「Nothing」と一致するもの

Zamboa - ele-king

 まず、この音楽は「東京の音楽」ではない。それが素朴な印象だった。

 これまでのKlan Aileenは、ロック・バンドという表現形態の自信喪失と、そこからくる空転をいかに「クールなもの」にひっくり返すか、という大きな課題を持っていた。彼らがツーピース体制となって初のアルバム『Klan Aileen』は、彼らが大きく影響を受けていた00年代後半から10年代前半のインディ・ロックの覇権が完全に崩れた2016年にリリースされており、そこに詰め込まれた音像が過剰なまでにロック・バンド的な荒々しさを持っているのは、むしろその荒々しさが絶えず空振りしていることを彼らが自覚していたからだ。
 続く2018年作『Milk』も、ドローンやエクスペリメンタルなど、当時からすれば「いまっぽい」、「ロック・バンドっぽくない」音響感覚が、ロック・バンドらしい生々しい演奏と同居しており、ロック・バンドをやる他ないが、そこに安住することもできないような両義性のなかで引き裂かれている奇妙なアルバムだった。
 早く言えば、彼らは「ロック・バンド」という形式が「オワコン」になりつつある気配を読み取りながらも、そこから立ち去ることができず、かといって素朴に「ロック・バンド」を演じることもできず、自分たちが「ロック・バンド」であることに「照れ」ていたのだ。しかしその自信喪失こそが、Klan Aileenと音楽シーンをつなぐ通路となって、ロック・バンドという形態の定義を変質させるような挑戦がおこなわれていた。
 つまりどんな形を取るにせよ、以前までのKlan Aileenのアルバムには、音楽シーンの動向との距離で測れるパラメーターが少なからずあったということだ。実際彼らは、UK/USのインディ・ロックの国内盤(例えば、レディオヘッド、アークティック・モンキーズ、ジ・xx、ボン・イヴェール、ヴァンパイア・ウィークエンド、ザ・ナショナル、セイント・ヴィンセントなど)を大量にリリースしていた、〈Hostess Entertainment〉所属の数少ない国内作家のうちの一組だった。ときにそれが逆説にすぎないにしても、Klan Aileenは「東京的な」(そして「東京」が輸入しているUK/US的な)バンドだった。

 しかし、Klan AileenからZamboaにバンド名を改め、6年ぶりのリリースとなる今作『未来』にはそうした距離感が消失している。いまの彼らの音楽には、東京という「中心」に基づいた、順接的・逆説的つながりが存在せず、どの時代のどの場所の音楽なのかがもはやわからない。
 いままでは接し方が定まっていなかったように見えた、ブリティッシュ・プログレ的ないなたい湿っぽさや大仰さ、あるいは昭和歌謡/民謡的な節回しやコード感、それらの一歩間違えたら「懐古的なもの」に陥りかねないジャンルやアティチュードに素で接近している側面があるのは間違いない。しかしジャンルの再現性やジャンル間の横断的な結びつきを、ラフな録音とルーズな演奏がぎこちなく拒んでもいる。
 そのルーズさは、彼らがかつて「ロック・バンド」を生き延びさせるために使っていた、パフォーマンスとしてのルーズさというよりは、もっとストレートなルーズさだ。彼らはもはや、自分たちが「ロック・バンド」であることに照れてはいない。
 かつては亡霊のうめき声のように極限まで小さくミックスされていたヴォーカルは、大きくはっきりとしたものになり、ギターは弾き倒され、重ねられたシンセサイザーとベース(!)が和声を複雑化させていく。いまの彼らは音響的な実験とは無縁の、「いい曲」を作ろうとしているかのようでもあるが、しかし同時に、「クオリティ」の方にも収束していかない。彼らは「ちゃんと」することにしたわけでもない。
 ジャンルを再現するには拙い、ジャンルの「気配」だけをまとったフレーズやコード感が、ぎこちなく積み重なり、絡み合っていく。齟齬は摩擦を生み、グルーヴが力みと弛緩、ズレと遅れのなかでドライヴしていく。強く握りすぎたスティックが放つストロークが、つい手元を滑らせたようなフレーズが、「ニュアンス」として、あるいは「気迫」として、ポジティヴに転んだり、転ばなかったりする。

 ところで、彼らの新しいバンド名であるZamboaは、柑橘類の果物ザボン(別名ボンタン)を意味する語であり、このザボンはZamboaのふたりの出身地である鹿児島とも縁があるという。
 ザボンの原生地は東南アジア・中国南部・台湾で、日本には17世紀に伝来している。伝来の地については諸説あるようだが、広東と長崎を行き来する貿易船が難破して鹿児島に漂着し、そこから日本での栽培が始まったという説もあるようだ。いまでもザボンの栽培は鹿児島で盛んにおこなわれており、ボンタンアメ、ザボンラーメンなど、独特の仕方で地域文化に定着している。
 つまり、ザボンは舶来品である微妙さとともに、彼らの故郷、鹿児島につながっている。彼らが「ロック・バンド」であることに立ち返った今作から、バンド名をこのような語に改めたのは示唆的だ。

 そもそも、ローカルな場所(カッコつけずにいえば要は「地元」のことだ)、あるいはローカルな場所に宿る友人関係を抜きにして、「ロック・バンド」について語ることは難しい。偶然生まれた場所としての「地元」と、偶然出会うものとしての「友達」は、ロック・バンドを育むゆりかごだといってもいいくらいだろう。
 だが「友達」と「地元」をその胚とするために、ロック・バンドは、音楽を作ったり演奏するという「目的」に干渉するようなあらゆるノイズを抱え込んでしまうことにもなる。例えば、人間関係、演奏技術の偏差、思想上のギャップ、「方向性の違い」……。バンドという共同性はあらゆる「しがらみ」に束縛されている。
 しかし他方で、こうした「しがらみ」は、ロック・バンドの「気迫」を生み出すための燃料でもある。不揃いな身体感覚と演奏技術を擦り合わせようとするときに生まれるダイナミクスと白熱は、この「しがらみ」がなければ存在しない。だがかといって、素朴にその「しがらみ」の不自由さを謳いあげるだけでは、どんな「下手な」プレイも肯定しながら、ローカルな友人関係の「エモさ」に沈滞して済ます「開き直り」しか生み出さないだろう。

 翻って、『未来』というアルバムが持つある種の「ぎこちなさ」は、演出されているものでも、素朴に許容されているものでもない。恐らく彼らは下手な演奏を狙っているわけではなく、「失敗するかもしれない」という余白が残っている演奏にしか宿りえない気迫こそを、どうにかとらえようとしているのだ。「これは各々の身体(性)だから」と粗を素朴に肯定する代わりに、「失敗するかもしれない」という可能性の縁に肉薄することで、あくまで「結果として」ミスタッチがついてまわってしまう。
 「失敗するかもしれない」身体のままならさと、しなやかな自律性が背中合わせに圧着する隙間にマイクが立てられ、熱気と気迫を放ちはじめる「しがらみ」が、不自由が、ドキュメントされていく。その「現場」において、偶然性(互いの頑固な身体、たまたま出会ったという事実……)は優しく許容されることなく、火にくべられ、鍛えあげられるが、しかしその偶然性が消し炭と化す手前で、互いの存在への「あきらめ」に滑り込むようにして、「友達」との協働に形が与えられていく。
 この協働の形成と同期するようにして、舶来品たる「ロック・バンド」というフォーマットもまた、「厳しさ」と「あきらめ」を通じてローカライズされていく。たまたま流れ着いた「漂流物」が「現地」に根付き、地口と口語にさらされながら増え広がっていくように。

 不自由であることや、ローカルな関係性の「エモさ」に居直ることのないZamboaの音楽は、「東京的」でなくなってもなお、ニッチ/アンダーグラウンドとオーヴァーグラウンドのあいだで独特な「開かれ」を立ち上げている。その「開かれ」は優しい青空のような滑らかさを持っておらず、傷を覆うカサブタのような、あるいは堅く厚い果実の皮質のようなデコボコしたものかもしれない。しかしその「デコボコ」は、岩山のように厳しく屹立するばかりでなく、内側に蓄えられた身の充実を予感させる「匂い」を振りまいてもいる。
 無数の「かもしれない」を乗り越えた『未来』というアルバムの重い身体は、また無数の「かもしれない」をもたらすであろう観客たちを誘うようにして、その「匂い」を虚空に向かって、ひっそりと発散させている。

Ambience of ECM - ele-king

 「静寂の次に美しい音」のコンセプトで知られるミュンヘンのレーベル〈ECM〉。創立55周年(と「ECM New Series」40周年)を記念し、日本初のエキシビションが催されることとなった。題して「Ambience of ECM」。岡田拓郎、岸田繁、原雅明、三浦透子、SHeLTeR ECM FIELDの5組が選曲を務め、九段ハウスにて環境に合わせたオーディオ・システムのもと、それぞれ異なるリスニング体験を提供する。12月13日~21日の期間限定開催です。詳しくは下記より。

