているのではないか。後者では “THE FIRST” とは異なり、たとえば “skinny” という曲では日本語と英語の切り替えを短い尺のなかでより頻繁にくり返して、ガラパゴス的な日本語ラップと英語を内面化したラップを融合させようとするような高度なフロウを披露してもいる。そのように FEBB はとても短い期間のなかでいろんな試みを凄まじいスピードでやっていた。この連作からは、FEBB と GRADIS NICE の高い志が強く感じ取れます。

吉田:ブルックリンのアンダーアチーヴァーズやフラットブッシュ・ゾンビーズなんかも、特に初期の音源はトラップと同様の遅いBPMでブーム・バップを再解釈して、マンブル・ラップではないスキルを見せることがひとつの特徴になっている。プロ・エラとも組んでいる彼らは、ブーム・バップ・ルネッサンスを単に原点回帰だけではなくて、トラップとのハイブリッドという方法論で表現しようとしているところがあると思います。だから、FEBB が志向していたことと、共通する部分もあるんじゃないですかね。

二木:たしかに。僕もそう思います。たとえば、それこそプロ・エラのジョーイ・バッドアスも参加したスモーク・DZAの『Not for Sale』(2018)というアルバムもそういう文脈で聴くとより楽しめる作品ですね。また、さきほど名前が出た MEGA-G は素晴らしいソロ・アルバム『Re:BOOT』収録の “808 is coming” で彼なりのユニークなトラップ解釈を披露している。ビートは I-DeA です。タイトルが暗示していますが、オールドスクール・ヒップホップとトラップを直結させる試みですね。ぜひ聴いてほしいです。だから、これは自戒も込めて語りますが、いまでもブーム・バップとトラップはどこかで対立するものとして語られたり、捉えられがちだけど、そういう二元論で思考していると聴き逃してしまうものがあまりに多くてもったいない。さらに、それによって世代間対立みたいなものまで不必要に煽られてしまうのはネガティヴですよね。そういう定着してしまったジャンル分けや言語を使うことで耳の自由が奪われるときがある。そういう分節化はとても便利だし、もちろんこの対談でもそういう分節化に頼って語らざるを得ない側面はあります。ただ、ときにそれによって失うものがあったり、分断させられてしまう現実の関係があるというのは常に注意しておきたいなと。

吉田:日本でもそういう表面的な二元論とは別に、現場では様々な面でクロスオーヴァーが見られるのかなと。たとえば Red Bull の「RASEN」のフリースタイル。1回目は LEX、SANTAWORLDVIEW、荘子it (Dos Monos)、 Taeyoung Boy で、2回目は Daichi Yamamoto、釈迦坊主、dodo、Tohji。両方とも素晴らしいクオリティとセッションの緊張感で無限に繰り返し見ていられるんですが(笑)、この中だと荘子it や Daichi Yamamoto、dodo が日本語ラップ的なフロウをしているように聞こえる。確かに荘子it はエイサップ・ロッキーではなくて元〈デフ・ジャックス〉のエイサップ・ロックが好きだそうで、彼のインテレクチュアルなスタイルに照らすと頷けるけれど、SANTA はいわゆるトラップよりもフラットブッシュ・ゾンビーズとか、スキー・マスク・ザ・スランプ・ゴッド、レイダー・クランへのシンパシーを口にしていたり、釈迦坊主は志人から影響を受けたそうなんです。彼らのようにオリジナリティが際立っているアーティストたちは、一見全然別のことをやっているように見えるけど、結局はそんな風にエッジィな表現に惹かれていて、互いにコネクトするんだなと。だから、分断して考えたくなるのは外側だけなんだと改めて感じました。こういう風なメディアでの語りにしても、ある程度ジャンル分けしないと整理できないし、大きな潮流も取り出せないけれど、自分の好みはどのジャンルなのか線を引きやすくなってしまう弊害もありますね。あるサブジャンルを代表するいくつかのアーティストが肌に合わなかったときに、そのサブジャンル全体を否定的に見てしまうことのもったいなさがある。

LEX/ SANTAWORLDVIEW/ 荘子it/ Taeyoung Boy – RASEN

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ラップ~ビート~音響、それぞれの変質

マンブル・ラップの多様性もそうですし、そうやって自分のスタイルやイメージを規定せず、自分のなかに多様なスタイルを持つのもいまのラッパーのあり方だと思うんです。(二木)

