「IO」と一致するもの

Oliver Coates - ele-king

 スライムといえば日本ではザコキャラの代名詞だけれど、こんなに凶暴でそして、悲しげな顔をしたスライムは見たことがない。
 正統なクラシック音楽を修めたエリート中のエリートでありながら、スクエアプッシャーやオウテカを敬愛するチェリスト、相棒の音を躊躇なく加工し、むしろ典型的な弦のイメージから遠ざけることを心がけ、大胆にひずませることもいとわないオリヴァー・コーツは、いま、だれも到達したことのない山頂に立っている。クラシカルとエレクトロニカとの幸福な結合を実現した『Shelley's On Zenn-la』から2年、ジョン・ルーサー・アダムズとの共作を経て届けられた新作『Skins n Slime』が、あまりにも圧倒的かつ独創的なサウンドを誇っているのだ。
 タイトルに冠された「スライム」とは、ディストーションとコーラスのエフェクツペダルを用いて彼がつくりあげた、チェロのテクスチャーを指している。さらに「肌」まで付け足すくらいだから、今回コーツは音の触感になみなみならぬ情熱を注いでいるのだろう。まさにスライムこそが本作の鍵を握っているわけだ。

 アルバムの前半は、5つのパートからなる組曲 “Caregiver” によって構成されている(「介護者」なる曲名からは一瞬パンデミックを連想してしまったけれど、本作は昨年12月の時点ですでに完成していたそうなので無関係)。ミニマルな弦の反復からはじまる “part 1” は、低音のドローンがしっかりと曲に重量感を与えているところがポイントで、この工夫がビートを持たないアルバム全体にくっきりした輪郭を与えている。
 最初のハイライトは “part 2” で訪れる。弦であると同時に電子音でもあるような、器楽曲であると同時に騒音でもあるような、驚くべき未知のディストーション。いったいどうやったらチェロでこんな音を生成できるのだろう? 比較的素朴に弦の響きを聞かせる “part 3” と “part 4” をはさんで、“part 5” でもエフェクトがめざましい活躍を見せている。現界するシューゲイズ的サイケデリア。だが注意しなければならない。これはギターではなく、チェロなのだ。
 先行シングルとして公開された7曲目の “Butoh baby” において、かのスライムは悲しみを爆発させている。主旋律の音色もだいぶおかしなことになっているが、地を這う低音の濁り具合はただただ圧巻というほかない。つづく “Reunification 2018” もすさまじい。これまたシューゲイズ的なノイズに覆われているが、繰り返そう。ギターではない。チェロだ。
 その後アルバムは高音にフォーカスした “Still Life” やティム・ヘッカー風の寂寥を携えた “Honey” を経て、マリブーを迎えた “Soaring X” で静かに幕を下ろす。こういうクラシカルに寄った曲もいい。しかしやはり本作を他と分かつ最大の特徴は、チェロに施された強烈なエフェクトだろう。

 新作のリリースに先がけて公開された『Fact mix』が、序盤はアンビエントで固められているにもかかわらず、途中からマイ・ブラッディ・ヴァレンタインやザ・ジーザス・アンド・メリー・チェインを招き入れ、おなじ空間系ペダルを採用していると思しきザ・キュアーやコクトー・ツインズ(やディーン・ブラント)の曲をはさみつつ、最後はブラックメタルで〆るという謎の構成をとっていたので、はてこれにはどのような意図が? と頭を抱えていたのだけれど、今回フルでアルバムを聴いてみてわかった。『Skins n Slime』は、かつてエレクトリック・ギターが繰り広げた音響的冒険を、チェロで探究しようと試みたアルバムなのだ。
 ただし本作は、夢見心地なムードや浮遊感のたぐいは搭載していない。スライムはどこまでも悲しみと向き合っている。そこがいまの時代とマッチしていて、とても今日的だと思う。

Planet Mu's 25th anniversary - ele-king

 マイク・パラディナスが主宰するエレクトロニック・ミュージック・レーベル〈Planet Mu〉が創立25周年を記念してコンピレーションを出します。いや、すばらしい、おめでとうございます。
 マイク・パラディナスは、90年代初頭のエイフェックス・ツインの衝撃があって以降に登場した才能でした。そう、リチャードが〈Rephlex〉なる自分のプラットフォーム的レーベルをはじめて、そこからデビューしたのがマイク(μ-Ziq)で、彼の最初のアルバムそして2枚目は当時はまさにAFXに次ぐ衝撃だったのです(アンドリュー・ウェザールもその年の自分のベストに挙げておりました)。本当にあれは素晴らしかったなぁ。そしてマイクはいろんな名義を使い分けながら現在にいたるまで作品を出し続けています(今年もTusken Rider名義でアルバムを出しています)。1995年からはじめた自分のレーベル〈Planet Mu〉も当初はほとんど自分の作品ばかりでした。それがゼロ年代あたりからいろんなアーティストの作品も出すようになり(COM.Aの兄であるジョセフ・ナッシングの作品も出してましたね)、で、2008年のダブステップ系の名コンピレーション『Warrior Dubz』以降はFalty DLや初期のFloating Points、そしてシカゴのフットワークを世界に知らしめた名コンピレーション『Bangs & Works』を出したりしています。ちょうど10年前にインタヴューもしていました
 〈Planet Mu〉は、日本に支部がないためプロモーションされてませんが、ここ最近も本当に良い作品/挑戦的な作品を出しているんです。昨年はRian Treanor、今年で言えばまずはSpeaker Musicですよね。East Manもありました。しかしこうしてリンクを見ていると、書いているのは三田格さんばかりじゃないですか。いかん、もっとたくさんの人に聴いてもらわねば!
 マイクが本当にそう思ったのか、定かではありませんが、最近のレーベルの魅力をパッケージしたコンピレーション『Planet Mu 25』が出ます。エクスクルーシヴが7曲あり、そのうち1曲はBasic RhythmによるDJ Nateの曲のリミックスです。

