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Sylvester Anfang II

Sylvester Anfang II

Commune Cassetten

Blackest Rainbow

野田 努   Mar 31,2010 UP

 クラウトロックからの影響と言ったとき、この10年の成果をみる限り、それはヤッキ・リベツァイトの機械的なドラミングであり、ノイ!のモータリック・サウンドであり、ホルガー・シューカイの文化戦略であり、クラスターの電子ドローンであり、あるいは20年前であればクラフトワークのロボット・ファンクもしくは『E2-E4』といったところだろう。1960年代のベルリンのコミューンから生まれたフリークアウト・サウンドの巨星、アモン・デュールという名前は滅多に出てこない。

 アモン・デュール――初期のアシュラ・テンペルらと並んでコズミック・ミュージックと呼ばれた彼らの表現は、ジュアリン・コープが『Kroutrocksampler』で書いたように「ライフスタイルおいて拡張されるアウトサイダー・ミュージックであり、ときに音楽は二次的でさえある」。フランスとベルギーの国境沿いに広がるフランドル地方(フランダースの犬で知られる)において結成されたシルヴェスター・アンファングは、そのセンで言えばアモン・デュール的だ。ライフスタイルおいて拡張されるアウトサイダー・ミュージックであり、ときに音楽は二次的でさえある。バンドはしかも、アモン・デュールが"II"へと分裂したように、2008年からは"II"となって活動している。

 オリジナル・メンバーには現在スイスで活動する火山学者もいたというこのコレクティヴは、2004年から自らのレーベル〈フューネラル・フォーク〉を拠点に活動している。"葬儀のフォーク"というこのレーベル名は、同時に彼らの音楽性を物語っている。同時代のUSのフリー・フォークの楽天性を嘲るように、彼らの音楽は異教徒的で、ときにサタニックである(頭蓋骨を舐めて悦にいる女性の写真を想像してください)。人は彼らの音楽を"フューネラル・ドゥーム・フォーク・メタル"と呼び、自らは"ペイガン・ベルゴサイケ(異教徒的ベルギー・サイケ)"と形容する。ジャム・セッションによる即興とエレクトロニスとのカオスと言えばサンバーンド・ハンド・オブ・ザ・マンと共通するものの、イタリアのホラー映画がウッドストックに似合わないように、彼らのダーク&ドラッギーな音楽はいわば美しい田園地帯の悪夢的な異物である。アニマル・コレクティヴが『ローズマリーの赤ちゃん』のサウンドトラックをやったとしてもここまでのいかがわしさは持ち得ないだろう。

 シルヴェスター・アンファングの音楽は魅力的である。このポスト・サタニック・クラウトロックのサイケデリックな響きには、質素だがリズミカルなパーカッションとスペイシーなギターによる巧妙な香気が漂っている。魔女のセクシャルな誘惑のように、この音楽は危険な領域にリスナーを導く......だからといって怖がらなくても大丈夫です。これまでバンドが残してきた作品のアートワークのおどろおどろしさにはたしかにそそられるものがあるけれど、それを差し引いてもユニークな音楽なのだ。
 ブライアン・ジョーンズの『ザ・パイプス・オブ・パン・アット・ジャジューカ』を思い出して欲しい。あれをサイケデリック・ロックにおける異教徒主義の到達点のひとつとして受け入れることができるのなら、シルヴェスター・アンファングはひょっとしたら神秘的な美しさと感動を与えるかもしれない。アウトサイダーであることの証として......。

野田 努