「AY」と一致するもの

別冊ele-king アンビエント・ジャパン - ele-king

日本のアンビエント~環境音楽を大特集

featuring
細野晴臣/坂本龍一/吉村弘/横田進/畠山地平/冥丁/SUGAI KEN
interview
デイヴィッド・トゥープ/スペンサー・ドーラン/ZAK

日本のアンビエント名作選125
AMBIENT KYOTO 2023
Off-Tone/みんなのきもち

菊判220×148/192ページ

------
AMBIENT KYOTO 2023開催
2023.10.6─12.24
ambientkyoto.com

目次

「環境音楽」からクラブ・カルチャーを経て多様化の時代へ──日本のアンビエント概説 (三田格)
【インタヴュー】デイヴィッド・トゥープ (野田努+坂本麻里子)

■細野晴臣と坂本龍一における「アンビエント」を温ねる
アンビエント・アーティストとしての細野晴臣と坂本龍一 (三田格)
細野晴臣、アンビエントの旅行者 (ポール・ロケ/五井健太郎 訳)
細野晴臣 ambient works (三田格)
坂本龍一 ambient works (三田格)
「非同期」から聴こえてくるもの──音楽・サウンド・ノイズ (高橋智子)

【インタヴュー】スペンサー・ドーラン (小林拓音/青木絵美 訳)
「kankyō ongaku」の発明 (ポール・ロケ/五井健太郎 訳)
アール・ヴィヴァンとその時代 (立花幸樹)

横田進とレイヴの時代 (野田努)/横田進 selected discography
アンビエントの精神を具現化する、野外フェスティヴァル〈Off -Tone〉 (野田努)
トランス集団「みんなのきもち」が試みるアンビエント・パーティ (yukinoise)
日本のヒップホップとアンビエント (二木信)

【インタヴュー】畠山地平 (三田格)/畠山地平 selected discography

特別寄稿 冥丁/SUGAI KEN
五・七・五を聴く──ケージの音楽と俳句 (高橋智子)
たゆたう、アンビエント/環境・ミュージック/音楽 (北條知子)
アンビエント・ジャパン選書 (野田努)

■日本のアンビエント・ディスクガイド78選
(三田格、野田努、小林拓音、デンシノオト、河村祐介)

■AMBIENT KYOTO 2023 ガイド
【インタヴュー】中村周市/ZAK

執筆者プロフィール

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
amazon
TSUTAYAオンライン
Rakuten ブックス
7net(セブンネットショッピング)
ヨドバシ・ドット・コム
Yahoo!ショッピング
HMV
TOWER RECORDS
disk union
紀伊國屋書店
honto
e-hon
Honya Club

P-VINE OFFICIAL SHOP
SPECIAL DELIVERY

全国実店舗の在庫状況
紀伊國屋書店
三省堂書店
丸善/ジュンク堂書店/文教堂/戸田書店/啓林堂書店/ブックスモア
旭屋書店
有隣堂
くまざわ書店
TSUTAYA
大垣書店
未来屋書店/アシーネ

Spellling - ele-king

 謎を含む音楽というのはひとを惹きつけるものだが、スペリングを名乗るクリスティア・カブラルのサウンドにもつねにミステリアスなところがあり、そこが大きな魅力となってきた。独特のタイム感を持った粘り気のあるヴォーカルはビョークやケイト・ブッシュが引き合いに出されもするが、そんなよくある比較では彼女の音に近づけないような感覚がある。特徴的なのはデビュー作『Pantheon Of Me』(2017)に顕著な濁った音だ。ときにその甘美なヴォーカルを埋もれさせるほどの大きさで鳴らされる様々な雑音や不協和音は、しかし雑音や不協和音と呼んでいいのか判断しかねる存在感でスペリングの楽曲における歌と渡り合うようだ。意図的な「汚し」や「乱れ」がそこにはあって、そのエクスペリメンタルなR&Bは周到に潔白なイメージから身をかわしてきた。スペリングというからには何か呪術的なニュアンスを含んだ音楽なのだが、spelllingとあらかじめスペルミスを含んで呪文のなかに違和感を注入している。その細かいズレに不思議な快楽が仕込まれた音楽なのだ。

 本作はこれまで〈Sacred Bones〉からリリースしてきた3枚のアルバム『Pantheon Of Me』、『Mazy Fly』(2019)、『The Turning Wheel』(2021)に収録された楽曲を、カブラル自身のプロデュースによって再構築したものだ。ある意味早すぎるベスト・アルバムのようなところもあってスペリングをはじめて聴くひとにも推薦できる作品ではあるが、もちろんコンパクトにキャリアをまとめることが本作の目的ではない。現在のツアー・バンドとともにオーケストラを導入したゴージャスなサウンドへと変化を遂げており、リッチな演奏をバックにしたカブラルの堂々とした歌にフォーカスが当たっている。おそらく彼女自身がここのところフル・バンドとともに音楽を作ることにエキサイトしていて、その成果を残しておきたかったのだろう。基本的には、オリジナルのエレクトロニックな要素を生楽器主体のアレンジに変え、ストリングスの多用もあってエレガントなムードが高まっている。そして、スペリングの音楽における雑音や不協和音は(なくなっていないものの)後退しており、何よりもカブラルのヴォーカルが中心に置かれた。メジャーっぽくなったと感じるひともいるかもしれない。しかし、そんな単純な話ではないとも思う。
 オープニング、歌のタメによって聴き手の意識を惹きこむ “Walk Up to Your House” はスムースなプロダクションに仕上げられていて、なるほどシンプルにクオリティの向上を示したかったのだろうと思わせもするが、代表曲 “Under the Sun” を聴くとそれだけではないような気がしてくる。もともとドラマティックなメロディを持ったナンバーではあるが、ピアノやストリングスやシンセが入れ替わり立ち替わり現れる新アレンジではよりスケール感が増しており、歌が情熱的に高ぶっている。それがゆえにどこか演劇的なのだ。つまりカブラル自身が用意するカブラルの新しい舞台。歌のエモーションがよりダイレクトになっているからこそ、それは何やら戯画化されたものに感じられる。オリジナルではあえてチープなシンセ音を使っていた “Haunted Water” は本作では猛々しいギターとドラムが鳴らされてほとんどプログレのような展開を見せるし、「わたしは学校の男子たちを憎んでいる」という強烈な歌い出しで始まる “Boys at School” は、デリケートなオーケストラ・アレンジで優美な雰囲気を醸す。かと思えばオーセンティックなソウルのようなアレンジの “Always” はドリーミーにすら聞こえる。アレンジとプロダクション、すなわち衣装が変わるたびに聴き手=舞台の観賞者は翻弄される。シンガーソングライターの楽曲において単純に称揚されがちな「生々しい感情」を、本作ではどうにも素直に信じこめない。だからこそ中毒性がある。
 自作自演歌手というような言い方があるが、たとえばスーダン・アーカイヴスUSガールズのように「自演」の部分をアレンジメントの妙で見せる女性アーティストがいま目立っているのは……いや、僕が好きなのは、外部から短絡的にイメージを投影されやすい女性シンガーによる意識的/無意識的なジェンダー・ポリティクスが入っているからなのかもしれない。自分自身が用意したサウンド・デザインでイメージを固定化させないのだ。スペリングは本作で情熱的な女性を演じきりながら、そのこと自体を異化する知性を備えている。その複雑な両立に、僕はやはりミステリーを感じ夢中になってしまうのだ。

Oneohtrix Point Never - ele-king

 喜びたまえ。現代を代表する電子音楽家、大いなる期待を集める最新アルバム『Again』のリリースを今週金曜に控えるワンオートリックス・ポイント・ネヴァー。4度目の来日公演の決定である。しかも、ソウル、ベルリン、マンチェスター、ロンドン、パリ、ニューヨークとつづくワールド・ツアーのスタートにあたる公演とのことで、つまりOPNの最新パフォーマンスを世界最速で堪能できるってこと。
 ちなみに前回の来日は5年前、『Age Of』(2018)リリース後で、バンドやダンサーを引きつれてのライヴだった。はたして今度はどんなパフォーマンスを披露してくれるのか──まずは9月29日発売の『Again』を聴いて、妄想を膨らませておきたい。
 日程は来年2月28日@六本木 EX THEATRE と2月29日@梅田 CLUB QUATTRO の2公演。時期はまだ少し先だけれど完売必至と思われるので、ご予約はお早めに。

 なお、今週木曜9月28日には新宿の映画館で新作のプレミア試聴会&トーク・イヴェントが開催されます(https://twitter.com/beatink_jp/status/1703980222692106661)。そちらもぜひ。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー
ニューアルバム『Again』をひっさげ待望の来日ツアー決定!
圧巻の最新ライブセットがここ日本で世界初披露!
アルバムはいよいよ今週発売!