創立55周年を迎えた音楽レーベル「ECMレコード」の日本初のエキシビション「Ambience of ECM」が、九段ハウスにて12月に期間限定開催

1969年にマンフレート・アイヒャーがドイツ・ミュンヘンで創設したヨーロッパを代表する音楽レーベル、ECM(「Edition of Contemporary Music」の略)。"The Most Beautiful Sound Next To Silence (沈黙の次に美しい音) "をコンセプトに掲げ、他のレーベルとは一線を画す、その透明感のあるサウンドと澄んだ音質、洗練された美しいジャケット・デザインなどが世界の多くのファンを魅了してきた。

今年、レーベル創立55周年、そして1984年にスタートしたクラシック・シリーズの「ECM New Series」が創立40周年を迎えた。それを記念し、日本国内において初となるエキシビションを12月13日(金)から12月21日(土)までの期間限定で九段ハウスにて開催される。

「Ambience of ECM」をテーマにECMのサウンドを環境の響きで楽しむプロジェクトで、レーベル第1弾作品のマル・ウォルドロン『フリー・アット・ラスト』(1969年)から、ECM New Seriesのクラシック/現代音楽まで、多彩で広大なECMの世界を、5組の選曲家が九段ハウスのそれぞれのリスニング環境に合わせて選曲。環境に合わせてオーディオシステムも選定することで、全く異なるリスニング体験を提供する。

また、ECMレコードが保有する貴重なポスターアートをミュンヘンから輸入し特別展示。本邦初公開となる38点のアートは、今回のための限定公開となり、館内を回遊することでリスニングとビジュアルの両面でECMの世界観を堪能できる。

入場料は無料。
予約はPeatix特設ページにて受付
https://ambienceofecm.peatix.com

【開催概要】
名称:Ambience of ECM
日程:2024年12月13日(金)~21日(土)
時間:10:00/14:00/18:00 (所要時間:1時間程度、事前予約制)
※12月21日(土)はレセプションのため招待者のみ
入場料:無料 (要予約)
会場:kudan house (東京都千代田区九段北1丁目15-9)
注意事項:館内では一部裸足となるプログラムがございます。靴下等脱ぎやすいお履物でお越しください。

主催:東邦レオ
企画:石井りか、原雅明、玉井裕規
選曲:岡田拓郎、岸田繁、原雅明、三浦透子、SHeLTeR ECM FIELD (Yoshio + Keisei)
協賛:ユニバーサルミュージック合同会社
協力:株式会社ジェネレックジャパン、ADAM Audio、Audio-Technica、Oshima Pros、Qobuz、WHITELIGHT
企画協力:dublab.jp / epigram inc.

【コンテンツ】
◎Listening
ECMの広大な音世界を5組の選曲家が、九段ハウスのそれぞれのリスニング環境に合わせて選曲。部屋の建築様式とペアリングされたサウンド・システムでリスニングを楽しむ。

◎Exhibition
ECMが保有する貴重なポスターアートワークを特別展示。全館がまるごとエキシビションとなり、館内を回遊し、様々なリスニングスポットをECMの世界観で繋ぐ。

◎Event
最終日の12月21日には、トーク、DJセッション、レセプションが行われ、ECMを様々な角度から多角的に楽しめるイベントを開催(完全招待制)。

SOPHIE - ele-king

 2024年は『brat』の年だったと、さまざまなメディアが書き立てている。大統領選からプロモーションのあり方といった話題に至るまで、やや(社会)現象としての側面にばかりスポットが当たっているような印象もあるが、というのはつまりチャーリー・XCXが正しくポップ・スターになったということでもあって、それはそれでとても感慨深い。強度あるサウンドなだけに、作品それ自体の意義については今後長い時間をかけてさまざまな分析がなされていくだろう。中でも当作は、形骸化が進みはじめたハイパー・ミュージックの文脈において、ひとつの局面を打開したようにも思う。幅広く多彩な感情の掘り下げと、それらを逆説的に強調するようなミニマルなアートワーク。飽和した状況からクリティカルに脱し大衆の視線を獲得したという点で、見事な一手だったというほかない。

 もうひとつ言うなら、『brat』はもっと故・ソフィーの文脈で語られるべきだとも思う。『Number 1 Angel』(2017年)をはじめとして深い音楽的パートナーシップを築いてきたふたりだけあって、そもそも『brat』のサウンドにはソフィーの影がそこかしこに感じられる。特に “So I” はソフィーの “It's Okay To Cry” に対するオマージュが捧げられていて、深い感謝が綴られてもいる。刺激的なレイヴ・サウンドが炸裂する『brat』の中でちょうど中盤に位置する “So I” は、柔らかなテクスチャとともに「And I know you always said, "It's okay to cry" So I know I can cry, I can cry, so I cry(泣いてもいいんだよっていつも言ってたよね だから泣いてもいいんだ、泣いてもいいんだ、だから泣くんだ)」と歌われる。その後10月に出たリミックス盤『Brat And It's Completely Different But Also Still Brat』ではA・G・クックが前面に出てさらにドラマティックなアレンジが施されており、ソフィーの遺志を継いで未来を向くような想いが伝わり胸が熱くなってしまう。

 そして、ふたつの『brat』のあいだ、9月にリリースされたのがソフィーの遺作『SOPHIE』なのだった。彼女の生前にほとんどできていたという素材をもとにきょうだいのベニー・ロング(Benny Long)がアルバムとして完成させたもので、つまり完全なるソフィーのオリジナルではない。ただ、過去作においてもベニー・ロングはスタジオ・プロデューサーとして制作に携わってきており、本人を最も身近で知る者の手によって形になったアルバムであることは間違いない。

 特徴的なのは、数多くのコラボレーターが参加しているという点。プライベートにおいてもパートナーでありソフィーが事故にあったときも一緒にいたというエヴィタ・マンジや、2020年のパンデミックのさなかにレコーディングしたときが彼女に会った最後だったという〈PC Music〉のハンナ・ダイアモンドをはじめとして、ソフィーと親交があったアーティストで固められている。ゲストがヴォーカルを披露しているケースも多く、じつに多種多様な声が次々と現れては消えていく──このラインナップを見ればいかに彼女がたくさんの人に愛されていたかがわかるし、やはりクィア・コミュニティを象徴する人物として大きすぎる存在だったと再認識せざるを得ない。そういった意味では、『Brat And It's Completely Different But Also Still Brat』に加えて、『SOPHIE』に参加しているアーティストを並べていくだけでとんでもなく充実した相関図を作ることができる。ふたりが、現行の音楽シーンにおいていかにハブ的な存在となっているかということだ。

 ただ、『SOPHIE』はもちろん、全面的な肯定をもって受け入れられているわけではない。前作『Oil Of Every Pearl's Un-Insides』と比較すると、サウンドのエッジはやや抑制されている印象がある。“Berlin Nightmare” や “Gallop” といった中盤の並びはソフィーであればもう少し変化に富んだテクスチャにしていたのでは、という気がしないでもないし、ミキシングのせいなのか何なのか、凡庸さを感じる曲もある。実際に彼女が最後まで完成させていたら……と何を言ってもifの話でしかないのだが、とはいえ、これはこれでありなのかもしれないとも思う。なぜなら、エッジが削れて丸くなった部分を活かすかのように、柔らかさやあたたかさを感じる曲が多数収録されているからだ。

 テクノ・アーティスト/DJであるニーナ・クラヴィッツが参加する “The Dome’s Protection” あたりの柔らかさはまだ以前のソフィー作品にあっても違和感がないような質感だが、終盤はがらっとムードが変わる。つねに生と死のあわいを漂っていたようなサウンドがソフィーの特徴だったとしたら、生が前提にあるような図太くて楽観的な音が鳴っているのだ。リアーナの “Bitch Better Have My Money” や “Higher” を手がけたビビ・ブレリー(Bibi Bourelly)がパワフルなヴォーカルを聴かせる “Exhilarate” は驚くべきヴァイブスに満ちているし、これまでも多く協働してきたセシル・ビリーヴが参加する “My Forever” では「You'll always be my forever」と歌われ、ソフィーへの愛がある種の素朴さをもって提示される。彼女の周りでともに音楽を作っていた人たちが目一杯の感情を閉じ込めることによって、本作はあのバブルガムでタフな音が、優しくほぐされているような感覚があるのだ。

 ソフィーのファンとしては、やはりキム・ペトラスとBCキングダムが参加する “Reason Why” は何度も何度も聴いてしまうし、本作にぴったりハマっていると思う。ずっとライヴではプレイされていた曲で、ソフィーのディスコグラフィの中でも特に情感豊かな曲だ。YouTubeに上がっているライヴ映像でもいくつか見ることができるが、“Reason Why” はキム・ペトラスがステージ上で共演することも多々あり、そこから名曲 “1,2,3dayz up” へとつながれる。タバコをふかしながら楽しそうにプレイする彼女を見ていると、“Reason Why” はじめ、キムとの曲はだいぶお気に入りだったんだろうという気がする。実際、ソフィーの魅力がたっぷりと凝縮されているナンバーだ。金属的で硬質だけどキュートなサウンドに、人工甘味料たっぷりの甘い声が乗る──繊細なのにダイナミック。つくづく、すばらしい相性だと感心する。

