Home > Reviews > Album Reviews > Rangers- Suburban Tours
やっと手に入れたー(4月のリリースです。すいません。しかし、夏に聴かなければコレは意味がない~)。元々はディスコグスのマーケットプレイスでぐんぐん値段が上がって行くのが気になって調べてみたところがどこも売り切れ。まったく知名度がない新人なのに、どうしたことかと思ったのがきっかけ。最初は実験音楽やアンビエントのサイトとして知られる『アート・イントゥー・ライフ』でサンプルを聴くことができ、紹介文は以下のような感じだった。
「コラージュ/シンセサイザーを断片的にファズギターと絡めたどサイケ・アヴァンポップの名演!! マスト!! 大判コラージュアートワークが付属!!」。
同サイトが主に扱っているのはかなりハードな実験音楽なので、ユルめのサンプル音源と煽り文句がうまく噛みあわず、まったくイメージが湧かず、そのまま1ヵ月が過ぎていった。そうこうしているうちに巷ではチルウェイヴということが言われはじめる。よくわからないのでさりげなく野田編集長に訊いてみる。「チルウェイヴって何?」。答えは「(いろいろ解説があった挙句に)要するにシューゲイザー+ディスコだよ!」。そうか、ディスコか......。さらに1ヵ月。ふと、ジェット・セット・トーキョーで見覚えのあるジャケットが目に入る。煽り文句は「Washed Out"Life of Leisure"に密かに匹敵のチルウェイヴ裏傑作2010!! 絶対オススメです」。アート・イントゥー・ライフの煽りとはどうしても結びつかない。でも、ジャケットはたしかにレインジャーズである。しかし、なぜか試聴盤はない。ジェット・セットの煽り文句は続く「USインディ・シンセ最新隠れマスト・アルバム、ようやく再入荷です。Washed OutとSampsとJulian Lynchをつなぎそうで微妙に外れるサイコ感覚が死にそうに素晴らしい!!」。もっと続くけど、やめておこう。「再入荷」というひと言に確信を得て、思い切って買ってしまった。ちなみにワルシャワのサイトでは次のように煽られている。「2009年に、Not Not Funからカセット・リリースをしている、Joe Knight の Rangers のヴァイナル・リリース! ブログ上では、"エレベーター・サイケ"とか、"ミラーボール・ファンクナゴジック・ポップ"とか言われていますが、OESEレーベルの得意とするところの、エレクトロ+ギターなローファイ感満点で、ズルズルなひとりサイケ・ポップ。もちろん、Ducktails周辺ファンはドツボでしょう!」
こうなったら「どサイケ・アヴァンポップ」なのか「チルウェイヴ裏傑作」なのか「ミラーボール・ファンクナゴジック・ポップ」なのか、自分の耳で確かめてみるしかない......と思って、とにかくターンテイブルへ。
おー。これは......。
煽り文句はすべて合っているのかもしれない。これはいい......。ダックテイルズのファンではないけれど「ドツボ」だった。単なるユルめのインストゥルメンタル・ロックで、小細工は何も弄されていないし、いちばんいいなと思った"ベアー・クリーク"はアンダーグラウンド系のヒップホップにも聴こえるし、曲によってはもうちょっとでフュージョンになりかねないという加減がたまらない。僕が煽り文句を書くとしたら「細野晴臣と山下達郎が70年代に出会ってはっぴいえんどとは違うバンドを結成していたらこんな感じだったかもしれません(ウソ)」とか「タレンテルやオン・フィルモアをひたすら軽くした感じです! マスト! チェースト! バプティスト!」とか書くだろうか。あー、それにしても暑い。PCの調子が悪くなってきたので、終わりにします。
三田 格