TOKYO 2024/2/28 (WED) EX THEATRE
OSAKA 2024/2/29 (THU) 梅田 CLUB QUATTRO

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が音響アート/ミュージック・コンクレートのひとつの到達点とも言うべき、衝撃のニューアルバム『Again』をいよいよ9月29日に発売!音楽ファンやミュージシャンはもちろん、多種多様のアーティストやクリエイターからも大きな注目が集まる中、待望の来日公演が決定!ここ日本で最新ライブセットが世界初披露されることが明らかとなった。

テンションにテンションを重ねた得も言われぬ解放感とイマジネーションを拡張する圧倒的な世界観、息をのむ美しさ。名作『R plus Seven』を壮大なスケールにアップデートしたような大傑作だ。バラバラに散らばった断片たちが、時間を逆流し緻密且つ巨大な美しいアートピースを完成させるさま、カオスからコスモスへ、聴く者たちをカタルシスへ導く逆流アートの到達点がここに誕生した。

電子音楽、ヴェイパーウェイブ、ノイズ、アンビエント、コラージュ、カットアップ、ミュージック・コンクレート、、、当初はマニアックな実験音楽やサブカルチャーのカリスマだったワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(OPN)ことダニエル・ロパティンは、自身の作品のみならず、音楽プロデューサーとしてアノーニやザ・ウィークエンドを手がけ、映画『Good Time』(2017)ではカンヌ映画祭最優秀サウンドトラック賞を受賞するなど活躍の場をひろげて来た。2021年にはザ・ウィークエンドによるスーパーボウル・ハーフタイムショーの音楽監督を務め、シャネル 2021/22年 メティエダールコレクションショーでも音楽とパフォーマンスを担当。世界チャート1位を獲得したザ・ウィークエンドの『Dawn FM』では、エグゼクティブ・プロデューサーを務め、アルバム収録曲の大半で演奏も行っている。

今週ついにその全貌が明らかとなる最新作『Again』をひっさげたOPNの最新のライブセットが、ここ日本を皮切りに、ソウル、ベルリン、マンチェスター、ロンドン、パリ、ニューヨークという世界の主要都市をツアーすることが発表された。妥協なき美意識にもとづくその高い芸術性で、今や音楽カルチャーのあらゆる分野で引く手あまたの、現代を代表する音楽家、作曲家、プロデューサーとなったOPNことダニエル・ロパティンが魅せる圧巻のライブ・パフォーマンス!これは絶対に見逃せない!

公演詳細 >>> https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13709

---------

ONEOHTRIX POINT NEVER
JAPAN TOUR
出演:ONEOHTRIX POINT NEVER(サポートアクト:TBC)

[東京]
公演日:2024年2月28日(水)
会場:EX THEATRE
OPEN:18:00 START : 19:00
チケット料金:前売 1階スタンディング¥8,000(税込) 2階指定席¥8,000(税込)
*1ドリンク別途 
特記: 別途1ドリンク代 ※未就学児童入場不可

[大阪]
公演日:2024年2月29日(木)
会場:梅田CLUB QUATTRO
OPEN:18:00 START : 19:00
チケット料金:前売¥8,000(税込) オールスタンディング / 1ドリンク別途 
特記: 別途1ドリンク代 ※未就学児童入場不可

企画・制作 BEATINK www.beatink.com
INFO BEATINK www.beatink.com / E-mail: info@beatink.com

【TICKET INFO】
★ビートインク主催者WEB先行:9/29(金)10:00~
[TOKYO] https://beatink.zaiko.io/e/opn2024tokyo
[OSAKA] https://beatink.zaiko.io/e/opn2024osaka

[東京]
イープラス最速先行受付:10/3(火)12:00~10/9(月)23:59 [https://eplus.jp/opn-2024/]
一般発売:10/21(土)~ イープラス、LAWSON、BEATINK

[大阪]
イープラス最速先行受付:10/3(火)12:00~10/9(月)23:59 [ https://eplus.jp/opn-2024/]
一般発売:10/21(土)~ イープラス、LAWSON、チケットぴあ、BEATINK

Oneohtrix Point Never - A Barely Lit Path
YouTube >>> https://youtu.be/_kyFqe36BqM
配信リンク >>> https://opn.ffm.to/ablp

9月29日にリリースされる待望の最新作『Again』。Pitchforkが選ぶ「この秋最も期待できる47アルバム」で大きく取り上げられ、CRACK MAGAZINE最新号の表紙を飾るなど、アルバムへの期待は加速的に高まっている。本作についてダニエルは、現在の視点を通して、当時の自分の音楽的アイデンティティを捉えた瞑想であり「観念的自伝」だと説明する。現在公開中の新曲「A Barely Lit Path」は、ロバート・エイムズの指揮と編曲、ノマド・アンサンブルの演奏によるオーケストラをバックに、アルバムのクライマックスを飾る。合わせて公開されたミュージックビデオは、ダニエルがビデオ・アーティストのフリーカ・テットと書いた原案をもとに、フリーカ・テットが監督したもので、擬人化された2人の衝突実験用ダミーの悲惨な物語が描かれている。

OPN待望の最新アルバム『Again』は、9月29日 (金) にCD、LP、デジタル/ストリーミング配信で世界同時リリース!国内盤CDにはボーナストラックが追加収録され、解説書と歌詞対訳が封入される。LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)に加え、限定盤(ブルー・ヴァイナル)、日本語帯付き仕様盤(ブルー・ヴァイナル/歌詞対訳・解説書付)の3形態となる。さらに、国内盤CDと日本語帯付き仕様盤LPは、Tシャツ付きセットの発売も決定。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never (ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)
title: Again (アゲイン)
release: 2023.9.29 (FRI)

商品ページ:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13613

Tracklist:
01. Elseware
02. Again
03. World Outside
04. Krumville
05. Locrian Midwest
06. Plastic Antique
07. Gray Subviolet
08. The Body Trail
09. Nightmare Paint
10. Memories Of Music
11. On An Axis
12. Ubiquity Road
13. A Barely Lit Path
+ Bonus Track

国内盤CD+Tシャツ

限定盤LP+Tシャツ

通常盤LP

限定盤LP

9月のジャズ - ele-king

 去る9月6日にジャズ・ベーシストのリチャード・デイヴィスが亡くなった。有名なプレーヤーというわけではなく、どちらかと言えば脇役で光るタイプだった。マイルス・デイヴィス、エルヴィン・ジョーンズなどとの共演で知られるほか、ヴァン・モリソンの『アストラル・ウィークス』、ブルース・スプリングスティーンの『明日なき暴走』、ポール・サイモンの『ひとりごと』など、ジャズを離れてロック方面のアルバムにも参加している。ただ、1970年代には商業的な成功を収めることはなかったものの、とても良質なリーダー・アルバムを〈ミューズ〉に残している。『ザ・フィロソフィー・オブ・ザ・スピリチュアル』(1972年)、『エピストロフィー&ナウズ・ザ・タイム』(1972年)、『ディーリン』(1974年)がそれで、スピリチュアル・ジャズやジャズ・ファンクの観点から再評価されたアルバムだ。


