「Not Waving」と一致するもの

KRM & KMRU - ele-king

 荒廃した都市の深淵から深く、そして重厚に響く強烈な音響。アンビエント、ドローン、ノイズ、ヴォイス、工業地帯の音、いわばインダストリアル・サウンド、そしてエコー。それらが渾然一体となって、崩壊する世界の序曲のようなディストピアなムードを醸し出している。このアルバムにおいて、ふたりの才能に溢れたアーティストが放つ音は渾然一体となり、さながら都市の黙示録とでもいうべき圧倒的な音世界が展開されていく……。

 といささか煽り気味に書いてしまったが、このアルバムの聴き応えはそれほどのものであった。ザ・バグことケヴィン・リチャード・マーティン(KRM)と、〈Dagoretti〉、〈Editions Mego〉、〈Other Power〉などの先鋭レーベルからリリーするナイロビのアンビエント・アーティトのジョセフ・カマル(KMRU)によるコラボレーション・アルバム、KRM & KMRU『Disconnect』のことである。

 これは単なる顔合わせ的な共作ではないと断言したい。われわれ現代人の聴覚=感覚をハックするようなサウンドスケープを形成し、インダストリアルとアンビエントとダブが混合する有無を言わせぬ迫力に満ちた音世界を縦横無尽に展開しているのだ。まさに世代の異なる天才的アーティストの遭遇によって生まれた作品といえよう。
 リリースはイギリスはブライトンを拠点とするエクスペリメンタル・ミュージック・レーベル〈Phantom Limb〉から。ケヴィン・リチャード・マーティンは2021年に『Return To Solaris』をこのレーベルから発表している。
 アンビエント・アーティスト KMRU が手がけたコラボレーション作品といえば2022年にブリストルの〈Subtext〉からリリースされた Aho Ssan との『Limen』があった。これもなかなかのアルバムで、惑星的終末論のような壮大なSF的ムードを生成するドローン作品である。いっぽう本作『Disconnect』は『Limen』とはかなり異なる雰囲気だ。「惑星から都市へ」とでもいうべきか。荒廃した都市のサウンドトラックのような音響を展開しているのだ。
 やはりコラボレーターによる変化は大きい。今回はケヴィン・リチャード・マーティンのカラーも反映されているといってもよい。じじつ、どうやらケヴィン・リチャード・マーティンが KMRU のドキュメンタリー映像を観たことが本作の創作の発端だったようだ。そこで KMRU の「声」の魅力に気がついたケヴィン・リチャード・マーティンは、コラボレーションを持ちかけたとき、ジョセフ・カマルに彼のヴォーカルを用いたいと申し出た。アンビエント作家の「声」とはさすがの着眼点である。
 そうして完成した本作は両者の個性が交錯し、錯綜し、その結果、まるで都市を覆う神経系統のような、もしくは断線したネットワーク回線のような、それとも荒廃した都市に鳴り響く不穏な工事音とような不穏なサウンドとなった。アンビエントからインダストリアル、そしてダブの要素が交錯するサウンドスケープはじつに刺激的だ。

 1曲目 “Differences” から共作の成果は存分に出ている。楽曲全体をジョセフ・カマルの声が読経のように響きわたり、聴く者の精神を深く鎮静へと導く。同時にベースの動きをする低音部分、深いエコーがダブのような重層的な音響空間を生成・構築し、それが薄暗い不穏感覚を演出していく。まさに鎮静と不安の混合体のようなサウンドだ。もしくは崩壊と蘇生とでもいうべきか。とにかく灰色の質感に満ちたディストピアなムードがたまらない。この音像はケヴィン・リチャード・マーティンと KMRU のアンビエンスの交錯から生まれたものに違いない。そこに一種の「主演俳優」のようにジョセフ・カマルの声がレイヤーされる。見事な「演出」だと思う。
 2曲目 “Arkives” はカマルの声と透明なアンビエンス、ケヴィン・リチャード・マーティンによるダーク・ダブ・インダストリアルな音像が地響きのように展開する曲。3曲目 “Difference” ではビートが加わり、まるで作品世界を方向するような音響的展開を聴かせてくれる。そこにカマルのヴォイスがまたもレイヤーされていくわけである。
 やがてビートが静かに消え去り、4曲目 “Ark” がはじまる。ノイズの周期的なループにカマルの声の反復が重なる。それが列車の音の進行のように進み、いつしか雨のような音と反復音のみが残る。5曲目 “Differ” ではその荒廃したムードを受け継ぎつつ、周期的なリズムが刻まれていくトラックだ。ここではカマルの声もほんの少しだけ希望の兆しを感じもする。
 そしてクライマックスであるアルバム最終曲6曲目 “Arcs” に行き着く。反復するノイズ、パチパチしたノイズ、加工された声のレイヤー、アルバムで展開されてきたいくつもの要素が統合され、アルバムの終局である音世界を鳴らす。やがて鐘のような音が世界に警告を鳴らし、静まり返った世界に降り注ぐ雨の音のようなノイズでアルバムは幕を閉じるのだ……。

 アルバムは全6曲にわたり、都市の終焉と世界の再生のように不穏と希望のインダストリアル・アンビエントを展開するだろう。ときにビートも織り交ぜながら、交響曲のように展開するさまは、どちらかといえばケヴィン・リチャード・マーティンの個性によるものかもしれない。一方でジョセフ・カマルの「声」が啓示のように響く。まさにレクイエムのようなインダストリアル・アンビエントだ。
 いずれにせよ『Disconnect』において、ケヴィン・リチャード・マーティンとジョセフ・カマルは相互に深い影響を与えつつ、それぞれが別の逃走=闘争線を引くように生成変化を遂げている点が重要だ。お互いの個性が明確に鳴り響いていても、しかし全体としては未知の音になっている。コラボレーション・アルバムは数あれど、これほどの相互作用が生まれた作品も稀であろう。

 私はこれまでも KMRU の音楽を追いかけてきたが、本作は彼のディスコグラフィのなかでも異質にして特別な仕上がりになっていると思う。彼はケヴィン・リチャード・マーティンという圧倒的個性を前にして、ナチュラルな姿勢で対峙し、音と音の新たな交錯を実現した。これはもはやコラボレーションではなく「KRM & KMRU」というユニットの音楽といえるのではないか。まったく新しいインダストリアル・アンビエント・アルバムの誕生を祝福したい。

Cornelius - ele-king

 これを待っていた。コーネリアスによるアンビエントをフィーチャーした作品集である。昨今は日本のロック・ミュージシャンがアンビエントに挑むケースも見受けられるようになったけれど、もともと少なめの音数で特異かつ高度な音響を構築してきたコーネリアスだ。相性が悪かろうはずもなく、凡庸の罠にからめとられることもありえない。

 布石はあった。ひとりの音楽家として大きな曲がり角を迎えたあとの、重要な1枚。影と光、そのいずれをも表現した復帰作『夢中夢 -Dream In Dream-』は、全体としては彼のルーツを再確認させるようなギター・サウンドに彩られていたわけだけれど、終盤には穏やかなインストゥルメンタル曲が配置されていたのだった。アルバム・タイトルと関連深い曲名を授けられ、アルバム中もっとも長い尺を与えられた “霧中夢”。それは、ここ10年くらいの欧米のアンビエント/ニューエイジの動きにたいする、コーネリアスからの応答だった。じっさい、リリース時のインタヴューで彼はジョゼフ・シャバソンや〈Leaving〉、ケイトリン・アウレリア・スミスといったエレクトロニック・ミュージックを聴いていたことを明かしている。近年断片的に発表してきたアンビエント寄りの楽曲のコレクションたる『Ethereal Essence』は、だから、出るべくして出た作品といえよう。
 もちろん、彼がアンビエントへと関心を向けはじめたのは最近のことではない。独自の音響に到達した『Point』の制作時、小山田はよくアンビエントを聴いていたという(当時のお気に入りはザ・KLFイーノだったそうだ)。たしかに、『Point』や『Sensuous』などに収録された一部のエレクトロニカは、こんにちの多様化したアンビエントの観点から眺めれば、そうタグづけされたとしてもなんら不思議はない。『夢中夢』の軸が原点を振り返ることにあったのだとしたら、今回は長年にわたるそうした関心を集約、一気に解放してみせた作品と位置づけられる。