二木:今年の1月に入ってから SANTAWORLDVIEW が出した『Sinterklass』も良かったですね。YamieZimmer のビートのヴァリエーションも面白かった。

吉田:それから SANTA や Leon、あと Moment Joon も “ImmiGang” で披露しているトラップビート上の32分音符基調の早口フロウにしても、Miyachi の『Wakarimasen』収録の “Anoyo” や JP The Wavy らが乗りこなす三連フロウにしても、近年のトラップとの格闘を通じて再発見された、日本語のラップ表現にとって大きな財産だと思います。オンビートの早口は子音と母音がセットになるいわゆる開音節言語の日本語とすごく親和性が高いし、Leon はサウンド重視と自分でも言っているけど、例えば『Chimaira』収録の “Unstoppable” なんかは早口であっても非常にメッセージが伝わってくる楽曲になっている。これは90年代の終わりにチキチキビートが世を席巻したときに、日本語でどうやって倍速の譜割でラップを乗せるか格闘した時期にもダブるものがありますね。

二木:わかります。TwiGy が『FORWARD ON TO HIP HOP SEVEN DIMENSIONS』(2000)というアルバムでいち早くサウス・ヒップホップにアプローチしたのとも被りますね。“七日間”、“GO! NIPPON”、“BIG PARTY”、“もういいかい2000”、特にこの4曲は TwiGy の先駆性を如実に示している。彼は日本のトラップ・ラッパーのパイオニアですね。スリー・6・マフィアなどのサウスのラップだけではなく、倍速/早口ラップの参考にしたのは、『リズム+フロー』にも登場していたシカゴのトゥイスタやUKのダンスホールのディージェー、ダディ・フレディだったという主旨の話も ele-king のインタヴューでしてくれました。もうひとつ、Leon Fanourakis の『Chimaria』から、自分のような世代の人間が個人的に連想するのは、DABO の『PLATINUM TONGUE』(2001年)でした。それは Leon が DABO を意識しているとかそういう意味ではなくて、セルフ・ボースティングの手数の多さで猪突猛進するスタイルという点において、ですね。DABO の “レクサスグッチ” を久々に聴きましたけど、この曲が20年前に切り拓いたものってでかいなとあらためて痛感しました。

吉田:当時 DABO のバウンスビートへのアプローチは早かったし、地声ベースの低音ヴォイス中心のアプローチも共通するところはありますよね。

二木:SANTAWORLDVIEW、Leon とともに、YamieZimmer がプロデュースを手掛ける Bank.Somsaart も素晴らしいラッパーですよね。さっき GRADIS NICE & YOUNG MAS “THE FIRST” について日本語と英語の発音のそれぞれの特性を活かして同居させていると話しましたけど、『Who ride wit us』の Bank はむしろ日本語と英語それぞれの発音やアクセントの境界線を消滅させて、ウィスパー・ヴォイスで呪文のようなフロウをくり出していく。さらに彼のルーツのひとつであるタイ語も含まれるということなのですが、正直に告白すれば、タイ語の部分がどこなのかまだ自信をもって聴き取れていない側面もあります。ただ、こんなにささやくようにラップしてリズミカルなのがすごいな、と。

吉田:Bank もまさにそういう境界を曖昧にするスタイルですよね。彼のラップがマンブル的かどうかという問題は別としても、マンブル・ラップの解釈もすごく多様になってきている。「日本語」ラップといっても、例えばブッダ・ブランドの頃から英語をミックスするラッパーたちは、もともとマンブル性というか、何を言っているかわからないところがあった。バイリンガル・ラップの系譜に Bank のようなラッパーもいるとして、日本語を徹底的に崩すという点では、釈迦坊主もそうですよね。最初は脱構築された日本語の発音に阻まれて、全然言っていることが分からないんだけど、歌詞を見ると間違いなく日本語だし、意味が途端に入ってくるという。かつて LOW HIGH WHO? 時代の Jinmenusagi や Kuroyagi がやっていたことにも近くて、曖昧母音を多用したり、あるいは開音節から母音を引いて閉音節にしてしまったりと、子音や母音のレヴェルで発音を英語的なものに近づけているわけですよね。5lack や冒頭で触れた LEX もそのような系譜にあると思います。でも釈迦坊主がとてもユニークなのは、日本語のアクセントや子音母音の仕組みを壊しているけど、だからといって個々の語の発音自体を英語に近づけているわけではないところです。日本語には聞こえないけど英語に空耳するわけではないという、まるで架空の言語を創造しているような。Tohji が “Hi-Chew” で聞かせるようなマンブル的発語なんかとも合わせて、これまでの日本語と英語の対立軸を超えているし、それは釈迦坊主が時々見せるインドへの目配りやエスニックなサウンドやスケールの導入ともリンクしている。最新EP「Nagomi」でも独特のメロディセンスが突き抜けてるのは勿論、ラップの声が持つパーカッシヴな側面をそれこそミーゴス並みに引き出してると思います。