 リリースは12月4日、デジタルとCDの両方で発売。なお、オウテカやエイフェックス、スクエアプッシャーとはまた違った活動を続けているマイクの最新インタヴューは、紙エレキングの年末号に掲載されるでしょう。乞うご期待。

Tracklist:
01 East Man & Streema - Know Like Dat
02 RP Boo - Finally Here (ft. Afiya)
03 Konx-om-Pax - Rez (Skee Mask Remix)
04 Ital Tek - Deadhead
05 Gábor Lázár - Source
06 DJ Nate - Get Off Me (Betta Get Back) (Basic Rhythm Remix)
07 Ripatti - Flowers
08 Speaker Music - Techno Is A Liberation Technology (ft. AceMo)
09 Jana Rush - Mynd Fuc
10 Rian Treanor - Closed Curve
11 Bogdan Raczynski - tteosintae
12 RUI HO - Hikari
13 FARWARMTH - Shadows In The Air
14 Meemo Comma - Tif’eret
15 Eomac - All The Rabbits In The Tiergarten

Bill Callahan - ele-king

 とくに良いこともなければ、頼りになるものなんてものもない。そんな人生を歩んでいる人は決して少なくはないだろう。そこでビル・キャラハンの新作を聴いたからといって悩みが解消されるという保証はまったくないのだが、まあ、心のなかに良い風が吹くことは間違いない。
 アメリカの文字通りの“オルタナティヴな”ソングライターでありストーリーテラーであり思索者である彼の『ゴールド・レコード』には、歳を重ねたことで表現しうるであろう優しさや慈しみの感覚がある。それは削ぎ落とされた文体によって叙情性を漂わすこのアコースティック・アルバムにおいて、聴き終えてからもしばらくすると湧き上がってくる。

 90年代のアメリカから登場したシンガーソングライターのなかで、キャラハンは最初から耳にも心にも優しいミュージシャンというわけではなかった。彼がまだスモッグと名乗っていた初期の頃では、チューニングの狂ったギターで歌う、実験的というよりは宅録の破れかぶれな手法の、とりあえず「ローファイ」と括っておけばいいみたいな、ユニークかもしれないがある意味難しいアーティストだったと思う。彼のソングライターとしての才能が認知されるようになるには、それなりに時間がかかってる。
 有名な話だが、彼はキャット・パワーと同棲し、1996年には彼女のサード・アルバムのために曲も書いている。その翌年にはジム・オルークのプロデュースのもとメロウかつ音響的に工夫を凝らした1枚のアルバム『Red Apple Falls』(個人的にはとくにフェイヴァリット)を制作し、さらに2年後の1999年にふたたびオルークのサポートによって生まれた『Knock Knock』(もちろんこれも名盤)が、おそらくはもっとも広くキャラハンの音楽が聴かれる契機となった。その捻りの利いた名盤とされるアルバムの1曲目が、ファンのあいだでも人気曲の“Let's Move To The Country(田舎に行こう)”だ。楽天的に流浪の感覚を歌い上げた20年前のその曲は、新作『ゴールド・レコード』であらたに録り直されている。

 キャラハンにとって人生とは彷徨いの連続からはじまった。1966年にメリーランド州シルバースプリングで生まれた彼は、幼少期の一部をイングランド北部で過ごしたこともあり、両親の仕事(NSA勤務)の事情もあってあっちいったりこっちいたりと、子供の頃は移動の連続のような生活を送っていたようだ。大学は三度中退したが、ギターを持って歌を歌い、自主で作品を作り、やがてビル・スモッグとしてまだスタートしたばかりのシカゴのインディ・レーベル〈ドラッグ・シティ〉から作品を出すことになる。先述した『Knock Knock』は通算9枚目、〈ドラッグ・シティ〉になってからは6枚目のアルバムで、キャラハンはこのときすでに30代もなかばだった。
 彼の20枚以上もあるリストにおいてもっともカラフルな、トータスのジョン・マッケンタイアのプロデュースによる2000年の『Dongs Of Sevotion』(これも素晴らしい)もまた、その音楽的な妙味(エレクトロニクス、ジャズ)をともなって評判となったが、とにかく多作な彼のスモッグ時代でもう1枚挙げておくとしたらこの名義では最後となった『A River Ain't Too Much To Love』だろうか。ミニマルかつアコースティックなフォーク・ロック作品だが、この方向性はビル・キャラハン名義になってからの『Sometimes I Wish We Were An Eagle(たまに自分が鷲だったらと)』や『Dream River』といった佳作(そして世界的に評価された前作『Shepherd In A Sheepskin Vest』)、つまり現在のキャラハンへと繋がっている。