 アンビエント寄りといってもノンビートの曲ばかりで埋めつくされているわけではない。ザ・ドゥルッティ・コラムを想起させる “Sketch For Spring” はしかしサマーでもウィンターでもなく、過ぎ去った春の陽気をありありと思い出させてくれる。湿気に圧殺されそうないまこそ聴くのにぴったりの曲だけど、波のごとくギターが左右に揺れ動く “Melting Moment” もおなじタイプの心地よさを提供してくれている。
 中盤の “サウナ好きすぎ、より深く” や最後の坂本龍一のカヴァー “Thatness And Thereness” のようなヴォーカル入りの曲はいいアクセントになっていて、本作がたんなる寄せ集めではなく、構成の練られたひとつの作品であることを示している。音響上の冒険としては、リンゴをかじるような音を水中音のように聴かせる “Forbidden Apple” がベストだろうか。
 異色なのは、谷川俊太郎の詩の朗読を電子音でトレースする “ここ” だ。この曲だけはまったり聴き流すことができなくて、どうしてもコーネリアスが「ここ(=アンビエント)こそがいまの自分の居場所だ」と主張しているように思えてしまう。もしかしたらぼくたちはいま、新しい──そして初めから大きな──アンビエント作家の誕生の瞬間を目のあたりにしているのかもしれない。

 コーネリアスのようにすでにみずからの音楽性を確立しているアーティストがアンビエントの世界に参入していくことの意味は小さくない。音楽家のなかには「アンビエントなんてだれでもつくれる」と考えているひともいる。パンデミック以降アンビエントのリリースが増え、玉石混交の念を抱くリスナーがいることはうなずけるけれど、そうした軽視や狂騒めいた状況にコーネリアスは、その質とオリジナリティでもって一石を投じているのではないか。
 だから、いつかコーネリアスによる、すべて新曲の本格的なアンビエント・アルバムが登場する。いろんなアイディアが詰めこまれたこの『Ethereal Essence』を聴いてそう確信した。これはきっとその助走なのだ。

『情熱が人の心を動かす』 - ele-king

Pヴァインのファウンダー、日暮泰文氏が、2024年5月30日(木)75歳にて永眠いたしました。
日暮泰文氏はPヴァインの前身となるブルース・インターアクションズを1975年に設立して以来、ブルースからソウル、ワールド・ミュージック、そしてヒップホップに至るまで、インディー・レーベルとしてのオルタナティヴな観点から様々な音楽をCDやレコード、書物を通じて紹介し、日本におけるブラック・ミュージック愛好の歴史を大きく切り拓いてきた開拓者の一人でした。今回、VGAではその軌跡の一部を紹介しつつ、日暮泰文氏が生き抜いた時代と現代の違いについて対談しました。

山崎:これ全部、日暮さんが書いてるんですかね?

水谷:これは日暮さんの字ですね。

山崎:ガリ版で印刷されていてすごいですね。

水谷:便利なものがないと熱くなるんでしょうね。情熱が感じられますね。

山崎:これはいつ頃のものなのでしょうか?

水谷:ブルース愛好会の発足は1968年ですね。その翌々年の1970年には『ザ・ブルース』(日暮泰文氏が刊行したブルース愛好会の機関誌を発展させた雑誌。その後ブラック・ミュージック専門誌『ブラック・ミュージック・レビュー』へとリニューアルする)の第一号が出るんですよ。まさに我が社のルーツですね。

山崎:1968年だと日本にはまだアメリカのブルースやソウルの情報があまり入ってきていないんじゃないでしょうか?

水谷:様々なブラック・ミュージックが日本でも少しずつ認知されてきたくらいの時代だと思います。先日とある場所にある、日暮さんとそのお仲間の方々が集っていた部屋にお邪魔する機会があったのですが、そこに『JAZZ RECORDS』っていう本(デンマークのジャーナリスト/ジャズ作家のヨルゲン・グルネット・イェプセン編集による、戦後初となるジャズのディスコグラフィー本)がシリーズでずらっと置いてあったんですよ。
それはジャケット写真なんか一切ない、テキストしか書いてないひたすらデータだけが掲載された辞書のような本で、一冊取り出してページをめくってみるとそれにたくさん赤線が引いてありました。

山崎:1960年代ではかなり重要な情報源だったらしいですね。これは当時、日本で入手するのは難しかったのではないでしょうか。

水谷:この本がとても気になったので日暮さんと共にブルース愛好会を立ち上げた鈴木啓志さんにお聞きしたのですが、みんな当時はジャズの本なのに、一部掲載されているブルースをそこから探していたらしいんですね。
で、その後、68年に初めてブルースのディスコグラフィー本が出るんですが(イギリスの作家、マイク・リードビターとニール・スレイヴンによる初の画期的なブルース・ディスコグラフィ『Blues Records 1943-1966』)、それまでは本当にコアなブルースの情報が『JAZZ RECORDS』でしか、なかなか手に入らなかったらしいです。

山崎:当時はブルースもジャズの括りで捉えられている部分もあったんでしょうね。その本はルーツ的なブラック・ミュージック全般って感じだったのかもしれません。

水谷:それとは別の話なのですが、先日、20代くらいの若い人とお話しする機会がありまして、彼はヒップホップを作っていてサンプリングをしていると。で、具体的に何をサンプリングしてトラックメイキングをしているのかを尋ねたんですが、彼は曲名どころかアーティスト名も覚えていないんですよ。一つも覚えていなくて。サブスクで出てきた曲を良いと思ったらひたすらブックマークしてプレイリストに入れているだけだと言っておりました。

山崎:今の時代っぽいですね。最近、DJもサブスクだったりするようで。それってもはやDJ(ディスク・ジョッキー)じゃないですよね。SJ(サブスク・ジョッキー)って呼んだ方がいいんじゃないですか?(笑)でもアナログよりもサブスクの方がとても情報が早く的確に捉えるので我々アナログ・ユーザーからしたらSJを見習いたい部分はあるんですけど。

水谷:確かに。的確なデータをもとにデータ音源をかけている。これはデータ・ジョッキーなので「デー・ジェー」ですね(笑)。
冗談はさておき、話を戻しますが、日暮さんは1948年生まれなので、先ほどのチラシを作ったのは20歳ということになります。かたや、その若者はネット上に無限にある情報の中でサンプリングソースを探すためにディグるけどアーティスト名すら覚えていない。この2つの出来事がちょうど同じ時期だったので、ショックというか考えさせられました。

山崎:僕らの若かりし時代も限られた情報の中で探すってありましたね。80〜90年代初頭はレコード屋さんでは試聴もできなくて最初は買っては失敗しての繰り返し。なかなか良いレコードに巡り合わないからレコード屋の店員に菓子折り持って情報を聞きに行ってましたよ。それくらい良い情報を得ることが難しかったです。でもその分、情報に飢えていましたね。

水谷:先ほど話しました若い人を悪く言うつもりは全くありません。それが今の世の中ですし、その分いろいろなスピードは早くなっていると思うのですが、前述の『JAZZ RECORDS』の赤線を見たときに、タフさと凄まじさを感じました。そしてPヴァインが50年(2025年で50周年)続けてこれた『しぶとさ』の根幹はここにあるんだなと改めて実感しました。

山崎:まだ日本で知られていないブルースを開拓してもっと広めていこうという強い情熱を感じますね。でも、今ってタフさや『情熱』だけではダメだという風潮がある気がします。もっと賢く、要領良くやっている人の方が成功している例が多いというか。先ほどのサンプリングの話で言うと今は、情報過多の中でなんでも選べて機材も進化しているから作るスピードも早いし、簡単。アーティスト名なんていちいち覚えないで、サクサク作って数打ったほうがいいのかもしれません。90年代のアーティストはやっとの思いで探し出した1曲を、サンプラーに取り込んでスタジオでミックスしてってなるのでどうしても時間も手間もかかっていました。