釈迦坊主「NAGOMI」

二木:僕は釈迦坊主の「NAGOMI」のなかで、UKブレイクス×ラップ・シンギン×ニューエイジと言いたくなるような “Alpha” がとても好きでした。でも全曲良いですよね。ここですこし補足しますね。マンブル・ラップをざっくり定義すれば、歌詞の意味よりもリズムやノリを重視するラップとなります。それゆえに、マンブル・ラップは一部では否定的な意味合いを込めて使われる。これは FNMNL の記事で知りましたが、チーフ・キーフが自分がマンブルを発明したと主張する一方、ブラック・ソートのようなベテランまで自分が元祖だと主張したりもしているという。ただここで僕と吉田さんはマンブルだから良いとか悪いとかそういう価値判断をしたいわけじゃない、そういうことですよね。Bank が去年の11月にサンクラにアップした “you're not alone” という曲はこれまでとガラリとスタイルが異なり、前向きなメッセージを日本語の発音を明瞭にすることで伝えようとしていた。マンブル・ラップの多様性もそうですし、そうやって自分のスタイルやイメージを規定せず、自分のなかに多様なスタイルを持つのもいまのラッパーのあり方だと思うんです。

吉田:じゃあそういうマンブル的な状況でラッパーがどう表現していくかというと、やっぱりフレージングが重要になりますよね。先ほどの「RASEN」のサイファーでいえば Tohji や LEX が顕著ですが、フリースタイルでいかに2小節や4小節の印象的なフレーズを次々と繰り出すかということを競っている。従来のフリースタイルは2小節ごとに踏む韻を変えながらひとつの物語を作っていった。でもいまは2小節ごとに異なったリズムやメロディのフレーズを切り替えて、それでいかに耳をひけるかを追求する。韻ではなくてフレーズが牽引するという。USのトラップ以降のラップ・ミュージックは、いかにこのフックでリスナーを掴めるかの戦いですよね。かつてのヒップホップ・ソウルの時代はフィーチャーしたR&Bシンガーがコーラスを歌ったけど、ドレイク以降はラッパーが自分で歌う。より音楽的になったとも言えるし、メロディだけじゃなくてリズムの解像度も高くて、トラップのような隙間の多いビートを彩る新しい解釈が求められる。

従来のフリースタイルは2小節ごとに踏む韻を変えながらひとつの物語を作っていった。でもいまは2小節ごとに異なったリズムやメロディのフレーズを切り替えて、それでいかに耳をひけるかを追求する。韻ではなくてフレーズが牽引する。(吉田)

二木:“USのトラップ以降のラップ・ミュージック” というラインが出ましたが、Leon、SANTAWORLDVIEW、Bank.Somsaart、そして YamieZimmer にふたたび話を戻すと、彼らは FNMNL の磯部涼のインタヴューで特に YamieZimmer がサウス・フロリダのヒップホップを熱心に聴いていると語っていましたね。ただ、その発言ももう2年前ぐらいのことですから、そのあいだに本人たちのなかにもいろんな変化があったとも推測できます。それはそれとして、僕が最初に彼らの音楽に惹かれたのは、ダーティ・サウスのファンクネスを継承する音楽に通じるものを感じたからなんです。彼らの音楽を聴いて2000年前後の TwiGy や DABO を連想したのもそういうことかもしれない。ちなみに、スモークパープが昨年出した『Dead Star 2』というアルバムに入っていたデンゼル・カリーとの “What I Please” のMVが今年に入って公開されましたね。