 20曲もあった前作と違って『ゴールド・レコード』はその半分の10曲、時間にして40分。「ハロー、俺はジョニー キャッシュ」という語りで幕を開ける。その曲“鳩”の歌のパートは、結婚式の米を食べて、サンアントニオの上空で爆発した鳩からはじまる。祝福と行く末の不安が暗示されるそれはアメリカのミニマル文学とレナード・コーエンとの出会いに相応しく、一篇の物語がアメリカーナの洒脱な演奏と相まって語られる。ちなみに、こうしたキャラハンの感覚に近い日本のバンドを探すとしたら、おそらくそのひとつは「さかな」だろう。
 キャラハンには、同郷のノワール作家、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』で有名なジェームズ・M・ケインに捧げた名曲があるが、彼の簡素でアイロニカルな文体/コンポジションは今作でも継続されている。たとえば“プロテスト・ソング”なる曲ではこんな具合だ。仕事で疲れて家に帰る。夜遅く、TVを見ると歌手がプロテスト・ソングを歌っている。男は思わず「おまえのプロテスト・ソングに抗議する」と反応する。自分は悪魔に1票入れるとのたまい、「俺が間違ってると言うなら/誰かこいつらを止めてくれ」と続ける。
 “ザ マッケンジーズ”なる曲はこんな物語だ。家の前で車が故障する。近所のおじさんが助けに来る。ビールの時間じゃないかと家に誘われ、結局その夫婦と夕食までともにすることになる。楽しい一時のなかで男はその家の息子の部屋を見て、彼が死んだことを知る。
 また、“35”なる曲は(あたかも混乱した現在を仄めかすように)こんな印象的かつ象徴的な科白からはじまる。

 最近は、本を読んでも俺が出てこない
 むかしはどのページにも載っていたのに

 複数の人生(アイデンティティ)が描かれている『ゴールド・レコード』には、ライ・クーダーもいればカウボーイもいる。最後の曲で「長いあいだ彷徨いすぎたのかもしれない」と歌われる彷徨い人のごとく、彼らはおおよそ不安定さのなかにいる。しかしそれでも彼らはその人生をたしかに生きているし、朝食だの誰かの赤ちゃんだの、些細なことに喜びを見いだしている。ぼくには、アルバム・オープナーの“鳩”の歌詞の結びが、この作品全体に通底するムードを決めているように思える。「そしてひとりで車を出した/だけどひとりじゃないんだ/心から、愛をこめて/コーエン

 50もなかばに差し掛かろうとしているキャラハンだが、年を重ねるごとに磨きがかかっている。とくに今作の飾り気のないがゆえに引き込まれる音楽性と、なによりも彼の歌声は、たとえ言葉がわからなくても素晴らしく魅力だ。
 そしていまこの激動の時代の最中、キャラハンは執拗なまで複数の“小さな物語”を歌っている。それこそ“プロテスト・ソング”において風刺的に描いているように、ことアメリカではアイデンティティ・ポリティクスに大統領選、トランプ支持のジョン・ライドンにアイス・キューブと、そんな話題がニュースやネットを賑やかしている今日このごろ。無名の人たちの生活のディテールなどは取るに足らない話かもしれない。なにか威勢のいいことなど何ひとつとして言ってはいないこの音楽は、しかしだからこそ際立っている。


※歌詞の引用は日本盤の訳詞から。

New Order - ele-king

 新型コロナウイルス感染症の影響により延期となっていたニュー・オーダー来日公演の振替公演が、2022年1月に行われることが決定した。

■振替公演日程
東京 2020年3月3日(火) 新木場 STUDIO COAST → 2022年 1月26日(水) ZEPP HANEDA
東京 2020年3月4日(水) 新木場 STUDIO COAST → 2022年 1月28日(金) ZEPP HANEDA
大阪 2020年3月6日(金) ZEPP OSAKA BAYSIDE → 2022年 1月24日(月) ZEPP OSAKA BAYSIDE
※東京公演は会場が変更となりますので、ご注意ください。

詳細は招聘元のクリエイティブマンからの以下のご案内をご覧ください。

ニュー・オーダー振替公演のお知らせ

新型コロナウイルス感染症の影響により延期となっておりました、ニュー・オーダー来日公演の振替日程が決定致しました。振替日程発表まで長期間にわたりお待たせしまして大変申し訳ございませんでした。 お客様のご理解とご協力に感謝申し上げます。

お手持ちの公演チケットは指定の振替日程にのみ有効となりますので、大切に保管していただきますようお願い致します。振替日程にご都合のつかないお客様には払い戻し対応をさせて頂きます。 払い戻しはお買い求めのプレイガイドにて 2021 年 1 月 31 日(日)までの期間となります。 この期間以外の別途受付はございませんので、必ず期間内にお手続きをして頂きますようお願い申し上げます。払い戻し方法の詳細につきましては、クリエイティブマンのホームページをご確認ください。 また、チケットの再発売日につきましては、改めてお知らせ致します。

大阪 2022年 1月24日(月) ZEPP OSAKA BAYSIDE
※2020年3月6日(金) ZEPP OSAKA BAYSIDEより振替
OPEN 18:00/ START 19:00
TICKET 1F スタンディング¥10,000 2F 指定¥12,000(税込/別途 1 ドリンク)※未就学児入場不可 ※未就学児入場不可 ※別途 1 ドリンクオーダー
一般プレイガイド発売日:調整中 <問>キョードーインフォメーション 0570-200-8888

東京 2022年 1月26日(水) ZEPP HANEDA
※2020年3月3日(火) 新木場 STUDIO COASTより振替
東京 2022年 1月28日(金) ZEPP HANEDA
※2020年3月4日(水) 新木場 STUDIO COASTより振替
OPEN 18:00/ START 19:00
TICKET スタンディング¥10,000 指定席¥12,000(税込/別途 1 ドリンク)※未就学児入場不可
一般プレイガイド発売日:調整中 <問>クリエイティブマン 03-3499-6669

