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interview with Black Knights (John Frusciante)

interview with Black Knights (John Frusciante)

驚きのジョン・フルシアンテ

――ブラック・ナイツ、インタヴュー

   Jan 20,2014 UP

俺は5年前から不協和音がたっぷり入った音楽を作っているけど、それは昔のヒップホップの概念と同じなんだ。

 「80年代からポップスというのは、楽器やヴォーカルのピッチが全部ぴったり合っていないといけないという概念に基づいている。でもヒップホップでは、必ずしもすべての楽器の音のピッチが合っているわけじゃない。ミュージシャンは楽器のチューニングをチューナーでぴったり合わせるけど、いろいろなサンプルを組み合わせて曲を作る場合、それぞれのサンプルのピッチを完璧に合わせることは不可能に近い。楽器の音符でハーモニーを作り出すのではなく、ヒップホップでは色々な音色でハーモニーを作り出すわけなんだ。俺は5年前から、不協和音がたっぷり入った音楽を作っているけど、それは昔のヒップホップの概念と同じなんだ。ギターの音符のピッチを合わせる概念じゃなくて、音色そのものの組み合わせ方からハーモニーを作り出している。ヒップホップを作ることも、俺の音楽を作ることの取り組み方は同じなんだ」(ジョン・フルシアンテ)

 サンプリング・アートの快感をここまで天真爛漫に語れるジョン・フルシアンテに嫉妬すらおぼえる。彼は本作で音楽の可能性を実感し打ち震えている。しかし、それは逆説的に、彼がかつて在籍したレッド・ホット・チリ・ペッパーズが、いかに楽理的なコードに縛られたなかで、新しいサウンドを模索してきたかという、苦しみの証左でもある。ジョン・フルシアンテが麻薬にアディクトしていた絶頂期に作られた、ファースト・ソロ作『Niandra Lades and Usually Just a T-Shirt』(1994年)は、アシッド・フォークの名作として、いまでも扱いがいいアルバムだが、この作品を聴いた大方のリスナーの脳裡によぎったことは、「この人はもうじき死ぬのだろうな」という感慨だったはずだ。そういったリアリズムが先のアルバムには充満していた。だが、その20年後、ジョン・フルシアンテが元気にヒップホップ・アルバムを作っているなんて、誰が想像できただろうか?

 「このアルバムがヒップホップに聴こえるのは、こういう音楽を作るためのテクニカルなスキルを身につけたからなんだ。べつにしょっちゅうヒップホップを聴いて、それを真似しようとしているわけじゃない。
 たとえばデペッシュ・モード、ピーター・ガブリエル、デヴィッド・ボウイのプロダクションに刺激されることのほうが多い。ヒップホップのトラックを作ることは、自然にできるし、とくに努力する必要もないし、過去のヒップホップばかりを研究しているわけじゃない。前にも説明したことがあるけど、ジャングルの作り方を探っていた時期があって、その技術を習得した頃には、ジャングルを作ることに興味がなくなり、ヒップホップを作ることに興味が湧いた。でもジャングルを作るスキルとヒップホップを作るスキルは基本的に同じなんだ。ジャングル・プロデューサーの中には、ヒップホップを作らない人もいるし、作れない人という人もいるけど、それはその人の人間性によるものだと思う。ジャングルとヒップホップを構成する音楽的な要素は基本的に同じだ。サンプルを使って、自分独自の音楽を生み出すアプローチは、ジャングルもヒップホップも同じだ。ヒップホップを作ることは俺にとって自然なんだ。長年ヒップホップを作ることに抵抗してきたんだけど、じつはトラックを作ってほしいと昔からラッパーの仲間に頼まれていた。つねに自分にとって音楽的に興味がある分野を研究して何かを学ぼうとしている。誰かの役に立つために音楽をやっているわけじゃなくて純粋に興味があり、そこから学ぶことがなければ取り組まない。だから、ヒップホップを作ることが俺にとっていちばん自然なスタイルになったのはたまたまなんだ。誰かとコラボレーションをすることや、他人にいいところを見せたり、他人を喜ばせる音楽を作ることよりも、音楽的に自己教育することのほうが俺にとって重要だ。俺とブラック・ナイツの相性が完璧なのは偶然でしかないんだ」(ジョン・フルシアンテ)

