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B12

Ambient TechnoIDM

B12

Electro-Soma I + II

Warp / ビート

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小林拓音   Dec 07,2017 UP Old & New

 げに許すまじ。ブラック・ドッグの『Bytes』が落選したことに関してはつい先日もぶうたれたばかりだけれど、件の『ピッチフォーク』のランキングからはもうひとつ、重要な作品が抜け落ちている。B12の『Electro-Soma』である。たしかにポリゴン・ウィンドウやオウテカ、ブラック・ドッグといった錚々たる顔ぶれが居並ぶA.I.シリーズのなかでは、相対的に地味で控えめなアルバムだったかもしれない。けれど当時、ある意味もっとも純粋にIDM~アンビエント・テクノを鳴らしていたのは、もしかしたら『Electro-Soma』だったのではないか。
 B12はマイケル・ゴールディングとスティーヴ・ラッターからなるユニットで、ふたりは同名のレーベルを主宰してもいる。00年代後半より鳴りを潜めていた彼らではあるが、近年は〈B12〉傘下の〈FireScope〉から精力的にシングルを発表している。今回ヴァイナルとしてリイシューされた彼らの記念すべきファースト・アルバムは、もともとふたりがミュジコロジーやレッドセルといった名義で発表していた曲を〈ウォープ〉のロブ・ミッチェルがコンパイルしたものなのだけれど、どうやらその選から漏れた音源も数多く存在したようで、『Electro-Soma』と同時に、彼らのレア・トラックをかき集めた『Electro-Soma II』という編集盤もヴァイナルでリリースされている。その2枚をまとめてパッケイジしたCDが、この『Electro-Soma I + II』である(ちなみに今回のリイシューはアナログのオリジナル盤が元になっているので、かつてのCD盤『Electro-Soma』に収録されていた“Debris”、“Satori”、“Static Emotion”の3曲は今回『II』の方に収められており、逆に当時CD盤でオミットされていた“Drift”が今回『I』の方に収められている)。
 改めて聴き直してみて思ったのは、やはりデトロイト・テクノからの影響が大きいということだ。このアルバムを聴いていると、かつてカール・クレイグがサイケ/BFC名義で発表していた曲たち(それらは『Elements 1989-1990』として1枚にまとめられている)を連想せずにはいられない。きめ細やかなハットに、どこまでもノスタルジックでメロディアスなシンセ、そこに加わるUKらしいベースライン……デトロイトから受けた影響を独自に咀嚼し、それを当時のUKの文脈に巧みに落とし込んだ作品がこの『Electro-Soma』と言えるだろう。そういう意味で本作は初期のカーク・ディジョージオやリロードの諸作とも通じる響きを持っている。このアルバムは、テクノが今日のように商業化され制度化されてしまう前の、ある意味で牧歌的とも呼びうる時代の風景を浮かび上がらせる。このようなセンティメントは、昨今のエレクトロニック・ミュージックからはなかなか感じられないものだ。

 今回のリイシューはおそらく、昨今のアンビエント・ブームあるいはIDM回顧の機運に乗っかって企画されたものなのだろう。〈ウォープ〉は今年エレクトロの波に乗ってジ・アザー・ピープル・プレイスもリプレスしているが、そこでひとつ心配なのが、最近ちょっと過去のクラシックに頼りすぎなんじゃないか、という点だ。もしかしたらかのレーベルはいま、リリースの方向性をめぐって大きな岐路に立たされているのかもしれない。……いや、『Electro-Soma』が名盤であることに変わりはないんだけどね(この時期のB12の音源をもっと掘りたい方は、『Prelude Part 1』を探すべし)。

小林拓音