制作・招聘:クリエイティブマン 協力:Traffic

 ニュー・オーダーは、2015年に発売された最新オリジナル・アルバム『ミュージック・コンプリート』以来、5年ぶりの新曲「ビー・ア・レベル」(Be a Rebel)を先月発売している。「反逆者になろう 破壊者じゃなくて」と歌うバーナード・サムナーは、「タフな時代だからこそ、この曲をみんなに届けたかったんだ」と語っている。
[シングル詳細] https://trafficjpn.com/news/nobar/

この曲は、adidasのSpezialとのコラボレーションによるコレクション「nwrdrSPZL」に起用されている。
https://shop.adidas.jp/originals/spezial/

[LISTEN]
https://smarturl.it/nobar
https://youtu.be/f6E6ugW7TOo


■プロフィール
https://trafficjpn.com/artists/new-order/

■リンク先
https://www.neworder.com/
https://www.facebook.com/NewOrderOfficial
https://twitter.com/neworder
https://www.instagram.com/neworderofficial
https://www.youtube.com/user/neworder
https://open.spotify.com/artist/0yNLKJebCb8Aueb54LYya3
www.mute.com

BIM - ele-king

 THE OTOGIBANASHI'S の一員としての活動を経てソロ・デビューを果たした BIM。2018年にリリースされた 1st ソロ・アルバム『The Beam』では、アルバム中約半数の曲で自らがプロデューサーとしてトラックも手がけながら、自身のソロ・アーティストしての個性を明確に打ち出し、作品としても日本語ラップ・ファンを中心に高く評価された。アルバム全体で一定のトーンをキープし、どちらかと言えば内向的な印象が残った『The Beam』であったが、今年2月にリリースされたミニ・アルバム『NOT BUSY』では、『The Beam』にも参加していたドイツ人プロデューサーの Rascal が全曲プロデュースを手がけ、さらにスチャダラパーの Bose をゲストに迎えたことも相乗効果となりながら、外側へと向かっていくようなイメージの作品であった。そして『NOT BUSY』から約半年後に今回の 2nd アルバム『Boston Bag』がリリースされたわけだが、『NOT BUSY』の延長上にありながら、様々なスタイルのプロデューサーを迎え入れたことで表現の幅はさらに広まり、実に多面的な魅力を持つ作品に仕上がっている。

 本作の軸になっているのが前出の Rascal、そしてもうひとりが STUTS だ。CreativeDrugStore から in-d、JUBEE、VaVa をゲスト迎えたイントロ曲 “Get Gas (Hey You Guys)” や “三日坊主” などアルバム前半に集中している Rascal プロデュース曲はストレートなヒップホップ・トラックが特徴で、アルバムのヒップホップ濃度を上げている。なかでもテディ・ペンダグラス “Close The Door” のサンプリングにハードなビートを重ねたメロー・チューン “Jealous” は90年代的なテイストも醸し出しつつ、そこに乗る BIM と KEIJU (KANDYTOWN)の絡みが凄まじく格好良く、さらに男の色気も強く滲み出ている。一方、昨年リリースされた RYO-Z (RIP SLYME)との共演曲でもあるシングル “マジックアワー” でも素晴らしい相性を見せていた STUTSは、先行シングル曲である “Veranda” を筆頭に3曲のプロデュースを担当。STUTS の持つポップなセンスとダンサブルなスタイルがアルバム全体に上手く溶け込み、cero の高城晶平をフィーチャしたアーバンなダンス・チューン “Tokyo Motion” はその中でも最高峰とも言える一曲だろう。ダンス・チューンと言えば G.RINA がプロデュースを手がけ、kZm をフィーチャした “One Love” は “Tokyo Motion” とはまた異なる方向性のシンプルな抑えたムードの作りで、それぞれのプロデューサーの異なる個性が実にバランス良く溶け合っている。全11曲、32分というコンパクトなサイズ感ではあるが、楽曲の流れも実に巧みで、No Buses というバンドをゲストに迎えた80sニューウェーヴ的なテイストも感じられる “Non Fiction” で締めくくるというラストへの流れも含めて、アルバム単位で頭から最後までじっくり味わって欲しい作品だ。


 11月7日(土)、川崎の工業地帯で野外パーティ、Bonna Potが開催される。海辺にある芝生の広場だそうで、詳しい場所(およびコロナ対策)は、前売りチケット購入者に追って知らされることになっている(当日券の発売は一切無し)。だいたい都心から電車とバス、またはタクシーで約1時間ほど。駐車場の関係で車でのアクセスはナシのことです。
 出演するDJは、Toshio “BING” Kajiwara、Shhhhh 、Ground、Mamazu、7e。
 また、会場内には音響会社HIRANYA ACCESSプランニングによるTaguchiの最新フラットユニット・スピーカーを導入し、高音質のサウンドシステムを構築するのこと。いったいそこでは何が……

"Bonna Pot"
2020/11/7(sat) 22:00~
@Secret location / An open-air party in Kawasaki industrial area

DJs:
Toshio “BING” Kajiwara (HITOZOKU Record)
Shhhhh (El Folclore Paradox)
Ground (Chill Mountain/ESP institute)
Mamazu (Hole and Holland)
7e

Sound design: HIRANYA ACCESS

Speakers: Taguchi

Solar Power: RA -energy design-

Lighting & Deco:
The Hikariasobi Club
Keisuke Yago
and more!

