Home > Interviews > interview with Hot Chip - いいですか? 絶対に真実は言わないください
ひとつ問題があって、記者たちは僕たちの最初の指令を読み違ってしまった。「Greek」(「ギリシャ人」)という語から「r」を忘れてしまったんだよ。僕らはギリシャ人なんだけどもね。記者たちは僕らが「Geek」(オタク/奇人/ダサい男)という言葉を発信したがってると思ってしまったんだ。
■自分の好きなところはどこですか?
アレクシス:うーん......。僕は背が高くて......。
■ふふふ......(笑)。
野田:うう(笑っていいのか気遣う)。
アレクシス:だから、見晴らしがいいところ。......僕の体型も好き。で......。
アル:僕は彼の体型きらいだけどね。ははははは!
野田:ははははは!(遂に笑う)
■ふふふ(笑)。
アレクシス:......視覚が優れてること。で......、聴覚が素晴らしくて......、強い意志の力があるところも好き。......あらゆる悪に抵抗できることも。......それで......決断力もあるところ。
■なるほど。あなたはアバウト・グループのリーダーですもんね。
アレクシス:いや、違うよ。
■本当ですか、えっと、では。
アレクシス:17名いるメンバーのうちの1人でしかないよ。
■17名?
アル:ふふふ(笑)。
■ふふふ(笑)。了解しました。好きなダブステップのアーティストはいますか?
アル:(即答)スクリレックス(Skrillex)!
野田:ははははははは(爆笑)!
■やっぱり(笑)!
アル:明らかでしょ!
アレクシス:僕は世に出ているダブステップに関するあらゆるものが好きで、ずっとずっと後世まで残ればいいなと思ってる。僕にとっては、もっともオリジナルでもっとも高尚な音楽のフォーマットかな。
■はははは......!
アル:ふふふ(笑)。
■レディオヘッドについてはどう思いますか?
(沈黙、5秒)
アレクシス:表現豊かで、......思慮があって、......とても音楽が美しい。とくに歌手の声がね。彼にしか触れられない心の琴線というのものに届くいてくるし......。
アル:ふふふ(笑)。
■ふふふ(笑)。
アレクシス:で、......彼ら全員がレディング(Reading)出身というのに感心します。
アル:レディングという町にとても貢献してるよね。
(註:レディオヘッドはオックスフォード(Oxford)出身。ちなみに、ホット・チップのうちジョー・ゴッダード(Joe Goddard)はオックスフォード大学出身)
■チャールズ・ヘイワードやロバート・ワイアットのようなポリティカルなミュージシャンとの共演についてはどのような感想をもっていますか?
アル:(即答)やったことない。
アレクシス:ないね。
(一同爆笑)
■おおおお、了解、了解しました(笑)! では、とくにポリティカルなロバート・ワイアットのような人と共演したいと思いますか?
アレクシス:うーん、政治には興味がない。2012年以前に作られたどんな音楽にも興味がない。どれにもね。
アル:古臭いよね。
アレクシス:古くて霧のかかった音楽だよ。
アル:彼らには「黙れ、ジジイ」と言いたい。「黙ってればいいから。音楽やらなくていいから」と思うな。
(註:元ディス・ヒート≪This Hear≫として名高いチャールズ・ヘイワードは、ホット・チップの『One Life Stand』と『In Our Heads』にも参加しており、アバウト・グループのメンバーでもある。元ソフト・マシーン≪Soft Machine≫のロバート・ワイアットはホット・チップのリミックスEP『Made In The Dark』にヴォーカルで参加しており、ベルトラン・ブルガラ≪Bertrand Burgalat≫との曲"This Summer Night"をホット・チップがリミックスしている)
■おふたりは、自分たちのことをプロフェッショナルだと思いますか?
アレクシス:んー......。
(しばしの沈黙)
アル:あー...、超難しい! 脳みそが燃えてる(笑)!
アレクシス:うーん、僕たちは......見た感じ、いまだにとってもアマチュアっぽく見えると思う、やることなにもかもにおいてね。僕たち自身が僕たちは音楽で生計を立てていると思っていたとしても、ね。たぶん、......僕たちをプロフェッショナルだと思っているのは、世界で僕たち自身だけだよ。
アル:ほう。ふふふ(笑)。
■なるほど。
野田:ふふふ......(笑)。
アル:ふふふ......(笑)。
アレクシス:ふふふ......!(堪えきれず声を抑えて笑う)
野田:自分たちの音楽でいちばん伝えたくないことはなんですか?