水谷:僕も昔は良かったなんていうつもりもありません。Pヴァインは本格的すぎる「重さ」、「野暮ったさ」みたいなのが社風にあって、周りのお洒落だったり洗練されたイメージの会社とは違って、我が社は古臭いなってコンプレックスではないですが僕も思っていた時期はありました。でも今、振り返ってみると、そういうトレンドに向いていたインディーレーベルは、CD不況を乗り切るのは大変で、時代の変化の波にのまれていったレーベルもありました。

山崎:音楽一本で勝負しているインディーの会社でデータ/サブスク化によって起こってしまった音楽不況を乗り越えて、今も安定して残っているのは、ちゃんと地に足がついているところばかりかもしれません。

水谷:流行りに乗るなとは思っていなくて、時代を読む力っていうのはとても重要だと思います。現に日暮さんも先見の明に長けた人でした。

山崎:そうですね、大事なのは流行に振り回されすぎない強さ、そして決めた道を根気良く進み続ける情熱だと思います。
でも今の時代は情報が多いのでどうしても迷いが出てくるのかもしれません。一つのものを極めようという気にはならないですよ。

水谷:昔の人って得意分野はこれっていうのが明確に見えました。何か一つに絞って極めようとすることで、その本質に触れ豊かな体験をすることができる気がします。

山崎:あとは景気の先行きが読めない中で、仕事や売り上げほしさに多くの情報を追いかけてしまう傾向がある気がします。焦らないで根気よく、一つのものに『情熱』を注ぐことが一番の近道だということを僕らは次世代に伝えなければいけないのかもしれません。

水谷:いまの時代、情報は簡単に手に入るのですが、それが罠だったりもしますから。情報に泳がされないように上手くネットと付き合う事でより豊かなミュージック・ライフが送れるようになる気がします。一方で、我々世代も完全にレコード=物に支配されていて物量の多さに身動きが取れなくなってますので、そこもバランスよく収集していくのが、肝だったりしますね。日暮さんの自宅にもお邪魔しましたが、部屋を見てレコードは言わずもがな、音楽に限らない様々な書籍が棚にきちんと整頓されていて、文化的にとても豊かな生活を送っていたのだなぁと思いました。

山崎:今回もやはり少々説教臭い老害トークになってしまいましたね。でもYONCEの「説教くさいおっさんのルンバ」じゃないですが、オヤジの説教に耐えられない若者が多すぎるのでは?べつに言う事を聞かなくてもいいので、バネにしてもらわないと。『情熱』はストレスからのカウンターで生まれるんですよ。

水谷:そうですね、ミシシッピの綿花畑で黒人労働者がストレス・フルな重労働のなか歌って生まれたのがブルースの起源ですから。あっ、「説教くさいおっさんのルンバ」のPVで説教くさそうな男性を演じてる方は、リアル僕の若い頃の上司(ホント)でした。
なので、僕も見習って頑張ろうと思います(笑)。

VINYL GOES AROUND - ele-king

 このサブスク時代、アナログ・レコードにまつわるさまざまな試みを展開し、「レコード・カルチャーの再定義」をコンセプトに活動している「VINYL GOES AROUND」。同プロジェクトが監修と選曲を手がけたコンピレーション『How We Walk on the Moon』がリリースされることになった。テーマは「静かな夜」とのことで、アンビエントやジャズをはじめ、ソウル、ライブラリー・ミュージックなどからメロウで美しい曲が選び抜かれた1枚となっている。仕様もこだわり抜かれていて、「ORIGAMI」なるまったく新しいタイプのオビを使用。CDは発売済み、LPは8月7日発売です。
 なお同作の制作のきっかけになったというミックス音源も公開されているので、ぜひそちらもチェックを。

 https://anywherestore.p-vine.jp/en/products/plp-7443

VINYL GOES AROUND Presents
V.A. / ハウ・ウィー・ウォーク・オン・ザ・ムーン
V.A. ‒ How We Walk on the Moon

LP : PLP-7443 / Release: 2024年8月7日 4,500円 + 税

サブスク時代における "レコード・カルチャーの再定義" をコンセプトに活動するプロジェクト「VINYL GOES AROUND」が選曲・監修を手がけた新しいコンピレーション・シリーズの第1弾『How We Walk on the Moon』は “静かな夜” をテーマにしたアルバムです。ヒーリング/イージーリスニングに寄りすぎず、美しい緊張感と、ピュアでメロウなムードに浸る、月明かりの下で聴きたくなるような幻想的なサウンドスケープが環境に溶け込みます。

アンビエントやジャズはもちろん、ソウル、ライブラリー、オルタナティヴなど、種々のジャンルから美しいピースを選りすぐって編み上げた選曲は、敷居を高く感じている人も多い「アンビエント」へのポップ・サイドからの入門としても役目を果たすであろう、すべての音楽ファンに聴いてもらいたい内容です。

また、LPは「VINYL GOES AROUND」が監修した『ORIGAMI/折り紙』と名付けられた全くの新しいタイプの帯を添え付けました。アルバムの世界観を更に深めるような、こだわりのデザインとなっています。

収録曲は、スウェーデン・グラミー賞2024のJAZZ部門にノミネートされた気鋭のアーティスト、スヴェン・ワンダーによる7インチ・オンリーの楽曲「Harmonica and...」や、舐達麻やNujabes、ビョークにも引用されたジジ・マシンの「Clouds」、2000年代以降、数多くの楽曲にサンプリングされたウェルドン・アーヴィンの人気曲「Morning Sunrise」などを収録。DJユースとしても重宝するであろう、従来のヒーリング/アンビエント系コンピレーションとは一線を画する面子が揃います。

このレコードと夜を過ごすことがとても贅沢に感じられるような、心が自由な旅へと解き放たれるひとときを味わえる、そんな1枚です。

スヴェン・ワンダーからのコメント

It is an honor to be included in this compilation alongside so many other talented artists who
have been an important part of my musical journey and hold a special place in my heart.
私の音楽遍歴の大切な「ひとかけら」であり、心の中で特別な位置を占めている才能のあるアーティストと同じアルバムに収録されたことを光栄に思います。
SVEN WUNDER

LP収録曲

SIDE A
1. yanaco - Arriving
2. Chassol - Wersailles (Planeur)
3. Brian Bennett & Alan Hawkshaw - Alto Glide
4. Sven Wunder - Harmonica and...
5. Ditto ‒ Pop
6. 新津章夫 ‒ リヨン

SIDE B
1. Lemon Quartet - Hyper for Love
2. Gigi Masin ‒ Clouds
3. Johanna Billing - This Is How We Walk On The Moon (It's Clearing Up Again, Radio Edit)
4. Weldon Irvine - Morning Sunrise
5. Shigeo Sekito ‒ The Word II

https://anywherestore.p-vine.jp/en/products/plp-7443

Li Yilei Japan Tour 2024 - ele-king

 2021年にリリースした『之 / OF』がロングセラーとなり、今年リリースした最新アルバム『NONAGE / 垂髫』で日本デビューも果たした、ロンドンを拠点とする中国人サウンドアーティスト/作曲家 Li Yileiの初来日ツアーの開催が8月に決定しました。
 京都、東京、和歌山、名古屋の全4公演他、8/30(金)には都内某所にてLi Yileiとausのサウンド・インスタレーションも予定しています。

京都・外
日程:8/21 (水)
会場:外(京都市左京区鹿ケ谷法然院西町18) http://soto-kyoto.jp/
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
料金:ADV ¥2,500 / DOOR ¥3,000 / 23歳以下 ¥2,000
出演:Li Yilei、Kazumichi Komatsu & more
予約:外 http://soto-kyoto.jp/

