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Oorutaichi

Oorutaichi

Cosmic Coco, Singing for a Billion Imu's Hearty Pi

Out One Disc

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野田 努   Jan 31,2011 UP
E王

 オオルタイチのライヴで印象に残ったのは、その奇妙なトリップ感だ。ナンセンスだがアップリフティングであるという独特のノリはなるほどイルリメと似ているが、彼の場合はスラップスティックめいたグルーヴのうえに中性的な声による甘いメロディが重なって、そして......決しておさまりが良いとは言えない叙情性がほうき星のように尾を引いているところが特徴的だ。音符は伸びて、消えていく。
 また、ダークサイドというものがほとんど見あたらないその音楽は、間違ってこの惑星に漂着してしまった宇宙人の音楽のように浮いている。磯部涼は『ゼロ年代の音楽』のなかでオオルタイチの『Yori Yoyo』(2005年)について「彼の才能は広義のワールド・ミュージックを解体/編集するセンスにあるように感じられる」と分析し、「細野晴臣の正当な後継者」と結論づけているが、3年ぶりの3枚目となった今作では細野晴臣的エキゾチズムを残しつつも、ボアダムスという別の宇宙にもまたがっているようなのだ。
 実際のところオオルタイチの音楽には、イルリメとボアダムスの溝を埋めるようなところがある。イルリメが大量の言葉を乱用しながら言葉など信用していない素振りを見せるのとは対照的に、オオルタイチはヤマツカ・アイのように言葉のコミュニケーションをあらかじめ捨てている。さもなければレジデンツとエイフェックス・ツインをブレンドしたような、アメリカでエメラルズが目指すところとは別の、ベッドルームのコズミック・ミュージックを広げている。そしてアルバムにはヤマツカ・アイのリミックスも収録されている......。
 その曲、シングルとして先行リリースされている"Futurelina"がまず素晴らしい。こんなことを書くとまたしても「子供の音楽だ」と指摘されそうだが、"Futurelina"にいたってはアフリカ・バンバータの宇宙船で繰り広げられる赤ちゃんのレイヴ・パーティである。派手で目まぐるしく変わる展開は......僕にメリー・ノイズを思い出させる(電気グルーヴの前身の前身)。コニー・プランクのシーケンスが東南アジアのディスコで鳴っているような"Shiny Foot Square Dance"やOOIOOのOLAibiをヴォーカルに迎えたポップ・チューンの"Coco"も面白い。カンが砂場で遊んでいるような"Vofaguela"、ひっくり返ったパスカル・コムラードのような"Sononi"、レジデンツがメロウなシンセ・ポップをやったような"Linking Pi"、酔っぱらったコーネリアスのような"Permanent Candy"......アルバム『コズミック・ココ、シンギング・フォー・ア・ビリオン・イムス・ハーティ・パイ』の収録曲はどれもがチャーミングに輝いているが、とりわけ"Merry Ether Party"は印象深い曲である。アルバムにおいて唯一メランコリックな響きを持つそれは、宇宙人たちが泣き叫んでいるようだ。気がついたらどこにも居場所がなかった......こんな星からは一刻も早く離れたい......オオルタイチの宇宙語を訳せばこんなところではないのだろうか。

 アルバムにはヤマツカ・アイのリミックスのほかデイダラスのリミックスも収録されている。前者にいたっては言うまでもなくそれがリミックスだとわからないほどの親和性を見せている。西海岸のビートメイカーによる再構築は、ドリーミーなダウンテンポとして気怠い昼下がりの陽光のなかに溶けていく。それはこの音楽がまだ追求していない可能性をほのめかしている。

野田 努