Food & Bar: 万珍酒店 / MANGOSTEEN

Tonic Shop: Circle Shot

Organized by Nusic & HIRANYA ACCESS

Ticket: 4,500YEN
- RA
https://jp.residentadvisor.net/events/1427402
- 銀行振込 
*以下のメールアドレスに「購入者名(カタカナ表記」と「希望人数」をお送りください。振込口座と詳細をご返信いたします。
bonnapotmusic@gmail.com

*当日券の販売は一切ありません。
*会場の場所は前売りチケット購入者の方々にパーティ前日のお昼頃にemailでお知らせいたします。アクセスは都心から電車とバス、またはタクシーで約1時間ほどです。駐車場の関係で車でのアクセスは出来ません。
*Emailでコロナ対策に関する情報をお送りします。

 今回のBonna Potは川崎の夜景の美しい工業地帯にあるオープンエアスペースで開催します。海辺にある広々とした芝生の広場にHIRANYA ACCESSプランニングによるTaguchiの最新フラットユニットスピーカーを導入し、ケーブル等を含め徹底的に音のクオリティにこだわったサウンドシステムを構築、18メートル四方のダンスフロアを出現させます。数ヶ月前に完成したばかりの新しいスピーカーはしっとりとした豊かな低音の質感が比類なく、楽曲の再現性の高さ、繊細さとぬくもり感、そしてパワフルなアタック感を前回以上のクオリティで表現するために、Bonna Potで使用するためのその新作スピーカーを現在量産してもらっています。場内には一切ガソリンの発電機を置かずに発生ノイズをなくしたピュアな環境をつくり、サウンドシステムは会場に並べたソーラーパネルで充電した太陽光発電による音響専用バッテリーシステムで鳴らします。DJ陣は前回同様のShhhhh、Ground、Mamazu、7eに加え、Toshio “BING” Kajiwaraがプレイします。それぞれが本当に幅広い音楽性とオリジナリティを合わせ持つ唯一無二のDJ陣です。音楽とダンスが好きであれば誰でも楽しめる空間をつくりたいと思っているので是非一緒に踊りたい人たちを誘って遊びにきてください。


Toshio “BING” Kajiwara

90年代初頭のNYでターンテーブルや自作楽器を駆使した独自の即興パフォーマンスを始める。後にクリスチャン・マークレイと実験音楽トリオを結成、00年代初頭まで数々の海外遠征やパフォーマンス・イベントを共にする。他にもペーター・コワルド、シェリー・ハーシュなどの演奏家たちとも活動。また13年間に渡りNYの老舗中古レコード店で勤務し、埋没した歴史的音源の発掘や再評価の運動にも貢献する。現在は京都に拠点を移し、パフォーマンス・アーチスト、芸術家、エンジニアーの集合体「ANTIBODIES Collective」を首謀しながら独自の演出方法と舞台音響の探求を続け、日本各地でパフォーマンス芸術の社会的な役割とその可能性を提示することに関わっている。また、京都/木屋町にて「ヒト族レコード」を運営し、マージナルな文化芸能への開かれた回路を地域に提供している。


DJ.Shhhhh (El Folclore Paradox/ The Observatory)

DJ/東京出身。オリジナルなワールドミュージック/伝統伝承の発掘活動。フロアでは民族音楽から最新の電子音楽全般を操るフリースタイル・グルーヴを発明。執筆活動やジャンルを跨いだ海外アーティストとの共演や招聘活動のサポート。2018年秋よりベトナムはホーチミンのクラブ、The ObservatoryのレジデントDJに就任。
https://soundcloud.com/shhhhhsunhouse
https://twitter.com/shhhhhsunhouse
https://www.facebook.com/kanekosunhouse
https://jp.residentadvisor.net/dj/shhhhh


Mamazu

90年代中期頃からDJとして活動を始める。今は無きclub青山MIXの洗礼を浴び音と人、空間に触発され多種多様な音を吸収。小箱から大箱、野外まで独自の視点で形成される有機的なプレイを続け、今を踊らせる。これまでにFuji Rock FestivalやBoiler Room、香港のCassio、ロンドンのNTS Radioなどに出演。様々な国のレーベルから楽曲やRemixを発表し、Nicola CruzによるRemixもリリースされた。それらの楽曲はいずれも高い評価を得て、Andrew Weatherallをはじめ多くのDJにプレイされている。またadidasやADAM ET ROPE’, BEAMS, EVISEN, HUF, SON OF THE CHEESEなどにも楽曲やMIXを提供している。
https://soundcloud.com/mamazu
https://hole-and-holland.com/


Ground (Chill Mountain/ESP institute)

DJ・Producer・Remixer。
音楽をツールに世界20カ国を超える様々なフェスやイベントに出演。デジタルレーベル「Chill Mountain Rec」をKabamix&Mt.chillsと共に運営。自身の楽曲制作では、2015年より3枚のアルバムを発表、2018年には、LA拠点のレーベルESP instutiteよりワールドデビューアルバム「SUNIZM」をリリース。2019年初旬、エクアドルはキトにて2ヶ月間の滞在の末に現地アーティストらとの共同制作で作られたEP、「Metcha Quito vol.1&vol.2」をリリース。2020年初旬ESP Instituteより(Wakusei Ep)、7年振りとなるMIXCD(Energemizmix)をリリース。
今夏最新Mini Album (Atarayo)がChill Mountain Recよりリリース中。
https://djgroundjapan.wixsite.com/ground13
https://soundcloud.com/dj-ground


7e

実験的電子音楽から世界のストリートミュージックまで、幅広いアーカイブから選ばれた新旧の楽曲を実験的にミックスする独自のダンスセットをプレイする。東京のディープなバーやクラブ、野外フェスティバル/パーティを中心に、近年はブラジルやドイツでのVOODOOHOPやAcid Pauliの主催パーティ、北カリフォルニアの人気フェスPricelessやLAのウェアハウス・パーティ、メキシコのアンダーグラウンド・パーティなど、世界に活動の幅を広げている。
https://soundcloud.com/7e_romanescos
https://www.facebook.com/7emusica