 ソフィーの音楽は未来的かつ機械的で、ポスト・ヒューマンといった形容をされてきた。既存のサウンドを分解し異なる形へと再編集する手法は、ジャンルという既存の枠組の解体であり、脱構築的だと。けれども同時に、彼女の音楽はヒューマニズムに満ちているとも思う。『SOPHIE』を聴くと、そういった人間くさい面が誇張されているし、より彼女のキャラクターを近くに感じられる。だからこそ、『SOPHIE』を経てから前作『Oil Of Every Pearl's Un-Insides』をもう一度聴くと、この音楽家の実像がますます立ち上がってくる気がするのだ。

 ソフィーは、音楽を通して何をしたかったのだろう? 彼女は、わたしという人間について徹底的に自己探求し続けていいのだ、ということを言っていたのだと思う。どんな手を使ってでもいいから探求し続けよ、と。自らを形作る構成を解体し、あらゆる要素を切り刻み、それでも残ったものがわたしであると。解体し切り刻んでしまったら、それはもう破片だ。脆弱な、あまりに脆弱なそれを、しかし彼女は再び新たな音楽にしてしまった。わたしをもとに、わたしをつくりあげたのだ。果てしない自己探求の果てに、彼女のルーツであるオウテカと、彼女が目指していたメインストリーム・ポップは一本の線で繋がった。声のピッチを大きく変え加工した “Immaterial” から、生声を披露する “It’s Okay To Cry” は円環し、ひとつのストーリーで接続されることとなった。流動的でありながら、ひとつの自分自身であること。ゆえに、非-人間的あることと人間的であることは両立する。それはとんでもない発見だったからこそ、ソフィーが自己探求によって発見した音楽は、2010年代における最大のイノヴェーションとしてメインストリームとアンダーグランドの双方で大きな影響力を波及していった。『Oil Of Every Pearl's Un-Insides』ののち、奮い立たされた多くのアーティストによって数多の作品が生み出された。本当に、本当にたくさんの作品が。そして今年、『brat』と『SOPHIE』、『Brat And It's Completely Different But Also Still Brat』が “その後” のマイルストンとして提示された。ソフィーにインスパイアされて以降生み出された、すべての音楽を称えるかのごとく。

 偉大なる彼女が亡くなってから、チャーリー・XCXはSNSで「ソフィーはわたしがいまのわたしであることに多大な影響を与えたアーティストであり、親友だった」と発言していた。「泣いてもいいんだよっていつも言ってたよね だから泣いてもいいんだ、泣いてもいいんだ、だから泣くんだ」と歌う “So I” の、肌を優しく撫でるような柔らかさ。自己探求とは、人間にしか成し得ない行為である──少なくとも、いまのところは。言い換えるなら、脆弱な自分と見つめ合えるのは自分しかいないのである。だから、泣いてもいい。結局のところ、ソフィーはそう言っているのだろう。泣きながら、生きるしかないのだと。

Famous - ele-king

 フェイマスはアルバムを出す以前からずっと有名だった。デスクラッシュのティエナン・バンクスや、ヨルゴス・ランティモスの映画『哀れなるものたち』のスコアでオスカーにノミネートされたジャースキン・フェンドリックスがメンバーとして名を連ねていたバンド、ブラック・カントリー・ニュー・ロードの “Track X” の曲のなかで「ジャック、君でも良かったのに」とBC,NRのヴォーカルに冗談めかして誘われているジャック・メレットを擁するバンド、そしてコロナのロックダウン直前にノースロンドンのビルの屋上で信じられないくらい素晴らしいルーフトップ・ライヴをおこなったバンドとして。
 そこで最後に演奏された新曲のタイトルは “The Beatles” と名付けられていた。ふざけた名前のバンドのふざけた名前の曲、しかしその曲はまっすぐにこちらに向かい、体の内にあるものを震わせ、屋上から遠くに見えるビルの群れと同じように哀しみと愛を漂わせていた。サンプラーとベース、ドラムとヴォーカル、ちょっと変わった編成でどこか欠けたものがあるということを匂わせる演奏は強制的な離別というシチュエーションと相まって、だからこそ完璧に胸を打ったのだ。いまとなっては懐かしさを感じるようなコロナ禍のミュージシャンたちの画面越しの方策のなかでフェイマスのルーフトップ・ライヴ以上のものはおそらくなかっただろう。日が暮れ夜に向かう街、青春時代の終わり、それでもその先の人生が待っている、街での暮らしを肯定するかのように、あるいは思い出を慈しむかのように、どこかの街のパーティのなかでこの曲がかかるたび、そこに意味が重ねられていく……。

 だがフェイマスは決して順風満帆だったわけではない。一貫してバンドに在籍し続けるメンバーはついにジャック・メレットひとりになり、パンデミック以降、2021年5月に “The Vally” というEPをリリースした後はほとんど沈黙していた。その間にデスクラッシュは素晴らしいアルバムを2枚出し、ジャースキン・フェンドリックスが劇伴を務めた映画が2作公開されて、メレットの名前を唄ったアイザック・ウッドはBC,NRを脱退した。音楽のシーンの季節がひとつ、ふたつと変わるくらい、あまりに長い時間が経った。

 そんななかでの1stアルバムだ。EPから3年、いまも心に残り続けているルーフトップ・ライヴからは4年が過ぎて、ついにリリースされたこのアルバムにはこれまでのフェイマスの歴史の全てが詰め込まれている。エレクトロニクスのけたたましい喧騒に、演劇風のスポークンワードとフックの効いたメロデイが交差するヴォーカル、ギターは肌を引っかくように鳴らされ、ピアノの音が孤独に意味を加えていく。長い時間を経て作られたこのアルバムは音の隙間から立ち上ってくる私的な日記や自伝のようであり、ある種感情が混迷しているとも思える。しかしその混迷にすら意味があると感じられるのだ。例のごとく皮肉をこめて『Party Album』と名付けられた本作が描くのは享楽ではなく、いずれパーティが終わってしまうという空しさだ。いくら楽しくとも、でも結局、最後にはひとりになるのだから……フェイマスはそんな孤独を31分間の逡巡として描き出す。

 シンセサイザーが生み出す希望と期待が入り交じったようなメロディに、それが裏切られ泣き叫ぶかのように声を荒げるメレットのヴォーカルがのる “What Are You Doing The Rest Of Your Life”、“God Hold You” はスクラッチされたサウンドがそのまま夢を失い激しいショックを受けて情緒不安定になった心をなぞる。続く “It Goes On Forever” ではボロボロになりながらもそれでもステージに上がり続ける悲哀が穏やかなアコースティックのサウンドとエレクトロニクスの不穏な低音の上を漂いながら唄われ、“Love Will Find A Way” ではピアノとギターのフィードバック・ノイズをもって直接的に心のゆらぎを表現する。声を荒げ、時おり自嘲気味に笑い、傷つき、ロマンティクな心を捨てきれず夢のなかで苦しんでいるようなジャック・メレットのヴォーカルは、混迷するサウンドに差し込む光のような一本の筋を通しこの音楽を特別にする。ともすれば安っぽくなってしまいそうな暗く悲劇的なロマンティシズムを自嘲と皮肉、ユーモアを込めて語ることで決してそうさせずに、その先のナイーヴな心の吐露へとたどり着かせるのだ。

 ジャック・メレットの声が震える度に、それにあわせて聞いているこちらの胸も震える。まるで映画のなかの登場人物に感情移入するように音楽を聞かせるそのスタイルはBC,NRアイザック・ウッドのスタイルにも似ていて、アルバムを聞いているうちに「ジャック、君でも良かったのに」という彼の言葉が冗談ではなく本気だったのではと思えてくる。ウッドがBC,NRの1stアルバムで「ブラック・カントリー」という言葉になくしてしまった特別なバンドの影を重ねたように、ここでジャック・メレットは「You」という言葉に失ったかつてのバンドの姿とそこに存在した時間を投影する。表面的には離れていってしまった恋を後悔する曲、だがその裏に消えてしまった夢の姿が見え隠れする。「君は夢のようなもの/決して手の届かないもの /そうでなければ記憶の中に鮮明に存在する」 “God Hold You” で繰り返される「another」という叫びにもここにない、他の何かの色がのる。メレットは『The Quietus』のインタヴューでこのアルバムについて人生の大きな変化とバンドにおけるポジションの変化のドキュメントだと語っているが、そのニュアンスはたしかにアルバムのなかに漂っている。