吉田:スモークパープがようやくアングラから浮上してまるで新人のように扱われていることに複雑な思いもありつつ(笑)、フロリダはアトランタと比較しても洗練されていなくて、歪んでいて、ときに不穏で、ときにユーモラスという、ダーティ・サウスになぜ「ダーティ」という形容詞がついていたかを体現しているようなサウンドですよね。スキー・マスクやデンゼル・カリーは、トラップコア的な冷たい暴力性や、ウィアードな音を多用するところに作家性を感じます。Leon のアルバムはロニー・J 的というか、BPMもトラップ以降の遅さで統一されてるけど、一方で Bank のアルバムはドレやマスタードのファンクをもっとダーティでロウなサウンドで更新するようなBPM速めのビートも多くて、YamieZimmer の懐の深さを感じますよね。

二木:実際に、Leon の『Chimaria』に収録された “Keep That Vibe” はサウス・フロリダのベース・サンタナのビートです。ここから語るのは多少強引な極私的解釈ですが、スヌープ・ドッグとファレルの大名曲 “Drop It Like It's Hot” をサンプリングしたスキー・マスクの『STOKELEY』(2018)収録の “Foot Fungus” は、少ない音数と音色でファンクを捻り出すいわば “ミニマル・ファンク” です。そして、そういうファンクの源流にはスライ&ザ・ファミリー・ストーン『暴動』(1971)があるのではないかと。YamieZimmer が作り出すファンクの律動とグルーヴはその最先端を行っているのではないか。そんなことを考えたりしました。ちなみに彼は Bank の “Who ride wit us” という曲では、80年代後半のマーリー・マールを彷彿させる原始的なブレイクビーツ、それこそブーム・バップと言ってもいいようなビートを作っています。そういう柔軟性も YamieZimmer の魅力だと思います。彼が前述したインタヴューで Budamunk について言及していたのがまた印象的でした。「今の日本語ラップは全く聴かない」と前置きした上で、Budamunk のビートを称賛している。そういう日本のヒップホップの聴き方もある。例えば、Budamunk が90年代、00年代のヒップホップやR&Bのインストをミックスする『Training Wax』というミックス・シリーズが昨年2枚出ましたよね。

吉田:あれめっちゃいいよね! 完全に音響の世界に行ってて、元のハイファイ寄りの音源をいかにかっこよくローファイに汚せるかということをやっている。「あの曲がこういうふうに聞こえるのか!」という驚きがある。

二木:まさにそう! 吉田さんがあのミックスを聴いているのが、めちゃうれしいですし、信頼できます(笑)。フィジカルでこっそり流通していただけですもんね。あまりにもあの音響が衝撃的で、Budamunk 本人に「あの音響はいったい何なんですか?」って訊いたんですよ。これは、僕の記憶が間違っていたら謝るしかないんですけど、「EQをいじっているだけですよ」って答えてくれたと記憶しています。EQいじるだけでこんなにも独創的な作品を作れるのかとさらに驚いた。

吉田:当時多かった「ヒップホップ・ソウル」とも呼ばれていたような、ヒップホップマナーのサンプリングループでビートが作られたR&B曲を、単にDJミキサーのEQでモコモコにフィルタリングするだけで彼の色にしてしまうという。ヒップホップ的な価値転倒が全編で表現されていて最高です。

二木:そう。ヒップホップ・ソウル色が強かった『Training Wax VOL.1』も素晴らしかった。たとえば、セオ・パリッシュのDJが好きな人にはぜひ聴いてもらいたいし、絶対気に入ると思う。それと、これは、僕のいささかロマンチックな歴史認識のバイアス込みで語りますが、『Training Wax』は Budamunk のオリジナルのビートではないものの、DJ KRUSH の『Strictly Turntablized』のリリースから25年つまり四半世紀のときを経た2019年のビート・ミュージックのひとつの成果を示している、それぐらい重要な作品だと感じています。

吉田:Budamunk は基本サンプルを使うんだけど、ミニマルで音数が少ないから、空間が多くて、リズムと同じく一音一音のテクスチャーというか、音質にも凄く耳がいきますよね。2019年は仙人掌の『Boy Meets World』の傑作リミックス盤が出たけど、そのなかの “Show Off” の Budamunk リミックスは音響的にかなりこだわっていて、中央で鳴るサブベースにリヴァーブの効いたコードのスタブに、ざらついたスネアが少し右のほうで鳴っている。このスネアは中央で鳴るハットと位相がズレていて、さらにそのスネアの残響音は左の方から聞こえるという確信犯的な立体感。終盤ではさきほど話した得意のEQフィルタリングも聞こえてきます。ミニマル・テクノやアンビエントを聴く耳で、細かい音の肌理やテクスチャーを追うと全然違う楽しみ方ができると思います。ひとつひとつの音の追い込み方と、その結果生まれている快楽がずば抜けている。