東京 大森・成田山圓能寺
日程:8/24 (土)
会場:成田山圓能寺(大田区山王1-6-30)http://ennoji.or.jp/
時間:OPEN 13:00 / START 13:30
料金:ADV ¥3,500 / DOOR ¥4,000
出演:Li Yilei、aus、iu takahashi
PA:Fly sound
協力:PLANCHA
予約:FLAU https://flau.stores.jp/items/668489a324fa03132d97dd79

和歌山・あしべ屋妹背別荘
日程:8/25 (日)
冥丁『古風』完結編 Tour 〜瑪瑙〜和歌山公演
会場:あしべ屋妹背別荘(和歌山市和歌浦中3-4-28)
時間:OPEN 17:00 / START 18:00 /
料金:ADV ¥4,000 / DOOR ¥4,500
出演:冥丁 - 暮 set -、Li Yilei
予約:Pass Market https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02yjdmguw5t31.html
主催:お還りなさい、中谷 一陽 (和歌山EXPO)

名古屋・K.D japon

日程:8/28 (水)
会場:K.D japon(名古屋市中区千代田5-12-7)
時間:OPEN 18:30 / START 19:00
料金:ADV ¥3,500 / DOOR ¥4,000 + 1D
出演:Li Yilei、marucoporoporo, CazU-23
予約:メール予約 https://docs.google.com/

東京
日程:8/30 (金)
詳細:TBA

■ ツアー詳細:
https://flau.jp/event/li-yilei-japan-tour-2024/

Li Yilei
 中国出身で現在はロンドンを拠点に活動しているコンポーザー/マルチ・インストゥルメンタリスト。また、ロンドンのアーティスト・コレクティヴNON DUAL(無二行動)のファウンダーでもある。アスペルガー症候群を持つノンバイナリーのアーティストであり、その経験は混沌と、時には痛みを伴う静寂の間を変動し、存在と実存のさまざまな状態を反映している。
 2021年にMétron Recordsからリリースされたアルバム『之 / OF』は、パンデミックの混乱の中、中国へ戻り自身と向き合う中で、宋王朝の芸術をインスピレーション源に作り上げ、2020年代のアンビエントの傑作のひとつとして高い評価を得てロングセラーとなった。そして2024年に、過去の自己と記憶が現在と出会う瞑想的な転生の瞬間を音像化した傑作『NONAGE / 垂髫』(https://www.ele-king.net/review/album/011245/)を再びMétron Recordsからリリース。PLANCHAからCD化もされ、日本デビューも果たす。
 アジア的エッセンスも感じさせるアンビエントとエレクトロニカを横断するようなサウンドが各所から注目を集める中、リミックスをして交流を深めたausのレーベルFLAUの企画により初来日ツアーが決定。

Kronos Quartet & Friends Meet Sun Ra - ele-king

 何年か前に、ザ・スリッツのギタリストだったヴィヴ・アルバーティンによるゴシップ満載の自伝が刊行されたが、ぼくにとっては本のなかで興味深かったのは、バンドが初のアメリカ・ツアーをした際にアリ・アップとヴィヴがフィラデルフィアのサン・ラーの家を訪ねていったというエピソードだ。読んでいて、思わず「へー」と声を上げてしまった。結局ツアー中で会えなかったとはいえ、彼女たちはマーシャル・アレンの父親のサポートでアーケストラ全員が暮らしていたという伝説の住居(そこではサターン盤のジャケットの制作や梱包などもおこなわれていた)まで行ったわけだ。ここに、ポスト・パンク時代の日本ではあまり語られてこなかった事実がひとつ確保された。当時ザ・ポップ・グループのマネージャーが運営していた〈Y Records〉からサン・ラー作品がリリースされたのは「意外」なことではなかったのだ。
 サン・ラーとアーケストラの影響の大きさ、その多様さは、経済的な成功とは無縁だった彼らのキャリアを思えばこれまたじつに興味深い。人はなぜ、いつまで経ってもこんなにもサン・ラーに惹きつけられるのだろう。なぜ、彼の死後(いや、彼がこの地球を旅だってから)、これほど多くのアーティストたちが彼の曲をカヴァーしたがるのだろう。理由のひとつには、サン・ラーの曲はじつは親しみやすいものが多いということがあるだろう。本作冒頭に収められたジョージア・アン・マルドロウの歌う“Outer Spaceways Incorporated”は、大ざっぱに言って、村上春樹の小説に出てきてもおかしくはない、上品でレトロな(そして幻想的な)ヴォーカルもののスウィング・ジャズに思えなくもない。だが、歌詞は壁抜けどころではなく大気圏抜けだ。曲は歌う。「地球に飽き飽きしたなら、いつまでも変わらないとうんざりしたら、さあ、サインアップしよう、宇宙へ飛びだそう」

 本作はAIDS医療援助活動のための非営利団体、レッド・ホット・オーガニゼーションによるサン・ラー・プロジェクトの最新盤だ。1990年の設立以来、女性とLGBTQ+コミュニティを中心に活動してきたレッド・ホットには、これまで多くのミュージシャンが協力してきている。2002年には、AIDSの合併症で亡くなったフェラ・クティに捧げる『Red Hot + Riot: A Tribute to Fela Kuti』によって、その音楽マニアなところも広く知られるようになった。レッド・ホットは昨年、サン・ラー・プロジェクトを開始し、まずは『Nuclear War: A Tribute to Sun Ra: Volume 1』、そしてサン・ラーのブラジル音楽解釈版『Red Hot & Ra:SOLAR - Sun Ra In Brasil』をリリースした。前者は、エンジェル・バット・ダウィッド、ジョージア・アン・マルドロウイレヴァーシブル・エンタングルメンツらが、くだんの〈Y Records〉からリリースされた反原発曲“Nuclear War”をそれぞれがカヴァーしたものだった。そしてさらに、レッド・ホットは最近2枚のアルバムを発表した。そのうちの1枚がここに大きく取り上げるクロノス・クァルテットと複数のミュージシャンによるカヴァー/再構築集なのである。

 まず、参加ミュージシャンの顔ぶれがele-kingのためにあるようで(笑)、すばらしい。上記のアン・マルドロウほか、ジェイリンララージローリー・アンダーソンRPブー、アーマンド・ハマー、ムーア・マザーと700 BlissDJハラム、テリー・ライリー&宮本沙羅ほか、オークランドの即興演奏家ザカリー・ジェイムズ・ワトキンス、サンフランシスコの実験音楽家のEvicshen、同所の前衛集団シークレット ・チーフス3M、カナダの実験音楽家ニコール・リゼ。現役アーケストラーのマーシャル・アレンも参加している。これだけのクレジットを見れば、聴かずにはいられないでしょう。

