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文明人の皮をひっぺがせ――ドラマバカ一代

文明人の皮をひっぺがせ――ドラマバカ一代

第2回:バクダン、ミサイル、てやんでい

文:栗原康 Sep 27,2017 UP

バクダンとは地球である
パンパーンッ、ドカン、ドカーンッ

 パンパーンッ、ドカン、ドカーンッ。民衆はバクダンが好きだ。ひとを殺したり、殺されたりするのが好きだっていってるわけじゃない。そういうことじゃなくて、なにかがふっとんだ、ガラガラ閉店みたいなその感覚が好きなのだ。ハラハラ、ドキドキ。ハラハラ、ドキドキ。ああ、たまんねえ。
 じっさいのところ、バクダンってのはぶっぱなしたら制御不能だ。意図していないものもふくめて、一瞬にして、そこにあるものすべてをふっとばしてしまう。他人だけじゃない、自分の命や人生もひっくるめて、残酷なくらいすべてを無に帰してしてしまうのだ。おしまいだ、おしまいだ、ぜんぶおしまいだ。この何世紀か、民衆をひきつけてやまなかったのは、そんなカタストロフそのものなんじゃないかとおもう。
 で、いつもおもうのだが、これって地球にちかいんじゃないだろうか。ちょっと子どものころをおもいだしてほしいのだが、台風で停電になって、雨戸をしめて、あやういところは窓に板をうちつけて、そんでもってロウソクをかこんで、暗がりのなかで家族や友人とくっちゃべっていたとき、妙な高揚をかんじやしなかっただろうか。ハラハラ、ドキドキ。ハラハラ、ドキドキ。ああ、たまんねえ。地球だ!
 この非日常的な感覚っていうのだろうか、外からはパンパーンッ、ドカン、ドカーンッと異様な音がきこえてきて、一切合切がふっとばされている。しかも、それでひとにも被害がでているわけで、とても残酷なわけだ。でもそれでもいやおうなしに、なんにもねえところからまたあたらしい生をいきることになる。それが自然だ、カタストロフだ、再生だ。きっと、民衆がバクダンにひかれるのは、そこにおなじようなものをかんじているからじゃないだろうか。バクダンとは地球である。
 でも、国家はそういうのをだいなしにしてしまう。バクダンでも、いまだったらミサイルでもいいが、民衆の武器をとりあげて、たんなる殺人兵器にしてしまうのだ。戦争の論理である。殺るほうも殺られるほうも、人間はただの人口でしかない。だって、無差別に大量殺戮するのだから。何人ぶっ殺せたのか、ひとが数にしかみえなくなる。あるいは、まだなんにも撃ちこまれていなくても、こわいよ、こわいよ、死んじゃうよって恐怖があおられると、みんな思考停止させられてしまう。
 で、生きのびるためには、国のいうことをきかなきゃいけないとおもわされてしまうのだ。ぜったいに無意味だとわかっていても、「ビービッビッ、緊急速報です」とかいわれると、地べたにひれふして、頭をかかえたりしなきゃいけない。これ、政府のお偉方がいっているだけじゃない、マスコミもほんきだ。
 このまえ、北朝鮮がミサイルをぶっぱなしたとき、たまたまテレビをつけていたら、地べたにひれふさないで、目をキラキラさせながら空をみあげていたおじいちゃん、おばあちゃんがいて、それをみていたクソみたいな記者が、「あなたたちなにやってんですか!」って、まるで犯罪者でもぶったたくかのように叱責していた。チッ、おまえがなにやってんだ、このやろう。
 人間が人口でしかなくなっている。国にいわれたとおりにうごくコマでしかない、数でしかない。ジジイ、ババアをみならいやがれ。ひとはミサイルがとんでくるとかいわれたら、テンションあがってみにいっちまうものなのだ。敬老、だいじ!
 だから、いまこそいっておかなきゃいけないんだとおもう。バクダンの想像力をとりもどせ。殺人兵器をもてってことじゃない、ムダにひとをぶっ殺せってことじゃない。この手に地球の力をにぎりしめろってことだ。ハラハラ、ドキドキ。ハラハラ、ドキドキ。バクダンとは地球である。パンパーンッ、ドカン、ドカーンッ!

