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Eaux

Eaux

i - EP

Morning Ritual Recordings

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SIGHTEAUX辰也   Jan 16,2013 UP

■で、オー(Eaux)は「水」を表すフランス語だよね。
ベン:そう。
 
■バンド名を見ても、みんな「オークス(Okes)って読むの?」ってなるんじゃない?
ベン:そう。
 
■で、きみが「いや、『オー』だよ」っていう。
ベン:そう。
 
■でも、みんなは、「おー、オー!」って。
ベン:そう、残念ながら。
 
■じゃあ、きみたちバンドが近くにいたとき、みんな「あー、おー!」ってしょっちゅう言ってることになるわけだよね?
ベン:あるラジオのひとは「イイイイユウウ」みたいなことを言ってた。
 
■「よー、デュードゥ」みたいな
ベン:そんな感じ。
 
■おー、ノー(NEAUX)!
ベン:母音だね。
ベン・クルック、『ヴァイス』内の『ノイジー』誌でのインタヴューで

 「it」という単語が象徴するように、英語とは主語ありきの文法で成り立っている――というように学校教育のどこかで教えられて(政見放送における安倍晋三の教育論にしたがえば「植えつけて」いただ。)いたので、イギリス人とメールのやりとりをしはじめたときに主語が省略されて返事が来たことにはすこし驚かされた(←そしてこの文の主語は?)。ただし主語が省略できるのはその文に主語が隠れていることがしっかり念頭にあるからで、主語という概念自体が危ういらしい日本語とは主語がないことの意味がおそらく違うのだろう。

 しかし主語だけで完結する文というのはありえない。「アイ」がどうしたのよと問うても、とくに発展もなく過ぎる7分間の表題曲"i"を聴いていると、虚しさのようなものがすこしばかり心にざわつく。ダークで、感情の欠片もあらわれない。ベースとリズムの骨格がただでさえ浮き彫りだというのに、ガリガリのエレキギターのように肉を削がれ、痩せ細った禁欲的な身体が冷たく暗闇のなかで浮かび上がる。というとすこしホラーめいてしまったかもしれないが、そういうわけではない。

 オーのメンバーはテクノやクラウトロックからの影響を語っているけども、どちらかといえばミニマルなハウスにより近い感触があるのが印象的だ。ジ・XXの『コエグジスト』において聴き取れるハウス・ミュージックの吸収とは似て非なるというか、親密な空間での愛(あるいは人肌)のムードが薫っていたジ・XXに対し、オーは胃の消化がよくなかったのだろうか、システマチックな四つ打ちのキックとハイハットがその骨っぽさを際立たせている。メンバー3人が狭い場所にこもって録音したらしく、この音楽も親密なシチュエーションではあるのだろうが、触れた手の冷たさとか弱さに思わず胸が痛んでしまう。しかし、きっとその肌に宿る精神は強さを持ち合わせているのだろう。"ニュー・ピークス"などを聴いていると、冷たいシンセサイザーの裏には歩みをとめようとしないポジティヴな意志が青く燃えているのを感じる。部屋が暗ければ心も暗いというわけではない。この音楽は、冷えきった冬の夜道に沈んでしまいそうなあなたを、しっかり歩かせるだろう。
 寒い。今日(1/14)は豪雪だ。たしかに寒い。寒いけども、着るコートやジャケットがあるうちは、意志さえ弱らなければ......。

 オーは、レーベル〈ザ・ソーシャル・レジストリー〉からリリースを重ねながらも2010年に活動を止めたシアン・アリス・グループ(以下「SAG」)のメンバーふたりとプラスひとりからなるトリオだ。2010年半ば以降の音沙汰がいっさいないなか、2011年の秋にSAGのトートバッグを筆者が注文したところ、それを受けてなのか、はたまたオーの始動タイミングと重なったからなのか、ツイッターやフェイスブックで「Sian Alice Group is no more」とひっそりと発表した。
 どういう経緯でSAGが解散したのかは知らない。ベンは音楽趣味の相違だと語っているが、その相違がもたらすものは人間関係の変化でもあるだろう。大好きなバンドが解散してゆくさまを近くで見届けてしまった経験のある人間には痛切にわかるかもしれないが、バンドの解散の経緯など知るだけ悲しくなるものだったりする。それに、メンバーが新しく音楽をはじめているのであれば、それがなにより大事なことだ。音楽が続くのは演奏する人がいるから、そしてそれを聴く人間がいるがゆえである。

 SAGを演奏だけでなくプロデュース面でも支えていた設立メンバー=ルパート・クレヴォーがオーには参加していないことは、おそらく残されたメンバー=ベンとシアンのふたりに新たな歩み方を模索させたことだろう。SAGはほんとうに気高く美しかった。オーはまだまだラフなダーク(もしくはコールド)ウェイヴだが、たたずむ音楽だったSAGにはなかった推進力を感じられる。オーを、SAGに残されたメンバーの歩みのはじまりだと見るとすれば、これから彼らがどういう道をどう歩くのかを筆者はなるべく近くで見届けたいと思う。

参照

『ノー・デイズ・オフ・ブログ』 - 「オー」
http://nodaysoff.com/blog/?p=944

『ブウレッグス』 - 「オー - インタヴュー」
http://www.bowlegsmusic.com/features/interviews/euax-interview-27962

SIGHTEAUX辰也