Yussef Dayes
Black Classical Music

Brownswood Recordings

 サウス・ロンドンには優れたジャズ・ドラマーが数多いが、そのひとりであるユセフ・デイズのソロ・アルバム『ブラック・クラシカル・ミュージック』がリリースされた。彼のキャリアは2010年代初頭に兄弟のアーマッド、カリームたちと結成したユナイテッド・ヴァイヴレーションズに始まり、テンダーロニアス率いるルビー・ラシュトンへの参加、カマール・ウィリアムズと組んだユセフ・カマールと、サウス・ロンドンのジャズを牽引する動きを見せてきた。2020年にはトム・ミッシュとコラボした『ワット・カインダ・ミュージック』を発表して話題を集める一方、アルファ・ミストビンカー・アンド・モーゼススウィンドルなどいろいろなアーティストの作品への参加や共演をおこなっている。リーダー作としてはチャーリー・ステイシー(キーボード)、ロッコ・パラディーノ(ベース)とのトリオ編成のライヴ・アルバム『ウェルカム・トゥ・ザ・ヒルズ』(2021年)があり、ほかにユセフ・デイズ・エクスペリエンスというグループで同じくライブ音源となる『ライヴ・アット・ジョシュア・ツリー』(2022年)があるが、『ブラック・クラシカル・ミュージック』は初めてのスタジオ録音によるリーダー・アルバムとなる。

 『ウェルカム・トゥ・ザ・ヒルズ』はトニー・ウィリアムズ張りのテクニカルな演奏を見せるジャズ・ロック路線の作品で、『ライヴ・アット・ジョシュア・ツリー』はサックスを加えたフュージョン調の作品だったが、『ブラック・クラシカル・ミュージック』はよりルーツ色の濃い作品となっている。アルバム・タイトルにあるように、彼のルーツであるカリブやアフロ・キューバン色を感じさせる作品が多く、“アフロ・キューバニズム” というそのものズバリのアフロ・キューバン・ジャズも収録する。タイトル曲も急速調のアフロ・ジャズで、往年のマッコイ・タイナーあたりを彷彿とさせる作品だ。“ジェラート” ほか、ドラムだけでなく種々のパーカッションも組み合わせて有機的で躍動感に富むリズムを作っている点も特徴だ。なお、編成はユセフ・デイズ・トリオを発展させ、そこにシャバカ・ハッチングス、トム・ミッシュなどいろいろなミュージシャンが加わる形となる。

 シャバカ・ハッチングスをフィーチャーした “レイジング・アンダー・ザ・サン” はレイドバックしたカリビアン・ジャズ調のナンバーで、トム・ミッシュと共演する “ラスト” は彼らのアルバムの『ワット・カインダ・ミュージック』の延長線上にある作品。“ターコイズ・ギャラクシー” はコズミックな雰囲気を持つエレクトリック・ジャズで、ザ・コメット・イズ・カミングに近い作品。彼の生まれたばかりの赤ん坊の声を乗せたメロウ・フュージョンの “ザ・ライト”、ダンサブルなサンバ・リズムを刻む “チェイシング・ザ・ドラム”、フレットレス・ベースが活躍する南国風のブギー “ジュークボックス”、ジャミラ・バリーのスウィートなヴォーカルをフィーチャーしたメロウ・ソウル “ウーマンズ・タッチ” など様々なタイプの作品が並ぶ。『ブラック・クラシカル・ミュージック』とはユセフ・デイズのルーツを示すと共に、黒人音楽の根底にあるものも指していると思うが、ジャズにしろ、ソウルにしろ、ブギーにしろ、黒人音楽の幅広さや寛容性も感じさせる内容だ。


Matthew Halsall
An Ever Changing View

Gondwana

 2000年代後半よりジャズ・トランペッター/作曲家として、〈ゴンドワナ・レコーズ〉主宰者として、マンチェスターのジャズ・シーンを牽引してきたマシュー・ハルソール。リーダー・アルバムやレーベル所属のミュージシャンが結集したゴンドワナ・オーケストラのアルバムなど作品は数多く、『アン・エヴァー・チェンジング・ヴュー』は2020年の『サルート・トゥ・ザ・サン』から3年ぶりの新作。以前レヴューした『イントゥ・フォーエヴァー』(2015年)のときと参加ミュージシャンは幾分入れ替わっていたりするものの、楽曲の傾向や演奏スタイルはさほど変わってはおらず、基本的にはアリス・コルトレーンのように瞑想的で穏やかなスピリチュアル・ジャズや、ジョン・コルトレーン直系のモード・ジャズをやっている。世の中の流行やトレンドなどとは一切無縁で、自身の音楽を愚直に追及するマシュー・ハルソールを改めて示すアルバムだ。

 そうした中で今回のアルバムで印象的なのは、カリンバのようなアフリカ発祥の楽器をハープやグロッケンシュピール、チェレスタなどの西洋楽器と絡めて使い、アフリカ音楽と西洋音楽を結び付けるような演奏を見せる点だ。表題曲や “カルダー・シェイプス”、“マウンテンズ、ツリーズ・アンド・シーズ” などがそうで、ハルソールもトランペット以外にカリンバやグロッケンシュピール、チェレスタなどをマルチに演奏している。土着的なフルートやザイロフォン、ハープなどを絡めた “ナチュラル・ムーヴメント” もそうで、アフリカ音楽と西洋のジャズ、そしてミニマル・ミュージックやメディテーション・ミュージックなどの要素も融合したアルバムとなっている。


Khalab
Layers

Hyperjazz

 イタリアのDJカラブもアフリカ音楽と縁の深いアーティストで、マリ共和国のシンガー/パーカッション奏者のババ・シソコと共演した『カラブ&ババ』(2015年)や、西アフリカのマリ難民キャンプに避難する音楽家集団と共演した『ムベラ』(2021年)をリリースする。ほかに『ブラック・ノイズ2084』(2018年)というアルバムがあり、こちらもアフリカ音楽の要素はあるが、エレクトロニクスの比重の大きいより実験的なサウンドで、シャバカ・ハッチングス、モーゼス・ボイドらサウス・ロンドンのアーティストと共演している。カラブなりの解釈によるアフロ・フューチャリズムの作品と言えるだろう。

 カラブの新作『レイヤーズ』は『ブラック・ノイズ2084』を継承した作品と言える。『ブラック・ノイズ2084』にも参加したトマッソ・カッペラート、クラップ・クラップなどイタリア勢に、ヤズー・アーメッド、タマラ・オズボーン、テンダーロニアス、エマネイティヴなどのイギリス勢が入り混じった編成で、ラッパー/ポエットのジョシュア・イデンハンやシンガーのアレッシア・オビーノなども参加。アレッシア・オビーノの神聖なヴォイスがフィーチャーされた “ドローン・ラー” は、そのタイトル通りサン・ラーの “スペース・イズ・ザ・プレイス” を想起させる不穏なナンバー。重厚なベース音に支配されたダークな “コンシャス・フレンドシップ” はジャズとベース・ミュージックの中間をいくような作品。トライバルな “トンネル・オブ・ジェラシー” はアフロ、ジューク、グライム、ゴムが融合したような世界。クラップ・クラップが参加した “アシッド・ワクチン” は、サンズ・オブ・ケメットのようなホーン・アンサンブルがアシッド・ハウスをやったらというイメージだろうか。テンダーロニアスのフルートが印象的な “ロマンティック・ロコ” は、インダストリアルなビートとアラブからアフリカにかけてのミステリアスなジャズが融合。トマッソ・カッペラートがブロークンビーツ調のドラムを叩く “フィメール・サイド” は、カリンバ風の音色を取り入れるなどカラブが好むアフリカ的なモチーフに彩られる。同じく “メンタル・コーチ” でもカリンバが用いられ、「アフロ・フューチャー・ビート・シェイク」と形容されるカラブの面目躍如たるナンバー。