ハクション、ちくしょう!

 さて、そんなことを考えるのに、すごくいいなとおもったのが、ドラマ『僕たちがやりました』だ。主人公は窪田正孝扮するトビオ。ボケ高にかよう2年生だ。ふだん、オレの人生はソコソコなんだ、そんなもんでいいんだと、ちょっとばかし、人生にあきらめの気持ちをもっているのだが、べつにくらいわけじゃなくて、通学中にチラッと女子高生のパンツがみえちゃっただけで、うひゃあ、こりゃたまらんと心躍らせ、「ソコソコ、サイコー!」っておもっちゃうような高校生だ。自分、ビンビンであります。
 高校では、フットサルの部活にはいっているのだが、かんぜんに名前だけの部活で、毎日、部室で友だちとくっちゃべったり、マンガをよんだり、AVをみたり、人生ゲームをやったりして、ダラダラ、ゴロゴロと時間をすごし、帰りには、もうちょい遊んでいこうぜってことで、ボーリングにいったり、カラオケにいったりしてかえるみたいなことをやっている、そんな日常だ。友だちはマルとイサミ。そしてOBにして、空前絶後、超絶怒涛の大金持ち、パイセンだ。
 このパイセンをお笑い芸人の今野浩喜がやってるのだが、これがまたいい味をだしている。20歳くらいの役なのだが、みためは30代。高級車をのりまわしているものの、イガグリあたまにサングラス、そして白のノースリーブに短パンとサンダルっていう、すげえダサイかっこうだ。いわゆるダメ人間で、いつもハイテンションなのだが、絵にかいたようなトンマでなにをやらせてもダメ、ダメ、ダメ。高校時代は友だちもなく、つかいっぱしりにされていて、卒業してからは、就職もせずにプラプラしていたのだが、トビオたちが遊んでくれるので、毎日、高校にあそびにきていた。
 第1回の放送で、センコーにつかまって、「おまえみたいなクズはもう学校にくるな。わかってるだろ、おまえは生きていても、なんの意味もないクズなんだ。どうぜ、カネしかとりえがないしな。へへへっ」みたいなことをいわれて、歯をくいしばって号泣するシーンがあるのだが、いやあ、わたしはカネこそないものの、おなじダメ人間として、もう涙なしじゃみられなかった。こ、今野さんっ……!!! とにかく、今野さんの演技をみるだけでもおすすめだ。ぜひ、ユーチューブでもみてもらいたい。
 とはいえ、4人でたのしくやっていたのだが、ある日、転機がおとずれる。マルがおとなり、ヤバ高の市橋ひきいる不良軍団につかまってしまったのだ。監禁されて、おなじくらいよわっちい子とたたかわされて、勝ったらかえっていいといわれて、死闘のはてに勝利したのだが、殺さなきゃダメだといわれて首をしめるも殺しきれない。で、ボーナスラウンドとかいわれて、マッチョな不良に半殺しにされたのだ。血まみれのまんま素っ裸にされて、ダンボールにつめられ、トビオたちのところにおくられてくる。箱をあけたら……。で、トビオたちは決意した。アイツら、殺ス。トビオたちの復讐戦がはじまった。ヤレ、ヤレ、ヤッチマエ。
 それで今野さんが材料を買ってくれて、みんなでいっぱいバクダンをつくった。ハラハラ、ドキドキ。ハラハラ、ドキドキ。やばい、たのしすぎる。もちろん、ほんとうに殺すわけじゃない。ヤバ高の窓ガラスのちかくにしかけて、かるくパリンッ、パリンッてのを期待していたのだ。みんなで夜中にしのびこんでバクダンをしかけ、翌日、屋上でながめながら爆破をした。
 ジャスティス、そうさけびながら今野さんがスイッチをおすと、パンパーンッ、ドカン、ドカーンッ。あっ、あれ……。マジでヤバ高がふっとんだ。マジヤベエ! じつは夜中しのびこんだときに、今野さんがスッころんで、はずみでプロパンガスのまえにバクダンをおっことしちまったのだ。不良軍団が火車になってもだえ苦しんでいる。10人死亡。自分、地球をかんじます……。ハクション、ちくしょう!