 ジャック・メレットは決してバンドをやめなかった。そこに存在する唯一の人間になっても彼は解散することもソロになることも選ばなかった。
 フォンテインズD.C.が唄うようにロマンスが場所なのだとしたら、きっとバンドはそこに存在するのだろう。自分の外側にいる他の誰か、共有する記憶と時間が結びついた場所。それはフットボールのクラブや、読んでいた雑誌の名前やTV番組のタイトルと同じように形を変え、たとえ別物になったとしても変わらずそこに存在し続ける。メレットは自らの手でその場所を消してしまうことを認めなかった。このアルバムを聞いているとそんなことが頭に浮かぶ。いつの日か終わりを迎えるパーティ、音楽やその他の表現が人の暮らしのなかにある美しいものやそこにある意味を見出すことを求めるならば、フェイマスのこのアルバムはきっとその答えにたどり着くだろう。メレットが言うようにこのアルバムには全てを理解したと感じた次の瞬間に消えてしまうようなひらめきが散りばめられている。完璧ではないかもしれないが、しかしだからこそ混迷のなかに差し込む一筋の光を見つけることができるのだ。とにもかくにもメレットの震える声を聞くたびに、胸が震える。

写楽 & Aru-2 - ele-king

 かたや97年生まれ、数々のMCバトルで名を馳せ、2021年にファースト・アルバム『MIMISOJI』を発表しているラッパーの写楽。かたや93年生まれ、これまでISSUGIやJJJなどの楽曲を手がけ、今年最新作『Anida』を送り出しているビートメイカーのAru-2。両者によるジョイント・アルバムが一昨日リリースされている。写楽による独特のことば選びと心地いいフロウ、Aru-2による生々しくも情感豊かなビート──注目の才能同士による化学反応を楽しみたい。

最新ソロアルバム『Anida』のリリースも記憶に新しいDJ/プロデューサー、Aru-2と2021年発表のファース『MIMISOJI』が話題となったラッパー、写楽によるジョイント・アルバム『Sakurazaka』がついにリリース!

JJJ、C.O.S.A.、Daichi Yamamoto、KID FRESINO、ISSUGI、小袋成彬ら多数のアーティスト作品に参加し、ニューアルバム『Anida』のリリースも記憶に新しいDJ/プロデューサー、Aru-2。「高校生RAP選手権」を筆頭に数々のMCバトルへの出演で界隈で名を馳せながら2021年にリリースしたファースト・アルバム『MIMISOJI』も話題となり、Aru-2『Anida』にはNF Zesshoとともに表題曲へ参加していたラッパー、写楽。この両者による話題のジョイント・アルバム『Sakurazaka』が本日ついにCDとデジタルでリリース!

Aru-2が手掛ける生々しく重厚で情緒あふれるサウンドが織りなすビートの上を、豊かなメロディセンスで歌もまじえて淡々とリリックを紡いでいく写楽のラップは強烈な化学反応を巻き起こしている。アートワークは『Backward Decision for Kid Fresino』などAru-2関連作品を手掛けている鹿児島のデザイナー/アーティスト、Yoshito Ikedaが担当。CDはスペシャルなボーナストラックを収録して見開き紙ジャケット仕様となっており、P-VINE SHOPなど一部店舗では非売品のプロモーション用ステッカーが先着特典として付属。また2025年2月にリリース予定の限定アナログ盤をP-VINE SHOPで予約すると非売品のプロモーション用ポスターが先着特典として付属になります。

<アルバム情報>
アーティスト:写楽 & Aru-2
タイトル:Sakurazaka
レーベル:P-VINE, Inc.
仕様: デジタル | CD | LP
発売日: デジタル、CD / 2024年11月6日(水) LP / 2025年2月19日(水)
品番: CD / PCD-25429 LP / PLP-7503
定価: CD / 2,750円(税抜2,500円) LP / 4,500円(税抜4,091円)
*P-VINE SHOPにてCDが発売&LPの予約受付中!
https://anywherestore.p-vine.jp/collections/aru-2
*Stream/Download:
https://p-vine.lnk.to/EtCu3F

<トラックリスト>
01. No Rush
02. Nice Choice
03. Cut Off
04. Sabaaidheel Freestyle
05. Sannomiya Daydream
06. Summer Blanco
07. Sorrows
08. Thankfully
09. Sakurazaka
10. Good Latency
11. Party Finale
12. Millefeuille (CD Bonus Track)
※LPはM1~6がSIDE A、M7~11がSIDE Bになります

<写楽:プロフィール>
97年生まれ愛知県育ち。ラッパー/ビートメイカー。
高校生ラップ選手権に出演し活躍の後、2021年アルバム「MIMISOJI」を発表。
「独自の歌詞世界」という表現では収まらないオンリーワンな言葉選びや心地良さを追求したフロウで、自然の美や自己の内面世界を描いた楽曲は、ヒップホップヘッズに留まらず幅広いファンを魅了する。

<Aru-2:プロフィール>
1993年生まれ、埼玉県川口市出身の音楽プロデューサー/ビートメイカー/DJ。
これまでソロアルバムやコラボ作品を愛と縁のあるレーベルから次々と発表、最新アルバム”Anida”を2024年リリース。
ISSUGI、JJJ、DAICHI YAMAMOTO、小袋成彬、C.O.S.A、KID FRESINO、NF ZESSHOなど数多くの国内アーティスト達への楽曲プロデュースに携わる。
近年では小村昌士監督作映画「POP!」の劇伴音楽も手掛け、サウンドエンジニアとしても様々なアーティスト作品を支える音楽ミュータント。

Dialect - ele-king

 はたしてアンビエントの分野にはまだ冒険の余地が残されているだろうか。パンデミックを機にあまりにもリリース量が増え、独創的とはいいがたい音源と遭遇する頻度も増した今日。あるいはストリーミング全盛の時代にあって、それは作業BGMや商業施設の環境音楽と区別がつきにくくなっている。
 たんに無視できるだけではなくて、集中もできること。忘れられがちだが、それこそがアンビエントの出発点だった。深い聴取に耐えうるためには、都度そこになにかしら新しい発見がなければならない。アンビエントがその条件を満たし、以後発展をつづけることができたのは、そもそもそれがテープ・ループの実験として誕生したからではないだろうか。切ったり貼ったりするわけだから、テープ編集それ自体がサウンド・コラージュである。つまり、アンビエントはマイルス・デイヴィスとテオ・マセロ、あるいはカンとホルガー・シューカイの文脈につらなる、編集の音楽でもあるのだ。

 リヴァプールのアンドリュー・PM・ハントは、現代においてサウンド・コラージュとしてのアンビエントを拡張しようと奮闘する挑戦者のひとりだ。サイケデリックなポップ・バンドのアウトフィット、ミニマリズムを探求するインストゥルメンタル・アンサンブルのエクス・イースター・アイランド・ヘッド、その主要メンバーと組んだランド・トランスなど多くのグループに参加する彼は、ダイアレクト名義のソロ・プロジェクトでさまざまな具体音や生楽器、電子音を切り貼りし、独自の夢想的なサウンドを紡いでいる。すでに4枚のアルバムが送り出されているが、彼の名をもっとも広めることになったのは、室内楽の要素も導入した前作『Under ~ Between』(2021年)だろう。
 通算5枚目のアルバム『Atlas Of Green』も創意工夫に満ちている。再生ボタンを押すとリラックスしたギターの演奏に導かれ、素っ頓狂な笛らしき音が乱入してくる。どことなく中世的なものを想起させるこの笛の音は全体のイメージを決定づけていて、次第に加算されていく弦やら鍵盤やら電子音、謎めいた人声、鳥の鳴き声なんかのなかでも際立った存在感を放っている。あるいは “Late Fragment” で主役を張る弦楽器。これまた古楽的な響きを携えているし、古びた電子機器のような音の反復が耳に残る8曲目のトラックは “Archaic Quarter Form” なんて題されている。インタヴューによれば、「グリーン」なる名前の主人公が過去の壊れた断片に遭遇しながら未来世界を案内する、というのが本作のアイディアのようだ
 コンセプトの面でこのアルバムは、三人の人物からインスパイアされている。ひとりはアメリカの作家ジーン・ウルフ。冒頭 “New Sun” の曲名はおそらく、寒冷化した未来の地球が舞台となる小説『新しい太陽の書』からとられたものだろう。もうひとりもアメリカの小説家で、『ゲド戦記』で有名なアーシュラ・K・ル=グウィン。彼女は「わたしたちは資本主義のなかに生きていて、その力から逃れられないように見えます。でも、かつて王権神授説もそうでした」なんて鋭い寸言を残していることでも知られている。三人目はフェデリコ・カンパーニャなるイタリアの哲学者。検索してみると、「想像の深みを掘り下げて、現在の技術主義と国家資本主義の神話にたいしてオルタナティヴな現実を創造することができるような、新しい構造を探す必要があります」なんて発言が見つかる。ようするに、三人ともそれぞれのやり方で、未来についてあれこれ考えている、と。

