ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. PAS TASTA - GRAND POP
  2. Columns Squarepusher 蘇る00年代スクエアプッシャーの代表作、その魅力とは──『ウルトラヴィジター』をめぐる対話 渡辺健吾×小林拓音
  3. PAS TASTA - GOOD POP
  4. Columns エイフェックス・ツイン『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』をめぐる往復書簡 杉田元一 × 野田努
  5. Tyler, The Creator - Chromakopia | タイラー、ザ・クリエイター
  6. Jabu - A Soft and Gatherable Star | ジャブー
  7. Tomoyoshi Date - Piano Triology | 伊達伯欣
  8. Shabaka ──一夜限り、シャバカの単独来日公演が決定
  9. interview with Kelly Lee Owens ケリー・リー・オーウェンスがダンスフロアの多幸感を追求する理由
  10. interview with Loraine James 路上と夢想を往復する、「穏やかな対決」という名のアルバム  | ロレイン・ジェイムス、インタヴュー
  11. DUB入門――ルーツからニューウェイヴ、テクノ、ベース・ミュージックへ
  12. Columns Nala Sinephro ナラ・シネフロの奏でるジャズはアンビエントとしての魅力も放っている
  13. 工藤冬里『何故肉は肉を産むのか』 - 11月4日@アザレア音楽室(静岡市)
  14. Columns 11月のジャズ Jazz in November 2024
  15. 音楽学のホットな異論 [特別編] アメリカの政治:2024年に「善人」はいない
  16. aus, Ulla, Hinako Omori ──インスタレーション「Ceremony」が東京国立博物館内の4つの茶室を舞台に開催
  17. People Like Us - Copia | ピープル・ライク・アス、ヴィッキー・ベネット
  18. 変わりゆくものを奏でる──21世紀のジャズ
  19. interview with Squarepusher あのころの予測不能をもう一度  | スクエアプッシャー、トム・ジェンキンソン
  20. VMO a.k.a Violent Magic Orchestra ──ブラック・メタル、ガバ、ノイズが融合する8年ぶりのアルバム、リリース・ライヴも決定

Home >  Interviews > interview with Unknown Mortal Orchestra - 時間を喪った旅人たち

interview with Unknown Mortal Orchestra

interview with Unknown Mortal Orchestra

時間を喪った旅人たち

――アンノウン・モータル・オーケストラ(UMO)、インタヴュー

橋元優歩    通訳:染谷和美   Feb 15,2013 UP

ある意味、自分のアイデンティティを目立たないように消していくのが、いまの僕のあり方なのかもしれないな......。でもアメリカに住むこともアメリカの音楽も大好きだから、問題はないよ。

ちょうどポートランドの話題が出ましたけど、ニュージーランドからポートランドに移住したというのは、日本人からすればまあけっこう大きな決断にも見えるんですが、実際のところなぜアメリカだったのか、そしてなぜポートランドだっだのか教えてもらえますか?

ルーバン:前のバンドのツアーで来たのがきっかけかな。たまたま叔父がポートランドに住んでたというのもあったんだけど、当時は例の『ポートランディア』っていうテレビ番組がはじまる前だったから、べつに有名でもなかったし、とくに何か特別な期待は抱いていなかったんだ。でも街を歩いてみるとみんな着ているものはオシャレだし、かっこいいし、バーに行けば好きなアルバムがかかっているし、ちょっとここに住んでみようかなって気持ちになったんだよね。ニュージーランドの友人たちからは「なんで?」って言われたよ、たしかに。ほんとにポートランドはいまみたいに有名じゃなかったんだもん。でも、いまはわかるんじゃないかな。

みんな住んでないけどよく知ってますよ。ニュージーランドのローカルな音楽シーンって、ポートランドのローカルなシーンと似てたりしますか?

ルーバン:まず、生活のペースは似てるかな。それから、ニュージーランド時代からインディ・シーンに興味があったから、ザ・クリーンとかザ・チルズとかはチェックしてたんだけど、彼らの雰囲気とこちらのインディ・シーンの感じも似ているといえば似ていると思う。〈K〉と〈フライング・ナン〉のノリとかね。ただ、ニュージーランドのほうが、バンド同士が競い合うムードが強かったと思う。ポートランドのほうが仲間意識やコミュニティ感覚が強いかな。

今作のように〈ジャグジャグウォー〉からリリースということになると、UMOも世界的にはUSインディの重要バンドとして認識されていくことになると思います。ご自身のアイデンティティの問題として、こうした点に何か思いはありますか? 

ルーバン:ある意味、自分のアイデンティティを目立たないように消していくのが、いまの僕のあり方なのかもしれないな......。でもアメリカに住むこともアメリカの音楽も大好きだから、問題はないよ。それがパーフェクトなあり方だとは思わないんだけどね。でも、アメリカはミュージシャンとしては活動しやすい国だし、そもそもニュージーランドは小さな国で、音楽をやっている人に限らず、いつかはそこを出ていくというのがカルチャーの一部としてあるんだよね。外に出ていろんなものを発見して、はじめて自国の良さにも気づくっていう(笑)。そういう、外側から国を見つめてその価値を再認識するという昔ながらのニュージーランドのやり方を、いま僕もやっているのかもしれないね。

なるほど、日本とは違いますね。UMOの曲って基本的にはすごくポップなんですけど、どことなく孤独とか諦念のようなものが漂うように感じます。暗いわけじゃないけど、けっしてハッピーというわけでもない。あなたには実際に「Swim and sleep like a shark does」(“スウィム・アンド・スリープ(ライク・ア・シャーク・ダズ)”)していた時期があるのでしょうか?

ルーバン:いまでもそういう気分になることがあるよ。でもそういう気持ちを曲に書くことでどうしたいかというと、みんなに「こういう思いをしている人が他にもいるんだよ」ってふうに共感してほしいってことなんだ。孤独や疎外感みたいなものを助長しようと思っているわけではなくてね。この気分にはまり込んでもらいたくはない。
昔からブルースのアーティストなんかが悩みを歌にしたりしているのは、悲しい音楽の役割として、悪い状況からの救いになる部分があるからだと思うんだ。同じような思いをしている人が他にいるってわかることで救われるというのが、悲しい音楽の役割のひとつだと僕は思っていて。基本的に、僕が曲を書く根本には音楽を通じてみんなとつながりたい、コミュニケートしたいという思いがあるんだ。ただ、自分の気持ちに正直であればあるほど、ダークなものが表に出てくる。けどそこで終わらずにどこか明るいところを見せたい、見てほしいって思ってるよ。

ああ、いいお話が聞けました。ありがとうございます。最後にひとつだけ、前作のジャケットの写真ってユーゴスラビアの建物なんですか?

ルーバン:あれはクロアチアだね。もともとああいうふうな写真をベルギーの写真家が撮っていて、いいなと思ってたんだ。だけどその写真を買わせてくれって言ったらあまりにも高い値段を提示されて(笑)。だから観光客の撮った写真をいくつか探して、それをフォトショップで作り直したんだ。もともとのものと似た感じのアングルにして、モニュメントの前に立ってる人間は、僕のまわりの人を撮って組み合わせたりしてね。

取材:橋元優歩(2013年2月15日)

123

INTERVIEWS