やりたいときにやりたいことをやるだけだ
オープン・ザ・ゲート!

 トビオのソコソコの人生がふっとんだ。まず、ソッコウで今野さんがとっつかまる。やべえ、逃げろっ。みんな、事前に今野さんから300万円ずつもらっていたので、それで逃亡生活をおくろうとした。でもトビオはマルにうらぎられて、カネをもち逃げされてしまう。あの、クソやろう。すぐに警察にみつかって、もみあいになりながらも逃走。でもそのときに、ズボンとクツをひきはがされてしまった。ひとり裸足にパンツ姿で、街をさまよう。おしまいだ、おしまいだ、ぜんぶおしまいだ。
 そうおもったやさき、たすけてくれたのがホームレスのヤングさんだ。「ズボンないの?クツないの?」ときいてきたのでハイというと、これあげるという。ズボンとクツだ。すかさず、「歯はみがいた?」ときいてきたので、首を横にふるとついてこいという。スッとコンビニにはいってでてきたとおもったら、トビオのポッケに歯磨きセットがはいっていた。うおおお、マジかよ。おどろいたトビオをみて、ヤングさんがニッとわらって「オレ、窃盗二段だから」という。やばい、かっこよすぎだ!
 ヤングさん、オレついていきます。というか、社会生活なんてなくても、これで生きていけんじゃねえか。そうおもって夜、寝ようとおもっていたら、ヤングさんがこうつぶやいた。「トビオ、やりたいときに、やりたいことをやるだけさ。人間の可能性はまだ半分しかひらかれちゃいない」。うおおお、名言がでました。ハイッていって寝ようとすると、とつぜんヤングさんがトビオにとびのってきた。トビオのズボンをぬがし、ケツをプリンッてさせてまたこういうのだ。「やりたいときにやりたいことをやるだけさ。トビオッ、オープン・ザ・ゲート!」。なんて日だ。
 ヤングさんがつよすぎて、あらがえない。でも、それでトビオがピイピイ泣いていると、パッと手をはなしてくれた。ヤングさんの哲学だ。やりたくないことはやらなくていい。ホラッ、いけよと。で、トビオは号泣しながらダッシュで逃げた。オレはいったいなにをやっているんだ。自問自答だ。ふと、携帯をみれば、親や妹、おさななじみの蓮子ちゃんから、じゃんじゃん連絡がきていた。留守電をきいてみれば、かあちゃんが泣きじゃくっていて、マジで心配してくれている。
 それをききながら、トビオはふたたび涙をながし、こうおもった。いまつかまったら、未成年だから死刑にはならないけど、社会的には死を意味するだろう。世間からも一生、クソみたいなあつかいをうけるわけだ。でも、それでもまわりから、どんなあつかいをうけることになっても、ぜったいに変わらずに自分のことをおもってくれている人たちがいる。死んでもなおいっしょに生きる。この社会の道徳や利益なんかじゃとらえられない、そんなものとびこえちまった無償の生ってのが、この世のなかには存在してるんだ。もう、それだけでいいじゃないか。トビオは自首を決意した。