仙人掌 “Show Off - Budamunk Remix”

日本という地域のローカルな言語で表現されるラップ。その2019年の代表格である舐達麻が、グローバルに耳を刺激するビートメイカーと組む。こういうことがいま起きている。(二木)

二木:『Boy Meets World』のリミックス盤の制作の相談役が Budamunk でしたからね。彼はLA、ニューヨーク、中国のヘッズにも知られていると聞きます。SoundCloud や Bandcamp を通したビート・ミュージックの世界的なネットワークのなかにいる、日本のビートメイカーの先駆的存在じゃないでしょうか。

吉田:Bugseed にしても GREEN ASSASSIN DOLLAR (以下、GAD)にしても海外のオーディエンスがたくさんついてますよね。Bugseed は『Bohemian Beatnik』の衝撃からもう10年なのか……ウィズ・カリファにビートを使われた事件で脚光を浴びたりしましたが、SoundCloud でワールドワイドに認知度を上げて Bandcamp で作品を販売する日本のビートメイカーの先駆けとなった感がありますよね。

二木:いま GAD の名前も出ましたが、彼が2019年に大躍進した埼玉・熊谷のグループ、舐達麻の作品における主要ビートメイカーである事実は忘れてはならないですよね。彼はドイツのレーベルから作品を発表していますね。対談の冒頭で吉田さんから、ガラパゴス的な日本語ラップという言葉が出ました。つまり日本という地域のローカルな言語で表現されるラップということですね。その2019年の代表格である舐達麻が、グローバルに耳を刺激するビートメイカーと組む。こういうことがいま起きている。この話の流れで付け加えておくと、冒頭で触れた星野源が PUNPEE を客演にむかえた “さらしもの” のトラックを作ったのは、チャンス・ザ・ラッパー “Juke Jam” (『Coloring Book』収録)のビートを手掛けたり、『ブラック・パンサー』のサントラに収録された “I AM” という曲にもクレジットされているドイツ人のプロデューサー、ラスカルでした。ということで、次は舐達麻の話からはじめましょうか。

(後編へ続く)

Jeff Parker - ele-king

 前作『The New Breed』の成功でもはやトータスのメンバーとして以上に、むしろソロ・アーティストとして牢固たる地位を確立した感のあるジャズ・ギタリスト、ジェフ・パーカー。その新作が出るというのだから見逃せない。『The New Breed』がジェフの父へのトリビュート作だったのにたいし、今回のタイトルは『Suite for Max Brown』で、彼の母に捧げる作品となっている。日本での発売は1月29日。原盤はマカヤ・マクレイヴンなどで知られる〈International Anthem〉と〈Nonesuch〉の共同リリースとなっており、そのマカヤ・マクレイヴンや盟友ロブ・マズレクらが参加している。収録曲にはコルトレーンやジョー・ヘンダーソンのカヴァーも含まれているようで、もうとにかく楽しみだ。
 なおジェフは、2月9日から11日にかけ、トータスの一員として来日することが決まっている。そちらの情報はこちらから。

Jeff Parker & The New Breed “Suite for Max Brown”
ジェフ・パーカー『スイート・フォー・マックス・ブラウン』

フォーマット:CD
商品番号:IARC-J029 / HEADZ 244 (原盤番号:IARC0029)
価格:¥2,100+税
発売日:2020.1.29 ※オリジナル(US)盤発売日:2019.1.24
原盤レーベル:International Anthem Recording Co. / Nonesuch Records Inc.
バーコード:4582561391378

