ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Global Communication - Transmissions (review)
  2. Boris ──Borisの初期作品2作がジャック・ホワイトのレーベルよりリイシュー (news)
  3. Brian Eno ──ブライアン・イーノ、初のサントラ・コレクションがリリース (news)
  4. interview with A Certain Ratio/Jez Kerr マンチェスター、ポストパンク・ファンクの伝説 (interviews)
  5. interview with Yukio Edano つまり……下からの政治とはいったい何なのか (interviews)
  6. Boldy James / Sterling Toles - Manger on McNichols (review)
  7. Phew ──日曜日にスペシャルセットの配信ライヴあります (news)
  8. interview with Saito テクノ夫婦 (interviews)
  9. slowthai ──UKのラッパー、スロウタイの新曲にジェイムス・ブレイクとマウント・キンビー (news)
  10. Sam Prekop - Comma (review)
  11. Boris ──初期作品2作がジャック・ホワイトのレーベルよりリイシュー (news)
  12. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  13. interview with Diggs Duke 偽りなきソウルを追い求めて (interviews)
  14. Idris Ackamoor & The Pyramids - Shaman! (review)
  15. Cuushe ──クーシェ、5年ぶりのソロ・アルバムが完成 (news)
  16. interview with BORIS 往復するノイズ (interviews)
  17. Africa HiTech - 93 Million Miles (review)
  18. ZOMBIE-CHANG - TAKE ME AWAY FROM TOKYO (review)
  19. 差別や貧困と闘うLA発チカーノ・バンド、エル・ハル・クロイ ──来日直前インタヴュー (news)
  20. Opinion 政治で音楽を救う(音楽で政治を救う?) (columns)

Home >  Reviews >  Album Reviews > aSymMedley- A G E of SuN EDGE

aSymMedley

aSymMedley

A G E of SuN EDGE

ALTZMUSICA

Amazon

野田 努   May 23,2011 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 和泉希洋志は日本のエレクトロニック・ミュージックにおいてもっともユニークなひとりである。彼が1997年にロンドンの〈リフレックス〉から八角形のケースでリリースした「Effect Rainbow」は、IDMにおける異色のサイケデリックだったと言えるだろう。ゴムのようにねじられたビートはテクノと呼ぶにはオーガニックな感触があり、実験的だが生温かいのだ。小杉武久やフルクサスなどを通過したこの異才は、それからボアダムスの「スーパー・ゴー!!!!!」「スーパー・ルーツ7」、あるいはOOIOOに参加すると、2000年には〈チャイルディスク〉からアルバムを1枚発表して、その4年後には〈ピース・レコーズ〉からもアルバムをリリースしている。その活動はテクノとアヴァンギャルドのあいだを気まぐれに往復するようで、とにかく捉えどころがないのだ。アシンメドレー名義による本作『エイジ・オブ・サン・エッジ』は、和泉希洋志としては7年ぶりのアルバムとなる。
 それはこれまでの彼の、IDM/アンビエント・テクスチャーを応用した諸作とは少しばかり異なっている。先述したように和泉希洋志は、ひとつのスタイルを貫くというよりも、さまざまなスタイルを取り入れて、咀嚼し、掻き回すような、固有のスタイルを持たないスタイルの作り手だが、『エイジ・オブ・サン・エッジ』からはクラブ・カルチャーのざわめきを間近に感じる。今日の日本において重要なDJのひとり、アルツが主宰するレーベルからのリリースというのは、そのことと無縁ではないはずだ。要するにはここにはハウス・ミュージックのグルーヴがあるのだ。そしてこれはどう聴いても、ユートピアのダンス音楽である。

 "Artificial Tour"はトロピカルなフィーリングをもったアンサンブルが4/4のキックドラムを擁したハウスのBPMのなか、ゆっくりとうねる波のように変化していく。ベースは地面から伸びているが、ジャングルの上のほうから音符が降り注いでくるようだ。美しいピアノとパーカッションが素晴らしコンビネーションをみせる"Akashic Rain"もまた極楽浄土におけるスローテンポのダンストラックで、それはある種のドリーミーなフュージョン・ハウスとして"Prismatic Drms"や"Mirror in Lemuria"へと続いている。
 アルバムは、70年代のイーノを彷彿させるような、5曲目のアンビエント・トラック"Crystal Finite State Machine"からさらに深い茂みのなかに入る。アルバムの曲名には自然を喚起する――雨、水晶、オーロラ、大気、森、太陽――といった言葉が使われているが、和泉希洋志はある種のアニミズム(それはボアダムスにも共通するものである)をハウス・ミュージックのスタイルに変換しているように思える。アトモスフェリックな"Aurora Tones"から自然の精霊たちが踊っているような"Purple Low Air"へと、アルバムはまるで放射性物質によって汚れてしまった大地とは真逆のヴィジョンを強調している。"Fibonacci Forest"などはデリック・メイの〈トランスマット〉から出ていても驚かないようなトラックだが、しかしこのサイケデリアはアフリカニズムとはまた別のところから来ているように感じる。アーサー・ラッセルからヒントを得て、水中にいるような感覚をハウス・ミュージックに変換したカリブーの『スウィム』のようにコンセプチュアルなダンス・アルバムで、『エイジ・オブ・サン・エッジ』にはJ.G.バラードの『結晶世界』をユートピア小説として書き換えたような、奇妙なオプティミズムがあるのだ。
 クローザー・トラックの"Diffused Aura"は、熱帯雨林のスコールのようなノイズが鳴っている。みんながこの音楽を好きな理由がとてもよくわかる。

野田 努