Kurt Elling And Charlie Hunter
SuperBlue: The Iridescent Spree

Edition

 グラミー賞も受賞したアメリカのカート・エリングは、現代における男性ジャズ・シンガーの最高峰に数えられるひとりであり、基本的にはジャズの正統的なヴォーカル・スタイルを継承している。ただし、ギタリストのチャーリー・ハンターと組んだ『スーパーブルー』(2021年)では普段とは異なる一面を見せていた。チャーリー・ハンターとは彼のカルテットの『ソングス・フロム・ザ・アナログ・プレイグラウンド』(2001年)でも共演していて、このアルバムにはモス・デフやノラ・ジョーンズなども参加しているなど、ある意味で現在におけるジャズとヒップホップ、ネオ・ソウル、ファンクなどとの結びつきを先駆けた作品でもあった。そんなエリングとハンターの共演作『スーパーブルー』は、ジャズ・ファンク・バンドのブッチャー・ブラウンのDJハリソンがキーボード、コーリー・フォンヴィルがドラム及び共同プロデューサーを務めていて、言わばブッチャー・ブラウンの演奏でカート・エリングが歌ったと言える。エリングはヴォーカリーズというスキャットを駆使した即興的な歌唱スタイルを得意とするが、ジャズ・ファンク調のナンバーでも見事にそれが生かされていた。ただし、一方的にブッチャー・ブラウンの型に押し込めるのではなく、エリング本来のブルージーな持ち味を生かした楽曲作りもおこなっており、DJハリソンやフォンヴィルのプロデュース能力の高さも垣間見せていた。

 その『スーパーブルー』の続編となる『スーパーブルー:ザ・イリディセント・スプリー』がリリースされた。前作と同じくカート・エリング、チャーリー・ハンター、DJハリソン、コーリー・フォンヴィルというラインナップ。オーネット・コールマンのカヴァーの “オンリー・ザ・ロンリー・ウーマン” は、ダブステップを取り入れたようなスペイシーなトラックで、フォンヴィルの小刻みなドラミングに対しエリングのダイナミックで広がりのある歌唱が異色の組み合わせとなっている。ジョニ・ミッチェルのカヴァーの “ブラック・クロウ” はリズミカルなジャズ・ファンク・スタイルで、お得意のスキャットを絡めた即興が光る。“ノット・ヒア/ノット・ナウ” はエディ・ハリスのジャズ・クラシック “フリーダム・ジャズ・ダンス” を彷彿とさせる曲調で、エリングの歌もこの曲に歌詞をつけたエディ・ジェファーソンの歌唱を思い起こさせる。

絵夢 〜 KITCHEN. LABEL 15 in Tokyo - ele-king

 日本人アーティストも多くリリースするシンガポールのレーベル〈Kitchen. Label〉が15周年を記念しライヴ・イヴェントを開催する。2023年11月15日(水)@渋谷WWW。同レーベルに『古風』『古風II』を残し、この11月には新作『古風III』のリリースを控える広島の冥丁をはじめ、アンビエント・フォーク・デュオ Aspidistrafly、新進気鋭のプロデューサー Kin Leonn、最近レーベルに加わった東京のサウンド・アーティスト Hiroshi Ebina が出演する。レーベル・ショウケースという形式はまだ知らない新しい音楽を見つける絶好のチャンスでもある。ぜひ足を運んでおきたい。

 なお、10月20日発売の『別冊ele-king アンビエント・ジャパン』には冥丁による特別寄稿が掲載される。そちらもチェックしていただければ幸いです。

『絵夢 〜 KITCHEN. LABEL 15 in Tokyo』

◆日程 : 2023年11月15日(水)
◆時間 : OPEN 18:00 / START 18:30
◆会場 : 東京・渋谷 WWW(https://www-shibuya.jp/
◆チケット:前売 ¥4,500 / 当日 ¥5,000(共に税込・ドリンク代別 / 整理番号付き)

◆出演:
冥丁
ASPIDISTRAFLY Ensemble with Kyo Ichinose
Kin Leonn
Hiroshi Ebina

◆音響 : 福岡功訓(Flysound)

◆チケット販売:e+ (9/23(土)10:00〜より販売開始)
https://eplus.jp/kitchen-label/

◆主催 : KITCHEN. LABEL (https://www.kitchen-label.com/)
◆協力 : Inpartmaint Inc. (https://www.inpartmaint.com/)
◆お問合せ : info@kitchen-label.com

◆詳細HP
https://www.inpartmaint.com/site/38321/

[イベント概要]
シンガポールの音楽レーベル【KITCHEN. LABEL】が15周年を記念したライブイベントを2023年11月15日(水)東京・渋谷WWWにて開催。レーベルアーティストの冥丁、ASPIDISTRAFLY、Kin Leonn、Hiroshi Ebinaが出演。

haruka nakamura、いろのみ、冥丁など、数多くの日本人アーティストの名作をリリースし、またその美しいパッケージデザインにも定評のあるシンガポールの人気インディー・レーベル【KITCHEN. LABEL】が、2023年11月15日(水)に東京・渋谷WWWにて15周年記念となるレーベルショーケースを開催する。シンガポールからはASDPISIDTRAFLYとKin Leonn、日本からは冥丁とHiroshi Ebinaが出演し、それぞれの音楽的美学を披露する。

ショーケースのヘッドライナーを務めるのは広島を拠点に活動するアーティスト【冥丁】。11月中旬リリース予定のニューアルバム『古風Ⅲ』も取り入れた「古風」シリーズのライブセットを披露する。シンガポールのアンビエント・フォークデュオ【ASPIDISTRAFLY】は、一ノ瀬響(ピアノ)、徳澤青弦(チェロ)率いるストリング・カルテット、湯川潮音(クラシック・ギター)を迎えた特別アンサンブルで最新アルバム『Altar of Dreams』をライブ初披露、また前作『A Little Fable』の名曲も演奏予定。初来日となるシンガポールのアンダーグラウンドシーン気鋭の若手プロデューサー【Kin Leonn】は10月下旬リリースのニューアルバム『mirror in the gleam』からのライブセットを、インディーロック・バンドSobsのRaphael Ongによる映像と共に初披露。そして、レーベルに新たに仲間入りした東京在住のサウンドアーティスト【Hiroshi Ebina】はアンビエント・セットを披露する。

「これまでレーベルとアーティストを応援してくれた日本のリスナーの皆さんと一緒に15周年を迎えられることを嬉しく思います。タイトルに名付けた「絵夢」という言葉は、私たちのアーティストが共有する世界を完璧に具現化するものを探し求めた末に生まれました。”浮世絵”からとった「絵」と「夢」を掛け合わせたこの言葉には、音を通して鮮明な夢の風景を描くという私たちの使命が込められています。このイベントは、私たちのレーベルの過去、現在、そして未来を紹介するものとなるでしょう。」Ricks Ang(KITCHEN. LABEL)

[アーティスト・プロフィール]

