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Rustie Green Language Warp records / ビート |
上半身裸の男が壁をよじのぼる光景はなんともクレイジーだった。ラスティが故郷であるスコットランドのグラスゴーでギグをやるといつもこんな感じらしい。やはり素晴らしいミュージシャンを生み出す街と、パーティを楽しむ人びとはセットなのである。
インタヴューでも本人が触れているグラスゴーのレコード店であるラブ・ア・ダブはレーベル運営もしている。そのうちのひとつ〈スタッフ・レコーズ〉から2007年にリリースされたEP「ジャクズ・ザ・スマック」がラスティのデビュー作品だ。ダブステップの重さとヒップホップの軽さが混在したリズムと、エレクトロの暗いメロディが彼のスタートになった。
翌2008年にはブリストルのヤンキー・ダブステッパーであるジョーカーとコラボレーションしたシングル「プレイ・ドゥ / テンパード」を〈カプサイズ〉からリリース。現在、ラスティもジョーカーもその類希なメロディ・センスで人気を集めているが、そのスタイルの原型はこのシングルに見出される。
ここ日本でも注目されるようになったのは、〈ワープ〉と契約してリリースされた2010年の「サンバーストEP」からだ。イントロの“ネコ”で流れるヒロイックな、というかヒーロー映画で流れても違和感のない大胆な構成は、ダンス・ミュージックの領域ではかなり特異なものだった。翌年のファースト・アルバム『グラス・ソーズ』はそれをさらに押し進め、より複雑なリズムとカラフルな音色で彩られている。
今回のセカンド・アルバム『グリーン・ランゲージ』では、いままでのラスティの作品でありそうでなかったラッパーやシンガーの客演も聴き所のひとつだ。とくにダニー・ブラウンとの“アタック”が素晴らしい。トラップ直球のリズムとハスキーで噛み付いてくるようなラップと、それに劣らない鮮烈なフレーズ が随所でリスナーを刺激する。自分以外の主役を引き立たせられるプロデューサーとしても彼は着実に進化を遂げているのだ。
前作からの3年に間にラスティはDJとしてツアーで世界を飛び回っていた。来日も果たし、アメリカも周り、冒頭にあるように故郷のグラスゴーのフロアも大いに湧かせた。その間に作られたのが本作『グリーン・ランゲージ』だ。最近の活動の様子から、自身のルーツまで多くのことをラスティは語ってくれた。
いまの時代は以前のように、ずーっと耳を傾けたり集中しなくてよくなってる。そういう意味では俺の音楽はそれを反映してるのかもね。
■あなた自身の生活のなかで、今年の夏は、去年の夏とどのように違っていますか?
ラスティ(以下、R):そこまで大きな違いはないけど……。アルバムがリリースされるし、プレスや色々準備があるから、去年よりは忙しくしてる。去年はここまで忙しくはなかったと思うな。それくらい(笑)。
■5年前と現在とでは?
R:5年前って2009年だよね? 初めてワープと契約した年だ。だから、自分にとっては新たなスタートって感じの年だった。2007年が初めて作品をリリースした年だったけど、ワープと契約したことでまた気分が変わったんだ。
■5年前といまじゃ全然違いますか?
R:全然。当時はリミックスを沢山やったりしてたな(笑)。
通訳:当時より、自分のスタイルが確立されていたり、自信がついていたりはしますか?
R:そうだね。自信はついてると思うし、スタイルも出来てきてると思う。前よりも作業の経験を積んでるし、音楽制作の流れもベターになってきた。ミュージシャンとして、いまのほうがハッピーでもあるよ。
通訳:5年前は何歳だったんですか?
R:25。あ、26かな。いま31歳だから。
通訳:31歳! 見えませんね。欧米の人にしては珍しく若く見えます(笑)。
R:ベビー・フェイスだから(笑)。25歳のときはそれが嫌だったけど、いまはいいかなって思ってる(笑)。
■ さて、まずはニュー・アルバム『グリーン・ランゲージ』について聞かせてください。アルバムの完成には時間がかかりましたね?
R:まあね。制作には2年かかったよ。理由のひとつは、『グラス・ソーズ』のあと、半年間ハード・ドライヴがダメになってしまって、しばらく曲を作れなくてさ。それがなければ1年半で完成していたのかも。あまり自分を急かして作りたくなかったっていうのもある。自分が満足いくものを作りたかったからね。俺は完璧主義者なところがあって、ひとつひとつを納得できるものにしつつ作業を進めたかったんだ。」
通訳:思ったより長くかかりました?
R:少しね。自分の中では完成は1年後くらいのつもりでいたから。でも忙しくて。ツアー中に作らないといけなかったし。
■今作はタイトルやフラミンゴのジャケットから察するにテーマとして自然があるようです。自然をテーマにした理由は?
R:自然や宇宙、動物にはいつもインスパイアされてるから。だから普通なことだったんだ。
通訳:動物は飼っていますか?
R:前は猫を飼ってたけど、もういない。子供の頃の話だよ。いまはちょっといいかな(笑)。
通訳:はは(笑)。アルバム・ジャケットはなぜフラミンゴなんですか?
R:自然や動物をカヴァーにしたかったんだ。だからそれを友だちに伝えてアートワークの制作を頼んだらあのデザインが返ってきた。
通訳:アルバムのテーマと繋がったものを頼んだってことですよね?
R:そうそう。タイトルは鳥の言語っていう意味だしね。だからアルバム・カヴァーはそれと関係あるものにしたかったんだ。で、たくさんあった選択肢のなかであのアートワークが一番それと繋がりを感じたから選んだ。『グラス・ソーズ』もクリスタルだったしね。あれはもっと人工的でアニメーションっぽかったけど、今回はそこからちょっと前進してリアルになっているのもいいと思う。
■ あなたはPCやネットがカジュアルな世代で、私たちはデジタル情報化社会に生きています。よくよくあなたの音楽は、そうした今日の情報化社会の反映に喩えられますが、あなた自身もそう思いますか?
R:人がそう言うのもある意味理解は出来る。俺は集中力がなくて、3、4分以上の曲を作れない。オンライン・メディアみたいにピンポイントというか、必要なものだけをサッとって感じ。いまの時代は、前みたいにずーっと耳を傾けたり、集中しなくてよくなってる。そういう意味では俺の音楽はそれを反映してるのかもね。
■“ワークシップ”や“レッツ・スパイラル”のように壮大な曲がありますが、あなたはドラマチックな展開が好きですよね? ミニマルな人生は嫌いだから?
R:いや、シンプル・ライフも好きだよ。忙しいときは、そこから離れて何もない場所に行きたくなったりもする。あまり質問の答えになってないかもしれないけど(笑)。ドラマとかパッション、エモーショナルなものを音楽に入れるのは好きだね。曲をエキサイティングにしたいから。綺麗な曲もすごく好きだけど、やっぱり人を引き込むくらいエキサイティングなものを作るのが好きなんだよね。
取材:高橋勇人(2014年8月25日)