01. Build a Nest (feat. Ruby Parker) 2:13
 ビルト・ア・ネスト(フィーチャリング・ルビー・パーカー)
02. C'mon Now 0:25
 カモン・ナウ
03. Fusion Swirl 5:32
 フュージョン・スワール
04. After the Rain 4:45
 アフター・ザ・レイン
05. Metamorphoses 1:48
 メタモルフォーゼズ
06. Gnarciss 2:12
 ナールシス
07. Lydian Etc 0:55
 リディアン・エトセトラ
08. Del Rio 1:38
 デル・リオ
09. 3 for L 4:47
 スリー・フォー・L
10. Go Away 4:58
 ゴー・アウェイ
11. Max Brown 10:36
 マックス・ブラウン
12. Blackman 2:56
 ブラックマン

Total Time 42:50
       
※ track 12 … 日本盤のみのボーナス・トラック(from 7" phonograph flexi disc:IARC0021)

All songs composed by Jeff Parker (umjabuglafeesh music, BMI);
except “After The Rain” by John Coltrane, and “Gnarciss” which contains elements of “Black Narcissus” by Joe Henderson.

“C’mon Now” features samples from the Otis Redding recording “The Happy Song (Dum-Dum).” Produced under license from Atlantic Recording Corp. By Arrangement with Rhino Entertainment Company, a Warner Music Group Company.

All arrangements by Jeff Parker.

Engineered and edited by Jeff Parker at Headlands Center For The Arts, Sausalito, California and at home in Altadena, California.
Engineered, edited and mixed by Paul Bryan in Pacific Palisades, California.
Mastered by Dave Cooley at Elysian Masters, Los Angeles, California.

Produced by Paul Bryan and Jeff Parker.

“Build a Nest (feat. Ruby Parker)”
Jeff Parker - drums, vocals, piano, electric guitar, Korg MS20
Ruby Parker - vocals

“C’mon Now”
Jeff Parker - sampling, editing

“Fusion Swirl”
Jeff Parker - electric guitar, bass guitar, samplers, percussion, vocals

“After the Rain”
Paul Bryan - bass guitar
Josh Johnson - electric piano
Jeff Parker - electric guitar and percussion
Jamire Williams - drums

“Metamorphoses”
Jeff Parker - glockenspiel, sequencer, sampler, MS20

“Gnarciss”
Paul Bryan - bass guitar
Josh Johnson - alto saxophone
Katinka Kleijn - cello
Rob Mazurek - piccolo trumpet
Makaya McCraven - drums and sampler
Jeff Parker - electric guitar, JP-08, sampler, midi strings

“Lydian, Etc”
Paul Bryan - bass guitar
Jeff Parker - electric guitar, pandeiro, midi programming, etc.

“Del Rio”
Paul Bryan - bass guitar
Jeff Parker - electric guitar, mbira, sampler, Korg MS20, drums, electric piano

“3 for L”
Jay Bellerose - drums and percussion
Jeff Parker - electric guitar, Korg MS20

“Go Away”
Paul Bryan - bass guitar and vocals
Makaya McCraven - drums
Jeff Parker - electric guitar, vocals and sampler

“Max Brown”
Paul Bryan - bass guitar
Josh Johnson - alto saxophone
Jeff Parker - guitar, Korg MS20, JP-08
Nate Walcott - trumpet
Jamire Williams - drums

“Blackman”
Produced, Performed & Recorded by Jeff Parker.
Vocals by Ruby Parker.
Mixed by Paul Bryan.
Mastered by David Allen.

Graduated studies of sampling, cycles & soulful jazz harmonics mix Monkian miniatures into a fusion-swirled dedication.

2020年2月に1998年の名盤『TNT』の完全再現公演で来日するポストロックの代表バンド、トータスのメンバーであり、平行してジャズ・ギタリストとしても活躍するジェフ・パーカーの名盤の誉れ高き、2016年のリーダー作『The New Breed』(NPR、Observer、New York Times、Los Angeles Times、Jazz Standard、Bandcamp 等にて、2016年の年間ベストに選出。日本盤は2017年リリース)に続く、新作アルバム『Suite for Max Brown』が遂に完成。