ギッコンバッコン、ギッコンバッコンー、ズッコンバッコンー!!
あるのは無希望、それだけだ

 と、そうおもったときのことだ。なんと、目のまえに今野さんがいるじゃないか。ええっ! 「ムショよりー、ふつうにー、シャバが好きー、アイッ!」。今野さんはそういうと、すげえキレのあるダンスをひろうした。ふ、ふざけてんのか? じつは今野さん、ムショにはいっているあいだ、ひたすらあたまのおかしいことをいいまくっていた。とりしらべで犯行動機をきかれてもこうこたえる。「吟じます。ギッコンバッコン、ギッコンバッコンー、ズッコンバッコンー!!」。このやろうと、ポリにけりとばされたりしたのだが、必死にたえる。で、そのあいだに真犯人が名のりでてきて、無罪放免となったのだ。
 バンザイ、バンザイ、万々歳! 4人でおちあってよろこんでいたが、そこで今野さんがほんとのことをいってしまう。そう、ほんとうに真犯人がいたわけじゃなくて、今野さんのお父さんが事件をモミけしたのだ。じつは今野さんのお父さん、裏社会の帝王で警察にもコネがある。で、殺人犯の父親とかいわれるのがイヤだから身代わりをたてて、事件をヤミにほうむったのだ。「ホレッ、ヤミのなか、ホレッ、ヤミのなか、ホレッ、ヤミのなか……」。みんなで手拍子をとって連呼してみるが、いえばいうほどくらくなる。
 トビオは良心の呵責で生きた気がしない。死んだ10人の顏があたまからはなれないのだ。ウヴェッ、ウヴェッ。ゲロにつぐゲロ、そしてさらなるゲロである。自首したい、でももうできない。自首したい、でももうできない。アァッ、アァッ、アァッ、アァッ、オレはなんでダメなんだ。気づけば、学校の屋上にのぼっていて、えいっといって夕日にむかってジャンプした。とびおり自殺だ。しかし人間、そうかんたんに死ねやしない。いいかんじに木にひっかかって、ちょっとしたケガで入院となった。
 病院で目をさますと、そこにはヤバ高で爆発にまきこまれ、下半身不随になった市橋がいた。バイクのレーサーになりたいという夢をたたれ、おまけにヤバ高の友だちだとおもっていた連中にも、おまえはおわったんだとコケおろされ、抜け殻みたいになっていた。かれはかれで社会的に死んだのだ、いろんな連中にぶっ殺されたのだ。
 それをみて、トビオはもちろん犯人なわけだし、もともとこいつ死んだらいいのにとおもっていたのだが、自分の経験とかさなって共感してしまう。心から応援しようとおもって、リハビリをささえ、いっしょにカラオケにいって尾崎豊の「卒業」をうたったりして、親友になった。
 でも、それで希望がみえたとおもったのだが、そんなときに市橋の唯一の肉親だったおばあちゃんが病死してしまう。しかもわるいタイミングで、トビオがおさななじみの蓮子ちゃんとつきあっちゃうのだ。市橋も蓮子ちゃんにホレていたってこともあって、かれは希望をぜんぶうしなっちまう。トビオに、コングラチュ・ネーションっていって、病院の屋上からとびおりてしまった。死亡だ、この支配からの卒業だ。アァッ、アァッ、アァッ、アァッ。もうなんにもみえやしねえ。あるのは無希望、それだけだ。

