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interview with Lone

interview with Lone

孤独な男のビート

──ローン、インタヴュー

高橋勇人    通訳:原口美穂   Jun 13,2014 UP

Lone
Reality Testing

R&S RECORDS / ビート

AbstractIDMHip Hop

Tower HMV Amazon iTunes

 僕の目の前にあるアルバムのジャケットの表面では、冷たく映るビルの写真がトイ・カメラの多重露光で作り出したようなカラフルな画像のコラージュに飲み込まれる寸前だ。その異なる2つの世界の境目に悲しい目をした青年がひとりたたずむ。彼はローンという名前で知られるマット・カトラーという男で、このアルバム『リアリティ・テスティング』を作り出した張本人だ。

 ここ日本では、2009年、アクトレスの〈ワーク・ディスク〉から発表した(CDR作品をのぞくと)セカンド・アルバムにあたる『エクスタシー&フレンズ』は、何の宣伝も、たいした情報もなしに、口コミでゆっくり広がった。その透明感とビートは、ボーズ・オブ・カナダがヒップホップをやっているようだとも当時はリスナーから言われたそうだが、実際、ローンは自分のルーツとなった音を臆することなく作品で表現してきた。
 2年前の『ギャラクシー・ガーデン』(スペイシーなイソギンチャクがいるジャケット)では、それまでのヒップホップ的なサウンド構築から離れ、これってマッド・マイクじゃんと言いたくなるようなコード感やリズムに、当時ハドソン・モホークやラスティたちの作品に見られた細切れになったビートのシャワーが降ってくる。決して新しいとは言えないスタイルを彼は参照するのだが、向いている方向が完全に後ろ向きではないのだ。懐くかしく、どこにもない音である。

 前作ではマシーン・ドラムと共演、その後はアゼリア・バンクスにも楽曲をするなど、ローン(lone:孤独の意)という名前からはかけ離れた活動にも着手していたが、今作で彼はまたひとりだけの世界に戻った。故郷のノッティンガムを離れ、マンチェスターに新居を構え、自分専用のスタジオまで家の中に作ってしまった彼は、「ヘッドフォンがあればどこでも一緒」と言い切ってしまう。
 ちなみに、彼のDJセットは基本的にハウスやテクノをメインにした、本人曰く、多くの人を楽しませることを主軸としたものだ。孤独でサービス精神がある。面白い男だ。

 今作『リアリティ・テスティング』でローンが奏でる音はヒップホップ色が強い。それも90年代を想起させるものだ。ジャイルス・ピーターソンが2014年のベスト・トラックに選んだ“2 is 8”では、切り刻んだフレーズのループや乾いたドラムの質感がセンス良く鳴っている。
 もちろん、そのリズムの上には現在の彼を形作るアンビエントやテクノのエレクトロなメロディがある。時代や場所を越えた音楽が自分の経験則でブレンドされ誕生する、現在のシーンにはない「新しい」サウンド。ローンは、やはり孤独な男だった。

DJのときはレコードは使わないんだ。でも音楽を聴くときのメインはレコード。レコードを聴くのも好きだし、レコードのノイズをサンプルするのも好きなんだ。音に暖かくてナイスな質感をもたらしてくれるからね。そういうサウンドが好きなんだ。

前作の『ギャラクシー・ガーデン』から2年が経ちましたが、どのような活動をされていたのでしょうか?

ローン:アルバムを作っていた。『ギャラクシー・ガーデン』をリリースしたあとは、しばらく『ギャラクシー・ガーデン』と似たような曲ばかりを作った。それがあまり好きじゃなかったから、少しタイムアウトをとることにしたんだよ。そこから新しいインスピレーションを探しはじめて、違う音楽を聴きはじめたのさ。前作とは違うものが作りたくてね。で、いちどアイディアが浮かんでからすぐ制作に取りかかって、1年でアルバムを完成させたんだ。つまり、自分が何にハマっているかを見つけ出すのに1年かかったってことだね(笑)。

制作活動以外に何か活動はされてたんですか?

ローン:DJもたくさんしてたし、ツアーでいろんな場所を回ってたんだ。それがなければ、もっと早くアルバムを完成させることが出来たかもしれないけど。そういう他の活動で制作はどうしてもスローダウンしてしまうからね。

いろいろな場所を回るといえば、来日されたこともあるんですよね。あなたは2012年に〈R&S〉のショウ・ケースで来日しており、その後のインタヴューで、日本にまた行きたいと答えていましたが、日本のどんなところが気に入ったのでしょうか?

ローン:そうそう。渋谷のWOMBでプレイしたんだ。あそこは僕のお気に入りの場所だよ。日本は大好きなんだ。本当に最高の旅だった。何を気に入ったかって? 何でもだよ(笑)。自分が住んでる国と全然違うし、食べ物も素晴らしいしね。

日本では何をしたんですか?

ローン:渋谷を歩いたくらい。友だちと一緒にいろいろ食べたり、変な店を回ったり(笑)。めちゃくちゃ楽しかった。

前回のアルバムをリリースしたとき、自分のスタジオを作ることを計画しているとおっしゃっていましたが、どのような楽曲制作環境で今回のアルバムを制作したのでしょうか?

ローン:マンチェスターの予備部屋のあるアパートに引っ越して、その部屋からベッドを出して小さなスタジオを作った。いまでもまだ使ってるし、今回のアルバムもそこで作った。なんてことのない普通の小さなスタジオさ(笑)。すごく小さいんだけど、自分のスペースがあるのってやっぱりいいよね。

これからロンドンに引っ越すんですよね? またスタジオを作らないといけませんね(笑)。

ローン:そうなんだよ(笑)。ロンドンだともっと家賃が高いから大変だけど、また作らなくちゃね。やっぱり自分が住んでるアパートに作りたいな。さすがにまずはどこかのスタジオをレンタルするだろうけど、いずれね。

取材:高橋勇人(2014年6月13日)

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Profile

髙橋勇人(たかはし はやと)髙橋勇人(たかはし はやと)
1990年、静岡県浜松市生まれ。ロンドン在住。音楽ライター。電子音楽や思想について『ele-king』や『現代思想』などに寄稿。

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