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interview with Yakenohara

interview with Yakenohara

ドリーミー・ラップ再び

──やけのはら、インタヴュー

野田 努    撮影:小原泰広   Apr 10,2013 UP

つねに一貫してグッド・タイムは描きたい。人生にグッド・タイムしかないっていう嘘はつきたくないけど、グッド・タイムしか表現したくないっていうのはありますね。バッド・タイムの何かを曲にしたいっていうのはないし。


やけのはら
SUNNY NEW LIFE

felicity/SPACE SHOWER MUSIC

Amazon iTunes

■やけちゃんが言うラウンジ・ミュージックっていうのはどういうイメージ?

やけ:部屋で鳴ってて気持ちよくなるってことですかね。それ以上にも以下にも最終的には着地しないっていうか、あんまり意味性を持たせてもわからないし。

■具体的に言うとたとえばどんなの?

やけ:うーん、なんですかねえ。それこそ、アンド・ヒズ・オーケストラとか名前に入っているような古いものとか。ジェントル・ピープルの元ネタみたいなものとかですよね。やっぱりレコード世代なんで、古いよくわからないラウンジっていうか「その他」とか買ってましたね。だから音楽を聴いて高揚したいとかより、自分の中でもいろんな耳のチューニングはもちろんありますけど、たぶん音楽聴いて楽しくなりたいんじゃないですか、自分は。
 僕、起きてから寝るまでずっと音楽聴いてるんですよ。気候とか自分の気持ちとかに合わせて、うちでひとりDJをずっとしてるんです。ひとによっては「聴くぞ」っていうときにだけヘッドフォンで聴いたりするじゃないですか。でも僕は、なんだろう、つねにぜんぶムード・ミュージックとして捉えてると言えば捉えてるっていうか。言葉が入っちゃってはいますけど、自分が昼に聴きたいトーンはこんな、っていうか。

■"HELTER-SKELTER"も曲名とは裏腹な......。

やけ:"HELTER-SKELTER"って「混乱してる」って意味ですよ。ジェット・コースター。

■のんびりしてるじゃん。

やけ:ああ、まあまあ。でもジェット・コースターの名前ですけど、元々の意味は「混乱してる」って意味ですよ、これは。これが震災のあとの曲ですよ。「どうしよう」っていう。

■でも、音楽がけっこうのどかに感じたんだよね。

やけ:いや、これ全然のどかじゃないですよ! いちばんリリカルな曲ですよ。感情がいちばん入ってるというか。もうだって、「このまま あのときのままではいられないよ」「この夢の続きは一体どんな風?/フキダシの中の言葉をなんにする?」ですよ。君は何を思うんだってことですよ。フキダシのなかの言葉っていうのは比喩で、漫画のひとの横にこうフキダシがあるみたいなイメージで、それに対して何を思うんだっていう。
 こんな日々をどうやって受け入れるんだ、どう消化するんだ、それを「混乱している」、"HELTER-SKELTER"って言ってるんですよ。消化できないっていう。

■でも聴いた感じはまったくそういう風に思わなかったので、逆に言えばそれはやけのはらの狙い通りっていうことでもあるわけでしょう?

やけ:まあたしかにそうですね。この曲は、このアルバムのなかではヴェルヴェット・アンダーグラウンドみたいなアレンジでも成り立つような歌詞というか、意味の曲であるわけだから。ちなみに、もちろん沢尻エリカとは何の関係もないですってことは、書いといてください。

■とにかく、ドリーミーなものを心がけたっていうのはいい話だね。

やけ:心がけてもいるし、元々好きだし、気分的にもそういう......あ、震災の後にけっこう思ったことですね。それがさっきのマチズモとかインスタントなんかの話に繋がるんですけど、年齢もあるのかもしれないけど、激しいキックであったりとか、派手なシンセ、エッジの強い音っていうのは受け付けなくなってて。アンビエントみたいなものとか、ドリーミーなものとか、ラウンジーなものをすごく聴きたい気分だったっていうのもありますね。
 とくに震災の後とかは、直接的にその後にやったリミックスはぜんぶノンビートにしちゃって。ほとんど低音入ってない曲とか。気分的にもそういうムードだったっていうのはありますね。まだこれ(アルバム)は、揺り戻しがあってビートをそれなりに入れたっていう。でもノンビートの曲もあるし、けっこう一時期のノリだと危なかったですね。声入ってるのに1曲ぐらいしかリズムがない、みたいな(笑)。

■おおー、それも聴きたかった。クラウド・ ラップみたいな(笑)。

やけ:いや、それだとさらに素なんで、そういうのはもっと年取ったときに取っときます。そこまで行っちゃうともう戻せないんで。

■最後から3番目の曲("BLOW IN THE WIND")でさ、「普通じゃないものにいまも夢中さ」ってあるけど、その「普通じゃないもの」って何のこと?