 振り返れば、ドレクシアのアフロフューチャリズムには奴隷船という過去と海底で高度に発達した文明という未来が同居していたのだった。アンドリュー・ハントは白人ではあるものの、彼もまた近代以前の古き民衆的なものを呼び起こしながら他方で未来を想像するという、大胆な冒険を試みているわけだ。深く惹きこまれる音のコラージュによりアンビエントの可能性を広げる本作は、他方で「失われた未来」のような考え方からの脱却をはかってもいる、と。
 ここ数日、米大統領選の速報に翻弄されながらも不思議と平常心を保っていられたのは、このアルバムが表現する「ポスト未来」のサウンドに接していたからかもしれない。

interview with Kelly Lee Owens - ele-king

 エレクトロニック・ミュージックにおける2017年といえば、ヴィジブル・クロークスがニューエイジ・リヴァイヴァルに火をつけたり、ジェイリンがフットワークを新たな次元に押し上げたり、〈XL〉に移籍したアルカが自己を肥大化させる方向に舵を切ったり、チーノ・アモービが非常にコンセプチュアルかつ重厚なコラージュ作品を世に問うたり、ツーシンやDJパイソンがデビュー・アルバムを発表したりと、ディケイドの終わりに向かってさまざまな傾向が噴出してきた年だ。当時〈Smalltown Supersound〉から放たれた、ドリーム・ポップとテクノの溝を埋めるケリー・リー・オーウェンスのファースト・アルバムもそうしたさまざまな芽吹きのひとつだった。透きとおったヴォーカルの影響もあるだろう、評判を呼んだ同作以降、彼女の存在感は一気に高まっていくことになる。
 パンデミック中に発表された2枚目『Inner Song』(2020年)は時世に抗うかのようにフロアライクな側面を増大させたアルバムだったけれど、他方でウェールズの労働者階級の村で育ったという自身のアイデンティティを確認するかのように、同郷の大物ジョン・ケイルによるウェールズ語のヴォーカルをフィーチャーしてもいた。そうしたルーツへの意識と関連があるのかないのか、3枚目『LP.8』(2022年)では大きく路線を変更し、アイルランドのエンヤとスロッビング・グリッスルの中間を目指すという大胆なコンセプトのもと、独自のやり方でノイズとアンビエントを同居させている。オーウェンスのベストな1枚だろう。

 それから2年。デペッシュ・モードとのツアーを経験した彼女は今年7月にザ・1975のドラマー、ジョージ・ダニエルが設立した〈dh2〉と契約を結び、10月に4枚目のアルバム『Dreamstate』を送り出している。レーベル移籍とともに心境にも変化が訪れたのかもしれない。バイセップやケミカル・ブラザーズのトム・ローランズとのコラボ曲を含む新作『Dreamstate』はふたたびダンスフロアにフォーカス、トランシーな感覚もまといつつ、とことん恍惚を追求している。なんでも、過去を振り切るためには多幸感を追い求める必要があったのだとか。5月の来日公演ではハード寄りのテクノをかけ大いに会場を盛り上げていたオーウェンス。新作もまた最近の流れ、ポスト・パンデミックのダンス熱を代表する作品のひとつとなるにちがいない。

都会的な要素というのは、わたしがこの17年間、ロンドンやマンチェスターといった都市に住んできた影響をあらわしている。でもわたしにとって真の故郷は、わたしたちの言葉で言う「Cymru(=ウェールズ)」で。

昨年はデペッシュ・モードの北米ツアーをサポートしていましたね。その経験はあなたになにをもたらしましたか?

ケリー・リー・オーウェンス(Kelly Lee Owens、以下KLO):毎晩、大勢の観客の前でプレイして、大規模な空間を音で埋める必要性に迫られたことは、その後のスタジオ制作にたしかな影響をもたらしたと思う。ツアーから戻って最初に書いた曲が、アルバム最初の曲 “Dark Angel” なのだけど、じつはわたしがデペッシュ・モードのツアーTを着ている動画があって、いつか投稿すると思うけれど、そのTシャツのバックプリントには天使の羽が描かれていて。動画では、わたしがシンセのメロディを演奏しているんだけど、とてもアンセミックな音響。そういう意味で、今回のアルバムでは、大きな空間を埋めるための音をつくるようになったと思う。その一方で、デペッシュ・モードの素晴らしいところは、そういった大きな空間においても、親密な瞬間をつくりあげられるということ。だからビッグで大胆で、アンセミックで感情に訴えかける音を表現すると同時に、静かな瞬間も加えたいと思うようになった。それが『Dreamstate』の音の旅路に反映されていると思う。これはツアーに参加する前から思っていたことなんだけど、ツアーに参加したことで、そのあたりの領域を探求していきたいという思いが、さらに強くなったと思う。それに、彼らと一緒にいること自体がすごく刺激的だったし、わたしの人生における最高な体験のひとつになったと思う。

〈Smalltown Supersound〉を離れ、新作をザ・1975のドラマー、ジョージ・ダニエルが〈Dirty Hit〉とともに立ち上げたレーベル〈dh2〉から出すことになった経緯を教えてください。

KLO:まず、〈Smalltown Supersound〉とは素晴らしい関係を築いてきたということを言っておきたい。レーベル主宰者のヨアキム・ホーグランド(Joakim Haugland)はわたしのことをずっと応援してくれて、わたしを成長させてくれた。でもその名のとおり、〈Smalltown Supersound〉はとても小さなレーベルで、現時点のわたしのキャリアにおいては、もう少し大きな土台が必要だと感じていたところで。でもヨアキムはその考えに賛成してくれて、今後、ヨアキムとわたしと〈dh2〉のひとたちで集まって、お茶でもすることになると思う。いままでほんとうによくしてもらった。それから〈dh2〉のジョージは、前のレーベルと同じような方針で、アーティストの芸術性や寿命をとても大切にするひとで。ジョージとは何年か前からメールで連絡をとっていたのだけど、去年、ザ・1975のライヴ終わりに会う機会があった。チャーリー(・XCX)に誘われて、彼らのアフター・パーティでわたしがDJ をやって。それ以来ジョージとはずっと連絡をとっていたんだけど、〈Dirty Hit〉とジョージはこのレーベルをかなり前から立ち上げたかったみたい。そして、ついにそれを実現しよう! と彼らが決断したその数分後に、わたしのマネージメント会社が彼らに連絡をとって、「ケリーがレーベルを探しているんだが、〈Dirty Hit〉と契約を結べないだろうか?」と持ちかけたらしい。まさにセレンディピティ(思いもよらぬ幸運)だった。そしてわたしはジョージとロサンゼルスでランチをして話し合った。すべてがうまくおさまった感じがした。〈Dirty Hit〉からはファミリーみたいな親近感を感じる。わたしにとって、コミュニティの一部であると感じたり、リアルな連帯感をおぼえるということは昔から大事なことだった。だから〈Dirty Hit〉のようなレーベルと一緒にこれからの旅路を続けていくことができてとても嬉しく思う。

新作『Dreamstate』はダンス・アルバムです。路線としては、アンビエントやノイズの要素が強かった前作『LP.8』ではなく、パンデミック中にダンス・ビートを打ち鳴らした前々作『Inner Song』のほうに近いと思いますが、『LP.8』にはあまり手ごたえを感じられなかったのでしょうか?

KLO:じっさいのところ、その逆。『LP.8』はパンデミック中につくったもので、8日間という短い期間で素早く仕上げた作品で。無意識に流れてくる思考を表現した、そのときの瞬間をあらわしたものだった。あの作品は、次の作品に向けての跳躍台としてつくる必要があったんだと思う。ふたたび、よりポップでダンス・ミュージック寄りの明るいものをつくるために、『LP.8』のような深い領域を探る必要があった。『LP.8』の出来にはとても満足している。『LP.8』というタイトルにしたのは、8枚目のアルバムみたいに感じられるから。つまり、たいていの場合、商業的な作品をたくさん出してから「今度は、誰にも制限されずに、自分がつくりたいものをつくる!」というのが8枚目くらいにくると思うのよ。わたしはタイムマシーンに乗って、8枚目のアルバムを先まわりしてつくったという(笑)。だから『Dreamstate』はわたしの3枚目ということになるね。こんなことを言ったらまわりがどう思うかわからないけれど、アッハッハ(笑)! でもわたしはそう考えている。『Dreamstate』はわたしの3枚目の商業的なアルバムで、『LP.8』は自分の無意識に深く潜った、奇妙で興味深い時期につくった作品。この作品には感謝している。じつはデペッシュ・モードのマーティン(・ゴア)と話していたときに、わたしの作品群で一番のお気に入りは『LP.8』だと言ってくれて。『LP.8』はそんな作品。大好きなひともいれば、好きじゃないひともいて、好きじゃないひとは、まだそのよさに気づいていない。それはそれでいいと思う。それが芸術というものだから。

わたしは過去を振り返って熟考したり、未来を心配したりする傾向があって、とにかくそういうものをすべて手放したかった。現在の瞬間に集中したかった。それが多幸感というものだと思うから。現在という瞬間に存在するということ。

あなたはウェールズの労働者階級の村で育ったそうですが、ウェールズという出身地はあなたのアイデンティティにとって大きなものですか?