 「ジョンのことをトリックフィンガーと呼んでいるんだけど、彼のすごいところは、ビートを一曲の中でどんどん変えていくことなんだ。曲の途中でまったく違うビートに変化するから、曲の中にまた別の曲が入っているような感覚になるんだ。それは俺たちにとってチャレンジになる。曲が途中で変化すると別の世界観が広がる」(ラグド・モンク)

 「俺は個人的に単調なビートの上でラップすることは退屈だから、逆にジョンのトラックの上でラップができて刺激になったよ。音楽的に深みのあるトラックの上でラップしたほうがおもしろいしジョンは究極までそれを表現した」(クライシス)


ブライアン・イーノは“自分の声はデヴィッド・ボウイやブライアン・フェリーに匹敵しないから歌わなくなった”と以前言っていた。いまはプロデューサーとして彼の見解は理解できる。

 『メディーヴァル・チャンバー』=中世の部屋、と題された本作には、いろいろなタイプのトラックが並んでいる。なかには、シカゴ発祥の変則ダンス・ミュージック=ジュークにインスパイアされたというトラックまであって驚いたが、それは同時に、欧米におけるジュークへの期待値の高さを表してもいる。ヴェネチアン・スネアズと組んだスピード・ディーラー・マムズなどの活動で研鑽を積んだエレクトロニクスへのアプローチも手伝い、ジョン・フルシアンテは本作のコンポーザー/エンジニア/プロデューサーとして、立派にヒップホップ対応を務め上げている。

 「モンクとクライシスのヴォーカルと同じくらいに高度なメロディを俺が作れて、彼らのポリリズムと同じくらいに複雑なリズムを俺が作れるんだったら、自分の曲は作りたいところだけど彼らの声の周波数帯の方が俺よりも幅広い。だから、彼らの声にディレイをかけたり加工したほうが、俺の声でやるより面白い音になる。ブライアン・イーノは“自分の声はデヴィッド・ボウイやブライアン・フェリーに匹敵しないから歌わなくなった”と以前言っていたけど、それを最初に聞いたとき“ブライアン・イーノの声は素晴らしいのに、なんで歌をやめちゃったんだろう?”と思った。でもいまはプロデューサーとして彼の見解は理解できる」(ジョン・フルシアンテ)

 ジョン・フルシアンテにここまで言わせてしまったブラック・ナイツとのコラボレーションは、当然、本作だけで終わるものではなく、なんと、セカンド・アルバムはすでに完成していて、現在はサード・アルバムの制作が佳境を迎えているとのことだ(!)。

 今年2月には新作ソロ・アルバム『エンクロージャー(Enclosure)』のリリースも控えているというジョン・フルシアンテ。「サンプリングとロック・ミュージックとジャングルと抽象的なエレクトロニック・ミュージックは相反するものではなく、全部をひとつに融合できるということを見せたかった」と語る新作ソロ・アルバムにも、ファンの期待は集まることだろう。しかし、ジャングル・リヴァイヴァルにジョン・フルシアンテが乗っかっていることがほんとに面白い。スーパー・ロック・ギタリストのキャリアの変遷としては、乱調も乱調、かなりユニークな部類に属するものではないだろうか。興味深い話はまだまだ尽きないのだが、このつづきは国内盤特典のロング・インタヴューで楽しんでもらうことにしよう。アメリカとヨーロッパのツアーも予定されているという、ブラック・ナイツ『メディーヴァル・チャンバー』は、お互いのキャリアの中でもきっと重要作になることだろう。RZAのレーベル=〈ソウル・テンプル・レコーズ〉からのリリースも控えているというブラック・ナイツの今後ともども、追いかけて聴いていくといいことがありそうなミュージシャンたちである。

インタヴュー:ハシム・バルーチャ
文:前田毅(2014年1月20日)

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