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Home >  Reviews >  Sound Patrol > [music video]- Hot Chip 、Alexis Taylor

[music video]

[music video]

Hot Chip 、Alexis Taylor

斎藤辰也   Dec 21,2012 UP

 今年はフォーマルな服装をキャップで崩すスタイリングが推されていた。タイラー・ザ・クリエイターの影響はあったのだろうか、さらにそこにスケボーのブームも合流してか、〈Supreme〉のキャップが東京の街中で散見された。
 もうひとつ、いやというほど見たのはからし色の洋服だ。先日、『ele-king vol.8』の年末対談のために上京していた木津毅氏、竹内正太郎氏とともに、裏原宿あたりでデートをしていたのだが、そこらじゅうの服屋でマスタード色がウィンドウ・ディスプレイに晒されていた。道行く人まで......、ほらあの人も、ね、あそこの人も、ほらほら、また、うわー......。


How to Dress Well  - & It Was U(Official Music Video)

 ほら、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルも! なるほど。おめかしするにはマスタードだったのね。


Alexis Taylor - Nayim From The Halfway Line

 しかし、キャップとマスタードのスタイリングを2年以上前から実践していた人がいる(http://www.youtube.com/watch?v=wif8DAyXkVc)。ギーク界のファッション・リーダーことホット・チップのアレクシス・テイラーだ。
 そのアレクシスが12月3日、〈ドミノ〉からソロEP『ナイム・フローム・ザ・ハーフウェイ・ライン』を突如としてリリースした(デジタル配信は17日開始)。公式な事前予告なしだったが、クリスマスに向けたささやかなサプライズということなのだろうか。2008年にジョン・コクソンが主宰する〈トレッダー〉よりリリースした宅録アルバム『ラブド・アウト』以来のソロ作品となる。
 ジャケットのアートワークは、オリヴァー・ペインとのタッグで有名な現代アート作家ニック・レルフによるものだ。
 残念ながら18日現在筆者の手にはまだ届いていないので、入手しだいレヴューしたいと思う。前作は宅録の名盤『マッカートニーⅡ』を思わせるような弾き語り&シンセのチルな作品であったが、今回はミニマムでグルーヴィーなリフレインが意表をついてくる。映像とタイトルのとおり、フットボールのネタからもいくらかねじれた感性がのぞくのがさすが。


Hot Chip - Don't Deny Your Heart (Official)

 ホット・チップのアルバム『イン・アワー・ヘッズ』は、今年とても評判であったように思う。ファンも増えただろう。もっとも筆者からするとマッチョなまでに3分ポップス化しているのがいまだに好きになれないのだが、それにしても本当によくできた曲ばかり揃ったアルバムだった。そのなかでも特にきらびやかだったシングル曲“ドント・ディナイ・ユオ・ハート”の公式ヴィデオが発表された。
 初めはまったく笑えなかった。いまでも笑えない。「ファニーなヴィデオ」で話題を呼ぼうとセルアウトしているんだと感じた。もうファンでいることがいたたまれなくなった。まあしかし、すこし再考してみよう。
 ホット・チップのメンバーはゲイである――という噂がかつてあった。噂を盛り上げたのは“レディー・フォー・ザ・フロア”(2008)の印象的な一節=「きみは僕のナンバーワンの男(You're my number one guy)」だ。2年以上前、なにを思ったか初対面にも関わらず筆者は噂についてアレクシスに訊いてしまったが、彼は笑顔でこう答えてくれた。
 「『バットマン』の映画でジョーカーが手下にそのセリフをいう場面(http://www.youtube.com/watch?v=hLBmZW-d2A8)があって、そのグラマー(文法)が好きだったから使ったんだ。ゲイのニュアンスは意図していなかったよ。現に僕も女性と結婚して子供もいるしね。インターネットで僕らがゲイだというひとがいようと関係ない話さ。」
 それ以前にも彼らはゲイ雑誌からのインタヴュー英『ガーディアン』誌のインタヴューなどにおいても、ゲイから人気があることは認めつつも噂を否定している。
 とすれば、今回のPVは改めてゲイを自分たちと切り離し対象化しているとも思える......けども、いまさら?
 もうすこし考えてみる。
 2人の選手が喧嘩寸前のところ、唐突にダンスでバトルをするシーンがある(『スペースチャンネル5』というダンス・ゲームを想起させる意味不明な空間だ)。その後、2人は熱くキスを交わし、不穏だった会場は愛のあふれる平和な空間となる。これは、とくに本楽曲がディスコ音楽からの影響が顕著なように、ホット・チップ自身が愛するディスコ文化(音楽)がゲイのコミュニティによって発展してきたことを示唆しているのではないだろうか(http://www.qetic.jp/feature/battles/78938)。
 ......なんて考えてはみたものの、映像監督のピーター・セラフィノウィッツ(Peter Serafinowicz)はコメディアンだし、ホット・チップとの仕事では、おっさんの口からビーム吐かせたり(http://www.youtube.com/watch?v=MaCZN2N6Q_I)、UFOがぶっ壊れるだけだったり(http://www.youtube.com/watch?v=-OsD3g461fM)するわけで、いやほんと、くだらないだけでしょう!
 しかし、このくだらないだけってのがポイントなのかもしれない。「これほど同性愛ってものが政治的なトピックになった年もない」とは木津毅氏の言葉だが(紙『ele-king vol.8』p84参照)、そんな年にあえてこのくだらなさを打ち出したと。そういうことでいいですかね。だって「我々は何年間もこの瞬間を待ち望んでいました! これこそがフットボールです!」ってナレーション、フットボール好きにだってわけわからないでしょう。

斎藤辰也