KLO:とても大きい。それは年を重ねるにつれて、さらに大きくなっていっている。自分の起源やルーツというものはすごく大切なことだと思うし、自分の歴史を理解したいと思うのは人間として基本的なことだと思うから。たとえそれが痛みを伴ったり、複雑なものであったとしても、自分がどこから来ているのかを知ったり、その起源に誇りや美しさを感じることができるのは大事なことだと思う。それこそが自分自身の一部であり、系統であり、それがつねに自分のなかに流れているということが、大人になるに連れてわかってきた。そしてそれはわたしの音楽にもあらわれるし、サミュエル・ブラッドリーと制作した、アルバムのアートワークにもあらわれていると思う。わたしたちは、自然がある場所で撮影をして、自然に囲まれているわたしと、鉄塔といった都会を象徴するものとの対比を表現したかった。都会的な要素というのは、わたしがこの17年間、ロンドンやマンチェスターといった都市に住んできた影響をあらわしている。でもわたしにとって真の故郷は、わたしたちの言葉で言う「Cymru(=ウェールズ)」で。

今回これほど多幸感に満ちたアルバムをつくりたくなったのには、なにかきっかけがあったのでしょうか?

KLO:自身からの解放というものを必要としていた。ちょうどプライヴェートでも11年か12年間ともにしてきた、自分の大きな一部(パートナー)と別れを告げたばかりで、過去に縛られたくないという思いがあった。そこから解放される必要があった。しかもわたしは過去を振り返って熟考したり、未来を心配したりする傾向があって、とにかくそういうものをすべて手放したかった。現在の瞬間に集中したかった。それが多幸感というものだと思うから。現在という瞬間に存在するということ。その多幸感は、広い空間で踊っていて、他のひとと共有できるものもあれば、“Trust & Desire” や “Ballad” のような静かな瞬間にも感じられると思う。その瞬間に自分がどう感じているのかと向き合うこと。それがたとえ辛いものであっても、自分はちゃんとそれを受け止めている。それがいまの瞬間に存在するということ。そういう、「自身からの解放」が今作のテーマだったのだと思う。自分を、過去や未来から解放して、自分に自信を持つということ。

今回、共同プロデューサーのひと組としてバイセップを迎えたのはご自身の希望ですか?

KLO:そう、彼らとは “Rise” という曲しか一緒に曲をつくらなかったけれど。あとはケミカル・ブラザーズのトム・ローランズと “Ballad” を制作した。今回のアルバムに参加してもらったひとたちはすべて自分のコネクションから派生したもの。あ、ひとつの例外を除いて。フィル・スカリー(Phil Scully)というプロデューサーとロサンゼルスで一緒に制作をしたけれど、それはレーベルに紹介してもらったつながりだった。わたしたちは “Love You Got” や “Higher” を一緒につくって。とても素晴らしい経験だった。バイセップとは昔から一緒に仕事をしたいと思っていたし。彼らもコクトー・ツインズが好きだったりとインディ・ミュージックの共通点や、メロディックな音楽が好きだったりする共通点があるから。そういうわたしたちの共通点が今回の曲からも聴きとってもらえると思う。バイセップは憧れの存在だったから、まさに夢が叶った瞬間だった。彼らがわたしを彼らの世界に招き入れてくれてすごく嬉しかった。

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マドンナの『Ray of Light』をおもに聴いていた。〔……〕真似するということではなくて、『Ray of Light』から感じられた、ある種のフィーリングに近づきたいと思った。

バイセップとの曲での役割分担を教えてください。制作はどのようなプロセスを経て進めていったのでしょうか?

KLO:「ある午後の時間」みたいな感じだった。ホクストンにある彼らのスタジオに行って、温かい歓迎を受けた。ほとんどおしゃべりしていて。一緒に時間を過ごして、音楽や、自分達のバックグラウンドなどたくさんのことを話した。制作プロセスにおいて、それがいちばん大事な部分だったりするもので。それにお互い、美味しいものを食べることに目がなくて、ウフフフ! 彼らはすごくおいしいタイ料理のお店に連れていってくれて、お昼をご馳走してくれた。その後、スタジオに戻ってきてジャム・セッションをやったの。わたしはあまりジャム・セッションはやらないほうなんだけど、それがバイセップのやり方なのかもしれない。わたしは808を使っていて、マットはロジックかエイブルトンを使っていて、アンディはシンセを使って、彼らの素晴らしいセットアップに音を通していた。そして1分半ほどのトラックができた。とてもラフなもの。わたしはそれを持ち帰って、メロディと歌詞を書き、その上にシンセやほかの要素を加えた。でも曲の骨格となる部分は30分くらいでつくったの! といっても、制作というものはその30分だけじゃなくて。先ほども話したように、一緒にとった食事であったり、会話であったり、そういう最高な要素がすべて制作につながっている。ほんとうに素晴らしい経験だった。 

新作にはケミカル・ブラザーズのトム・ローランズも参加していますね。彼らの作品ではなにがいちばんお好きですか?

KLO:オーマイガッド! それはかなり難しい質問ね。ちょっと待って、彼らのディスゴグラフィーを確認する。……アルバムは難しいけれど、いちばん好きな曲はある。最近いちばんよく聴いているのは “Star Guitar”。

通訳:あの曲は最高ですよね!

KLO:もう最高! 今回のアルバムにも “Air” という曲があって、“Star Guitar” と似たような反復する感じや、動いている感じがする曲で。オープンカーに乗っていて、髪の毛が風になびいているイメージ。アルバムだと『Surrender』(1999年)かな……好きなアルバムはちょくちょく変わるのよ……『Dig Your Own Hole』(1997年)かもしれない……わからない! わたしのなかでは、しょっちゅう変わっているから。ケミカル・ブラザーズって一度も駄作をつくったことがないと思う。25年経ったいまでもそう言えるってすごく稀なことだと思う! とにかくいま、いちばんよくリピートして聴いているのは “Star Guitar”。彼らの存在自体に夢中なの!

この新作の制作中によく聴いていた音楽はありますか? それらから影響は受けましたか?

KLO:マドンナの『Ray of Light』(1998年)をおもに聴いていた。制作中は音楽を聴かないようにしているんだけど、すごく大変だった。だってデペッシュ・モードとツアーをしていたんだもの(笑)! だからデペッシュ・モードとマドンナの『Ray of Light』をよく聴いていた。『Ray of Light』はダークな要素と明るい要素、多幸感と深みの両方が混在している。それが面白いと思った。それにあのアルバムでは、彼女のヴォーカルがとても近くに聞こえる。すぐ自分の側で歌われている感じがする曲がいくつかあって。わたし自身も今回のアルバムの何曲かではそういう聴かせ方をしたいと思った。それから、無駄なものを削ぎ落とした感じも追求したかったから、その感じが “Trust & Desire” や “Ballad” にあらわれていると思う。それに去年わたしは『Ray of Light』のプロデューサーである、ウィリアム・オービットとランチをする機会があって。素晴らしいミーティングだった。だから宇宙からの啓示というか、『Ray of Light』の本質的な要素が、自分がつくっていたアルバムにも注入されたと思う。それはサウンドを真似するということではなくて、『Ray of Light』から感じられた、ある種のフィーリングに近づきたいと思った。

今回の新作はこれまで以上にシンセやヴォーカルの残響(リヴァーブ)に非常にこだわりがこめられているように聞こえました。あなたの音響にたいするこだわり、音響に向き合うときの意識について教えてください。

KLO:わたしはすべての要素にこだわりや考えをこめていると思う。その理由は、感情が流れているところを突きとめたいから。わたしの目的はただそれだけ。曲がじゅうぶんに流れている感じになり、リスナー自身がその「dreamstate(夢幻状態)」に入りこめる感じ、曲の流れに入りこめる状態にしたい。そして中断されることなく、その感情の本質に近づけるようにしたい。もちろん曲の途中で、中断する瞬間を意図的につくることもあるけれどね。わたしにとって音楽はタペストリーみたいなものであり、音を編み上げているような感じで。べつに音が色として見えるとかではないんだけれど、音の波長は見える。それを編み上げている感じ。そういう表現しかできないんだけど……。その流れがすべててつながった時点で曲は完成する。だから全体像につながりを持たせて、リスナーが感情を最大限に感じられるためのディティールは非常に重要。

最近では、他人の目線がないと、自分たちにとって夢とはなんなのかということがほんとうにわからなくなってしまっている。だからそういうものから離れて、自分にとって夢とはなんなのかということを見出すことはとても大切だと思う。

タイトルの「Dreamstate」が意味するものとは、ずばりクラブでの夢のような状態、あるいは音楽がもつ至福の逃避性のことでしょうか?