冥丁
photo by Akio Yamakawa

日本の文化から徐々に失われつつある、過去の時代の雰囲気を「失日本」と呼び、現代的なサウンドテクニックで日本古来の印象を融合させた私的でコンセプチャルな音楽を生み出す広島在住のアーティスト。エレクトロニック、アンビエント、ヒップホップ、エクスペリメンタルを融合させた音楽で、過去と現在の狭間にある音楽芸術を創作している。これまでに「怪談」(Evening Chants)、「小町」(Métron Records)、「古風」(Part I & II)(KITCHEN. LABEL) よる、独自の音楽テーマとエネルギーを持った画期的な三部作シリーズを発表。
日本の文化と豊かな歴史の持つ多様性を音楽表現とした発信により、The Wire、Pitchforkから高い評価を受け、MUTEK Barcelona 2020、コロナ禍を経てSWEET LOVE SHOWER SPRING 2022などの音楽フェスティバルに出演し、初の日本国内のツアーに加え、ヨーロッパ、シンガポールなどを含む海外ツアーも成功させる。また、ソロ活動の傍ら、Cartierや資生堂 IPSA、MERRELL、Nike Jordanなど世界的なブランドから依頼を受け、オリジナル楽曲の制作も担当している。
https://www.instagram.com/meitei.japan/


ASPIDISTRAFLY(アスピディストラフライ)
photo by Ivanho Harlim

2001年に結成されたシンガポールを拠点に活動する、ヴォーカリスト/コンポーザーApril LeeとプロデューサーRicks Angによる男女ユニット。アンビエント・フォークとミュジーク・コンクレートを融合させたサウンドやApril のスモーキーなアルト・ヴォーカルに芸術性の高い演出を加え、彼女の詩的な物語に生命を吹き込んでいる。これまでに『I Hold A Wish for You』(2008)、『A Little Fable』(2011)、そして最新作となる『Altar of Dreams』(2022)の3枚のアルバムをKITCHEN. LABELよりリリース。最新作には米NPRの”Song of the Day”に選出された「The Voice of Flowers」や、SUGAI KENとのコラボレーション曲などを収録。
また、一ノ瀬響、haruka nakamura、小瀬村晶、青葉市子などの日本人音楽家や、Gucci、Roger Vivier、LAD MUSICIAN、NARSなどのブランドとのコラボレーションも行っている。ASPIDISTRAFLY以外では、Aprilはアートディレクターとして、デザイン、写真、ファッションの分野で活躍。RicksはKITCHEN. LABELを運営し、良質な音楽を洗練された美しいアートワークの特殊パッケージデザインとともにリリースしている。
https://www.instagram.com/aspidistrafly/


Kin Leonn(キン・レオン)
photo by Christopher Sim

​​シンガポールのアンダーグランドシーンのサウンド・アーティスト、DJ、作曲家として多才な存在感を放ち、「アンビエント・ボーイ」の愛称を持つシンガポール新世代アーティスト。2018年に1stアルバム『Commune』をKITCHEN. LABELよりリリース後、ベネズエラのアンビエントの先駆者Miguel Noyaとの共演や日本のサウンドアーティストHiroshi EbinaとのコラボレーションEP『“Faraway Vicinity』(2022)をリリースする他、プロデューサーやミキサーとしてYeuleとの様々なコラボレーションやModeratやYunè Pinku.のリミックスにも参加。
ロンドン・カレッジ・オブ・ミュージックを首席で卒業し、2021年にはスパイク・ステント賞を受賞。作品のリリース以外にもマルチ・チャンネルの音響インスタレーションや映画のサウンドトラックも多数手掛ける。直近では、2023年カンヌ国際映画祭でプレミア上映されたAnthony Chen監督による長編映画『The Breaking Ice』のサウンドトラックを担当した。
https://www.instagram.com/kinleonn/


Hiroshi Ebina
photo by Yoichi Onoda

東京在住のサウンドアーティスト。活動は多岐に渡り、アンビエントミュージックの作曲・演奏や、雅楽奏者としての活動、フィルムカメラを用いた写真作品の作成も行なっている。ニューヨークでの活動を経て、2018年より日本での活動を再開。作曲にはモジュラーシンセを中心にテープマシンや多種多様なアコースティック楽器を用いる。近年はKITCHEN. LABELやMystery Circles、Seil Recordsより作品を発表している。
「偶発性」はHiroshi Ebinaの音楽を語る上で欠かすことのできない要素である。真白の紙の上に点や線を広げるように音と並べていき、法則を与えることで音楽を形作っていくプロセスを取っている。作曲の際はリズムやピッチといった側面だけでなく、音の触感や音と音との間の無音部分などを重視している。
https://www.instagram.com/he_soundvisual/

[Instagram]

#絵夢 #KITCHEN15INTOKYO #冥丁 #ASPIDISTRAFLY #KINLEONN #HIROSHIEBINA

@kitchen_label
@inpartmaint_official
@meitei.japan
@aspidistrafly
@kinleonn
@he_soundvisual
@www_shibuya
@flysound_co.ltd

Christopher Willits & Chihei Hatakeyama - ele-king

 およそ20年にわたり〈12k〉や〈Ghostly International〉といったレーベルからリリースを重ねてきたエレクトロニカ~アンビエント作家のクリストファー・ウィリッツテイラー・デュプリー坂本龍一とのコラボでも知られる彼だが、このたび2019年以来となる来日公演が決定している。今回の公演では最新アルバム『Gravity』からの楽曲に加え、未発表の新曲も披露する予定とのこと。岐阜・大禅寺と神田・POLARISでの2公演、いずれも畠山地平との共演だ。この秋注目のアンビエント・ライヴのひとつ、見逃せません。

 ちなみに、10月20日発売の別エレ最新号『アンビエント・ジャパン』には畠山地平のインタヴューを掲載しています。ぜひそちらもチェックを。

Christopher Willits – Japan Live Performances – October 2023

クリストファー・ウィリッツの2019年以来となる来日が決定致しました。昨年Ghostly Internationalから最新アルバム『Gravity』をリリースしましたが、そこからの楽曲に加え、未発表の新曲も披露する予定です。
また、日本での公演は、複数のアルバムで共演した故・坂本龍一氏の友情と指導に捧げられているとのことです。

2004年の初来日イベントから、ウィリッツは日本で熱心なリスナーの支持を集めてております。彼の日本への愛と尊敬は、天河寺、伝書会館、大島洞窟、坂本さんとの複数のコラボレーションなど、これまでの公演で示されているように、心からの生涯の旅路です。

Christopher Willits – Japan Live Performances – October 2023

▶︎7th October @DAIZENJI Gifu

▶︎14th October @POLARIS Tokyo

------------------------

LISTENING IN THE TEMPLE
『大禅寺でリスニング』

日程:10月7日(土)
会場:岐阜・大禅寺

時間:17:00 – 21:00
料金:ADV ¥5,500

LIVE:
Christopher Willits
Chihei Hatakeyama

チケット:https://listening-in-the-temple.peatix.com/

クリストファー・ウィリッツと畠山地平のライブセットによる世界最高峰の没入型アンビエント・ミュージック・イベントを岐阜県の歴史ある大禅寺で体験しませんか?

この魂の癒しとなるイベントは、大禅寺住職の根本一徹紹徹上人の指導による瞑想で調和のとれた夕べのはじまりを迎えます。畠山地平につづきクリストファー・ウィリッツの上演は彼の親愛なる友人である坂本龍一氏へのトリビュート・ライブパフォーマンスを披露。両公演とも、原音に忠実な四音没入型サウンドで、深遠なリスニング体験に最適な音の聖域を作り上げることでしょう。

ライブ終了後には、軽食を囲んで談話などのために集まります。この親密なイベントが、みなさんとのつながりや絆を感じるひとときとなることを楽しみにしています。

「やわらかくしなやかなに流れるものは、硬く強固なものに勝る」– 老子

Sponsored by Envelop (https://envelop.us/)