やけ:いや、それはだから難しいんですよね。わざと危ない言葉だからそのままで言ってるんですけど。多様性ってことですね。

■難しいことを言うねー。

やけ:いや、ぜんぶで一貫して言ってるんですけど、「小さな声をなかったことにするな」みたいなこととか、「はみ出る感情や生き方を楽しもうよ」とかだったり。自分が聴きたいのは誰かの代理ではなくて。まあこれも安易な言い方にまとまっちゃいますけど、誰かの思惑で決められた何かに流されるんじゃなくて、自分の好きなものを自分で決めたりとか。こういう言い方をするとカッコいい風に聞こえてしっくり来ないな。 うまく言えないけど、つねに一貫したテーマとしてあるというか。
 たとえばその時代の大多数の感情や音楽がこうだからって言って作るんじゃなくて、そこからやっぱり零れ落ちるそのひとなりのエネルギーであったり形であったり、表現だったり。そういうのに対する愛着っていうのはすごくあるし、そういうのが聴きたい、したい。っていうのはあると思いますね。

■やけのはらって、家のなかで考えて作るって言うよりは出かけて行って作るようなイメージをずっと持っててさ。前作のときのPVでも、江ノ島の海辺でみんなで遊んでるのを使ったじゃない? イヤミったらしいぐらい楽しそうな映像をさ(笑)。

やけ:なんですか、「イヤミったらしいぐら楽しそう」って(笑)。パンチラインですね。言葉としてエッジが効いてた(笑)。でも、いまの気分だったらあんなことはできない。

■でも、「外に出よう」って感じはまだあるでしょう?

やけ:それはでも、実際のことでも観念的なことでも、もっと世界を知ろうってことは言ってるんですけど。最後の("where have you been all your life?")がまさにそういう曲ですよ。最後の曲のことがあんまり言及されないんだよなあ。

■いや、話がまだそこまで行ってないから(笑)。じゃあさ、アルバムの後半、"JUSTICE against JUSTICE"以降っていうのがさ、希望を見ようとしているよね?

やけ:それはでも、"D.A.I.S.Y."って曲ですかね。"BLOW IN THE
WIND"って曲は文化のことを歌ってるんですけど、これはむしろ寂しさを伴ってる感じがしますけどね。「普通じゃない」っていうのも、これは不毛さを愛していくってことで、だからこの曲は、そういう意味では意外とブルーなんですよね。

■なるほどね。まあメランコリックな曲でもあるからね。でもこの"D.A.I.S.Y."はさ、「やけのはら、どうしちゃったんだろう」ぐらいのさ、人生肯定感じゃない(笑)?

やけ:え、でもそんなこと言ったら"GOOD MORNING BABY"とかもそうじゃないですか! 曲名は、デ・ラ・ソウルの"デイジー・エイジ"が何かの言葉の頭文字になっていて、その法則を踏襲したというか。だから、"D.A.I.S.Y."は"DAYS AFTER INOSENT SWEET YEARS"の頭文字ってことにしたんですけど。だから、これもじつはブルーだからこそ、ですよ。
 あと、"D.A.I.S.Y."って、いろんな意味がありますよね。『2001年宇宙の旅』でコンピュータが歌った"デイジー・ベル"っていうのは、はじめて電子合成のロボットが歌った曲だし。でも、映画だとあのコンピュータが最後に歌った曲なんですよね。それで壊れてなくなっちゃって。希望の象徴だったり、でもアンビヴァレントなブルーな匂いもするじゃないですか。『2001年宇宙の旅』での使われ方なんか。

■あるいは、ヒッピーというかフラワー・チルドレンというか。20世紀的な理想主義だよね。

やけ:そうですね。でも「デイジー」みたいなこととか、ヒッピー的なタームでそういう物事の象徴となってた時代、60年代、70年代のほうが未来に対しての希望みたいなものが、何て言うか、無邪気だった感じがあるじゃないですか。無邪気に本当に希望を信じていたような。僕はもちろん生まれてないんで、後から触れての印象ですけど、未来に対して希望があった時代の象徴って気がして。そういうのが気分にあったというか。

■それを敢えていま言ってみたかったっていう感じ?

やけ:いや、難しいっす。いろんな自分の知ってる情報やニュアンスのなかでしっくり来たっていうか。ニュアンスや感覚の捉え方の話なのでうまくは言えないですが。でも前のアルバムも音ができてないときからPVは"GOOD MORNING BABY"って決めてたし、このアルバムもじつは前からこの曲になるんだろうな、って1、2年前からそう思ってました。

■新しい恋をしたとか(笑)?

やけ:恋は関係ないです。ラヴ・ソングはできないっすよねえ。タイトルだけ"I LOVE YOU"って曲入れましたけど。観念的なラヴ・ソングだったらいいですけど、本当に女性との直接的なラヴ・ソングっていうのは人生で一度も作れたことがないかもしれないですね。そういうのはちょっと、今後のテーマに取っておいて。昔、野田さんが「やけちゃんはラヴ・ソングやったらいいよ」って言ってくれて、心のなかにはラヴ・ソングに対する想いはいろいろあって。

■やけのはらは場面の描写が好きだよね。なんか、男と女というよりも、もっとがやがやしている感じがする。

やけ:それは性格ってことになっちゃうと思うんですけど、つねに一貫してグッド・タイムは描きたい。人生にグッド・タイムしかないっていう嘘はつきたくないけど、グッド・タイムしか表現したくないって いうのはありますね。バッド・タイムの何かを曲にしたいっていうのはないし。

■これがやけのはら人気の秘密なんだよ(笑)。

やけ:いや、これが性格なんですよ。映画なんかでも、あんまり楽しくない映画とかイヤなんですよね。それはDJで培ったものがあるのかもしれないのと、自分も人間なんでそういうのがゼロとは言えないですけど、自己陶酔してるタイプのミュージシャンじゃないと思うので、例えば「苦労してるオレを見てもらう」みたいなことって発想としてないっていう。

■だからっていうか、"デイジー"は、今回のアルバムの象徴的な曲なわけだよね?

やけ:この曲は大事でしたね。ぜんぶの曲で同じことを言ってるとも言えますが、この曲では、ぜんぶまとめて言ってるってとこもあるので。結局ひと言でまとめると、「楽しく生きましょう」とかそういうことなんですけど(笑)。

取材:野田 努(2013年4月10日)

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