KLO:その両方でもあるし、それよりも大きな意味合いがあると思う。〔フランスの哲学者、ガストン・〕バシュラールが書いた『空間の詩学(The Poetics of Space/La Poétique de l'espace)』(1957年)という素晴らしい本があるんだけど、そこでは夢想(daydreaming)することの重要性が説かれていて。夢想することは、夜に見る夢とは違う。夜に見る夢は、無意識に潜りこむことで、疲弊することもときにはあるよね(笑)。その一方で、夢想とは、受動的な行為であると同時に、主体的な行為でもある。でも受動的な部分の方が大きくて、安らかな状態。わたしは、そういう安らかな状態になる時間と空間を積極的に持つようにいつもひとに勧めている。このインタヴューがはじまる前も、わたしは自宅の庭に座ってそういう時間をとった。たしかに寒かったけれど、ジャンパーを着て、紅茶を飲んで、太陽の光を浴びて、地に足をつけた。そして10分間だけ、その瞬間に身を投じて夢想した。自分がそういう状態を欲していたし、音楽でも夢想という状態をつくりたいと思った。そうすることで人びとが集ったときに夢想できるし、それ以上に大切なのはひとりでもその状態になれるということ。技術が発達した現代という時代において、その状態になることは重要性を増していると思う。わたしたちは、外部から「どんな夢を見るべきか」、「夢とはなんなのか」を押しつけられている。最近では、他人の目線がないと、自分たちにとって夢とはなんなのかということがほんとうにわからなくなってしまっている。だからそういうものから離れて、自分にとって夢とはなんなのかということを見出すことはとても大切だと思う。

5月に東京で開催されたOUTLIERであなたのDJを体験しました。ハード寄りのテクノのセットだったように記憶していますが、日本のオーディエンスの印象は他国のと比べてどう違っていましたか?

KLO:いい質問ね。日本のひとたちはディティールにこだわっているというか、その場をすごく大事にしていて、音楽に聴き入っている印象があった。わたしの行動をちゃんと観てくれるし、聴いてくれる。わたしはステージからみんなに「自分を解放して!」といつもアピールしている。みんなに自由に動いて欲しいから。だから日本でもそういうアピールをしていたんだけど、それはどの国でもやっていることで。ひとによっては、ただその場に立っていることが自由なのかもしれないし、ただ観ていることが自由なのかもしれない。それがなんであれ、その自由をみんなが楽しんでいてくれたら嬉しい。ハードなテクノになったのは、クラブという空間で、夜の遅い時間にプレイしたから。それにライヴではなかったから、とても違うものになった。夜の遅い時間はそういう音のほうが元気に踊り続けられると思って。とにかく最高だった。でも、日本にはオーストラリアに行く途中に2日間だけ寄っただけだったから短すぎた。また絶対に日本へ行きたいし、今度行くのがすごく楽しみ!

キュレイターのボノボとは以前から交流があったのでしょうか?

KLO:サイモン(・グリーン)は何年も前からの友人で。ジョン・ホプキンズが共通の友人で、その辺りのひとたちのあいだで交流関係がある。それに、サイモンもライヴとDJ をやるから、わたしと共通している部分も多くて。あとロサンゼルスにも共通の友だちがいるから、ロサンゼルスに行ったときは一緒に遊んだり。サイモンはわたしの活動を応援して励ましてくれたりする。エレクトロニック・ミュージックをやっているソロ・アーティストにとって、ほかのアーティストと仲よくなったり、互いを助け合うことは大切なことだと思う。だから彼との関係は大切に思っている。

東京には2日間しかいられなかったとのことですが、どこか行かれたところはありましたか?

KLO:ほとんど行けなかった。〔神田小川町にある〕チームラボに行ったとき以外は渋谷を出なくて。ほんとうに短すぎで! 日本のいろいろな場所を見てまわりたい。田舎にも行ってみたいし、温泉にも行きたい。伝統文化にも触れたい。あ、でも日本での食事は素晴らしかった! ひとも最高! 日本という国にはほんとうに共感が持てた。

通訳:気に入った場所はありましたか? レストランなど?

KLO:(レーベル担当に)あのディナーは、なんというところだったっけ? 名前が思い出せないけれど……

レーベル担当:渋谷にあるお寿司屋さんに行きましたね。

KLO:あのときのディナーがわたしにとって初のちゃんとした、お寿司体験だった。(板前さんが)目の前で調理してくれる感じ。あれほど満腹になったことはいままで一度もなかった! でもおいしくて、すごく幸せだった! それはよくおぼえている。それから、小さなコーヒー屋さんを見つけて入ったりしたのも覚えている。とにかくすべてがおいしくて、すべてがよく考えつくされていると思った。とても素敵なことだと思う。ディティールにこだわっている感じも好きだし、日本が大好きになった。

今後これまでよりも大きな舞台で活動していくことになるかと思うのですが、現時点で戸惑っていることや苦労していることはありますか?

KLO:これはクレイジーに聞こえるかもしれないけれど、わたしは大勢のクラウドの前でプレイするほうが安心感を得られる。すごく居心地がいい。2万人の前でプレイして、最大は7万か7万5千人の前だった。ついに2万人では物足りなく感じてしまって、もっとエネルギーが欲しいと思ってしまったの! けっしてエゴイスト的な感じで思っているのではなくて、ただそれがものすごくユニークで特別な行為だから。デペッシュ・モードの以前のレーベルのA&Rのひとで、バンドの友人でもあり、第5のメンバーとも言われているダニエル・ミラーが、わたしに「音が会場の奥までちゃんと届いていて、いままでに見たなかで最高のサポート・アクトだ」という優しい言葉をくれた。自信を持って、大勢のひとたちを率いて、みんなを音楽でとりこむのがすごく楽しい! だから、じつは、小さな会場でやるときのほうが緊張するかもしれない(笑)。

最後に、日本のリスナーに向けてメッセージをお願いします。

KLO:日本にまた行く機会をとても楽しみにしています! 日本にはわたしを心からサポートしてくれるファンがいる感じを受けたらから、そういうひとたちとたくさん会って、つながりを感じたい。それから、これは話し合って計画・企画する必要があるけれど、日本でのライヴも実現させたい。とにかく日本ではたくさんのひとに会って、ファンを増やしていきたい。それに、プライヴェートで日本の各地もまわりたいと思っているし(笑)。すごく楽しみにしている!

変わりゆくものを奏でる──21世紀のジャズ - ele-king

「チネンは、21世紀がジャズにとって豊かな時代であると主張する」──『ピッチフォーク』
「コンテンポラリー・ジャズについての素晴らしい本」──『ワシントン・ポスト』
「無限の可能性を秘め拡大し続けるサウンドを描いた想像力と表現力」──『ロサンゼルス・タイムス』
「素晴らしく鋭い」──ソニー・ロリンズ
「著者のジャズへの深い理解と知識によって、魅力的な読み物となっている」──ハービー・ハンコック

カマシ・ワシントンからウィントン・マルサリス、
ロバート・グラスパーにエスペランサ・スポルディング、
そしてブラッド・メルドーにメアリー・ハルヴォーソン……

アメリカにおいてジャズは21世紀になってどのように変わり、
そしてどのように変わらないのか……
刊行と同時にすべての米国主要メディアから絶賛された名著がいよいよ上陸!

元ニューヨーク・タイムズ紙のジャズ批評家
ジャズ・ジャーナリスト協会選定の優秀執筆賞の13回受賞、
アメリカ屈指のジャズ批評家である著者が、
その博識と気品ある文体をもって21世紀ジャズの魅力を解説する

※21世紀の(2024年の現時点までの)必聴アルバム選:154作のリスト付き

(本書より)
ジャズは常に最先端を探究してきたし、複数の領域にわたり実験をおこなってきた。その点は、過去はもちろん現在も同様だ。しかし前衛の修錬と形式上の発明は今や著しい度合いで主流にまで巧みに浸透し、ジャズの美学的な中心をずらしてしまった。骨董品収集めいたホット・ジャズ熱──懐古趣味を堂々と認め、誇りとする者たちの領域──の復興ですら、多言語的なハイパーモダニズムを志向する現潮流、予想外の混合物と集合体を目指すトレンドをせき止めることはできない。

(登場するアーティスト)
カマシ・ワシントン、ウィントン・マルサリス、セシル・マクロリン・サルヴァント、ブラッド・メルドー、エスペランサ・スポルディング、ジョシュア・レッドマン、ジョン・ゾーン、ティム・バーン、ジャック・ディジョネット、ポール・モチアン、ウェイン・ショーター・クァルテット、ジェイソン・モラン、マーク・ターナー、オーネット・コールマン、ヴィジェイ・アイヤー、ロバート・グラスパー・エクスペリメント、フライング・ロータス、ジェフ・パーカー、エスペランサ・スポルディング、シャバカ・ハッチングス、モーゼス・ボイド、リオーネル・ルエケ…………そしてメアリー・ハルヴォーソン…………(ほか多数)