------------------------

Christopher Willits / Chihei Hatakeyama

日程:10月14日(日)
会場:POLARIS, Tokyo

時間:OPEN 19:30 / START 20:00
料金:ADV ¥4,000 / DOOR ¥4,500 *別途1ドリンク代金必要

LIVE:
Christopher Willits
Chihei Hatakeyama

チケット:https://polaris231014.peatix.com/view

------------------------


CRISTOPHER WILLITS:
クリストファー・ウィリッツ(Christopher Willits)はミズーリ州はカンザスシティ出身で、現在はサンフランシスコを拠点に活動しているミュージシャン/アーティストである。彼は地元カンザスシティのアート研究所で絵画、写真、ビデオ/インスタレーション・アート、サウンド・アートを学んでおり、ミルズカレッジではフレッド・フリス(Fred Frith)やポーリン・オリヴェロス(Pauline Oliveros)に師事し、電子音楽の修士号も取得している。多岐に渡るその活動はコンポーザー、プロデューサーに留まらず、フォトグラファー、フィル ムメイカー、システム・デザイナーにまで及ぶマルチぶりだ。電子音楽とギターを融合させるスタイルのパイオニアであり、自身が作成したソフトウェアを駆使 して、複雑に練り込まれたパターン、テクスチャー、ハーモニーなどで彩り豊かな視聴覚パフォーマンスをみせ、音と光が重なり合い、没入させる独特のサウン ドを構築している。それはかつてピッチフォークに「ギターでペイントをしているようだ」、Nownessに「魅惑的で複雑なエレクトロニック・サウンドス ケイプ」と称された。90年代後半から音楽活動を開始し、自身のソロだけでなく、坂本龍一やブルックリンのサウンド・アーティスト、テイラー・デュプリー(Taylor Duepree)等とのコラボ、マトモス(Matmos)とのサブコンシャス・アトラクション・ストラテジーズ(Subconscious Attraction Strategies)、ヘラ(Hella)のドラマーで、先日惜しくも解散したデス・グリップス(Death Grips)のメンバーでもあった、ザック・ヒル(Zach Hill)とブレイクコアのパイオニア的存在、キッド606(Kid 606)とのトリオ編成によるフロッシン(Flossin)などのプロジェクトがあり、これまでに20枚以上の作品をリリースしている。それらは自身の主宰するOverlapをはじめ、テイラーの12K、Fällt、Sub Rosa、Nibble Records、Ache Recordsなど様々なレーベルから発表されており、近年はGhostly Internationalに所属している。2014年には、これまでの集大成とも言えるオーディオ・ヴィジュアル・プロジェクト作品『OPENING』をリリース。そして2017年には『Horizon』、2019年には『Sunset』をリリース。収録曲は数千万再生を記録している。2022年には現時点での最新作である『Gravity』をリリースし、深いリスニングへの意図を持ったスローダウンし、感じ、癒すためのツールだという極上のアンビエント・ミュージックを披露し、幅広いリスナーに支持されている。

畠山地平:
1978年生まれ、神奈川県出身、東京在住の電子音楽家。2006年にKrankyより1stソロ・アルバム『Minima Moralia』を発表。以降、デジタル&アナログ機材を駆使したサウンドで構築するアンビエント・ドローン作品を世界中のレーベルからリリース。そのサウンドはリスナー個々人の記憶を呼び覚まし、それぞれの内的なストーリーを喚起させる。2013年より音楽レーベル『white Paddy Mountain』を主宰。2023年には音楽を担当した映画『ライフ・イズ・クライミング!』が公開。近年は海外ツアーにも力を入れており、2022年には全米15箇所に及ぶUS Tourを敢行した。またマスタリングエンジニアとしても活躍中。

Lost New Wave 100% Vol.1 - ele-king

 パンク、ポスト・パンクから初期ヒップホップへと、日本においてつねにストリート&オルタナティヴな回路から音楽を発信してきた高木完が、この度、〈Lost New Wave 100%〉なるイベントをやることを発表した。これは、1978年から1980年なかばまで、渋谷 センター街奥の雑居ビルにあった伝説的カフェ&バー 〈NYLON 100%〉と店の初代プロデューサーだった中村直也氏に捧げられている。 プラスチックスをはじめ、東京ブラボー、ゲルニカなどもライヴをした〈NYLON 100%〉は、この時代、店内にはイーノやクラフトワークやポスト・パンクがかかっているような尖った店で、その歴史は2008年にはアスペクト社から刊行された『NYLON100% 渋谷系ポップカ ルチャーの源流』に詳しい。今回はアオイデンキの協力のもと、当時通りからも見えた青く光る店名のネオンサインをイベント時に再点灯。
 今回のラインナップは、上野耕路、久保田慎吾、泉水敏郎らによる8 1/2、Phew、ヒカシューといった当時から活動している人たちに加えて、下の世代からはShe Talks Silence(奥沢のViva Strange Boutiqueの店長さんがvoです)も出演。これだけのメンツが揃うことはまずないです。12月1日、場所は代官山スペースオッド(http://spaceodd.jp)。日本のポスト・パンク/ニューウェイヴを堪能しよう。


8 1/2(photo by Yuichi Jibiki)


Phew (photo by Masayuki Shioda)


ヒカシュー


She Talks Silence

K.A.N presents
Lost New Wave 100% VOL.1

8 1/2 / ヒカシュー / Phew / She Talks Silence 高木完(DJ)
2023 年 12 月 1 日 (金)
開場 19時 開演 19時半
前売 5500円(税込) 当日 6000円(税込) (特製缶バッジ付き)
ドリンク代別途
Daikanyama SPACE ODD
〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町 2-11 氷川ビル B1.2F
イープラス> https://eplus.jp/lostnewwave/
ローソンチケット> https://l-tike.com/search/?lcd=74460 L コード 74460
チケットぴあ> https://w.pia.jp/t/lostnewwave100/
問合せ:SPACE ODD ☎ 03-6452-5671 http://www.spaceodd.jp

Sweet Maya - ele-king

The Tony Graye Octet - ele-king

interview with Loraine James - ele-king

 ある意味、このアルバムを紹介するのは簡単だ。まずは1曲目を聴いてくれ。その曲の、とくに2分ぴったりに入るドラミングに集中して欲しい。もちろん同曲は、入りのシンセサイザーの音色もその沈黙も美しい。だが、ドラムが入った瞬間にその曲“Gentle Confrontation(穏やかな対決)”には風が吹き抜け、宙に舞い、曲は脈動する。彼女は「私はものすごく疲れているし、退屈だ」と繰り返しながらも、そのサウンドは唐突に走り出し、ものすごいスピードで駆け抜ける。スクエアプッシャーとエイフェックス・ツインのドリルンベースを受け継いで、独自に発展させたのがロレイン・ジェイムスであることにいまさら驚きはないが、あらためてここには彼女の魅力が凝縮されている。夢見る旋律と躍動するリズムが合成され、世界が開けていくあの感覚だ。
 ロレインの音楽にはつねにメランコリアがつきまとっている。今作はまさにその内的な「穏やかな対決」がサウンドと言葉に、さらに繊細に表れている。ロンドンの、ストリートやその地下からわき上がるグライムやドリルのリズムは、ここではアンビエント/エレクトロニカのフィルターを通り、ほかのものに生まれ変わっている。ときにはジャジーに、ときにはソウルに聞こえるが、しかしその背後には必ずロンドンの薄暗い香気が漂っているのだ。“Glitch The System”などはまさにそれで、このグライム化したドリルンベースは、90年代の〈Warp〉が踏み込めなかった領域である(もっとも、ブレア以前のロンドンには今日ほどの格差はなかったろうし、今日ほどの荒廃はなかっただろう)。
 それはそうと、ここでぼくがあえて特筆したいのは、モーガン・シンプソンとの共演、“I DM U”なる曲だ。ブラック・ミディがまさかここにいるとは想像だにしなかったが、彼がドラムをたたくその曲“I DM U”は90年代なかばくらいのジャズに傾倒したカール・クレイグを彷彿させる。“Cards With The Grandparents” のちょっとしたリズムの遊びも素晴らしいし、ハードコアなリズムとドリームポップが併走する“While They Were Singing ft Marina Herlop”もまた素晴らしい。
 エレクトロニック・ミュージックがいまも進化しているのだとしたら、多かれ少なかれ埃にまみれながら、ロレインのアルバムのように一歩踏み出すのだろう。言うまでもなく、この音楽はベッドルームから路上に繋がっているし、路上から夢想へと、そしてその夢想からまたリアルなこの薄汚れた世界へと繋がっている。彼女は疲れてもいるが、動いてもいるし、退屈だが、夢見てもいるのだ。「穏やかな対決」という、すなわち相反するモノ同士が同居する両義性を秘めたこのアルバムをぜひ聴いて欲しい。今年のベストな1枚だ。