LITTLE CREATURES - ele-king

 1990年にデビューしたヴェテラン3人組、トーキング・ヘッズのアルバムから名前を頂戴し、つねに新たな試みに挑戦しつづけてきた LITTLE CREATURES が、5年ぶり通算8枚目のアルバムをリリースする。
 デビュー30周年ということでタイトルも『30』、最新スタジオ・ライヴ音源を収録したボーナス・ディスク付きの豪華2枚組。年が明けてすぐの1月8日に発売となる。
 それに先駆け、11月1日(日)には無観客・生配信ライヴが予定されている。さまざまな音楽を折衷し、30年間つねにわが道を突き進んできたトリオはいま、どんなサウンドを聞かせてくれるのか? 楽しみに待っていよう。

祝! デビュー30周年! LITTLE CREATURES 超待望の5年ぶりニュー・アルバム『30』リリース決定!
そして、デビュー30周年を記念したスペシャル配信ライヴを11/1(日)に開催!

大変お待たせしました! 青柳拓次(Vo/G)、鈴木正人(Bass/Key)、栗原務(Dr/Per)による不動のトリオ LITTLE CREATURES、待望のニュー・アルバム『30』が2021年1月8日(金)にリリース決定!! 1990年のデビューから30周年を迎えて放つ、前作『未知のアルバム』以来5年ぶり通算8作目のオリジナル新作です。今回も全編日本語詞による青柳の歌を中心に据えつつ、サウンドは前作のソリッドなバンド・アンサンブルから一転、グッとまろやかなものへと軽やかにシフト。有機的なのに未来的。メロウなのに刺激的。オルタナティヴなのに普遍的。極限まで削ぎ落とされた音の隙間でそんな相反する要素が柔らかに溶け合った唯一無二の作品に仕上がっています。これぞ30年の進化と余裕。圧倒的なミュージシャンシップとキャリアを誇る今の LITTLE CREATURES にしか作れない世界最先端のミニマル・ポップ・ミュージックにご期待ください!

しかも、CDは豪華2枚組!! オリジナル・アルバム『30』に加え、過去作からのベスト選曲による全編新録のスタジオ・ライヴ・アルバム『STUDIO SESSION』がボーナス・ディスクとして付属します。新たなアコースティック・アレンジに生まれ変わった名曲の数々をご堪能あれ!

さらに! デビュー30周年を記念したスペシャル・ライヴをデビュー日の11月1日(日)に無観客・生配信します! バンドがこれまでに紡いだ新旧名曲の数々をゆったりたっぷりお届けしますのでお楽しみに!

そして! メンバー栗原努がセレクトしたオールタイム・ベスト・プレイリストが Spotify で本日公開!

オマケに! 本日より LITTLE CREATURES のオフィシャル・ネット・ストアでは30周年記念セールもスタート!

……というわけで、30周年の LITTLE CREATURES は企画てんこ盛りでお届けします! それぞれの詳細は下記をチェック!


■アルバム情報

LITTLE CREATURES/30
2021年1月8日(金)リリース
CD2枚組(DISC 1:オリジナル・アルバム『30』/DISC 2:新録スタジオ・ライヴ・アルバム『STUDIO SESSION』)

定価:¥3,600+税
CHORDIARY / P-VINE RECORDS

こんなトリオのバンドがあったらいいよねって
そうずっとやってきたような気がする
この『30』も同じような想いで
作られた作品となった
青柳拓次

[トラックリスト]
DISC 1:『30』
 01. 速報音楽
 02. ぐるぐると
 03. 大きな河
 04. 悲しみのゆくえ
 05. 左目
 06. 踊り子
 07. ことわり
 08. ただごとうた
 09. ハイポジション
 10. あさやけ
 11. 神秘的な友愛
 12. 踊りかける
DISC 2:『STUDIO SESSION』(ボーナス・ディスク)
 内容未定(全て2020年10月録音の最新スタジオ・ライヴ音源を収録)


■配信ライヴ情報

LITTLE CREATURES「LIVESTREAM SESSION」
デビュー日の11/1(日)に無観客・生配信ライヴ開催決定!
11/1(日)16:00~配信開始。
10/14(水)正午より早割チケット(¥1,000)販売開始します。
視聴券受付URL:https://eplus.jp/littlecreatures-1101stp/
INFO:https://littlecreatures.jp

■デビュー30周年プレイリスト
栗原務セレクトによるオールタイム・ベスト・プレイリスト「LITTLE CREATURES "BEHIND THE SCENES" selected by Tsutom Kurihara」を Spotify にて公開しました!
https://spoti.fi/3nUgIBc

■セール情報
10/14(水)正午よりデビュー30周年セール[最大50%OFF]開催!
過去作CD、アナログ、DVD、グッズ等を30~50%OFFで販売します。
数に限りがありますのでお早めに。
https://littlecreatures001.stores.jp

[プロフィール]