明日をぶっ殺せ
バクダンの想像力をぶちかませ
それがこの地球を命がけで生きるってことだ

 これでトビオはおもってしまう。自首したい、自首したい、自首したい。そうおもって、ほかの3人にもはなしたら、みんなおなじ気持ちだという。みんな社会的には死ぬことになるだろうし、今野さんにいたっては、20歳こえているから死刑だろう。でも、それでもやらなきゃダメなんだと。もともと、ヤバ高の不良軍団がよわいものいじめをしていて、そんな弱肉強食の社会をぶちこわそうとおもって、かるいバクダンをしかけた。つよいものに服従する、そんな自分の世界観をふっとばしたかったのだ。
 でも、やってみたらムチャクチャひとを殺しちまって、しかも裏社会のドンと警察がグルになって無罪放免。こんどは弱者になった市橋とかをいたぶりつくすハメになっちまったわけだ。管理された社会のなかで、勝ち組として、ソコソコの人生をおくっていきましょう、よわいものたちを犠牲にして。ふざけんじゃねえ。もういちどだ、もういちどこの社会をふっとばしてやろう。
 ただ自首したってダメだ。モミけされるにきまっている。相手は裏社会と警察そのもの。どうしたらいいか、どうしたらいいか。想像力を全開にしよう。4人で必死に知恵をしぼる。ハラハラ、ドキドキ。ハラハラ、ドキドキ。ああ、たまんねえ。こういうとき、ひとってのはたのしくてしかたながい。
 で、つくりだしたわけだ。バクダンを。もじどおりのバクダンじゃない。真のバクダンだ、想像力そのものだ。まず、街じゅうにビラをばらまいた。ただのビラじゃない。裏面に万札をはったビラである。街じゅうのひとが狂喜乱舞してうけとっていく。で、ある有名アーティストのライブにこいとよびかけた。そこに4人でのりこんでいって、ライブをジャック。そして、マスコミもひともすんげえたくさんいるなかで、これまでの経緯をぜんぶぶちまけたのだ。僕たちがやりました!
 じゃあ、どうなったのかというと、とつぜん、ライブ会場に裏社会の人間がのりこんできて、トビオたちはラチされてしまう。で、なぶり殺されそうになったところ、今野さんの反撃だ。裏社会の人間をひとり刺し殺してしまう。警察につかまって、しかも事件はもみけされそうになった。今野さんのお父さんが手をまわしたのだ。今野さんはいちど誤認逮捕されたせいで、頭がおかしくなっちまった、それで自分がやったんだとおもいこんでしまって、トビオたちをまきこんで、あんなふうにさわいだんだってことにされたのだ。ほれ、ヤミのなか、ほれ、ヤミのなか、ほれ、ヤミのなかと。
 でも、そうは問屋がおろさない。さいご、トビオがひとり決起する。高校の屋上にあがり、バクダンをもって、全校生徒、そしてマスコミのまえで、泣きながらさけぶのだ。「僕たちがやりました! 僕たちがやりました! なんでつかまえてくれないんですか、なんで、なんでぇ、うおお、うおおおお!!!」。そういって、バクダンのスイッチをおす。もちろんガラスがパリン、パリンとわれただけだ。でも、これでトビオは逮捕。バクダンから事件の真相もあかるみになって、みんなとっつかまることになった。
 こんなはなしなのだが、なんとなくでもドラマの思想はつたわっただろうか。強者になってひとを支配するのも、弱者になってひとに支配されるのも、まっぴらごめんだ。どっちにしても、この腐った社会のなかで、明日はちょっとだけ強者になりましょう、もうちょっとよくなれ、もうちょっとよくなれと、毎日毎日、その努力を強いられるだけのことだ。明日のために、明日のために。ソコソコの人生。
 そんな人生をぶっこわすとしたら、もうバクダンしかない。でも、それがたんなる殺人兵器になったとき、いくらでも国家や国家のミニチュアみたいな連中に利用されてしまう。強者の論理にまきこまれて、気づけば自分もその一員になってしまうのだ。だから、もしそこからもぬけだそうとするならば、そんな殺人兵器さえも無に帰すようなバクダンをぶちこむしかない。パンパーンッ、ドカン、ドカーンッ。明日をぶっ殺せ。バクダンの想像力をぶちかませ。それがこの地球を命がけで生きるってことだ。自分の人生を爆破しよう、なんどでも、なんどでも爆破しよう。バクダン、ミサイル、てやんでい。あばよ!

Profile

栗原 康 /></a><strong><a href= 栗原 康/Yasushi Kurihara
1979年、埼玉県生まれ。現在、東北芸術工科大学非常勤講師。専門はアナキズム研究。著書に、『大杉栄伝:永遠のアナキズム』(夜光社)、『はたらかないで、たらふく食べたい』(タバブックス)、『現代暴力論』(角川新書)、『村に火をつけ、白痴になれ:伊藤野枝伝』(岩波書店)などがある。ビール、ドラマ、詩吟、長渕剛が好き。

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