100万回聴いたことがあるようなものは作りたくないなって。ただどっかで聴いたことがあるようなものがやりたいときもあるけどね。そこに自分なりのひねりを加えるのが好きだから。

昨年のあなたの東京でのライヴは素晴らしく、オーディエンスの反応もとても良かったと思いますが、日本での思い出を聞かせてください。

ロレイン:驚きがいっぱいあって、たくさんのものを見聞きして、日本語が喋れないから覚えたいなあと思った。とにかくすごく美しくて、会った人はみんな優しくしてくれて、オーディエンスも音楽を楽しんでくれてる感じだったし、ライヴ後にちょっと話したりサインしたりして、本当に楽しかった。

あなたの新譜がこんな早く聴けるとは思っていなかったので、これは嬉しい驚きでした。ライヴやツアーで忙しいなか、よくこんなにそれぞれが凝っている曲が16曲も入ったアルバムを完成させましたね。これら楽曲はおそらく作り貯めていたもので、それをいっきにブラッシュアップしてしまった感じですか?

ロレイン:何というか、いつも、ある日アルバムを作りはじめようと思い立って、あまり時間をかけるのが好きじゃなくて最長半年くらいで作るんだけど、その期間は書ける時に書くという感じ。今回は確かにライヴで忙しかったからいつもよりも少し大変というか、時間がかかったかもしれないけどね。

そして、1曲目の“Gentle Confrontation”を聴いたとき、これは素晴らしいアルバムに違いないと確信しました。美しくて、力強くて、エモーショナルです。とくにこのドラム・プログラミングが自分には突き刺さりました。そしてアルバムを最後まで聴いたら、作品全体が、自分がそのとき予感した以上に素晴らしくて、すっかり打ちのめされてしまいました。レーベルのプレス資料には「10代のロレインが作りたかったであろうレコードだ。アルバムの音楽的傾向も、その時代を反映している」と書かれています。たしかにここにはDNTEL、ルシーンテレフォン・テル・アヴィヴといった10代のあなたの影響を与えた人たちのサウンドが入っていますが、それだけではないでしょう? 2曲目の“2003”の歌詞にあるように、自分のルーツを見つめたかったというのはあったと思いますが。

ロレイン:たしかに“2003”はこれまででもっとも自分の弱い部分が出ているというか、あれは父についての曲で、これまで彼について曲を書いたことがなかったから。もちろんDNTEL、ルシーンといったサウンド以上のものが含まれているし、あれはティーンエイジャーの頃に通学のときに聴いてたりしたもので、音楽の部分での今の自分を形成したもので。彼らの音楽については、ソフトでエモーショナルなものを感じていて、そういう部分を自分自身のなかから引き出して音楽に取り入れるのを助けてくれたというか。何だろう、去年はいろいろ考えることが多くて……家族とか、人生ってあっという間だなとか。今回のアルバムは7歳くらいの頃から現在の27歳までに受けてきた影響が入っている、ある意味タイムカプセルみたいなもの。DNTEL、テレフォン・テル・アヴィヴはもちろんロックやR&Bもあるというね。

ぼくは、ワットエヴァー・ザ・ウェザー名義の作品やジュリアス・イーストマンにインスパイアされた『Building Something Beautiful For Me』を発表した後に続くアルバムとしては、ものすごく自然に感じました。(ドラムベースからIDM、アンビエント、ベース・ミュージック、R&B、シンセポップ、エレクトロニック・ミュージックのいろんなスタイルが混在し、またときに生演奏も取り入れながら、あなたの自身のサウンドとなって展開されている)あらためてこのアルバムのコンセプト、生まれた経緯などについて話してもらえますか?

ロレイン:まず作りはじめたのが去年の5月くらいで、その時点ではまだどういう感じにしたいのかは自分でもわかっていなくて。というか毎回、アルバムが何についてのアルバムになるか、最初は全然わかってない。ただ今回は、いつもコンピュータ内で作ることが多いから、ちょっとそこから出たいなっていうのはあった。だからペダルを買って、いままでアルバムで使ったことはなかったけど使ってみたりした。テクニカル面でいうと自分が最後まで面白がって作れるものがやりたいというのがあったと思う。実験的なものというか。参加してほしい人のアイデアもいろいろあって、でもそれが途中で変わったりもして。とにかく、いろんなものを入れるんだけど、その辻褄が合うように、ランダムにならないようにしたいっていうのは思ってた。そこは実際まあまあ達成できたんじゃないかなと思ってる。ひとつのアルバムに全部入れて融合させるっていうね。16曲もあるから実はちょっと心配だったんだけど、「そこは気にせず楽しもう」ということにして(笑)。新しいことをやってみたり、自分にとっては作っていて一番楽しいアルバムだったよ。

まだ聴けてないのですが、mouse on the keysとも一緒にやったそうですね。その曲はどんな風に作られていったのでしょうか?

ロレイン:mouse on the keysはずっと大ファンで、10年くらい前にロンドンで観たことがあって。それで、メッセージを送ってみたらどうなるかやってみようと(笑)。「あなたたちの大ファンです。アルバムに参加してくれませんか?」という感じで。実は去年の東京でのライヴで2秒くらい会ったんだけどね。とにかくまずこちらからキーボードを演奏したものを送って、そしたら彼らから音源が送られてきて、それを合体させたという。もしよかったら取材のあとその曲送るね。

通常のドリルの感じも好きだけどね。でも自分はそれを再現できないのがわかっているというか、元々の文脈があるわけで、自分がそこに属していないのに、そこで生まれたものをそのまま盗むっていうことはできないし。

最初は1曲目の“Gentle Confrontation”が圧倒的に好きだったんですが、アルバムを何回も聴いていると、中盤に集めた、実験色が強いいくつかの楽曲が好きになりました。“Glitch The System”、“I DM U”や“One Way Ticket To The Midwest ”、“Cards With The Grandparents”のような曲ですが、これらは、それぞれ曲のコンセプトも違っていて、たとえば“I DM U”ではブラック・ミディのMorgan Simpsonの生ドラムとの共演があって、“One Way Ticket〜 ”は穏やかなアンビエント風で、“Cards With〜”はラップが入ったコラージュ的で実験的な曲です。実験的なドラムンベースとアンビエントと歌のコラージュの“While They Were Singing ft Marina Herlop”も素晴らしい。こうした曲を聴いていると、あなたには、エレクトロニック・ミュージックのなかで、何か斬新なことをやろうという野心があるんだなと思うのですが、今回あなたがやった音楽的探求について話してもらえますか? 個人的に“I DM U”は、とくに好きです。シンプルだけど、ものすごい推進力があって、深いエモーションも感じます。

ロレイン:“I DM U” はライヴのドラマーが欲しいと思っていて、モーガンのことは大ファンだし、彼のドラムって普通じゃないというかクレイジーでしょ(笑)。元々あの曲には電子ドラムを使っていたんだけど、なんかもっとライヴ感が欲しいと思ってそれで彼にお願いした。“Cards With The Grandparents” は私と祖父母がカードゲームをしているところを録音してカードを切ってる音をスウィープサウンドっぽくしたり、曲にテクスチャーと動きを出して、それを楽器みたいにするのが面白かった。それからマリーナ・ハーロップとの曲は、たとえばいい感じのシンセがあって、でもドラムが必ずしも1,2,3,4じゃなくてちょっと動くとか、そこで一瞬だけ混乱させたりして。そこにマリーナの歌が重なって、その軽やかさとドラムのハードな感じがミックスされるっていう。とにかく実験しつつ遊びながらやってみて、「ああこのリズムパターンはいままでやったことないかも」ということが起こったり、たまに自分自身も混乱しちゃったりして、でもそれも面白いっていう、一番はそこだった。

野心についてはどうですか?

