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interview with BORIS

interview with BORIS

往復するノイズ

──ボリス、インタヴュー

倉本 諒    Jun 20,2014 UP
■CD(ALBUM+SINGLE)

BORIS - NOISE
Tearbridge

NoisePsychedelicRock

Tower HMV Amazon iTunes

■アナログ盤
BORIS - NOISE Daymare

Amazon

 海外のアーティストとの交流の中で、お互いの国のアーティストやシーンに関する意見交換は必至であり、筆者の経験においてはその中でボリスの名が挙がらないことはまずない。名義の表記にはそのときどきの音楽性の差によって使い分けがあり、ロックの中心へと向かう大文字のBORIS、ロックの外側へ向かう小文字のboris、たとえばそうした二項の往復の中に、90年代から誰よりもワールドワイドに活動をおこなってきた彼らだからこそのジャパニーズ・ヘヴィ・ロックがある。2011年発表の『New Album』からはメジャー・リリースとなり、彼らは日本のロック史における新たなる地平線を提示した。
 そして、このたび最新作『Noise』が発表される。ボリスにおけるインターナショナルとは、ボリスにおけるフィジカル・リリースとは、ボリスにおけるノイズとは、ロックとは? アルバム・タイトルとは裏腹に、近年でもっとも音楽的な作品となったともいえる『Noise』の深淵にダイヴする! ……ということでインタヴューに向かいましたが、なにぶん過去の思い入れも深いバンドなのでおそろしいほど緊張してしまい筆者はほとんどホワイトアウト状態でありました。(倉本)


■BORIS / ボリス
1992年に結成され、現在はAtsuo、Takeshi、Wataの3人体制で世界的な活動を続けるロック・バンド。これまでにおびただしいリリースがあるが、2000年代には『Amplifier Worship』『あくまのうた』『PINK』などの成功によって海外からも絶大な支持を集めるようになる。2011年に初のメジャー・リリースを行い、活動をさらに多元化させた。最新作は本年リリースの『NOISE』。

A:Atsuo
T:Takeshi
W:Wata
N:野田

当初はすごくブルータルでノイジーなアルバムになりそうな予感だった。それで、そのタイトルが降りてきて、終わってみたら逆にいちばん音楽的なアルバムになっていたんです。(Atsuo)

はじめに、今作『NOISE』は、ロックの中心へ向かうもの=大文字BORISとしての作品、という認識で間違いないでしょうか?

A:う~ん……。なんか、完成したら今までの中で一番音楽的なアルバムができたなと思って。だから今回は大文字BORISでいいかなーと。

毎回、最初に小文字borisか大文字BORISかというコンセプトを決めているわけではないのですか?

A:そうじゃないですね。

完成していく段階で振り分けるんでしょうか?

A:まぁ、だいたいそうかな……。作っている段階では何も考えてないことが多いので、できあがったら「こっちだね」みたいに。

アルバム・タイトルが『NOISE』とのことですが、ボリスは過去作も含めて象徴的なアルバム・タイトルが多いように見受けられます。先ほどおっしゃった、いままででいちばん音楽的であるアルバム『NOISE』に込められた意味は何でしょうか。

A:プリプロが全体的にでき上がった頃ですかね、タイトルとしてフッと「Noise」って言葉が降りてきて……。去年の春ぐらいですかね、「あぁ、もうこの感じでいこう」と。当初はすごくブルータルでノイジーなアルバムになりそうな予感だった。それで、そのタイトルが降りてきて、終わってみたら逆にいちばん音楽的なアルバムになっていたんです。

前作『Heavy Rocks』ですが、なぜ再びかつてと同じタイトルを冠したのでしょうか? BORISにとっての「Heavy Rock」に対する再定義ともとらえられるのですが。

A:あの時は、『Attention Please』と『Heavy Rocks』を同時にリリースしたんですが、その兼ね合いの中で、Wataのヴォーカル曲だけの『Attention Please』に対して、その当時の「Heavy」感を詰め込むという感じで、アルバム相互のキャラが別れていった。それで『Heavy Rocks』と同じタイトルでもいいかな? ってなりました。

ジャケットのデザインも同一で色ちがいということだったので、ボリスとしてのへヴィ・ロックの再定義があったのかなと思いまして。

A:そうですね。ただ、非常に感覚的なものですよ。言葉でこう定義するって感じでもなく、いまはこんな感じかなと。僕らのフィーリングとしての「Heavy Rock」が、あのときはあんな感じだった。

ロックのヘヴィ性に対する感覚の変化であると。

A:そうですね。やっぱり僕らの意識の中だけではなく、周りの状況、認識も変わっているじゃないですか。それってすごく大きいことですよね。

買ってくださるお客さんが手に持って、開封して、聴くという、フォーマットそれぞれのシチュエーション、流れまで含めてデザインしています。リスナーが作品に触れている、見ている時間も音楽の重要な要素です。(Atsuo)

なるほど。逆に僕にとってボリスの変わらない部分ということで、ひとつお訊ねさせてください。
 ゼロ年代半ばからヴァイナルの需要がグンと伸びた理由のひとつに、プロダクトとしてのフェティッシュなマーケットの拡大があげられると考えています。時期的に捉えてもボリスのフィジカル・リリースの方法論はそれらのパイオニアとも言えると思います。また音質の点でもCDとヴァイナルのマスタリングを明確に差別化してきたと思います。ボリスのフィジカルへの異常ともいえるそのこだわりとは何なのでしょうか。

A:CDとLPでもフォーマットが結構違うじゃないですか。サイズであったり、収録面が分かれていたり。買ってくださるお客さんが手に持って、開封して、聴くという、フォーマットそれぞれのシチュエーション、流れまで含めてデザインしています。リスナーが作品に触れている、見ている時間も音楽の重要な要素です。

出会いってことでしょうか?

A:はい。経験していく過程というか。それもイメージして。やっぱり音だけの世界観じゃなくて、聴いていただける人がいて、手に取ってもらうっていう経験があって、参加してもらうところまで含めて作品ですね。

まだ僕の手元に届いていない、来る『NOISE』2xCDと2xLPのフィジカルへのこだわりがあれば教えて下さい。

A:国内盤は友だちのReginaっていうデザイン・チームのリョウ君にやってもらいました。ジャケットはもう公開されていますけど、彼なりの「Noise」をこちらに提示してくれています。

印刷とか毎回異常にこだわっているじゃないですか。今回はどうなんですか?

A:国内盤に関してはそういったところ、ギミックではなくてもっとこう……見えない空気感とか、そういうところをつくり込んでいる感じかな。海外盤の方は僕がデザインを担当していて、そっちはまあ特色とか光沢感とかのギミック有り。Web上では絶対再現できないような。僕はそういうデザインしかできないんで(笑)。

でもそこはやっぱりすごく大事じゃないですか。僕は音源を買う要素としてそこがなければはじまらないみたいな部分もあったりするので。

取材:倉本諒、野田努 写真:小原泰広(2014年6月20日)

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Profile

倉本 諒/Ryo Kuramoto倉本諒/Ryo Kuramoto
1983年生まれ東京都出身、住所不定無職。

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