ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Sonic Boom サイケデリック・ロックの重鎮が30年ぶりのソロについて語る (interviews)
  2. スチャダラパー - シン・スチャダラ大作戦 (review)
  3. interview with Darkstar 失われたレイヴに代わるもの (interviews)
  4. ralph ──気鋭の若手ラッパーがファーストEPをリリース、プロデュースは Double Clapperz (news)
  5. Wire - Mind Hive (review)
  6. Aphex Twin ──エイフェックス・ツインが現在の状況を警告 (news)
  7. Knxwledge - 1988 (review)
  8. NINJAS ──なんか面白いことないかねー、ニンジャス? (news)
  9. Shabaka And The Ancestors - We Are Sent Here By History (review)
  10. Jun Togawa──戸川純がまさかのユーチューバーになった! (news)
  11. 井上鑑 - カルサヴィーナ (review)
  12. The Soft Pink Truth ──マトモスの片割れ、ドリュー・ダニエルによるザ・ソフト・ピンク・トゥルースがクラストコアのカヴァー集をリリース (news)
  13. Ralph ──東京の気鋭のラッパーが新曲を発表、プロデュースは Double Clapperz (news)
  14. Run The Jewels ラン・ザ・ジュエルズは何がすごいのか (interviews)
  15. Various Artists - Gilles Peterson Presents MV4 (Live from Maida Vale) (review)
  16. Columns JPEGMAFIA『Veteran』の衝撃とは何だったのか (columns)
  17. Tomas Phillips Pulse Bit Silt (style)
  18. Columns Stereolab ステレオラブはなぜ偉大だったのか (columns)
  19. Roger Eno & Brian Eno - Mixing Colours (review)
  20. Post-Pandemic Memories 第2回 キックとキックの間の長いブレイク (columns)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Riton & Kah-Lo- Foreign Ororo

Riton & Kah-Lo

Global BeatHouseRap

Riton & Kah-Lo

Foreign Ororo

RitonTime

Amazon

三田格   Oct 09,2018 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 ナイジェリアといえば国外に出るとしたら、これまではイギリスと相場が決まっていたし、実際、世界最大のナイジェリアン・コミュニティはいまだイギリスにあり、ここからディジー・ラスカルやスケプタといった移民二世のビッグMCが出て来たことはよく知られている。ところが新たなトレンドを求めて方向性を変えたメジャー・レイザーの最新ミックス・テープ『Afrobeats』にフィーチャーされていたラッパーやプロデューサーの出身地を調べてみると圧倒的にナイジェリア出身者が多く、かつてジャマイカからイギリスへと渡っていたレゲエやダンスホールのMCたちが90年代以降はジャマイカからアメリカへと目的地を変えたことと同じことが現在のナイジェリアにも起きつつあることがよくわかる。そうしたナイジェリアのMCたちがアメリカで制作したラップ・アルバムを聴いてみると、ところどころでナイジェリアや汎アフリカ的な表現も挟まれているものの、やはりアメリカン・マナーに染まってしまうケースが大半で、目先が大きく変わっているのでなければ、だったらリル・ウェインやカレンシーの新作を聴いた方が……と僕などは思ってしまう。スーサイド・ボーイズとかね。
 クラインと同じくイギリスのクラブ・ミュージックに進路を定めたナイジェリア育ちのカー~ローことファリダ・セリキはそして、これまでにリトンことヘンリー・スミッソンと組んだ2枚のシングルでごく短期間に頭角を現し、早くも昨年のグラミー賞でベスト・ダンス・レコーディングスにノミネートされている。TVドラマ『13の理由』のプロデュースやSNSからの撤退で何かと話題のセレーナ・ゴメスが早くも「Back To You」のリミキサーに起用しているので、メジャーでの知名度も急速に高まり、もはや爆発寸前だろうというタイミングでアルバムもリリースされた。

 これまでリトン名義でしかアルバムをリリースしてこなかったスミッソンも今回は名義をリトン&カー~ローとしている。リトンは99年にデビューした古参のプロデューサーで、〈グランド・セントラル〉からのデビュー・アルバム『Beats Du Jour』では穏やかなダウンテンポ、キュアーをカヴァーした“Killing An Arab”ですぐにもエレクトロクラッシュに移行し、2008年にはアイネ・クライネ・ナハト・ムジークの名義でクラウトロックとハウスをクロスオーヴァーさせたアルバムを、以後はわかりやすいことにレーベルも〈エド・バンガー〉に移り、2010年代に入ってからはベース・ミュージックを取り入れたEP「Bad Guy Riri」やヴォーカルにメレカをフィーチャーした“ Inside My Head”で完全に迷走状態に入ったかに見えた。その直後にツイッターで知り合ったのが(同時期にニューヨークに住んでいた)カー~ローだったという。“Habib”など現在に通じる曲もなくはなかったスミッソンがカー~ローをフィーチャーした“Rinse & Repeat”はアフロビートを取り入れているわけでもないのに、微妙にテンポをずらす彼女の歌い方だけで、それまでとは驚くほどグルーヴ感の異なる曲となり、まさかのグラミー賞ノミネートへ突き進んでいく。続く“Betta Riddim”のプロダクションは明らかに彼女の歌い方を生かす方向に変化し、以後もtqdやフィット・オブ・ボディといった80Sガラージ・リヴァイヴァルと歩を揃えた“Money”からイナー・シティ“グッド・ライフ”をループさせた“Fasta”などスミッソンの作風も15年目にして一気に固まり、いままであるようでなかったヒップ・ハウスのアルバムに仕上がっていく。

 アルバム・タイトルはおそらくゼノフォビア(移民嫌悪)を念頭に置いた上で、「外国人の気分」を表すスワヒリ語のようで、カー~ローの歌詞も「覇気のある人はいないのか」と繰り返す“Ginger”やニューヨークやロンドンでの生活とナイジェリアでの暮らしを比較した“Immigration”などシンプルなものが多い。「みんな、お金が欲しい」とか「(未成年の)女の子も楽しみたい、飲みたい、フェイクI.D.を持って行こう」とか。そう、ラゴスのパーティ・カルチャーを曲に反映させるためにナイジェリアからゲストを何人か招いた曲もあり、ガヤガヤとした感じで曲は進む。カー~ローはすでにリトンとのプロジェクトとは別にハイチ出身のマイケル・ブラントとも“Spice”をリリースしている。ペース早いです。ちなみに彼女の声のせいか、多くの曲はどうしてもケロ・ケロ・ボニトを思わせるものがあり、妙な懐かしさもあるのだけれど、実際のケロ・ケロは新作となる3作目でパンク・ギターを全開にし、いわばパワー・ポップ路線を突き進んでいる。

三田格