 それでぼくの感想だが、クロノス・クァルテット(これまでスティーヴ・ライヒやフィリップ・グラス、テリー・ライリーなどとの共演を果たしている)の存在がこのアルバムの魅力の土台を作っている。周知のようにサンフランシスコのこの楽団は弦楽器奏者のグループで、アーケストラは主に管楽器と鍵盤(そしてある時期からはシンセサイザー)のグループ。だから、“Outer Spaceways Incorporated”が良い例だが、ヴァイオリンやチェロで演奏されるサン・ラーの曲はじつに新鮮に感じる。ジャズとクラシカルな響きとのなんとも美しい融合だ。また、やはり、エレクトロニック・ミュージックのいちファンとしては、ジェイリンとRPブーがここに名を連ねていることに反応してしまう。20年前に〈Kindred Spirits〉がセオ・パリッシュ、マッドリブ、フランシスコ・モラ・カルテット、ジミ・テナー、ビルド・アン・アークなどをフィーチャーしたサン・ラーのトリビュート・アルバム『Sun Ra Dedication』(このときのメンツも良かった)を出したことがあり、I.G.カルチャーやセオ・パリッシュのリミックス盤(名盤だ)も当時ずいぶんと話題になった。ただしあれはクラブ系のレーベルからのリリースだったし、言ってしまえば、90年代のクラブ系をずっと追い、90年代後半以降のジャズに寄ったデトロイト・テクノやジャングル〜ブローンビーツ、インストゥルメンタル・ヒップホップを聴いているリスナーに向けられてのものだった。
 今回のアルバムがより広範囲なリスナーに向けられていることを実現させたのは、間違いなくクロノス・クァルテットの演奏力やアイデアによるところが大きい。ジェイリンやRPブーのエレクトロニクスが曲全体をコントロールするのではなく、あくまでも曲のいち部として機能している。それはララージでもムーア・マザーでも同じことだ。
 そういう点で、ローリー・アンダーソンとマーシャル・アレン(とクロノス)との共同作業は面白かった。この組み合わせのみが2曲収録されているが、ほんとうにアンダーソンならでは声の響きがそのままサン・ラー宇宙とドッキングした音楽になっている。RPブーのビートとアーマンド・ハマー(とクロノス)の共演もぼくには嬉しかった。が、本作はラーの宇宙を楽しむ至福の1時間、という内容ではない。どの曲にも各々の光沢があり、ラーの宇宙空間の多次元を楽しめることはたしかだ。しかし700 BlissとDJハラムによるエレクトロニック・ノイズもさることながら、ササクレだった曲、緊張感みなぎる曲もある。
 アルバムを締めるテリー・ライリー&宮本沙羅の“Kiss Yo Ass Goodbye”は、あの“Nuclear War”のいち部を切り取って、別の物に作りかえたものだ。この、深みのあるトリビュート曲は、リスナーによって感じ方はさまざまかもしれないが、ぼくはラーの怒りをあらためて表現しているように思えて、ライリーのあまり語られていない一面を感じ取った次第である。(当たり前の話だが、ラーはニコニコした宇宙案内人などではない。たとえばセオ・パリッシュにとってラーとは、“Saga Of Resistance(抵抗譚)”なのだから)


※同時に、USのシンガー・ソングライター、マルチ・インストゥルメンタリストのMeshell Ndegeocelloによる『Red Hot & Ra: The Magic City』もリリースされている。もちろん『The Magic City』(1973)は〈Impulse!〉からも出たということもあって、ラーの有名作のひとつだ。彼女は歌を挿入しながら、同作をより甘美で魅惑的なものへとうまくまとめている。ファンはこちらもぜひ聴いてください。ぼくのような『The Magic City』好きから見ても、数曲、すごく魅力的な演奏(解釈)がある。

Martha Skye Murphy - ele-king

 マーサー・スカイ・マーフィの音楽を聞くと胸の中に恐ろしさと美しさが同時にやってくる。ひんやりとしていておごそかで、何かよくないことが起きそうな不安を覚える緊張感と、ゆらぐロウソクの灯を見つめているようなやすらぎがあって、それらちぐはぐな感情がわからないものとして頭の中で処理されてそのまま出る。彼女の音楽は調和のとれた風景の奥にある違和を表現するかのように美しく不安に響くのだ。

 マーサー・スカイ・マーフィと聞いてスクイッドの “Narrator” のヴォーカルを思い出す人も多いだろう。あるいは〈Slow Dance Records〉のことが頭に浮かんだり、10代の頃にニック・ケイヴのツアーに参加したということ思い出す人もいるかもしれない。初期の作品のクレジットにはジャースキン・ヘンドリックスことジョセリン・デント=プーリーやデスクラッシュのベーシスト、パトリック・フィッジラルド、ブラック・カントリー・ニュー・ロードのルイス・エヴァンスなどの名前が並ぶ。こうしたことからも彼女の立ち位置が見えてくるのような気もしてくるが、しかし彼女はそれらの人物と関わりながらそこから少し距離を置いてどのようなシーンにも属さないような音楽を作り続けてきた(それはゴシックの香りがするアート・ポップのような音楽だった)。美しく、恐ろしく、孤高で孤独、イーサン・P・フリンと共同プロデュースで作り上げたこの1stアルバムは現実の向こうから何かを見出そうとするようなそんな空気が漂っている。それはおそらく気配と呼ばれるようなもので、見えないがそこに何かが確かにあると感じられる類いのものだ。

 テープレコーダーのスイッチが押される音と「開始」という声とともにアルバムははじまる。ハミングともやのかかった楽器の音で空間が歪んでいくような、ゆったりとしたイントロダクション “First Day” によって幕が開くこのアルバムはピアノが中心にあり、フルートやストリングスといった柔らかいアコースティックな楽器で組み立てられている。そこにエレクトロニクスの固いサウンドのテクスチャーが重ねられ緊張と緩和を繰り返しながら進んでいく。そうしてそこに声がのる。マーサ・スカイ・マーフィのこの声こそがこのアルバムの気配を作り上げているといっても過言ではないだろう。ヴォーカリストというよりかはメッセージを伝える占い師、あるいは心を深層に向かわせる催眠術師のような声、細くそれでいて芯があり、ゆらぎ、言葉と響きの間にある意味をたぐり寄せる。それが音と重なり聞き手の感情を迷子にさせる。身体の支えとなるようなものはなく、どこに軸足を置いていいかわからずに、方向感覚を失う。しかし不思議と不安はない。フルートのささやきとアンビエント・ドローン、ピアノとフィールド・レコーディングされた物音でノスタルジックな空気を作る “Theme ParKs” の中で、彼女の声は遠くで瞬く光のような、何もない砂漠での道しるべのように感じられる。幾重にも重なった音のテクスチャーが頭にぼんやりとした考えを浮かばせ、そうして砂をかぶせるようにして消していく。それが浮遊感ともまた違う、音の空間の中で迷子になったかのような感覚を生み出すのだ。
 “The Words” においてもそれは顕著で、アコースティック・ギターの上でヴォーカルが人工的に処理されて、声の重なり、楽器の重なりの中で所在を不確かにさせる。ここにいる彼女の奥、遠くで聞こえるその声はまるで過去に存在した人物の声のようでもあり、あるいは未来におこりうることを予見したかのような声でもある。そうやっていくつもの像が重なり、万華鏡のように広がっていくのだ。
 クレア・ラウジーが参加した最終曲 “Forgive” はピアノとフィールド・レコーディングされた物音と気配の音楽だ。それが頭の中のおりを洗い流すかのように響いていく。ぼんやりと何かを思い出すかのように、あるいはこれから起こりうる未来のできごとを感じるかのように。「that’s enough」という声とともにレコーダーの停止ボタンが押され現実に突如引き戻されるまで、この不思議な感覚は続いていく。

 アルバムのミキシングを担当したマルタ・サローニはこのアルバムを初めて聞いたときに「まだ起きていない経験の、その記憶を体験しているかのようだ」というコメントを残したというが、まさにこれは体験の音楽なのだろう。重なる響きの中で方向感覚を失い、声を頼りにゆっくりと糸を手繰るように深層に潜っていくこの奇妙な体験はしかし不思議とやすらぐものでもある。恐ろしく美しい迷路のようなやすらぎに、気付けばハマりこんでいる。

Mouchoir Étanche - ele-king

 ブラック・トゥ・カムの変名とは気づかずに何度か聞いていたムショワー・エタンシェ(=防水ハンカチ)名義の2作目『ジャズマン』。ジャズでもなんでもないし、名義を変える意味がぜんぜんわからない。強いていえばブラック・トゥ・カムよりもタッチが軽く、重みを感じさせないことぐらい。とはいえ、ブラック・トゥ・カムについてそれほど詳しく知っているわけではなく、アンビエント寄りのリリースがいくつかあるのでひと通りは聴き、それ以前にやっていたクラウトロックの成れの果ても聞くだけは聞いた。元々はナース・ウイズ・ウーンドのフォロワーであることは本人も自覚していたようで、2010年代に入ってからはナースの基本であるエレクトロアコースティックに作風を絞り、ここ数年は〈Thrill Jockey〉から『Before After』(19)、『Seven Horses For Seven Kings』(19)、『Oocyte Oil & Stolen Androgens』(20)と調子よくリリースを続け、評価も以前より高まっている。ひと言でいえば表現はどんどん洗練度を増しているにもかかわらず、実験性が様式化されたわけではなく、どうしても音楽をやりたいんだなという精神性は伝わってくると。それはムショワー・エタンシェ名義でも同じくで、いわゆる実験音楽を楽しんでつくり、何かを前に進めているとか、唯一無二の感覚を追求しているとかではない気がする。