ロレイン:うーん……頭の隅にはあるかもしれない。というか、100万回聴いたことがあるようなものは作りたくないなって。ただどっかで聴いたことがあるようなものがやりたいときもあるけどね。そこに自分なりのひねりを加えるのが好きだから。

“confrontation(対決)”という言葉があり、アルバムには力強さもありますが、同時にメランコリックで、内省的なところもあると感じました。『Reflection』も内省的でしたが、あのときとは違う感情が注がれていますよね。あなたはいまアーティストとしては順風満帆で、悲しくなるようなことはないと、おそらくあなたの表面しか知らない人間は思うでしょう。じゃあ何があなたをメランコリックな気持ちにさせるのか、話してもらえますか? そしてこの“confrontation”の意味についてもお願いします。

ロレイン:どうだろう、私の心はいつもあっちに行ったりこっちに行ったりしているからなあ……。ああでも父が亡くなって今年で20年だから、去年作っているときも、このアルバムが発売されるのがちょうどその年になるんだなっていうのは意識していたと思う。別にそれについて話そうと思っていたわけじゃないけどね。“2003”を作っているときに、元々はラッパーを起用しようかと思ってたけど、結局は自分ひとりで歌詞を書いて完成させることにして。でもそうだね、子どもの頃のことは結構考えていたかもしれない。よく理解できていなかったこととか、幼すぎてきちんと消化しきれていなかったこととか。だからアルバム制作が進むにつれて、特にメランコリックにしようと思ってないのに気づくとメロディがそうなっていたみたいな部分はあったかもしれない。ああでも元々DNTELとかにもメランコリーな部分があるし、そういうサウンドに惹かれがちなんだと思う。

Confrontationの意味については?

ロレイン:まず過去と向き合うということ。これまでちゃんと向き合ったことがなかったし、自分の気持ちについて語ってこなかったから。音楽はそういう気持ちを吐き出させてくれるものだから、言葉があってもなくてもね。あと時間が経過したことで、自分の気持ちを以前よりも作品に込められるようになってきたのかもしれない。

歌詞を書いて16曲あるうちの9曲であなたは歌を歌っています。言葉でも伝えたいことがあるからだと思いますが、今作でとくに重要な歌詞はどの曲なのでしょうか? やっぱり“2003”ですか?

ロレイン:うん、絶対そうだと思う。実はあの曲を何度かライヴでやったんだけど、何回か、歌わなくていいかってなったんだよね。ちょっと恥ずかしいというか、弱さを曝け出す感じがして、それでインストゥルメンタル・ヴァージョンにしちゃったり。あとクラブとかでやると、曲の内容に対して演奏する状況が合ってないというか、そういうのもあったし。でもアルバムが出たらもっと歌う場面が増えると思うから、まあ楽しみだけど、どうなるんだろう(笑)。

曲名にメッセージがこもったダブステップ風の“I’m Trying To Love Myself”に歌詞/歌がないのは、なぜでしょうか?

ロレイン:何だろう、自分のことが好きになれない時期ってあると思うんだけど、大人になるにつれて少しずつ自信が出てくるっていう。あとはこの曲でDNTELの“Anywhere Anyone”って曲のサンプルを少し使っていて、その曲に“How can you love me if you don’t love yourself”って歌詞があって、その曲を元にしているというか。とにかく口数が多い感じの曲にはしたくないっていうのがあったんだよね。

進化してると思う。たとえばいまドラムンベースの新時代になっていたり……まったくの、本当に新しいっていうものはないと思うけど、20年前のものを、影響を残しつつ新しくするっていうことは起こってるんじゃないかな。

今回のアルバムを制作するに当たって、あなたをもっとも感動させた出来事があれば教えてください。

ロレイン:“Cards with The Grandparents”を作ったこと。ふたりとも高齢で、でもなかなか会えてなくて、特にパンデミック中は彼らを感染させないように、っていうのもあって2年くらい会えてなかったから。曲を作り終わって聴いたときにはグッとくるものがあったし、今後ライヴでやるときもちょっとエモーショナルになりそうな気がする。

“Tired of Me”のリズムはおそらくドリルから来ていると思うのですが、あなたは昔から、ある意味ストリートでもっとも悪評の高いこのスタイルをあえて用いています。それはあなたがドリルの音楽的なおもしろさに着眼しつつも、ドリルにまつわる偏見を打破したいというのもあるんじゃないかと思うのですが、どうなんでしょうか?

ロレイン:そう、別の文脈に嵌めるのがすごく好きだから。もっとエレクトロニックで実験的な感じにするとか。通常のドリルの感じも好きだけどね。でも自分はそれを再現できないのがわかっているというか、元々の文脈があるわけで、自分がそこに属していないのに、そこで生まれたものをそのまま盗むっていうことはできないし。でもサウンドとしてすごく興味深くて、面白いドラムパターンがあったり、もう明らかにドリルだとわかったり。それに対して「これをもっとグリッチっぽくしたらどうなるだろう」とか、「ディストーションかけたらどうなるだろう」とか、そうやっていろんなジャンルの音楽をいじってみるのが楽しい。

“Speechless”のイントロのシンセサイザーの音が大好きで、まさにあなたのサウンドだと思いますが、あなたにとってエレクトロニック・ミュージックは、いったいどんな意味を持っているのでしょうか? 大きな質問ですが、エレクトロニック・ミュージックというのはこんなにも素晴らしいものだということを、あなたの言葉で説明して欲しいのです。

ロレイン:そうだなあ……私にとっては……私は自分が聴いたものを自分自身の音楽に作り替えるのが好きで、これまで刺激を受けてきたたくさんのエレクトロニック・ミュージックもそうだし、たとえば40代の白人男性が作ったものだったり、でも自分は明らかにそうではないから、影響を受けた音楽を自分の人生の視点から再分脈化するというか、つまりそれは彼らとはかなり違う視点だったりする。あと一般的にエレクトロニック・ミュージックっわりと冷たい印象というか、エモーショナルじゃないし無防備でもない感じがあるでしょ。でも自分はそれとは違うことがしたいと思って、そこに自分の気持ちを込めてもいいし、すごく温かいものにだってできるし、真面目なことを語ってもよくて、別に機械的なものである必要はない、コンピュータっぽいものである必要もない。機械的がダメってことではなくて、それ以外のものであってもいいっていうことなんだけど。それでもいいし、それ以上でもいいと思うんだよ。うん、だから、エレクトロニック・ミュージックはこうであるっていうのを広げるというか。だってエレクトロニック・ミュージックはコンピュータだけでも冷たいだけでもなく、それ以上の部分がもっとたくさんあるから。

あなたから見て、エレクトロニック・ミュージックはいまも進化していると思いますか?

ロレイン:進化してると思う。たとえばいまドラムンベースの新時代になっていたり……もちろん自分が好きなもの、好きじゃないものっていうのはあるけど、いま嫌いでも今後大好きになるかもしれないし、あといまって90年代を彷彿させるものだったり、00年代っぽいものが来ていたり、だから新しいけど懐かしい感じのものとか。まったくの、本当に新しいっていうものはないと思うけど、20年前のものを、影響を残しつつ新しくするっていうことは起こってるんじゃないかな。

とにかく、最高のエレクトロニック・ミュージックのアルバムをありがとうと言いたいです。また、お会いできる日を楽しみにしています。さよなら。

ロレイン:来年また行きたいと思ってる。それじゃあ、また。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377