ジェフと並ぶ看板アーティストでもあるドラマーのマカヤ・マクレイヴンのリーダー作等で近年日本でも注目されているシカゴの新興ジャズ・レーベル、〈International Anthem〉とあの〈Nonesuch Records〉との共同リリースの第一弾アルバム(第一弾は2019年12月2日にリリースされたジェフのアルバムの先行シングル「Max Brown - Part 1」)となる本作は、『The New Breed』の姉妹作(『The New Breed』はジェフの亡き父親に捧げられたアルバムで、アルバムのアートワークにもフィーチャーされていたが、本作はジェフの母親の19歳の頃の写真がジャケットにフィーチャーされている。まだご存命の母親へ捧げられたアルバムで、アルバム・タイトルも母親の旧姓に因んでいる。)ともいえる作品で、前作同様にジェフがマルチ・インストゥルメンタリストやビートメーカーとして一人で制作した楽曲と The New Breed というグループ名でライブ活動をするまでに発展した前作のレコーディング・メンバーが再び集結して制作された楽曲が違和感なく収録されている。

『The New Breed』と同様プロデュースはジェフ自身と、エイミー・マン、アラン・トゥーサン、ノラ・ジョーンズの作品等で有名なポール・ブライアン(2018年のグラミーでエイミー・マンの2017年のアルバム『Mental Illness』のプロデューサーとして「Best Folk Record」を受賞)が担当(ミックスも担当し、ベースでも参加。ミシェル・ンデゲオチェロやルーファス・ウェインライトのライブにも参加するなどプレイヤーとしても活躍している)。

エスペランサ・スポルディングやミゲル・アトウッド・ファーガソン、カルロス・ニーニョ、キーファー、リオン・ブリッジズとも共演してきたサックス奏者のジョシュ・ジョンソン、ロバート・グラスパー・トリオのメンバーで、先鋭的ジャズ・コレクティヴ、エリマージを率いる新世代ドラマー、ジャマイア・ウィリアムス(モーゼス・サムニーの2017年作『Aromanticism』にはドラマーとして、ソランジュの2019年作『When I Get Home』にはプロデューサーの一人として参加している)が脇を固めている。本作には更に二人のドラマーが参加しており、一人はレーベルメイトで何度も共演していて、日本でも人気上昇中のマカヤ・マクレイヴン(『The New Breed』の日本盤のボーナス・トラックとして収録されたリミックスも担当)、もう一人は『The New Breed』にも参加していたジェイ・ベルローズ(ポール・ブライアン関連作のみならず、ポーラ・コールの作品を中心に、エルトン・ジョン、ロバート・プラントとアリソン・クラウスのグラミー受賞作『Raising Sand』他、ジャンルに関係なく活躍)。

シカゴ・アンダーグラウンド・オーケストラ以降、何度も共演を重ねてきた盟友ロブ・マズレクがピッコロ・トランペット、ブライト・アイズ(コナー・オバーストのソロ作も)やエンジェル・オルセンの2019年作『All Mirrors』にも参加しているネイト・ウォルコットがトランペットで参加している。

また、ジェフのバークリー音楽院時代の同級生で、現在は Chicago Symphony Orchestra に在籍しているチェリスト、Katinka Klejin (2019年末来日したラリー・ウォーカーと共演作をリリースしている)も参加している。

アルバムの冒頭を飾る “Build a Nest” には、前作収録の “Cliche” に引き続き Chicago High School of the Arts の学生でもある17歳のジェフの愛娘、ルビー・パーカーのヴォーカルをフィーチャーしている。

ジェフのオリジナル楽曲とともに、ジョン・コルトレーンの1963年作『インプレッションズ』収録の “After the Rain” のカヴァー、ジョー・ヘンダーソンの “ブラック・ナルシサス” をジェフ流に解釈した “Gnarciss” を収録している。

マスタリングも前作同様、J・ディラ『Donuts』を手掛けたデイヴ・クーリーが担当している。

ヒップホップにインスパイアされた現在進行形のサウンドと、古き良きジャスがバランスよくブレンドされた、ジェフのミュージシャンやコンポーザーとしての懐の深さを感じさせる、『The New Breed』を更新・進化させた正にマスターピース。

日本盤には2018年5月21日に7インチのソノシートのみでフィジカル・リリースされた、Madlib とのコラボでも知られるジョージア・アン・マルドロウ(〈ストーンズ・スロウ〉初の女性アーティストとしてデビューし、現在は〈ブレインフィーダー〉所属)の “Blackman” (1st フル・アルバム『Olesi: Fragments of an Earth』収録曲)のカヴァー曲をボーナス・トラックとして収録(アルバム用にリマスタリングされている)。

ライナーノーツは、Jazz The New Chapter の柳樂光隆が担当。
日本盤のみ歌詞・対訳付。

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