 一方で、ブラック・トゥ・カムことマーク・リヒターは昨年、ブラック・トゥ・カムの最新作『At Zeenath Parallel Heavens』をリリースした際、「自分のやっていることはAIがやっていることとあまり変わらないような気がしてきた」と〈Thrill Jockey〉のサイトで語り、AIが人間のやっていることに取って代わるのではなく、人間がロボット化し、プログラム通りに動くようになっていることを示唆していた。リヒターの手法はサンプリングとコラージュが多いので、なおさら、情報を集めてきてお題通りのものをつくるという過程は似ている。どんなものをつくるのか、それを考えているのは自分自身だということを除けば、だけれどもも。いずれにしろ初めてフレンチ・ジャズを意識したという『Le Jazz Homme』にはチャットGPTを使ってつくった “Le drôle de singe(面白い猿)” という曲が収録されている。中世のファンファーレをループしてランダムに再生させ、アモン・デュールIIのように聞かせるとかなんとか説明されていて、そういわれるとそのようにしか聞こえなくなってくる。ソリッドでシャープなアモン・デュールII。彼らはリヒターにとってはヒッピー・コミューンを代表する存在らしい。

 AIが音楽をつくっているといっても、そのAIが幻覚を見ている状態だとリフターは考えているようで、いわばAIにおけるチャンス・オペレーションを想定しているのだろう。経済番組などでAIと音楽の話題になると、AIにヒット曲をつくらせようという話題しか出てこないので、そのような価値観とは無関係である(AIでヒット曲をつくるって、ほんとお金のことしか頭にないよな……)。確かにコンピュータにはいつもバグが期待されている。ワープロやPCが普及し始めた頃に「誤変換」が楽しくてしょうがないという風潮はあったし、チャットGPTも最初は間違いだらけだと面白がられていた(当時、ツイッターで見かけた「全員、捕まるまでがオリンピックです」というスローガンが面白くて、定期的に生成AIに打ち込んでいたら、毎回のように答えが変わっていって、いつかなどは「森喜朗が捕まるまで」という答えが出てきた!)。そのようなバグったAIが音楽をつくったら……というのが『Le Jazz Homme』のコンセプトなのだろう。実際の曲よりもリヒターの説明の方が面白くて、 “Note à soi(自分用メモ)” はエクトル・ザズーが後ろから押したのでパスカル・コムラードのトーイ・ピアノが階段から落ちているところとか、 “Musique gelée(冷凍音楽)” はフランスの女性アーティストがシャーリー・テンプルについて哲学している時の神秘的な雰囲気だとか。エンディングの “Musique d'arrêt étrange(奇妙な停止の音楽)” はタルコフスキーの口ひげとバッハのかつらの出会いを暴力温泉芸者のように表現したかったけれど、それには少し及ばなかったと(!)。中原昌也が闘病中だということもあり、物悲しいピアノの響きに少しジーンとしてしまう。ほかにも本人の説明とは食い違うような面白い曲がいくつも並んでいて、空想のブルーノートだという “Septième jeudi vide(第7木曜日は空いている)” や、マダガスカル語で偽のサックス・ソロを演奏するマダガスカルのインドリ(キツネザル)という完全に意味不明の “Autoroutes vides(高速道路は空いている)” はジョン・ハッセルみたいで、これらもいい。ブラック・トゥ・カム名義に比べて肩の力を抜いてつくっているのがよくわかるし、前衛音楽なんて横道にそれている時の方が絶対にに面白いよ(なんて)。

 自分でも気付かぬうちに、スティーヴ・アルビニは私の人生を変えていた。彼の特定の作品との出会いによって啓示を受け、人生の中にそれ以前と以後という明確な境界線が引かれたということでは全くない。それよりも彼の影響は、私の育った音楽世界の土壌に染み込んでそれを肥沃にしたものであり、そうとは知らない私が無意識に歩き回った風景そのものだったのだ。ようやく獲得し得た視野と意識によって振り返ってみると、私が通ってきた世界のすべてに彼の手が及んでいたことを思い知らされる。

 世代的なことも関係している。1962年生まれのアルビニは、ちょうど1980年代にジェネレーションXが成人し始めた頃の音楽シーンで地位を確立し、彼の音楽とアティチュードはその世代の心に響く多くの特徴を体現していたのだ。

 彼の作品は挑戦的で、パンクが退屈さに怒りをぶつける方法をさらに推し進めたものだった。彼自身の初期のビッグ・ブラックやそれ以降の音楽の中で、児童虐待やレイプ、暴力について恥も外聞もなく言及し、その言葉は人種差別や同性愛嫌悪の枠をはるかに超えるようなものだった。それでも後年には、彼のそういった挑発を裏打ちしていたのは無知と特権意識によるものだったという反省を、恥ずかしがらずに口にしてみせた。彼はこれらの考察を自分自身の個人的な言葉で組み立てることに細心の注意を払ってはいたが、それは同時に、1980/90年代の慣習に逆らった、エッジ―なポップ・カルチャーの多くが社会の隅に追いやられた人々の実生活の経験について、いかに無頓着で認識が甘かったのか、さらに、批評的かつ皮肉な出発点から一線を越えてしまったアートが、いかに他の人々に、昨今彼もよく目にするようになった本物のヘイト(憎しみ)によって、同じようなことを言うための扉を開いてきたかについての鋭い分析でもあった。

 アルビニの場合、人々に衝撃を与えたいという意欲が、彼のもうひとつの側面であるメインストリームといわれるもの全般、特に音楽業界の偽善的な常識を無視する姿勢と密接に結びついているのだ。ピクシーズ、ブリーダーズ、PJハーヴェイ、ニルヴァーナやジミー・ペイジとロバート・プラントなどの多大な影響力のあるアルバムの仕事で軌道に乗った、彼のレコーディング・エンジニアとしてのキャリアでは、業界のゲームに参加さえすれば莫大な金を稼ぐことができたのに、インディペンデント・アーティストに拘り続けた。

 そして、彼が実際に一緒に仕事をしたアーティストたちの話を聞いてみると、近年の内省的なアルビニは、以前の作品から想像されるような口汚い挑発者とそれほど対照的ではないかもしれないことに気が付く。そこから伝わってくるのは、自分の意見についてはぶっきらぼうで率直だが、バンドが望むものを達成するために自分の持つ専門知識を惜しみなく差し出して深い集中力でもって彼らを手助けするという人物像だ。1990年代にアルビニとアルバムを録音したバンドのメルトバナナによると、彼らは自分たちがレコーディングの主導権を握り始めた時の彼の寛大さを強調し、「3枚目を自分たちでレコーディングすると決めた時に、録音のアドバイスや必要な機材について尋ねると、たくさんのことを教えてくれた」と語った。ZENI GEVAの一員としてアルビニと仕事をした田畑満は、彼のことを「レコーディングについて知ることが、音楽の秘密に近づくことに繋がると気付かせてくれた人」と言い表した。

