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Rangers

Rangers

Pan Am Stories

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三田 格   Oct 24,2011 UP

 砂原良徳に遅れをとること13年。〈OESB〉から〈ノット・ノット・ファン〉に移ったジョー・ナイトの(カセットなどを除く)2作目は「パン・ナム」がテーマだった(ゴッドスピード・ユー~から分かれたフライ・パン・ナムというのもいましたね。砂原より先にマーク・ニルスンのパン・アメリカンや808ステイトにも"キュービック(パン・ナム・ミックス)"もあったり)。

 ......そのせいか、昨年のデビュー作よりも浮遊感をイメージさせる曲が増え、良くも悪くも抒情的に流れていく展開が目立つようになった。そこがまずは気になり、ロー・ファイ度も薄れ、洗練されたが故に失ったものがあるような気がするせいか、少し物足りなく思いつつも聴き進めていくと、アナログで2枚組みのヴォリウムを持たせるだけあって、曲調は予想外の広がりを見せはじめる。フェルトやドゥルッティ・コラムもかくやと思えるイントロに導かれて"ジェインズ・ウェル"では星屑のようなフラギリティを、リヴァーブをかけまくった"カンヴァセイションズ・オン・ザ・ジェット・ストリーム"では適度な艶やかさを、組曲形式の"ジークズ・ドリーム」ではマイク・オールドフィールドのような込み入った構成力を、さらには"ゾンビーズ(ナイト)"など4曲でパサパサついたヴォーカルまで披露。なるほど最終的にはいろんなところを旅したような気分を残してくれる(前作のタイトルも『サバーバン・ツアー』だし、人をどこかに連れていくのが好きなのだろう)。

 アンニュイというほど不機嫌(=サルク)ではなく、ただ単にレイジーで、どこか都会的なファンク・サウンドにロー・ファイというフィルターを通すというアイディアはどこから来ているのだろうか。70年代でいえば、ファンクからフュージョンへと移り変わるギリギリのところをしつこく掘り下げているといった印象で、山下達郎や南義孝がガレージで録ったデモ・テープだよとかなんとかいえば信じてしまう人もなかにはいるに違いない。あるいはスモーカーズ・ヴァージョンのジョン・トロペイ。ゆったりと陶酔的なギターを何本も重ね、稚拙なSEの処理は砂原の足元にも及ばない。つーか、そこまでやる気がない。すべてが適当にやっているとしか思えない。そのような投げ出し方がいい。方向転換に成功したオーガ・ユー・アスホール『ホームリー』にも一脈で通じるものがある(一脈どころじゃないかな?)。

 いわゆる「ギター弾きまくり」というやつではないのに、すべてはギターによって決定されている。それもスノッブな響きを否定するものではなく、短くカッティングを重ねている部分でも、独特のニュアンスに引き込まれ、いつの間にかギターとギターの隙間に挟まれてしまったような気がしてくるし、前作はもっとベースに存在感があったので、そのことは余計に際立って感じられる。ここからマーク・マッガイアーのソロ・ワークが描き出すような導線もありうるとは思うものの、そのような抽象度の高さに必ずしも強い興味があるわけでもないし、むしろ自分の心に忍び寄っているのはノスタルジーを強めたい衝動のような気さえする。これ以上はよくわからない。あー、なんか、ややこしい。

 このラインでは、春先のリリースに遡るけれど、サン・アローにレインジャーズを掛け合わせたようなエディブルズ『アザー・マインズ・ミーツ・イナー・スペース』(DNT)も面白い位置を見つけたといえ、サン・アローがアカデミックな方向へ軌道修正し、レインジャーズがこうなった以上は、彼らがどっちに向かって行くのか非常に興味のあるところ。

三田 格