イラスト:ジェリー鵜飼

LITTLE CREATURES
青柳拓次(Vo/G)、鈴木正人(Bass/Key)、栗原務(Dr/Per)の3人で87年、高校在学中に結成。新宿、渋谷を中心にストリートライヴを繰り広げながら人気を博し、90年にシングル「THINGS TO HIDE」でデビュー。デビュー2ヶ月後に、青柳はスコットランド、鈴木はアメリカへ語学兼音楽留学のため旅立つ。91年に1stアルバム『VISITA』をリリース。97年、3rdアルバム『little creatures meets future aliens』リリース以降は、"KAMA AINA"(青柳ソロ)、10人編成のエスペラント楽団 "Double Famous"(青柳・栗原)、鈴木はベーシスト、プロデューサーとしての活動など各々のソロ活動を行う。2000年、レーベル移籍を機にプライベート・レーベル〈CHORDIARY〉を設立。01年、4thアルバム『FUTURE SHOCKING PINK』、同年9月には初のライブ・アルバム『the apex』をリリース。05年、初の海外公演を行った後、5thアルバム『NIGHT PEOPLE』をリリース。同年、池上本門寺・野外特設ステージにてデビュー15周年祭を開催。2010年には、デビュー20周年を記念して、約5年ぶりのリリースとなる6thアルバム『LOVE TRIO』、レーベルの枠を越えた初のオールタイム・ベスト『OMEGA HITS!!!』、2011年1月には LITTLE CREATURES をリスペクトする豪華アーテイストが参加したカバーアルバム『Re:TTLE CREATURES』をリリース。2016年7月に初の全編日本語詞による新作『未知のアルバム』をリリース。同年9月からは約11年ぶりのツアーを開催。2020年にはデビュー30周年を迎えた。孤高の存在としてマイペースに活動中。

https://littlecreatures.jp/

別冊ele-king カン大全──永遠の未来派 - ele-king

ドイツの巨星、CAN読本の決定版!

いまなお世界中のミュージシャンたちに影響を与え続けているクラウトロックの巨星カン
全作品の再発で話題沸騰中の現在、謎多き彼らの全体像に初めて迫る!

カンの物語/シュトックハウゼンとWDRスタジオ/クラウトロックを育んだ戦後ドイツの風景/ユーロ・フリー・ジャズの勃興/カンの構成分子/カンのDNA/ロング・インタヴュー/ディスク・ガイド

【執筆者一覧】
明石政紀、岸野雄一、小林拓音、小柳カヲル、小山哲人、崎山和弥、柴崎祐二、竹田賢一、野田努、ジェイムズ・ハッドフィールド、東瀬戸悟、福島恵一、松平敬、松村正人、松山晋也、三田格

目次

序文

カンの物語 (松山晋也)
焦土からの再生
 ~クラウトロックを育んだ戦後ドイツの風景 (明石政紀)
シュトックハウゼンとWDRスタジオ
 ~大戦後の前衛音楽シーンをリードした魔王からの旅立ち (松平 敬)
ユーロ・フリー・ジャズの勃興
 ~独自「武装」による非米国化を目指した者たち (福島恵一)

Interview
イルミン・シュミット
 Ⅰ (野田 努)
 Ⅱ (松山晋也)
 Ⅲ (松山晋也)
ホルガー・シューカイ
 Ⅰ (松山晋也)
 Ⅱ (野田 努)
 Ⅲ (松山晋也)
ヤキ・リーベツァイト (野田 努)
ミヒャエル・カローリ (小山哲人)

カンの構成分子
 ~火星からやってきた音楽人類学者 (福島恵一)

Disc Guide
カン (小山哲人、竹田賢一、野田 努、松村正人、松山晋也)
イルミン・シュミット (小林拓音、竹田賢一、松山晋也)
ホルガー・シューカイ (岸野雄一、小山哲人、柴崎祐二、東瀬戸悟、松村正人、松山晋也、三田 格)
ヤキ・リーベツァイト (小山哲人、柴崎祐二、松村正人、松山晋也)
ミヒャエル・カローリ (野田 努、松山晋也)
ダモ鈴木 (小柳カヲル)
マルコム・ムーニー (松村正人、松山晋也)
ロスコー・ジー (小山哲人)
リーバップ・クワク・バー (三田 格)

カンのDNA
 ──ニューウェイヴからテクノまで (三田 格)
それはフューからカンへのトリビュートでもあった
 ──コニーズ・スタジオから生まれた伝説的名盤『Phew』 (ジェイムズ・ハッドフィールド)

Interview
ダニエル・ミラー (野田 努)
ヒルデガルト・シュミット (松山晋也)
「I Am Damo Suzuki」──ダモ鈴木の回顧録を読む (崎山和弥)
ダモ鈴木 インタヴュー (松山晋也)

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Vityazz - ele-king

 ジャズを出自に持ちつつも、型にはまらないスタイルで活動の幅を広げてきたヴィチアス(Vityazz)、昨年発表されたデビュー作『11034』もいまだみずみずしさを失わないなか、アルバム冒頭を飾っていた “How days slided” のセッション・ライヴ映像が公開された。
 新たな活動の場を模索するべく彼らは自宅スタジオを開設。今後は關伊佐央、Shun Yamaguchi との共同イベント「atonarium session」を配信で開催していくとのこと。