 彼が私自身の音楽世界に与えた影響の大きさが、長いこと私のレーダーから影を潜めていたことの理由のひとつに、彼が手掛けた多くの作品での自分の役割を最小限に抑えようとしていたことがある。プロデューサーとしてよりも、エンジニアとしてクレジットされることを好み、多くで偽名を使っていたことでも知られている。彼の死を知った後で、自分の持っているレコードを確認すると、アルビニが録音した作品でのクレジットは、Ding Rollski (シルヴァーフィッシュの『Fat Axl』)、Some Fuckin’ Derd Niffer(スリントの『Tweez (トゥイーズ)』)、そして彼の猫のFluss (ガイデッド・バイ・ヴォイシズの『アンダー・ザ・ブッシズ・アンダー・ザ・スターズ』の数曲)などとなっていた。それでも、ピクシーズとブリーダーズのキム・ディールはインタヴューで、彼が認めたがるよりもはるかに、スタジオでの影響力は絶大だったと示唆している。

 ビッグ・ブラックやシェラックにすでに影響を受けていたバンドが、‶スティーヴ・アルビニ・サウンド〟を求めて彼のエレクトリカル・オーディオ・スタジオでレコーディングを行ったことには、ほぼ間違いなく(とりわけ時が経つにつれて)、自主的な選択がはたらいていた傾向にあるが、やはり、彼の作品全体に繰り返し見られる識別可能な特徴があったのも確かだ。彼はアナログで作業することを好み、(田畑は「彼は世界最速のテープ・エディターでもあり、DAW使用者よりも速かった」と語っている)、ほとんどの装飾を取りはらった、広がりのあるサウンドを創りだした。彼の録音では、ドラムの自然なリヴァーヴを好んだことで、まるでミュージシャンと同じ部屋に一緒にいるかのような感覚が味わえる。彼の録音の多くに、独特のクランチーなベースのサウンドとスクラッチのような耳障りなギターがフィーチャーされている。それは、個別のアーティストたちが目指したゴールに応じて微調整された還元的で多様な作品の要約ではあるが、アルビニ自身の作品群をはるかに凌駕し、彼に影響を受けた何千人ものアーティストやエンジニアたちの作品にこだましたサウンドなのだ。そしてこのサウンドは、私が東京のミュージック・シーンに参入して足場を固めようとしていた頃の東京中のアンダーグラウンドのライヴ・ハウスで鳴り響いていたものであり、私が観たり一緒に仕事をしたりした全世代のアンダーグラウンド・バンドの作品を彩っていたものだった。

 彼が築き上げるのを手伝った音楽世界で育った者としては、スティーヴ・アルビニの死去によるひとつの世代の衰退を感じざるを得ない。彼が後悔していた‶クソなエッジロード(重度の厨二病患者)〟のことばかりではなく、彼が精力的に支持した反メインストリーム主義のDIYのエートス全体が、ますます過ぎ去った過去の遺物のようになってしまう――少なくとも、当時のような形ではなくなっていくのが感じられる。インディとメインストリームのニ極化的な対立や、それに付随する‶裏切り〟という非難は、文化的な戦線が他に移行し、オルタナティヴが必ずしもミュージシャンにとって経済的に存続可能な空間でなくなってきている現在においては、さほど重要な意味を持たなくなっている。アルビニ自身も、90年代に比べて独立系ミュージシャンが生きていくのがいかに難しくなったかについて言及している。彼がどれほど手頃な価格でスタジオを提供しようとしても、エレクトリカル・オーディオのようなインディに優しいスタジオでさえ、そのコストは大半のアーティストにとって回収できる金額を超えているのだ。

 これは、我々が失った世界への自分ではどうすることもできない類の叫びなのかもしれないが、それでもスティーヴ・アルビニの死は、私に音楽界のコミュニティにとって必要な物の多くを浮き彫りにしてくれた。我々には、疲れを知らずに働き続け、自分が勝ち得た成功を惜しみなく、まだ道を切り開こうとしている人々を支援するために活用できる人、潮流が自分に著しく不利に傾いた時でも、倫理的に正しいと信じることを貫き通せる人、過去の過ちを認識し、必要な時には新たな方向性を示すキャパシティの広さを持つ人、そして、私たちが間違ったことをしている時に、そうと教えてくれる辛辣な知性を備えた人々が必要なのだ。

 ミュージシャンが亡くなると、天国で他の偉大な仲間たちとジャム・セッションをする場面を想像したりするという、お決まりの言い回しがある――ジェフ・ベックのギターに、チャーリー・ワッツのドラム、そしてベースはウォルター・ベッカーといった具合の。スティーヴ・アルビニのファンの何人かは、これらの天使になった巨匠たちには、ようやく天上の世界で自分たちのことをクソだと進言してくれる人ができたのだと提言している。

私自身はスティーヴ・アルビニと直接知り合う機会はなかったものの、東京のアンダーグラウンド・シーンにいれば、必ずや彼と知り合いだった人に行きあたる。上に引用したように、この記事を書いている間に何人かに話を聞き、彼らのコメント全文を掲載するべきだと思ったので、ここに記す。

「スティーヴ・アルビニはレコーディングについて知ることが、音楽の秘密に近づくことに繋がると気付かせてくれた人。彼は世界最速のテープ・エディターでもあった――DAWユーザーよりも速いほどの。彼が恋しい。一緒に音楽を創ってくれてありがとう、スティーヴ。」
 田畑 満

 「スティーヴが亡くなったことは本当に悲しいです。彼は私たちの最初の2枚のレコードを録音してくれました。私たちは彼の昔の自宅のレコーディングスタジオでアルバムを録音しました。みんなで彼の家に泊まって過ごした時はとても楽しかったです。3枚目を自分たちでレコーディングすることを決めた時に、録音のアドバイスや必要な機材について尋ねると、たくさんのことを教えてくれました。それに、彼のバンド、シェラックとアメリカ、イギリス、フランス、ドイツで一緒にライブすることができて本当によかったです。私が彼の姿で一番よく覚えているのは、1枚目のレコーディングの時に彼がミキシングボードに向かって、深夜まで一人で黙々と作業をしていた後ろ姿です。その時、私は彼が飼っていた猫のFlussとずっと遊んでいました。彼は、私たちにたくさんのことを与えてくれました。スティーヴ、ありがとう。」
メルトバナナ/Yako/Agata


How Steve Albini secretly changed my world


By Ian F. Martin

Without me even noticing it was happening, Steve Albini changed my life. There was no single revelatory encounter with his work that drew a clear line in my life between before and after. Rather his was an influence that seeped into and fertilised the ground of the musical world I grew up in — a landscape I walked ignorantly around, before eventually gaining the perspective and consciousness to look back and see his hand in everything.

Part of this is generational. Born in 1962, Albini established himself in the music scene just as Generation X began coming of age in the 1980s, and his music and attitude embodied a lot of the characteristics that generation took to heart.

His work was confrontational, taking the way punk railed against boredom even further. In his own early music with Big Black and beyond, he wasn’t shy about making references to child abuse, rape and violence, language that stepped way beyond the boundaries of racism and homophobia. But nor was he shy in later years about reckoning with the ignorance and privilege that underscored a lot of his provocations. While he was careful to frame these reflections in his own personal terms, they were also an incisive breakdown of how carelessly naive a lot of transgressive or edgy 1980s/90s pop culture was about marginalised people’s real life experience, and how art that crossed those lines from a critical or ironic startpoint opened the door for others to say similar things with the genuine hate he came to see so widely around him in recent times.

In Albini’s case, his willingness to shock also went hand in hand with another of his defining characteristics: his disregard for the hypocritical niceties of the mainstream generally and the music industry in particular. As his career as a recording engineer took off with influential albums by the Pixies, The Breeders, PJ Harvey and Nirvana, not to mention his work with Jimmy Page and Robert Plant, he could have made obscene amounts of money by playing the industry game, but his focus remained on independent artists.

And it’s when talking to the artists he actually worked with that the reflective Albini of recent years feels like less of a contrast with the foul-mouthed provocateur his earlier work might lead you to imagine. The picture that comes across is of a man who was blunt in his opinions but deeply focused on deploying his expertise to help bands to achieve what they want. Speaking to the band Melt-Banana, who recorded with Albini in the 1990s, they highlighted his generosity when they began to take control of their own recording, noting that, “When we decided to record our third album ourselves, he gave us a lot of advice and equipment we needed, and he gave us all sorts of information.” Mitsuru Tabata, who worked with Albini as part of the band Zeni Geva, described Albini as “the man who made me realise that getting to know about recording could help get me close to the secret of music.”