アル:僕たちの感情とか、それと、欲望とか、うーん...。
アレクシス:楽しすぎる音楽は好きじゃないな。表現豊かな音楽も。
アル:そうだね......、退屈で現実に則していない音楽が好きかな、それと、うーん......。(笑)
アレクシス:僕はいつどんなときも、ダニエル・スパイサー(Daniel Spicer)という人がどんな音楽を作るかについて考えるんだ。彼は『Wire』誌のとても素敵な記者で......。
アル:はははははは(笑)!
アレクシス:彼は自分のバンドをもっていて、<Linkedin>というサイトに彼と記者として仕事をする機会を人びとに宣伝しているんだ。僕は、彼は世界でもっとも知的な人だと思うし......
■ぷっははははは(笑)。
アレクシス:狭量なんてことはまったくないし、自分勝手に人を非難しないし、出身で人を判断することをしないし、音楽を聴くことに本当に集中していて、とても公平で、僕はいつも......発言するときには彼のことを考えてるんだ。
アル:なにかを決断するときも考えてるよ。音楽だけでなくて、生き方そのものについて、彼に教わっているね。
アレクシス:彼の口髭は全然好きじゃないんだけどね。
(註:ダニエル・スパイサーによるアバウト・グループの1stアルバムのレヴュー。
「ドラムがすべて(all about the drums)」で、他は取るに足らないといった旨である)
(註:また、アレクシスは『Wire』誌に直接メールを送ったようで、「ダニエル・スパイサーに、嫌いな人をレヴューでイラつかせるのをやめるようアドヴァイスしてくれないか。彼はなによりもまず最初に、僕のかけている眼鏡の種類にイチャモンをつけた。ジョン・コクソン≪同じアバウト・グループのJohn Coxon≫が同じフレームの眼鏡を『Wire』でかけていても攻撃しないのにね。どんなに度を超して幼稚な雑誌なんだろうと思った」という言葉が『Wire』誌に掲載されている。
<http://www.exacteditions.com/read/the-wire/october-2011-9409/6/3/>
■雑誌やウェブで、ホット・チップは「nerd」(ナード)や「wonk」(ウォンク)という語で「オタク」と形容されがちですが。
アル:うん。
■その上で、"Night And Day"のようセクシュアルなことを歌うことについてはどう思っていますか。
アル:ははははは!
■ちょっとセクシュアルですよね。
アレクシス:どう思っているか......。セックスについて書くことは本当に居心地が悪いし、いつだって避けようとしてるよ。それに......。
アル:それに、「オタク」という形容についても、僕たちはそういう期待に応えてきて......、そのイメージでキャリアを積んできたんだ。「オタク」のイメージも僕らから発信し出して、それから記者もそう書き出して......、それで......僕らが考えてたのは、パラダイムというか......。
アレクシス:実際のところ、僕たちがたくさんの記者を雇ったんだ。デビューするにあたって、言葉を広めて。
アル:イメージを作るためにね。
アレクシス:ただ、ひとつ問題があって、記者たちは僕たちの最初の指令を読み違ってしまった。「Greek」(グリーク。ギリシャ人)という語から「r」を忘れてしまったんだよ。僕らはギリシャ人なんだけどもね。記者たちは僕らが「Geek」(ギーク。オタク/奇人/ダサい男)という言葉を発信したがってると思ってしまったんだ。それがマイナスにも働いてしまって、遂には僕らが5人の「Geek」によるバンドだと嘘をつかなくてはならなくなって......、つまりさ、今日、実際、大変な時期を過ごしてるんだよ。
アル:うん、そのとおり。次のアルバムはギリシャの経済状況について書くよ。書くべきだよね。
野田:はははは......笑えないんだけど!
■「Me and Ulysses」?
アル:そう、そういうこと(笑)!
アレクシス:ふふふふ......(笑)。
(註:ホット・チップがまだアレクシスとジョーのデュオだったデビュー・アルバム『Coming On Strong』では、ふたりのクレジットは「Ulysses and Sophocles」という古代ギリシャ人名の表記になっており、収録曲"Keep Fallin'"ではそのことを強調して歌っていた。)
司会と註釈:斉藤辰也(2012年7月09日)