Young Girl - ele-king

 ちょっと異常だなと思うのが、新型コロナウイルスによる被害について語るときに欧米と日本を比較する頻度。ファクターXとか「日本はなぜ被害が少ないのか」という問いの立て方自体が間違っていて、被害が少ないのは日本だけではなく、東アジアとアフリカ大陸は全般的に死者数が少なく、アジア系の多い東欧も死者の数は4桁に届いていないところが多い。逆に言えばインド≡ヨーロッパ語族に被害は集中し、ネアンデルタール人のDNAを受け継ぐ人種がとくに危険だという仮説に僕は説得力があると感じた。アメリカと中南米で黒人に死者が多い理由も社会的要因はもちろんだけれど、わずかでも白人の血が黒人に混じっている率の高さを思えば、これも同じように説明がつくし。にもかかわらず、日本人が日本と欧米だけを比較し続ける心理はやはり「日本は欧米の一員」という意識が右派にも左派にも浸透しきっていて「アジアの一員だとは思いたくない」という意識が病的なほど強く働いてしまうからなのだろう。その一方で、安倍政権から菅政権へと権力が移譲されたプロセスは絵に描いたように東アジア的で、韓国やマレーシアでさえここまで民主主義を省略してしまうことはなく、欧米から見れば日本のやり方は中国や北朝鮮と大差ないものと映ったことだろう(森総理の時よりは大人数で決めたけどね)。行動原理はディープに東アジア的。意識は欧米か!。なんともスキゾフレニックな国民である。インダストリアルなリズムにうっとりとするようなメロディを掛け合わせたエイフェックス・ツインのファンが日本には多いわけである。

 「エイフェックス・ツインとスクエアプッシャーの肩の上に立っている」と自らプロフィールに記すヤング・ガールの2作目はドリルン・ベースならぬグリッチン・ベースで幕を開ける。“Vomit Nightmares(嘔吐の悪夢)”は突拍子もないブリープ音と穏やかなシンセサイザーのぶつかり合い。いきなり脳天に花が咲く。続く“The Low Men”もブチブチと途切れるリズムに断片的なメロディが浮かんでは消え、ぶり返しては断ち消える。なるほどエイフェックス・ツイン(やクラフトワーク)に多くを負っていることは確かで、いくつかストレートに曲名も浮かんでくる。とはいえ、オリジナルな要素も潤沢で、野山を駆けめぐるような“The Red Birds”に慌てふためく“The Black Gulls(黒いカモメ)”は独自の境地を感じさせる。アルバム・タイトルは『The Night Mayor(夜の市長)』となっているものの、いわゆるナイト・タイム・エコノミーとは無関係のようで、活動の拠点が「地球上で最も人が孤独になるオーストラリア西部」だと意味不明のアピールをしつつ、本人はいつも仮面で顔を隠し(前作では髭が見えていた)、アリアナ・グランデと同じ構図のジャケット・デザインには中途半端な自己顕示欲が感じられる(悪いとは言っていない)。自意識がねじくれていることがスキゾフレニックな音楽性には不可欠なのだろう。ゆっくりとネジがはずれていくような“Codeine”は、フィッシュマンズが♪風邪薬でやられちまったみたいな~と歌っていた咳止めのこと。日本では3年前に12歳以下の子どもには処方することが禁止となった風邪薬で、風邪もひいていないのに子どもが飲みたがる家庭麻薬として昔からつとに有名だった(アメリカの2010年代がコデイン→アヘン(オピウム)→フェンタニルと同じ成分の生成方法が変化しただけということも思い出す)。アルバムの後半はとてもナイーヴな展開で、前半の躁状態はどこかに陰を潜め、戯画的でありながら心に重くのしかかる曲が続く。そして、“Frustration Nightmares”でブチ切れ、“Sleep Paralysis(金縛り)”で異様なムードに反転。最後は朝が来てしまったということなのか、“Wake Up Wake Up Wake Up Wake Up Wa…(起きろ起きろ起きろ起きろ起……)“と、どこか暴力的な朝の描写で幕を閉じ、「夜の市長」はいなくなってしまう。夜だけが好きで、朝が嫌いな人にはマストのアルバムです。

 日に日に夜が長くなってきたせいか、「夜」をテーマとしたコンピレーション・アルバムも何種類かリリースされ、なかではポスト・ロックの中堅レーベルが企画した『A Little Night Music:Aural Apparitions from the Geographic North』がだんとつで良かった。全31曲とけっこうな曲数があり、オープニングとクロージングはオリヴァー・コーツ。『The Night Mayor』はちょっと怖い夜だったけれど、こちらはとても穏やかで、包み込んでくれるような夜の優しさや、つかみどころのなさを表現した曲が大半を占めている。目立ったところをかいつまんでいくと、久々に名前尾を見たゼリエノープル(Zelienople)やフェネスは安定した音楽性。気持ちのいい圧迫感とそれを凌駕する安心感がキャリアの余裕を感じさせる。グレッグ・コワルスキーやKi Oni(木鬼? カイ・オナイ?)はイマジネーション豊かで伸び伸びとしたコンポジション。広島でアンビエント・ミュージンクを展開するフジタ・ダイスケのMeitei / 冥丁は雨だかグリッチ・ノイズだかを背景に軽く打楽器を加えた寂しい曲(怪談好きのようです)。高木正勝もなぜか似たような発想で、こちらは雷雨とピアノ。メアリー・ラティモアはメランコリック、イリヤース・アーメドはエスニック・フォーク、フェリシア・アトキンソンはアンニュイと続き、驚いたのはシューゲイザイーのロータス・プラザが復活したこと(7年ぶり?)。これが迷宮のようなクラウトロック風のピアノ曲で、さすがでした。ハウスの人だとばかり思っていたフィット・オブ・ボディがジャズ風のスローナンバーを寄せているのも驚いた。元LAヴァンパイアのニック・マーキンによる温泉のような暖かさからルイーズ・ボックのオカルティックな響きまで、とにかく違和感のある曲が1曲もない。流れも巧みで、とても優れた編集センスだと強調したい。なお、収益はすべてレーベル所在地であるアトランタの女性団体に寄付されるそうです。とりわけ堕胎を希望している女性たちのサポートに(https://www.feministcenter.org)。

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