Part of why the extent of his impact on my own musical world stayed under my radar for so long was down to the way he minimised his role in so much of the music he worked on. He famously preferred to be credited as an engineer rather than a producer, and in many cases worked under assumed names. Looking through my records after learning of his death, I found Albini’s recording work credited variously to Ding Rollski (Silverfish’s “Fat Axl”), Some Fuckin’ Derd Niffer (“Tweez” by Slint) and his cat Fluss (a couple of tracks on Guided By Voices’ “Under The Bushes Under The Stars”). Still, in interviews, Kim Deal from the Pixies and The Breeders has suggested that he was a far more influential factor in the studio than he liked to admit.

There was almost certainly (and especially as time went on) something self-selecting in how bands already influenced by Big Black and Shellac recorded at his Electrical Audio studios because they wanted “the Steve Albini sound”, but there were nonetheless identifiable characteristics that recurred throughout his work. He preferred to work analogue (Tabata remarks that “He was also the fastest tape editor in the world — even faster than DAW users”) and created a spacious sound with most of the frills stripped away. His recordings show a preference for natural reverb on the drums that creates a sense of them being there in the room with you. Many of his recordings feature a distinct, crunchy bass sound and scratchy, abrasive guitar. Of course this is a reductive summary of a diverse array of work that was finetuned according to each individual artist’s goals, but it describes a sound that reverberated far beyond the body of Albini’s own work into that of the thousands of artists and engineers who were influenced by him. It’s a sound that rang through basement live shows across Tokyo when I was first finding my feet in the music scene here, and it coloured the work of a whole generation of underground bands I saw and worked with.

As someone who grew up in the musical world he helped build, it’s hard not to see the fading of a generation in the passing of Steve Albini. Not just the “edgelord shit” he came to regret, but also the whole anti-mainstream DIY ethos Albini supported so vigorously feels increasingly like a relic of a generation whose time has gone — at least in the form it took at that time. The often confrontational dichotomy between indie and mainstream, and the related accusation of selling out, carry far less weight nowadays as cultural battle lines shift elsewhere and the alternative ceases to be a financially viable space for musicians. Albini himself remarked on how much more difficult it had become for independent musicians to stay afloat compared to in the 90s. No matter how affordable he tried to make it, even an indie-friendly studio like Electrical Audio’s costs are beyond what most artists can hope to recoup.

So maybe this is a helpless cry to a world we’ve lost, but Steve Albini’s passing still highlights to me a lot of what the musical community needs. We need people who work tirelessly, using whatever success they gain in ways that help support those still trying to make their way; we need people who stick to their guns ethically when they know they’re right, even at times when the tide seems to be inexorably turning against them; we need people with the capacity to recognise past mistakes and chart a new direction when needed; we need people with the caustic intelligence to tell us when we’re doing it wrong.

There’s an insipid trope when a musician dies of imagining them in heaven, jamming with all the other dead greats — Jeff Beck on guitar with Charlie Watts on drums and Walter Becker on bass. A few Steve Albini fans have suggested that these angelic maestros now finally have someone up there to tell them they’re shit.

__________

I didn’t know Steve Albini, but everyone in the Tokyo underground scene knows someone who did. As quoted above, I spoke to a couple of these people while writing this article, and felt I ought to post their full comments as well:

“Steve Albini was the man who made me realise that getting to know about recording could help get me close to the secret of music. He was also the fastest tape editor in the world — even faster than DAW users. I miss him. Thank you for creating music with me, Steve.” - Mitsuru Tabata

“I'm really saddened that Steve passed away. He recorded our first two records. We recorded the in his old home recording studio and had so much fun staying at his house. When we decided to record our third album ourselves, he gave us a lot of advice and equipment we needed, and he gave us all sorts of information. It was fantastic, too, to be able to perform with his band Shellac in the US, UK, France and Germany. What I remember most about him is seeing his back as he was working alone at the mixing board until late at night during the recording of our first album. While he worked, I just spent the whole time playing with his cat Fluss. He gave us a lot. Thank you, Steve.” - MELT-BANANA / Yako / Agata

Terry Riley - ele-king

 ミニマル・ミュージックの歴史的金字塔、「In C」。それが初演から60周年を祝して、京都で実演される。この曲をやるのは15年ぶりとのこと。しかも50名のミュージシャンとともに清水寺にて演奏。チケットは早めにね。

会場:⾳⽻⼭ 清⽔寺 本堂舞台
日程: 2024年7月21日(日)

テリー・ライリーより 開催に向けて

「In C」の曲(一部)が私の中に降りてきたのは、1964年の或る夜。その瞬間、私はバスに乗っていました。サンフランシスコのゴールドストリートにあるサルーンでラグタイム・ピアノを弾くピアノ弾きとして生計を立てていたのです。
 この曲は、まさに世界がその出現を待ち望んでいたイヴェントであったかの如く、非常に有名になり長年にわたって世界中で数えきれないほど演奏されてきました。
 2024年の今日、私は、今年60周年を迎えた「In C」を上演し、お祝いをしたいと思いつきました。言うなれば「歳をとった女の子」へのお誕生会です 。
 どの場所が良いだろうかと思案した結果、京都が良いだろうと思いました。街が纏うスピリチュアルな雰囲気は、「In C」という楽曲が狙う意図にも一致します。
 多くの演奏家に参加いただくことで、宇宙に捧げる歴史的な祝祭になるであろうと、胸を躍らせています。
 素晴らしく、そして京都にあって非常に重要な寺院・清水寺は、この祝祭にうってつけの場所でしょう。仮に雨に降られたとしても、それから守ってくれさえもします。
 2009年に行った、ニューヨークのカーネギーホールでの演奏の後、私はこの「In C」を演奏することからリタイアしていました。ですが、私は喜んでこの京都での祝祭を例外とするつもりです。
 このアイディアを実行に移してくれ、実現させるために助けてくれた全ての人に、特に清水寺の大西英玄氏、中村周市氏と宮本端氏に感謝を。最後に「In C」の60周年を祝うために駆け付けてくれた全ての演奏家の皆さんに感謝を。

2024年6月 テリー・ライリー

◉開催概要
タイトル:
In C-60th Birthday Full Moon Celebration at Kyoto Kiyomizu-dera Temple, July 21, 2024
〜「In C」誕生60年を祝う奉納演奏 〜

会場:⾳⽻⼭ 清⽔寺 本堂舞台
住所:京都市東山区清水1-294
www.kiyomizudera.or.jp/access.php
日程:2024年7月21日(日)
開場時間:20:00
開催時間:20:30(終演:21:30頃を予定)

チケット発売日時:2024年7月6日正午12時より
チケット発売サイト:inc60-kiyomizu-dera.peatix.com 
          *発売開始日時より有効となります。
奉納チケット料:10,000円(税込/限定記念グッズ付き)
※本奉納公演は商業目的ではありません

本公演に関する問い合わせ先:
メール terry.riley.info@gmail.com
電話 070-7488-0346
(電話の受付時間:13:00〜19:00)
※音羽山 清水寺へのお問い合わせはご遠慮ください。

出演:テリー・ライリー、SARA(宮本沙羅)他、梅津和時、永田砂知子、大野由美子(Buffalo Daughter)、ヨシダダイキチ、蓮沼執太、AYAら、50名程度を予定

企画・主催:テリー・ライリー
制作総指揮:しばし
協力:音羽山 清水寺
   「Feel Kiyomizudera」プロジェクトチーム

◉「In C」60周年記念グッズ

「In C」誕生60周年を記念して、限定グッズ(Tシャツ、ステッカー、トートバッグ)を販売します。全て、本人が新たに書き下ろした手書き譜面をあしらった、貴重なアイテム。
terryriley.base.shop

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