Home > News > Tomoyoshi Date - ——伊達伯欣、11年振りのソロ・アルバムをリリース
アンビエント作家の伊達伯欣が傑作と名高い『Otoha』以来のソロ・アルバムをリリースする。タイトルは『438Hz As It Is, As You Are [あるがまま、あなたのままに]』。
どういうことなのか、以下、伊達本人からの説明をお読みください。
このレコードは、母方の祖母の姉(*)の家にあった1950年代につくられたDiapasonのアップライト・ピアノで録音されました。そのピアノは、70年に渡る引越しと調律を経て、今は我が家のリビングにあります。大量生産前のピアノで板も厚く、音の響きが良いのですが、ネジや衰えてきた基盤を交換しなければすぐに緩んでしまうため、調律ができなくなってしまいました。そこで調律師さんと相談した結果、一番緩んでいる、絞めることのできないネジに巻かれている弦の音に、全体の調律を落とすことで全体を合わせていくことにしました。「As it is(それがあるがままに)」
*山田美喜子:1964年に現代邦楽の日本音楽集団を結成し、世界で初めて琵琶を五線譜にした演奏者・指導者。
夏に調律した際には、少し無理をして442kHzで調律をしたのですが、冬の調律は438kHzにしました。これからこのピアノは、物質の老朽化と共に、年々ピッチが下がっていきます。僕は朽ちていくピアノを弾いて、その時だけにしかできない音楽を、録音し続けていこうと思っています。
レコードに針を落としたその時、その場で音が生まれ、その針の周りの空気や温度・湿度によって音は常に変化します。その音はさらに、聞く人の生活のすべてに影響を与え、その人の身体と精神の周波数に影響を与えます。一度発生した音の影響は永遠に減衰しながらも、この世の中に残っていくものです。
438kHzの調律で製作されたこの作品は、聴く人のその時の気分や周波数に合わせて、好きな速度でピッチを調整してもらうことを念頭に作成されました。45回転のレコードを少し早く回せば、このピアノを442kHzに蘇らせることもできます。33回転の早めでも、遅めでも、あなたの好きなように回転数を調整してください。僕は録音したピアノの音が引き伸ばされた音がとても好きで音楽製作を続けています。今作も原曲より遅くしたピアノの音のほうが気に入っています。ゆっくりしたいときはゆっくりとした音楽で、あなたの周りの空間や生きものたち、あなた自身の身体と精神のピッチを調整してみてください。「As You Are(あなたのままに)」
アルバムは2022年12月19日にフランスの〈laaps〉からリリースされる。bandcampはこちらから。
Tomoyoshi Date
438Hz As It Is, As You Are [あるがまま、あなたのままに]
laaps