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interview with RITTO

interview with RITTO

沖縄RAP!

──リット、インタヴュー

加藤由紀    Mar 22,2013 UP

コージョーっていうラッパーからニューヨークの事情を聞いたら、基地のなかにいる奴らの多くはゲットー出身者で、若くて、まだ何もわからないときに、「金欲しいでしょう? だったら、軍に入りなよ」って言われて。奴らも国にハメられてるんだよって。

生まれたときから、代々引き継いでいる思いの深さや厚みのようなものがあって、それは他の土地の同世代の人間には、なかなかない感覚というか。

トオル:良くも悪くも、特別ですよね。

リット:いまはもう「戦争ってこうだったんだよ」っていうより、命の尊さが受け継がれてるように思うっすね。

いまの若い世代は、カルチャー的には米軍基地で働く外国人から影響を受けたりもしてますよね。友人もいるし。でも、基地問題は、政治絡みの問題だから、一概にいいとか悪いとか言えない、複雑な立場なのかなと思いますよね。

リット:最近も読谷で、米兵が中学生を暴行して逃げた事件があったけど、だからって「外国人は(みんな)ダメ」って言うのは、決して良くないこと。コージョーっていうラッパーからニューヨークの事情を聞いたら、基地のなかにいる奴らの多くはゲットー出身者で、若くて、まだ何もわからないときに、「金欲しいでしょう? だったら、軍に入りなよ」って言われて。奴らも国にハメられてるんだよって。

トオル:軍事に目を向けさせるために、貧困差を付ける。仕方ないよな。米兵が悪いわけじゃないし。

リット:ここ数年、見方が変わってきたよな? 昔の沖縄に黒人はいたのかと思って、タクシーの運転手に聞いたら、「いたよ」って。「黒人ってどうだったの?」「仲間だろ。あいつらは何もしないよ」って。俺らはブラック・ミュージックが大好きだから、黒人に親しみを感じるけど、当時からそういう目線で見てる人もいたんだと思って。

普天間基地移設問題については、移設先の辺野古の環境的な問題も指摘されてますよね?

リット:ジュゴンとか、珊瑚礁とか?

沖縄の人から見て、そういう視点からの問題はどう考えてますか?

リット:本土の人の方が熱心ですよね。旅行で沖縄に来て、見て、くらって、そのままずっと居続けるとか。科学者とか医者の人も多くて、沖縄の人はそういう人たちに助けられてますよ。いろいろな知識を分け与えてもらって。

トオル:最近よく昔の沖縄に関する本を読むんだけど、あの時代の本って内地(本州)の人が書いてるものばっかりな気がするんですよ。その世代の沖縄の人は、そういうことを表現したがらないんだと思うんですよ。

オリーヴ・オイル、イル・ボスティーノ、ビッグ・ジョーの"MISSION POSSIBLE"はどう思いましたか?

リット:聴いてなかったんですよ。

そうなんですか? 先日、〈ラヴ・ボール〉でおこなわれたビッグ・ジョー主催のイヴェント〈ユナイオン〉で一緒にやってましたよね?

リット:(笑)ジョージさんがライヴでやるってなったから、パンチラインだけでも覚えようと思って(笑)。でも、できないから、横でとんでるふり(笑)。あまりにも失礼だ。歌えんかったらヤッケーだし。でーじ(めっちゃ)緊張したんっすよ。フワフワしながらやってました。ジョージさんに「サビわかる?」って聞かれて、「はいはい。携帯でリリック見てます!」って(笑)。俺の友だちは聴いてましたよ。

沖縄では、賛否両論あったとも聞きました。

リット:それはあるだろうなと思ってやったんじゃないですかね。

ライヴでビッグ・ジョーは「沖縄のどのくらいの人がこの曲知ってるかな?」って言ってから、はじめましたよね?

リット:沖縄を訪れて、状況を見て、ヤバいことになってるって感じたことを書いてくれたと思うんですよ。他の奴がやってたら「バカヤロー」ってなると思うんですけど(笑)、嫌な気持ちにはならなかったですね。ビートもかっこいいしな?

〈ユナイオン〉は、レギュラーイヴェントになるんですか?