四六判/440頁

■目次

序文
1 政権交代
2 フロム・ディス・モーメント・オン
3 アップタウン、ダウンタウン
4 山を演奏する
5 新たな年長者たち
6 ループされるギャングスタリズム
7 ジャズを学ぶ
8 侵入し急襲せよ
9 変わってゆく同じもの
10 露出
11 十字路
12 スタイルの対決
後書き
※21世紀の(2024年の現時点までの)必聴アルバム選:154作

[著者プロフィール]
ネイト・チネン(NATE CHINEN)
ネイト・チネンはジャズに関して20年以上執筆してきた。ジャズ・ジャーナリスト協会の選ぶ「Helen Dance–Robert Palmer Award for Excellence in Writing」賞を13回受賞した彼は、『ニューヨーク・タイムズ』で12年にわたり音楽に関する報道をおこない、『ジャズタイムズ』でも長期連載コラムを執筆した。2017年にWBGO〔※ニュージャージー州のジャズ専門公共ラジオ局〕の記事製作責任者となり、オンライン報道を指揮する一方で、NPRミュージック向けに幅広いジャズ番組の企画に貢献している。著名なジャズ興行主である、ジョージ・ウィーンの自伝『Myself Among Others: A Life in Music』(2003)を共著し、また音楽評論家アレックス・ロスの編集した「Best Music Writing 2011」にも文章が収録されている。妻とふたりの娘と共に、ニューヨーク州ビーコン在住。

[訳者プロフィール]
坂本麻里子

1970年東京生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。ライター/通訳/翻訳者として活動。ロンドン在住。訳書にコージー・ファニ・トゥッティ『アート セックス ミュージック──コージー・ファニ・トゥッティ自伝』、ジョン・サヴェージ『この灼けるほどの光、この太陽、そしてそれ以外の何もかも──ジョイ・ディヴィジョン ジ・オーラル・ヒストリー』、マシュー・コリン『レイヴ・カルチャー──エクスタシー文化とアシッド・ハウスの物語』、ジェン・ペリー『ザ・レインコーツ──普通の女たちの静かなポスト・パンク革命』、ハンナ・ロス『自転車と女たちの世紀』、マーク・フィッシャー『K-PUNK 夢想のメソッド──本・映画・ドラマ』『K-PUNK 自分の武器を選べ──音楽・政治』、ほか多数。

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
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TSUTAYAオンライン
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◇7net(セブンネットショッピング) *
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紀伊國屋書店
◇三省堂書店 *
有隣堂
◇くまざわ書店 *
TSUTAYA
大垣書店
◇未来屋書店/アシーネ *

* 発売日以降にリンク先を追加予定。

Terry Riley - ele-king

 先日音盤化が発表された、テリー・ライリーの清水寺における『In C』のライヴ演奏。12月20日にリリースされることになっているその音源を、世界最速で聴けるチャンスが訪れた。11月15日(金)・16日(土)・17日(日)の3日にわたってUPLINK 京都で開催されるリスニング・セッションがそれだ(16日には東京のUPLINK 吉祥寺でも開催)。
 UPLINK 京都のある新風館の中庭では、ダムタイプの古舘鍵がキュレイターを務めるサウンド・インスタレーションも実施され、なんとSUGAI KENの手によるサウンドが流されるという。試聴会にインスタレーションにと、二度おいしいイベントだ。詳細は下記よりご確認を。

京都・新風館11月のフルムーンイベント
テリー・ライリー清水寺での「In C」ライブ音源をUPLINKで世界初公開!中庭では、古舘鍵(ダムタイプ)キュレーションによる世界的に活躍するサウンドアーティスト/トラックメイカーSUGAI KENのサウンドインスタレーションを実施

会場:UPLINK 京都/UPLINK 吉祥寺、新風館中庭

日程:2024年11月15日(金)、16日(土)、17日(日)の3日間
※UPLINK 吉祥寺でのリスニング・セッションは16日のみの開催となります


Photo: FEEL KIYOMIZUDERA / Sudo Kazuya

2024年7月の満月の夜、ミニマル・ミュージックの創始者、テリー・ライリーの代表作「In C」の誕生60年を祝い、音羽山清水寺本堂舞台で開催された奉納公演。チケットは発売と同時にソールドアウトし、まさに伝説の夜となりました。

今回、UPLINKで開催するリスニング・セッションでは、本奉納公演の音源を世界初公開。
UPLINKのオーディオ設備に合わせて制作した7.1ch音源を「暗闇」という特殊な環境のなかで体験いただく、特別な機会となります。

あえてスクリーンに映像を映さない環境で本作品に触れることは、「音」の世界に没入する一つのきっかけとなり、普段の音楽鑑賞よりもぐっと感覚が刺激されることでしょう。

本奉納公演のライブ盤の発売は、2024年12月20日(金)。ぜひこの機会に、最高の環境で、特別な夜の感動をひと足先にお楽しみください。


また、同期間中、UPLINK 京都がある新風館の中庭では、ダムタイプのメンバーであり、文化庁メディア芸術祭大賞を受賞した古舘健がキュレーション/コーディネーションを務めるサウンドインスタレーションも展開します。

古舘と世界的に活躍するSUGAI KEN(サウンドアーティスト/トラックメイカー)がタッグを組んだ本作品は、UPLINKでのリスニング・セッションとリンクさせる形で、視覚ではなく、聴覚を対象とした内容に。中庭に設置された8台のスピーカーからは、SUGAI KENが制作した木を感じる音色が多層的に鳴らされているので、訪れた際には、聞こえてくるサウンドにも注目です。

サウンドインスタレーション(チケット不要)のみを体験いただくこともできますが、リスニング・セッションの前後で楽しめば、その没入感と余韻がより深まります。ぜひ2つのイベントをあわせてご堪能ください。

11月の京都・新風館のフルムーン企画の一環で行われる豪華2本立てのイベントは、UPLINKとしばしが初めてプロデュースを手がけました。

mouse on the keys - ele-king

 かねてからmouse on the keysをフェイヴァリットだと公言していたロレイン・ジェイムス、彼女の最新作『Gentle Confrontation』のCD盤にもその共作が1曲(Scepticism with Joy)収録されていたが、去る11月1日にリリースされた新作『midnight』でも彼らのコラボレーションは引き継がれ、ここでは2曲の共作が聴ける。しかもその2曲(1曲はピアノを活かした2分弱の短いアンビエント風、もう1曲はカミソリ・ビートが刻まれるダンス・トラック)ともに魅力的だ。もっとも今回のアルバム『midnight』を通して聴くと、インストゥルメンタルなポスト・ロック・バンドとしてのmouse on the keysがいまなぜロレインとの共作なのかがよくわかる。ロンドンのアンダーグラウンドなダンス・ミュージックの世界から放たれた軌道が、東京のmouse on the keysが描く脈動といま音楽的に交わっているのだ。注目しましょう。
 なお、11月20日のリリース・ライヴにはロレイン・ジェイムスも駆けつける!

mouse on the keys
midnight

fractrec /felicity
配信リリース
Tracklist:
1, Introduction
2, One Last Time
3, Fail Better
4, 24:59 (feat. Loraine James)
5, Two Five (feat. Loraine James) 6, midnight
7, The Dawn (midnight version) 8, Sleepytinne
9, Womb
10, Little Walk
11, Undone


mouse on the keys
『4th Full Album midnight Showcase -FRACTREGION Vol.3-』
11/20 (水) EX THEATER ROPPONGI 開場 18:00 開演 19:00

出演:
mouse on the keys

Guest musicians:
Loraine James/徳澤⻘弦/常田俊太郎/Taikimen/飛田雅弘/山﨑聖之/坂本和
哉/and more...
チケット料金:
1F前方スタンディング ¥7,000
1F 前方スタンディング 23 歳以下 ¥3,000 ※身分証必須(100 枚限定)
1FS席 ¥9,000
1FA席 ¥8,000
2Fスタンド席 ¥7,000
※全券種ドリンク代別
※入場制限: 4 歳以上チケット必要

【プレイガイド】
[e+]
[PIA]
[LAWSON]
主催:HOT STUFF PROMOTION 企画/制作: fractrec / fractLLC.
制作協力:株式会社 RE-MiX / 株式会社 RE-MiX arts
【SNS】
X / Instagram / Official web site

【プロフィール】
mouse on the keys:
川﨑昭(Drums)、新留大介(Piano/Keyboard)、白枝匠充(Piano/Keyboard)によるインストゥルメンタル・バンド。ポストパンク、ポストハードコア、テクノ・ミニマリズム、現代音楽を取り入れ、2台のピアノとドラムとで織りなすサウンドと、ミニマルで幾何学的抽象を思わせる映像演出によるライブパフォーマンスは、国内のみならず、欧米をはじめ海外でも高く評価されている。2021年オリジナルメンバー清田敦(Piano/Keyboard)が脱退し、新メンバー白枝匠充(Piano/Keyboard)が加入。新生mouse on the keys初のフルアルバム『midnight』が2024年11月1日配信リリースされ、バンドとしての新章を迎える。2025年にはイギリス及びヨーロッパなどでヘッドライナーツアーが予定されている。

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