トオル:最低でも、年に1回はやりたいって言ってましたね。

ライヴ後に友人から聞いた話ですが、北海道だと、ビッグ・ジョーにフリースタイル挑んでくる人はもうあまりいないらしいのですが、沖縄はまったく違ったと。フロアで地元の若い子たちとやってましたよね。

トオル:(笑)楽しそうだったな。ずっとやってたよな? 

リット:フリースタイル・セッションみたいな。

北海道のフィーメールMCオナツも、沖縄のラップ・シーンがヤバすぎて帰れないでいるっていう話を友人から聞きました。

トオル:そうそう。

リット:あいつは〈ラヴ・ボール〉で、ほぼ毎週、くたばるまで飲んでます。

トオル:もう仲間っすね。

先日、リットさんが共演したオムスビはどうでした?

トオル:相当くらってたな。俺らがゲストを呼ぶ時はいつも、「絶対負けん」っていう気持ちで呼んでます。

リット:電話が来たっすね。「あ、『AKEBONO』聴きました」「何でかしこまってる?」って(笑)。

同じMCから見て、沖縄のラップ・シーンはヤッケーんだと思います。

リット:周りの反応にビックリしてます。欲が出て来ましたよね。次はどんなことやろう、みたいな。

"血と骨 生身の歴史が飾りない時空生み出した 吸い込む悲劇上の空 俺たちの気 囲む強さ"("NINGEN State Of Mind"より)

 沖縄の土は赤い。赤土だ。青い空の下、青い海を望み、地に足をつけ、踏みしめるのは、たくさんの悲しみが詰まった赤い土だ。服につくと、繊維の奥まで染み込み、酸化して、洗濯してもおちない。赤土クルーが放つヴァイヴスもまた、聴く者の魂に深く入り込み、じわじわと化学反応を起こして、心をつかんでくる。
 沖縄の地元MCが集う〈ラヴ・ボール〉。若いラッパーが次から次へと登場する。ハーコーな連中もわんさかいる。そして、ほとんどの人が叫ぶ。「ピース」と。彼らの体から沸き起こるこの言葉が、自然と胸に響く。熱く、厚い思いが、今夜も、「愛と平和がけんかする」この島のあちこちに、あたたかな輪を作っている。

輪になる笑い声をひとつに
癖になる笑い声に幸と価値
"風音"

 ひと息入れて、酒を浴び、うたい、踊る。何があっても「踊るときは笑顔だね」。ここの人たちは、楽しむ才能に長けている。

 まずは、リットの『AKEBONO』を聴いてほしい。願わくば、沖縄まで来て、〈ラヴ・ボール〉でライヴを体験してほしい。それがかなわないなら、せめて、近くの人はツアーに足を運んでほしい。

3/31 @ 沖縄県沖縄市 OTO-LAB http://otolabkoza.ti-da.net/
4/6 @ 沖縄県那覇市 Cyber-Box
4/7 @ 沖縄県沖縄市 喫茶カラーズ
4/12 @ 沖縄県那覇市 LOVEBALL http://loveball.ti-da.net/
4/13 @ 渋谷 LOUNGE NEO http://loungeneo.iflyer.jp/venue/
4/20 @ 町田 The Play House http://www.theplayhouse.jp/
4/26 @ 京都 BLACK BOXXX http://www.kyoto-blackboxxx.com/
4/27 @ 大阪 CONPASS http://conpass.jp/
5/3 @ 町田 flava http://www.machida-shi.com/S112523.html
5/5 @ 渋谷 NO STYLE http://dp43053767.lolipop.jp/
5/10 @ 池袋 bed http://www.ikebukurobed.com/
5/11 @ 吉祥寺 warp http://warp.rinky.info/

取材:加藤由紀(2013年3月22日)

Profile

加藤由紀加藤由紀/Yuki Kato
クロックワイズ・レコーディングス主宰。2000年にDJクロックが立ち上げるが、彼の死後、しばらく休止(すみません!)。今年より本格的に再始動(支えて下さった皆さん、本当にありがとうございます!)、DJクロックなど、レーベルの過去作品の全国流通を再開した。つい先日、DJカミカズのミックステープ『abstractions of sounds』をCD化して再発したばかり(是非、聴いてください!)。
https://www.facebook.com/clockwise.recordings
https://twitter.com/clockwise_rec

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